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1チーム2カテゴリーを生かせない決断の一歩、田中碧は投入できなかったのか/日本代表コラム

超ワールドサッカー / 2021年10月8日 12時30分

写真:©︎JFA

「勝つしかない」そう試合前に語っていた選手たちだが、試合後にはその口調はより強まり、同じ言葉を口にした。

3試合を終えて1勝2敗。カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選のライバルであるサウジアラビアに、1-0で敗れてしまった。

初戦のオマーン代表戦で敗れ、2戦目の中国代表戦でなんとか勝利を収めた日本。連勝スタートとなっているサウジアラビア代表、オーストラリア代表との連戦となる10月は、勝たなければいけない、それ以上に負けてはいけない2試合だった。

オマーン戦での失敗を経験した選手たちが集まった今回の日本。誰もがこの2試合の大切さ、重要度を理解していることは伝わってきた。危機感、そして覚悟をもって臨んでいたことは間違いない。

2019年のアジアカップのラウンド16では、80%近いポゼッションを許し、防戦一方となった中で、1-0で勝利をした相手。5年前のロシアW杯アジア最終予選では、消化試合となった試合で1-0で敗れていた。

難しい試合になることが多いだけに、より警戒心が高まっていた日本。それもあってか、試合の入りは良いものとなった。

◆守備は安定も、攻撃でミスが散見


12分にFKから完璧にヘディングで合わされるという大ピンチを凌いだ日本。アジアカップほど、ポゼッションをされ続けて押し込まれるという展開にはならず、互いに高い強度を保った試合展開となった。

それでもパスを繋ぐこと、ポゼッションをしてゴールに迫るというサウジアラビアの戦い方は健在。推進力と確かなテクニックを駆使して日本ゴールを目指してきた。しかし、中央は吉田麻也(サンプドリア)と冨安健洋(アーセナル)のCBコンビがしっかりと対応。クロスを何度も上げられたが、跳ね返し、相手の起点になりそうな時には、前に出てデュエルで勝負に行った。さらに、冨安はそこから攻撃に転じるパスの正確さを披露。クリアではなく、パスをすることで、局面を打開するシーンを何度か見せていた。

また、相手のサイドバックが高い位置を取ることから、対応が難しかった酒井宏樹(浦和レッズ)と長友佑都(FC東京)も食らいついて良い状態でクロスを上げさせないなど、守備は安定感を見せていたが、攻撃面ではサウジアラビアの切り替えの早さに苦しめられることとなる。良い形で守備をし、パスを使ってビルドアップを図るが、狙いどころを決めていたサウジアラビアのプレスに引っかかるシーンが散見された。

特にボランチのところが空くため、遠藤航(シュツットガルト)と柴崎岳(レガネス)がボールに触れる機会はあったが、前を向けばすぐに寄せられ、パスコースを切られるが故に攻撃が上手くいかない。また、パスを通しても、受ける前線で奪いどころを決めていたため、なかなか効果的にパスが通らなかった。

さらに、右サイドに入った浅野拓磨(ボーフム)を裏のスペースに走らせようという狙いがあったが、厚みを持った攻撃ができず、上手く使い切れなかった課題も残る。ドリブルで剥がすことも難しく、インテンシティ高く臨んできたサウジアラビアの前に、攻撃陣は沈黙した。

◆決めるべきだった決定機

その中でも前半は3つのチャンスがあった。1つ目は柴崎が放ったブレ球ミドルだ。ボールを運びながらも前に出すところがなく、そのままミドルシュート。直近の試合で自身が決めたゴールを連想させるものだったが、GKモハメド・アル=オワイスが何とか掻き出してセーブした。

決まりはしなかったが、相手の虚を突いた非常に鋭いミドルシュートだが、この柴崎の1本以外は見られなかったに等しい。スペースがなかった訳ではなく、もう少し攻撃の手として使う必要性はあっただろう。慎重に行きすぎた感は否めない。

そして初めて狙っていた浅野の裏のスペースを使った攻撃から、南野拓実(リバプール)がクロスをヘディングで合わせた。狙っていた形はハマれば決定機になることを示したが、これ以外にはほとんど形は作れなかった。

そして最大のチャンスは大迫勇也(ヴィッセル神戸)のもの。相手のパスを長友佑都(FC東京)が体に当てて防ぐと、こぼれ球を鎌田大地(フランクフルト)がダイレクトでロングスルーパス。これが中央を抜け出た大迫に届き、GKと1対1の局面を迎えるが、シュートは完璧に読まれて防がれた。相手DFに寄せられる中、大迫にはしっかりと決め切ってもらいたかったというのが本音だ。

前半で3つのチャンスを迎えた中で、1点も奪えなかった日本。タラレバは存在しないが、どれか1つでも決まっていれば、展開は大きく変わっていたはずだ。そして、そのツケを後半に払うこととなる。

