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ふわ~っと浮遊感のあるアートで、まどろみのひとときを楽しむ

Woman.excite / 2015年9月2日 12時0分

写真

残暑とはいえ、あまりに暑かった日々を思うと、どう過ごしていたのやら、意識すら混濁していたような記憶しかありません。リフレッシュして秋を迎えるためにも、本当に必要なこと以外は無理して集中せず、まどろみのひとときを楽しみませんか?


© loslena - Fotolia.com


ふわ~っとした浮遊感のある画集や写真集が、そのひとときを魂レベルで究極の癒しにしてくれます。視覚から入る夢の扉を開けると、そこは天空で、天使たちが雲をつき飛ばしあったりして遊んでいて…。真夏の夜の夢ならぬ、夏の終わりの白日夢へようこそ!

画集「Silent Landscape」が誘う見果てぬ夢の先へ
黒坂麻衣さんが描く鹿や馬、人や静物の絵画を、本の装丁や広告、ポストカードやハンカチなど、どこかで目にしたことがあるのではないでしょうか? 色彩が半透明のヴェールに包まれているような、ミルクが混ざったような、白っぽい淡い陰影。写実的なようで、どこにも無い幻想的な世界にも見える美しい絵は、心を穏やかに解き放ってくれます。

『鹿』の絵のポスターの前で

『鹿』の絵のポスターの前で


画集のページを繰っていくと、映画のワンシーンみたいな夢がどんどん降り積もっていくのです。こんな絵を描く人はどんな人なのだろう? 麻衣さんにお話を伺いました。

黒坂麻衣(くろさか・まい)
画家・イラストレーター。1986年青森生まれ。多摩美術大学卒業。2013年ADC賞入選。2014年JAGDA入選。2013年「Silent Landscape」(浅草橋天才算数塾刊)出版。島本理生著「匿名者のためのスピカ」(祥伝社)装画など。

―― 絵は子どもの頃から描いていたのですか?

「一人で本を読んでいるような物静かな子どもだったんですが、小学校低学年の頃から、絵を描いていると友達が寄ってきてくれて、自分はあまりしゃべらないのに、絵がコミュニケーションツールになっていたんですね。絵が人とつないでくれるのが嬉しくて、今思うと、それで絵描きになったのかもしれません」

青森で生まれ、3歳から7、8歳頃までを北海道で暮らした麻衣さんは、雪景色から連想する白とグレーの色彩に魅了され、それが描く時の根底にあると語ります。

『海辺の馬』白とグレーの世界。「この絵を描いてる時は、あの世界がずっと頭の中にありました。現実かどうかはともかく、脳裏にあるものを描くという感じ」

『海辺の馬』白とグレーの世界。「この絵を描いてる時は、あの世界がずっと頭の中にありました。現実かどうかはともかく、脳裏にあるものを描くという感じ」


「自分の心がホッとする世界。たびたび思い出します。雪景色が恋しい。自分にとってはユートピアなのかな。昔見た風景に近いようなモチーフを自然と選んでたりしますね」

そのせいかピュアで清冽なだけでなく、胸がキュンとなる郷愁や孤独感がどの作品にも漂っていて、それが麻衣さんの絵の強烈な魅力になっています。学生時代からの愛読書「カラマーゾフの兄弟」に登場する、天使のようなアリョーシャに惹かれ、聖なる存在と俗なる存在の間で葛藤する姿に自身を重ねたことがある、と麻衣さん。彼女が、実は夢からすごくインスパイアされている、と伺って驚きました。

『pool』珍しく明るい色彩。なのにどこかせつない。「恋をしていた時期だったので反映されちゃったのかも(笑)。楽しいことも、苦しかったり悲しかったりすることもすごくあったので、やはりせつなさみたいなものはありますね」

『pool』珍しく明るい色彩。なのにどこかせつない。「恋をしていた時期だったので反映されちゃったのかも(笑)。楽しいことも、苦しかったり悲しかったりすることもすごくあったので、やはりせつなさみたいなものはありますね」


「私は夢に助けてもらってる気がする。河合隼雄さんの本で読んだのですが、起きている間は、建前でものを言わなきゃいけない世界だけれど、夜見る夢で調節してくれるのだとか。私、子供の時にさみしかったこととか傷ついたことが夢に出てくるんですね。すごくいい夢を見ることもあるし、夢に導いてもらったり、けっこう夢を信じています」

