養育費の踏み倒し、強制的な徴収はできるか

wezzy / 2019年12月27日 6時5分

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 養育費算定表の新基準が今月23日に公表された。社会情勢の変化を受け、旧基準に比べ受取額が1~2万円ほど増えるケースがあるという。養育費算定表の改定が行われたのは16年ぶり。

 しかしながら、そもそも離婚前に養育費の取り決めを行い、実際に養育費を受け取っているひとり親世帯は多くはない。

 「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」(厚生労働省)によると、「養育費の取り決めをしている」のは母子世帯で42.9%、父子世帯で20.8%だ。

 取り決めはしたものの、支払いが滞っている場合も多い。「現在も養育費を受け取っている」のは母子世帯で24.3%、父子世帯で3.2%となっている。

 こうした現状を受け、24日放送の『とくダネ!』(フジテレビ系)では養育費の“踏み倒し”問題をクローズアップしていた。

 番組は踏み倒しの実態を把握するために、子ども2人を育てるシングルマザーAさんに取材。離婚の際には口頭で元夫と養育費の額を決めたというが、数カ月で振り込みは途切れてしまったという。

 生活費が足りず家賃を払えなくなったAさんは、行政書士に相談して調停を行った。結果、毎月支払われるようになったそうだ。

 別の女性は元夫のDVが原因で離婚に至り、こちらも当初は養育費の支払いがあったがやがて支払われなくなった。元夫は代理人を通じて「もう払いたくない」と伝え、現在も支払いは滞ったままだという。

 なお、番組内で紹介された例は別れた元夫が養育費を踏み倒しているというものであったが、元妻が養育費を払ってくれないというケースもあるだろう。

 我が子の養育費を支払わない側の言い分は様々。

<再婚して、新しい家族ができ経済的に厳しいから>
<妻が勝手に自分を捨てて出ていっただけだから>
<どうせ妻のエステ代に使われるだけだから>

 などといったものがあるようだ。

 ゲストコメンテーターとして番組に出演した武蔵大学・千田有紀教授は、払い続けてもらうことの難しさを語った。

<取り決めをしている人は(母子世帯で)4割ぐらい、そのうち支払われているのは2割くらいなので、やはり、文書を作っていても踏み倒されることはあります>
<(踏み倒しがあった場合に)調停などに持ち込むことは、できることはできる。ただ、(調停などで支払うことが)決まったからといって、払ってくれるかどうかは別です>

 また、弁護士に相談するにしても費用がかかるうえ、調停・裁判は相手と直接会う必要があるため、特にDV被害者は難しいという。

 番組コメンテーターで自身もひとり親家庭で育ったという中江有里氏は<子どもにとって親は離婚しても親>と言及したが、まったくその通りだろう。離婚をして夫婦ではなくなっても、養育費は子どもの生活のために支払う義務がある。

改正民事執行法で強制執行がしやすくなる

 これまで、「強制執行」を行う手段も簡単ではなかった。

 たとえば、現行制度でも、公正証書や調停調書など公的文書で取り決めをした養育費が支払われなかった場合、支払義務者の給与や口座を差し押さえる「強制執行」を行うことができるが、支払義務者の勤務先や口座はひとり親世帯で突き止めなければならなかった。

 また、裁判所に支払義務者を出頭させ財産について陳述してもらう「財産開示手続き」では、支払義務者が裁判所に出頭しない、虚偽の陳述を行うなどすれば、行政罰として30万円以下の過料が科せられるものの、「前科」ではない。支払義務者の住所がわからなければこの手続きを利用することはできない、公正証書では対象外になるケースもあるなど、ハードルの高い面が多く、批判も多かった。

 そして今年5月、改正民事執行法が成立した(来年4月頃に施行見込み)。

 改正民事執行法では、財産開示手続きで、支払義務者が裁判所に出頭しない、財産について虚偽の陳述を行うなどすれば、懲役6カ月以下または50万円以下の罰金という「刑事罰」が科せられる。

 さらに、財産開示手続きを利用しても支払義務者の情報を取得できない時には、新設された「第三者からの情報取得手続き」を取ることができる。

 これは、ひとり親世帯が裁判所に申請すれば、裁判所が金融機関や年金事務所、法務局、市区町村に情報照会をかけ、支払義務者の勤務先や口座、不動産を明らかにするという方法だ。

 養育費算定表や民事執行法の改正によって、生活に見合った養育費を受け取ることができ救われるひとり親世帯もあるだろう。ただ、離婚時などに公的文書によって養育費の取り決めをしていることが前提になるため、養育費の取り決めすらままならないケースをどうフォローしていくかという大きな課題がある。

根強い母親の自己責任論

 進展をみせる養育費の踏み倒し防止策だが、『とくダネ』の放送後、一部ネット上では「貧困は離婚した母親の責任」「母親が男を見る目がないのが原因」という、自己責任論もみられた。

 また、番組の取材を受けたAさんがネイルをしていたということから、「本当に貧困なの?」と疑うなど、貧困者はそれらしい身なりでいるべしとする差別的な意見も散見された。

 しかし繰り返しになるが、養育費は子どもの生活のために必要だ。取り決めをしたのであれば支払う義務があるし、ひとり親世帯は受け取る権利がある。

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