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【NHK発達障害プロジェクト】 発達障害の子育てに思う、「ありのまま」を受け入れることの難しさ

Woman.excite / 2017年10月12日 20時0分

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©Monet - stock.adobe.com


先月、NHK総合テレビで「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」をはじめ、Eテレ「ハートネットTV」では「自閉症アバターの世界1・2」、NHK「あさイチ」では「シリーズ発達障害/どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」など、続々と発達障害特集が放送された。

どれも見ごたえのある内容だったが、4歳の自閉症スペクトラムの息子を持つわが身としては、やはりリアル世代である「深夜の保護者会」が一番興味深かった。

話し合いにのぼったテーマは、「周囲へカミングアウトはするべきか?」「カミングアウトするとしたら、どう説明したらよいのか?」「夫や子どもの本音は?」「ありのままのわが子を受け入れるには?」など。どれも、まさに発達障害の子育てをしている親の悩み、ど真ん中の内容だったと思う。

現役ママの葛藤は、私には痛いほど伝わってきて、ちょっとホロッとしてしまうほどだったし、すでにさまざまなことを乗り越えてきた先輩ママたちが、試行錯誤の上生み出した、わが子との向き合い方はとても参考になった。

■わが子を嫌いになる、自分が辛い
そして、現役ママの苦しい胸の内を聞いて、改めて発達障害を持つわが子の「ありのままを受け入れる」ことの難しさを思い知った。


「彼らを大好きなのに、大嫌いになる時がある自分が辛い」
(番組に寄せられたファックスのコメント)

「比べるものではないと重々わかっているけど、どうしても下の子と比べてしまう。下の子はできが良くて、かわいくてギュッって抱きしめられるけど、上の子にはできない…。できない上の子を受け入れられない」
(番組に参加した現役ママのコメント)



そんなママたちの悲痛な叫びに、胸が締め付けられた。

■本当に、子どものこと受け入れてる?
ありのままのわが子を受け入れる――それは発達障害の子育てのスタート地点のように思えるのだが、実は、親にとっては、それが一番難しいことのような気がする。

私自身も、「私は周囲にもカミングアウトしてるし、もう受け入れているから大丈夫!」と、すっかり達観したつもりでいたのに、自分でもビックリするほど些細な事で傷ついてしまうことがある。そんな時は、「実は、心のどっかでは息子のことを受け入れられてないのかも…?」と心が揺れる。

ブレない自分でいたい。…なのに、なかなかなりきれない! それが自分でも、すごく歯がゆくて悔しいのだ。

■子どもが笑ってくれる、そのために何ができるか?
これに対して、先輩ママたちや尾木ママの意見は…


「試行錯誤する、という作業がすごく大事。私たちも最初はどうしたらいいのかわからない状態で、いろいろ試して、今がある。のちのちつながっていくことだから、あきらめないで少しずつでも進んでいってほしい」

「高望みせずに、『一個できたらすごい!』を積み重ねていけばいい。とにかく今できることを褒めて。『褒めるは認めること』って言葉に置き換えてもいい。良いところを褒めるのではなく、できていることを認めればいい。それが丸ごとの発達障害と付き合っていく姿勢につながっていくはず」

「発達障害は、息子の世界と私たち世界の交わるところにある、『壁』みたいなもの。でも、その壁は環境や周囲の考え方、関わり方で低くもなる。息子の世界も尊重しつつ、私たち側もお互い気持ちよく過ごせるエリアが広がるように、私たち側が変わっていかなければならない」




様々なアドバイスが飛び交ったが、なかでも印象に残ったのは、先輩ママの次の言葉だった。

「よっちゃん(息子さんの名前)に笑ってほしい。そのために自分がどうしたらいいか? それを考えれば自ずと変わってくる。それを変えただけ」

私は、障害(発達障害に限らず)を持つ子どもの親というのは、何か高尚な考え方ができるような、立派なママにならなければならないような気がしていた。でも、そうではなくて、この先輩ママが言うような、子どもの毎日の笑顔の積み重ねの先に、いつの間にか生まれてくるような、もっと自然な感情なのかもしれない。そう思うと、私はまだまだ肩の力が入ってしまっているようで、まだまだだなぁ~と苦笑してしまった。


■障害は敵ではない
また、当事者である子どもの発言にも考えさせられた。

「悪いのはこの子ではなく、障害のせい」と、子どもと障害を別々に考えるということで気持ちが楽になったというお母さんに対してお子さんの考えは違った。


「僕は、そういう考え方はやめてほしい。障害は敵ではない。生まれてしまった以上しょうがない。しょうがないから向き合う。うまく付き合っていけたら気持ちは楽になる」




この2人のやり取りを見て、発達障害の子育てを描いたコミックエッセイ『母親やめてもいいですか』に書かれていた、自閉症当事者によって書かれた「私たちのことを嘆かないで」という詩の一節のことを思い出した。


自閉症は人を閉じ込める殻ではありません
中に普通の子どもが隠れているわけではないのです
自閉症は私が私であること、そのもの
私という人格から切り離すことはできません

「うちの子が自閉症でなければよかった」
「この子の自閉症がよくなりますように」

その嘆き、その祈りは、私にはこう聞こえます。

「自閉症ではない別の子がよかった」

両親が語りかける夢や希望に、私たち自閉症者は思い知るのです

彼らの一番の願いは、私の人格が消えてなくなり、もっと愛せる別の子が私の顔だけ引き継いでくれることなのだと…



 
■何を持って「息子」なのだろう?


©Monet - stock.adobe.com


障害を持つ子どもの親であれば、誰しも、わが子の障害がなおることを願ったことが、一度はあると思う。

私自身も、息子が自閉症スペクトラムと診断された当初は何度となく、この障害を息子から取り除きたいと願った。一生治らないものだと知った時は、夜中パソコンの前で号泣した。

でも、1年経った今は、こう思うのだ。

例えば、息子がいきなりおしゃべりで明るい社交的な子になったとしたら…? それはそれでうれしい面もあるのかもしれないけど、果たしてそれは息子なんだろうか? と。

改めて、「何を持って息子なのだろう?」と考えると、思い浮かぶのは、なぜか、やっかいで面倒なエピソードばかり(笑)。むしろ、そのやっかいなところこそが、息子が息子であるための大切な要素なのかもしれない、と。最近ではそう思うのだ。

最後に、先輩ママたち全員が、声をそろえていたことがある。それは、「まずは、お母さんが元気なことが基本。自分を犠牲にしちゃダメ。お母さん自身の人生も大事にしてほしい」ということ。

子どもに笑顔でいてほしいなら、そのためには、まずはお母さん自身が笑顔でいることこそが大切なのだ。

まちとこ出版社N
 
NHK 発達障害プロジェクト
http://www1.nhk.or.jp/asaichi/hattatsu/

【発達障害についての記事一覧】

▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)

▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
 
(まちとこ出版社)

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