『角の生えたの少年』「思春期、自我なんかにも目覚め、無邪気なだけじゃない部分が出てきたり葛藤があると思うんです。その葛藤を描きたかった」

『角の生えたの少年』「思春期、自我なんかにも目覚め、無邪気なだけじゃない部分が出てきたり葛藤があると思うんです。その葛藤を描きたかった」


描くことでまず自分が癒されたい、という麻衣さんの祈りにも似た絵は、私たちをも癒し、優しいまどろみへと誘います。9月5日~27日、浅草HATCHIでアーティストの大塚咲さんと二人展が開催されるとか。生の絵画に触れる絶好の機会です。詳細はHPでご確認を。

写真集「幻夢」が連れて行ってくれる桃源郷の究極の癒し
“一冊の本を売る店” というコンセプトで、2015年5月にオープンしたばかりの森岡書店銀座店での湯沢薫さんの個展「幻夢」を見た時の衝撃は忘れられません。初めて見る写真展なのに、デジャヴみたいな懐かしさと、自分を取り巻く空気が一瞬にして変容し、どこかへ連れ去られるような未知の刺激に、同時に襲われたのです。ドキドキしました。

湯沢薫(ゆざわ・かおり)
アーティスト。1971年生まれ。18歳からファッションモデルとして活躍。1997年渡米し、San Francisco Art Instituteで、写真、装丁、実験映画を学ぶ。帰国後は国内外の展覧会に参加し、写真、立体、絵画、音楽など、様々な手法で制作活動をおこなっている。2015年「幻夢」(HeHe刊)出版。

学校に馴染めず、小・中学校とイジメられっ子で地獄を味わい、バレリーナを夢見ながらも、ファッションモデルとして活躍した後、サンフランシスコ・アート・インスティチュートに留学して、初めて自分の居場所を見つけたという薫さん。写真、絵画、立体、音楽と多才に活動する彼女が、最近、ファッションブランドaoとのコラボレーションで洋服をデザイン。洋服とともに作品が展示されたaoを訪れ、インタビューをお願いしました。

代官山のaoで展示された、紙の上にドライフラワーが散らされた作品の前で

代官山のaoで展示された、紙の上にドライフラワーが散らされた作品の前で


―― サンフランシスコで、初めて自分らしい呼吸ができたんですね。

「そう! 学校ってこんなにおもしろいんだって初めて思えたの。先生もすっごい変で、特に実験映画の先生は光を好きなあまり、8ミリで覗いてるうちに興奮してきて椅子がクルクル回り出して、そのまま走ってどっかへ行っちゃったり(笑)。すごく自由。でも、作品へのクリティークは厳しいんだけど、そこで初めて受け容れられて。お前はアーティストなんだから、アーティストとして生きなさい、と言ってくれて」

それまでは、モデルゆえに「どうせ趣味なんでしょ」という先入観を持たれるから、普通の人の3倍がんばらないといけないと思っていたのが、渡米後はそういうバイアスがなくなったのだそう。「今でも、くじけそうになるとその時のことを思い出します」と薫さん。

彼女の写真の撮り方は“シャーマン”そのもの。心に降りてきたイメージ、目の前に漠然と現れた風景を探す旅に出て、同じ風景を見つけたら撮影。時には、夢中で撮影していて崖から落ちてしまったことも。「カメラを持ってると、サルみたいにどこでも登ってっちゃう。カメラを持ってると登れちゃうんです。撮り終わるとスイッチが切れて、気がついたらすごい上まで登っちゃってて、どうやって下りよう…みたいな(笑)」


そんな命がけの撮影も含め、5年ほどかけて編まれた写真集が「幻夢」。空想の世界で遊ぶことを教えてくれた亡き父の葬儀場のカーテンからスタートし、生と死の意味を探り、道に迷い、通り抜けると光が射し、花が咲き乱れ、霧が立ち込め、バレリーナの妖精が踊っていたり、目が覚めるとニュートラルな世界が広がり、別れてしまった恋人の面影が浮かんだり、最後は海で新しい旅立ちへ…と、ストーリーが展開していきます。

「人生いろいろあるけど、キレイごとばかりじゃない。でも、必ず光がある。いい未来が待ってるんだよ、っていうのが裏のメッセージ。かなり前向きです」と、薫さんは微笑みます。彼女の写真に触れて、空想の世界でまどろんでみませんか? 暑かったトンネルを抜ければ、そこはオアシス。新しい季節は、リフレッシュしたあなたのものです。


・黒坂麻衣さん 公式サイト http://maibou8.wix.com/mai-kurosaka
・湯沢薫さん HeHe http://hehepress.com/

※文中のイベントは2015年のものとなります。
(稲木紫織)

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