◆目に見えて落ちた精度、カードを切れなかった判断

迎えた後半も互いに拮抗した展開となっていったが、サウジアラビアのギアは1つ上がっていた。ホームに駆けつけた大観衆のテンションが上がっているのも影響したのか、球際の強度が上がり、より勢いを持って日本のビルドアップを封じに動いていた。

対して日本はサイドで押し込まれる展開が続き、なかなか押し出せない状況に。時折、長友や酒井が攻撃参加しても完結せず、徐々に押し込まれていく。

徐々にブロックを敷いて守る形に変えた日本だが、前半からインテンシティの高いプレーを続けたこともあり、疲労が溜まっている姿が所々で見受けられ、前線との距離が間延びしていくことになる。

ビルドアップ時もパスを入れることはできるものの、そこでサウジアラビアのプレスを受けてボールをロストするシーンが増加。最終的に失点に繋がったバックパスのミスも、パスの出しどころを見つけられなくなった結果、柴崎が苦肉の策で下げたところに人が居なかったという状況だった。

試合前には鎌田が「中に入ったときにはワンタッチでサポートできるところにいないといけないので、選手間の距離を短くしなければいけない」と語っていたが、この日の日本はサポートの距離が徐々に遠くなっていっていた。そのツケを払う形となってしまったのが柴崎。結果としてプレーの判断が敗戦に繋がったわけだが、柴崎1人が敗戦の責任を負うというのは違うだろう。問題はその戦況を見極め切れなかった森保一監督にある。

「ミスに関してはピッチに立たなければ、あのミスは起きていなかったので、ピッチに立たせたのは監督である私なので、そのミスを含めてすべて私の責任だと思います」と試合後に語ったが、柴崎の所が狙われていたのは前半からであり、後半に入ってさらに狙い所となり、何度もカウンターの起点になってしまっていたことは見えていたはずだ。

試合後の会見では「もっと早ければという部分については、タイミングは間違っていなかったと思います」と語っていた森保監督。しかし、決断するだけの材料は十分にあったと言える。

◆1チーム2カテゴリーを生かすべきでは

もちろん、前述の前半の決定機を決めていれば、この結末はなかったかもしれない。あのシーンで柴崎が繋ぐことを諦めていれば、失点はなかったかもしれない。試合が終わってしまえば、全てがタラレバになり、結果を変えることはできない。

どうなるかは誰にもわからないが、気になるのは選手交代の決断だ。

9月の2試合、オマーン代表戦、中国代表戦では、森保監督は3人ずつしか交代させていない。邪推でしかないが、レギュレーションを勘違いしているのかな?とも思ってしまったほどだ。

通常の3人ではなく、5人交代できるということは、局面を大きく変えられる可能性を秘めている。もちろん、その交代で悪化することもあるわけだが、オマーン戦にしても、全体的に動きが悪かった試合であり、積極的にカードを切っても良かったはずだ。

もちろん、余裕のある試合運びができていれば、カードを切る決断も簡単にできたのだろう。ただ、2試合を3枚の交代で終えた。

そしてサウジアラビア戦。結果として5人交代をさせるわけだが、起用された5人のうち2カテゴリー目の東京五輪世代から起用されたのは中山雄太(ズヴォレ)の1人のみだ。

個人的な意見でしかないが、柴崎が狙われ続けていたこと、そして展開やパスの精度が相手に狙われ続け、疲弊したことで下がってきた段階で、ベンチに最適な交代要員がいたはずだ。それがMF田中碧(デュッセルドルフ)だ。

柴崎と全く同じではないが、ゲームの流れを作り、ハードな守備をこなせ、相手の隙を突く選択ができる選手だ。日本代表歴は2試合しかなく、ほぼ初招集のような状態ではあるが、森保監督は良く知っているはず。東京五輪では全試合で起用するほどの信頼を寄せた選手だ。

さらに言えば、コンビを組む遠藤とは東京五輪で5試合プレーし、スペインやメキシコといった強豪との経験もある。ドイツに渡り、逞しさも増したことを考えれば、彼を起用するという決断はそこまで難しくはなかったように思う。

1チーム2カテゴリーを率いていた指揮官の最大の利点は、A代表の経験が少ない選手を見ていることで、積極的に起用できる面だろう。

かつてのフィリップ・トルシエ監督は、A代表からアンダー世代まで指揮した結果、力のある若手を積極的に起用し、チームの底上げを図った。

しかし、残念なことに森保監督のこの3試合で先発起用した選手は17人。そのうち東京五輪世代は、中国代表戦で先発したMF久保建英(マジョルカ)だけだ。途中出場を含めても、堂安律(PSV)と中山の3名。若手を起用すれば良いと言うことではないが、固定し過ぎたメンバーで結果が出ていない状況。必勝で臨まなければいけない、12日のホーム・オーストラリア代表戦では、何か変化をもたらせ、2カテゴリーを指揮した意味を見せる必要があるのではないだろうか。

《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

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