教科書を捨てるタイミングはいつ? 教育評論家 後藤武士先生に聞く
Woman.excite / 2017年2月13日 20時0分
教室で授業を受ける小学生
まもなく新年度がスタートします。みなさんは、前学年の教科書や使い終わったノートはどうしていますか? 学校からは「当分の間とっておくように」と言われるものの、結局開かずじまいのご家庭は少なくないかもしれません。
古い教科書やノートはとっておいたほうがいい? 上手な活用法はあるの? そんな疑問をミリオンセラー作家としても知られる教育評論家の後藤武士(ごとう・たけし)先生にお聞きしました。
(c) milatas - Fotolia.com
■小学校の教科書は「自習用教材」としては不向き?
―小学校からはとっておくように言われる前学年の教科書ですが、我が家では出番はゼロです。春休み中のおさらいなど、活用する手立てはありますか?
(後藤先生)「結論から言うと、小学校の教科書は復習や中学受験対策用の教材としては不向きです。
小学校の教科書は教師が授業で指導しやすいようにつくられています。そのために細かい説明は割愛されています。お子さんの自習用としてはつくられてないんですね」
―では、とっておいても使い道はなさそうですか?
(後藤先生)「子どもの復習教材としては使い勝手はよくありませんが、教科書には想い出がつまっているでしょう。記念にとっておくのはありです。
また、地図帳は大人の実用に重宝しますし、小5、6年生の社会の教科書は、その分野をすっかり忘れてしまった大人にとっての学習書になりますよ」
―では、スペースがあればとっておいてもよさそうですね。
■中学校の教科書、とっておくべき教科は?
―中学の教科書は、とっておいて高校受験の勉強に役立てるべきでしょうか?
(後藤先生)「英語と国語の教科書は言ってみれば『題材集』です。自習者向けの説明はほとんど載っていないので、高校受験対策用の教材としては、ほぼ使えません。
数学、理科、社会の教科書は使おうと思えば使えますが、実際に活用するシーンは少ないでしょう。なぜなら高校受験用の学習を自分で教科書を使ってやろうとすると膨大な時間がかかってしまうためです」
―なるほど、やはり高校受験対策となると、教科書だけでは心もとないのですね。
「最近の公立中学校では、各教科別に中学3年間の学習内容をまとめた教材を購入希望者に斡旋(あっせん)していることが多いのですが、その教材のほうが使い勝手がよかったりします。また、塾や模試などに通っているお子さんなら、そちらで入手できる教材のほうが受験に特化されています。
ただし、これらをやってみて、できなかった単元を見直す際には教科書が役立ちます。子どもが自分だけでは理解できない部分を親が教えるときにも活用できるはずです」
―小学校の教科書同様、記念や実用書の意味でとっておく価値はありますか?
(後藤先生)「国語と英語以外の教科書にはひととおりの説明は載っているので、大人の公務員試験や資格試験対策、一般教養履修のための参考書としての用途はあります。
また、理・社・国の資料集や年表、地図帳、便覧などは、コンパクトにまとまっていて文体も容易なので市販されているものより見やすかったりしますよ」
■使い終わったノートは、どうする?
―教科書のほか、使い終わったノートのその後も悩ましいところです。授業内容を上手にまとめられたノートなら、もしかしたら見直しに役立つかな? とも思うのですが…。
(後藤先生)「ノートは今週習ったところのおさらいなど、短いスパンでの復習には活用できます。しかし、例えば中学校に進学するときは、基本的に小学校で学んだ科目は数学を除いてイチから学び直しますので、小学校時代のノートをとっておいても出番はないと考えた方がよいでしょう。
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また中学の数学は算数からの引き継ぎになりますが、算数のノートには、計算したり、問題を解いたりした跡が残っていますので、あとから見直しするものとしては使いにくいでしょう。ですから、算数のノートも不要です。
つまりまとめると、総復習のためにノートをとっておく必要はありません。
ただし記念としてとっておくのはOKです。各学年、各科目1冊ずつでも保存しておけば、数年後、あるいはもっと経ってから、家族団らん時の話のネタになりそうですね」
―高校以降も同じように考えてよいですか?
(後藤先生)「そうですね、中・高生が学習の見直しにノートを使うのは、主に定期テスト前でしょう。ですので、定期テストが済めば、ノートのそこまでの記述は役割をほぼ終えます。
そして、高校の学習は中学のものとまったく異なりますので、中学時代のノートを見直し用に保存しても出番はないでしょう。
しかしながら、きちんと使いきったノートは自信につながります。大学受験が終わるまで手元においておき、不安になったときは開いてみるようにすると安心感を与えてくれるかもしれません」
―ノートは「短いスパンでの見直し用」に役立つもの、と考えるとよさそうですね。
■小学生のうちに身につけたい! ノートのとりかたのコツ
―数多くの子どもたちを導いてきた後藤先生の経験のなかで、これだけは小学生のうちに身につけておきたいノートのとり方があれば教えてください。
(後藤先生)「先にお伝えした通り、ノートはテスト前など短いスパンでの見直しに役立ちます。そのためには、見やすいことが大切です。
まず、ノートのページに日付をつける習慣をつけましょう。板書をした日、問題を解いた日を入れておけば、復習するときにいつ習ったのかがすぐわかります。中学生なら正式発表より先に定期テストの範囲を予想することも可能です。そして、数日後に自分や他の人が見ても読める文字・数字を書くよう心がけましょう。
もうひとつ、ノートには十分なスペースをもうけることも意識します。見やすくなりますし、あとから問題を解き直したり、補足を書き込むこともできますよ。これらのクセを、小学生のうちから身につけておくのをおすすめします」
―ありがとうございました!
■まとめ
後藤先生のお話をまとめると
・ノートは基本的には「短期スパン」での復習に役立てるもので、こちらも長期保存は必要なし。記念としてとっておくのはあり
学年の総復習や、受験対策用教材としては活用しにくい教科書ですが、子どもにとっては思い入れがあったりするものです。ノートもまたしかりです。
年度末に教科書やノートを整理するときは、保管スペースはもちろん、お子さんの声にも耳を傾けながら行えるとよさそうです。
役目を終えた教科書やノートも、たとえばリビングの本棚など目につくところに置いておけば、ふとしたときに手にとって懐かしんでいる子どもの姿が見られるかもしれません。
(コミヤ カホル)
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