池江璃花子選手の白血病公表で“善意の攻撃” 民間療法を勧め、詳しい病状を知りたがる声も

wezzy / 2019年2月15日 17時5分

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 競泳の池江璃花子選手が2月12日に白血病を公表し、各界から応援の声が上がっている。ただ、それが必ずしも当事者やそれを支える家族にとって有益かといえば、また別の話だ。

 公益財団法人日本骨髄バンクにはドナー登録に関する問い合わせや資料請求が殺到。日本水泳連盟には励ましや心配の電話やメールが相次ぎ、民間療法や漢方薬を熱心に薦める人もおり、連盟事務局は対応に追われているという。

 また、TwitterなどのSNS上では、スポーツ選手や芸能人などの著名人による池江選手への応援ツイートも相次いでいる。

 カンニング竹山は12日、Twitterで<池江さん、絶対に治る! 絶対に治ります!>とツイート。2006年に相方・中島忠幸さんを白血病で亡くしている竹山は、池江選手の白血病公表を他人事とは思えず、善意で<絶対に治る!>とエールを送ったのだろう。

 しかし、こういった応援や励ましは「善意の攻撃」であるとして、がん研究者の大須賀覚氏が12日、Twitterで警鐘を鳴らした。

<池江選手の報道を見ると、日本でがんを公表する難しさを感じます。公表すると患者は「善意の攻撃」を受けてしまいます。皆さんが心から良くなって欲しいと願う気持ちは分かります。しかし科学的根拠のない治療を勧められたり、「絶対に治る」のような根拠のない励ましは患者に負担となることもあります>
<皆さんのお気持ちは本当に良くわかります。ただ、とにかく励ましたり、治療を探してあげるのがするべきことではない場合が多いです>
<もちろん人と人との関係ですので、明確な正解はなく、がん患者によって受け取り方は違うこともあります。しかし、そう思う患者がいることを頭の片隅に入れておいてもらうと、大切な人に余計な負担をかけずにすむのではと思います。優しい思いが空回りしてしまわないように、知っておいてもらいたいです>

 また、写真家であり血液のがんで闘病中の幡野広志氏も12日、Twitterでこのように進言している。

<病気を公表したときに“可哀想”とか“残念”って感想をいってしまう人が少なくないけど、患者さんに“申し訳ない”という罪悪感を抱かせて、追いつめるだけだからやめたほうがいいよ。そして病気の報告は相談ではないので、根拠のないアドバイスもやめたほうがいいよ>
<じゃあなんて言えばいいんですか。ってよくいわれるんだけど、そもそもなんでなにかを言いたくなるのだろう。もう一度いうけど、病気の報告であって相談ではないのだ。気まずさを紛らわせようとしたり、患者さんではなく自分を納得させるための言葉はすべて止めた方がいい>



 一連の言葉を受け、Twitterでは「善意なのに」と困惑する声も見られる。しかし、一度冷静になって考えなければならない。「頑張れ」は負担を強いる言葉にもなり、「治るよ」に科学的根拠がなく、無責任な言葉になってしまう。そういった励ましによって勇気づけられる患者ばかりではなく、負担を感じる患者もいることを留意し、自分の発言に責任を持たなければならない。

 幡野氏は著書『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』(PHP研究所)のなかでも、ブログでがんを公表してから<「優しい虐待」に悩まされた><代替医療という名のインチキ療法、食事両方、宗教の勧誘>を受けたと記している。疎遠だった知人から見舞いの電話もきたが、<安易な励ましと、その人の身の上話がもれなくセットでついていた>とも。

 がんが身近な病気であるにもかかわらず、我々はがん患者とどう接していいかわかっておらず、安易な励ましに走ってしまいがちだ。家族や友人などの身近な人であれ、スポーツ選手や芸能人などの著名人であれ、「自分の知っている人」が「がん」だと判明した時に、何としても回復して元気になってほしいと願い、「頑張れ」「治るよ」と励まし、エールを送りたくなる心境はわからなくはない。相手のためを思い、最善策を考えたり、親身にアドバイスを施したい気持ちは確かに善意なのかもしれない。

 だが冒頭で紹介したように、日本水泳連盟事務局に電話やメールで、民間療法や漢方薬を熱心に薦める人もいるそうで、職員にとってはいい迷惑だろう。また、水連幹部らによる記者会見では、一般市民から「どういう病状か」「2020年東京五輪には間に合うのか」といった問い合わせもあったと報告されており、池江選手の闘病や東京五輪を“自分事”のように捉えて無礼極まりない言動に出ている人もいるようだ。無責任な善意の押し付けや、興味本位の問い合わせは慎んでほしい。

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