子どもの能力を伸ばす、幼稚園や保育園選びのポイント(「幸せ力」の育て方 Vol.10)
Woman.excite / 2015年12月30日 4時15分
運動を楽しみながら運動能力を伸ばす、それが学力を伸ばすことにもつながる
前回、幼稚園や保育園の保育形態の違いが、子どもの学力格差につながるという話をしました。
さらに、保育形態の違いは、運動能力にまで影響を及ぼしてしまうのだそうです。
保育形態の違いによって学力や運動能力に差が出てしまうのはなぜか、発達心理学や保育学が専門の内田伸子先生にお話を伺いました。
© mtaira - Fotolia.com
幼児期に運動指導を受けている子どもは、かえって運動能力が低い
「東京学芸大学の杉原隆先生が、全国9,000名3~5歳の子どもを対象に、運動能力に関する調査を実施しました。
すると、体育の時間を設けている幼稚園や保育園に通っている子どものほうが、子どもの自主性や主体的な遊びを大切にしている子ども中心の保育の幼稚園や保育園に通っている子どもたちよりも運動能力が低いという結果になりました。
さらに、運動の指導を受けている子どもたちは、運動嫌いになっていることが多かったのです」
運動指導を受けることで、かえって運動能力が下がってしまうとは、驚きの事実です。
なぜ、そんなことになってしまうのでしょうか。
「特定の部位を動かす運動をまるで強制的なトレーニングのようにくり返していると、それ以外の動きをする機会を失います。
さらに、運動のための説明を聞いている時間が長く、肝心の動き回る時間が少なくなっていることも問題です。
また、トレーニングのように行う運動は面白くありませんから、子どもは飽きてしまいます。またこのトレーニングについていけない子どもはつらくなり、落ちこぼれてしまうのです。
そのうえ、子どもは5歳ころになると、『展示ルール』が確立されてきます。展示ルールとは、他者の気持ちを考えて自分のふるまいを決めるルールのことです。つまり他人の目を気にしはじめるのです。
すると、友だちより自分ができないことは嫌だと思うようになります。そして、運動嫌いになってしまうのです」
運動能力を高め、運動を好きになる方法
「運動能力を高めるために大切なことは、自由遊びです。
子どもは遊びを通して、走ったり、登ったり、運んだり、自由にたくさんの種類の運動を経験します。それが運動能力を高めることにつながるのです。
体を使って楽しく遊べるよう、ときどき保育者が誘ってあげるといいですね。たとえば、あひるさんになって向こうまで行こうとか、踏み台を使って高いところにあるものを取るのを手伝うとか」
それなら運動を楽しみながら、運動能力を伸ばしていけますね。
運動神経と学力を伸ばすポイントは「自由保育」
「この調査結果から、杉原先生は、遊びを大切にする自由保育(※1)がいいとおっしゃっています。
私たちが行った子どもの学力に関する研究結果もまったく同じでした。
自由保育を行っている幼稚園や保育園に通っている子どもの語彙得点は非常に高く、一斉保育(※2)を行っている幼稚園や保育園に通っている子どもの語彙得点は低く、その差は年齢が高くなるほど開いていくことがわかっています。(詳しくは前回の記事をご覧ください)」
(※1) 自由保育とは:自由遊びの時間が長く、子どもが主体となって自発的にやりたいことに取り組む、子ども中心の保育形態のこと。放任とは違い、子どもの自主性を尊重しつつも、幼児期に学んでほしい目標や狙いを達成できるよう保育士が誘導する。国立大学附属幼稚園や公立幼稚園や私立幼稚園の一部、社会福祉法人の保育所では子ども中心の保育であり、子どもたちは好きな遊びに主体的に取り組み保育者は援助者として子どもの学びに寄り添い、子どもが困っているとき助けてあげる「わき役」である。
(※2) 一斉保育とは:全員に同じこと(体育や音楽、お絵かきなど)をさせる、カリキュラム中心の保育形態のこと。小学1年生の準備教育や英会話などを取り入れ、体操選手をつくるということなどを教育目標にかかげる私立幼稚園や私立保育園の一部にみられる。
遊びを通して子どもは学習するのですね。
「そういうことです。幼児にとって遊びとは『自発的活動』であり、頭がイキイキと活発に働いている状態です。扁桃体が快感状態にあるので、吸収力が大きくなるのです」
考える力と運動能力を高められるよう、子どもをたくさん遊ばせてあげましょう。
(佐々木月子)
内田 伸子先生
十文字学園女子大学特任教授・お茶の水女子大学名誉教授・学術博士。
専門は発達心理学、認知心理学、保育学。国立教育政策研究所「幼児の論理的思考の発達調査プロジェクト会議」(主査)、最高裁「裁判員制度の有識者会議」(委員)、文化庁国語審議会委員なども務めるほか、NHK Eテレの「おかあさんといっしょ」の番組開発やコメンテーター、ベネッセの子どもチャレンジの監修、しまじろうパペットの開発、創造力知育玩具「エポンテ」(シャチハタ)の開発なども担当。著書は、『発達心理学―ことばの獲得と教育』(岩波書店)、『よくわかる乳幼児心理学』(ミネルヴァ書房)、『子育てに「もう遅い」はありません』(冨山房インターナショナル)など多数。
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