“情報格差”で、子どもの進路に影響が出る!?【「教育費どうしようかな?」と思ったら 第1話】
Woman.excite / 2018年9月26日 6時0分
「教育費どうしようかな?」と思ったら
「教育資金は、まさに『聖域』。家計がどれだけ苦しくてもほかの支出を見直し、最優先で教育資金だけは死守するご家庭を、これまでたくさん見てきました」と言うのは、ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんです。
竹下さんの事務所には、教育資金に関する相談がじわり、じわりと増加しているそう。お話しを聞いてきました。
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自らの生活者としての経験を踏まえた、家計の運営や、教育資金設計のご相談のほか、講演、執筆活動などを行っている。
■「教育資金」で夫婦ゲンカとなるケースが多い
竹下さんは、言います。「教育費の話が発端で、大きなケンカになってしまうご夫婦、じつは多いんです。そのときの心の傷は、子育てが終わったあとの夫婦関係にまで、影響を及ぼしてしまう…。それが、現実です」。
筆者の周りを見渡してみても、多くの夫婦ゲンカの要因は、「子どものこと」と「お金のこと」、そして「お互いの実家のこと」が多いのでは? と感じています。「教育資金」の問題は、これがミックスされた話なので、「そりゃ、夫婦関係の『綻び』になるよなぁ」と、妙に納得してしまいます。
■教育費と老後資金は「綱引き」の関係
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一方で、子どもの教育にお金をかけすぎて老後資金が枯渇するケースも、じつは少なくないそうです。
「実際に、『老後のやりくりが大変』というご家庭の相談を受けていると、いまのお金がない状況を招いた原因として、教育費をかけすぎたことをあげる方が少なくありません」(竹下さん)。
会社員の場合、生涯年収は有限です。その「限りがあるお金」の中で、教育費と老後資金は、常に「綱引きの関係」にあります。遠い将来、お金で揉めない夫婦になるためには、「教育費のかけすぎ」にも注意しなければいけないんです。
▼「教育費」と「老後資金」は“綱引き”関係
「教育費」と「老後資金」は“綱引き”関係(出典:『「教育費をどうしようかな」と思ったら』/竹下さくら)
こんな現状のいま、教育資金について、ママたちが「本当に知っておくべきこと」を、この連載では考えてみたいと思います。
「教育資金に関して、『情報格差』を感じます」(竹下さん)。まずは、そんな「情報格差」の例を3つほど、教えてもらいましょう。
■情報格差1、ママ友からの情報は正しいのか?
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一点目は、ママ友からの情報で焦る妻が増えているそうです。
「『この地域、中学受験をする人が多いの』と妻が夫に相談しても、夫は考えすぎだと聞き流すばかりで、妻の『不安な気持ち』を受け止めて一緒に考えてくれる夫は少数派という実感があります」(竹下さん)。
「中学受験をするかどうか?」。ママとしては、たしかに無関心ではいられない問題ですよね。でも、周りの「ママ友情報」だけに振り回されるのは、あまりおすすめできません。
なぜなら、子どもの進路については、基本的に後戻りができないからです。あたり前のことながら、私立中学に合格すれば、その後6年間、「私立の学費」を払い続けなければなりません。
「志望校名 + 学費」で検索してみると、学費に関する情報は、わりと簡単に出てきます。「その金額を、家計から6年間、きちんと支払い続けていけるのか?」を、まずはイメージしてみましょう。
また、ママ友情報だけでなく、夫の職場の同僚、実際に進学希望の学校に通わせている人などにも話を聞き、幅広い範囲での情報を仕入れることも大切です。
そういった情報を得つつ、夫婦でもしっかり「わが家の方針」を話し合い、中学受験にトライするかどうかの最終決定をしましょう。
■夫婦の「子供の進路イメージのすり合わせ」は大変!
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この時点で、「子供の進路イメージ」が夫婦でまったく異なっていることに気がつく方も多いようです。竹下さんも、こんなふうにおっしゃいます。「教育資金の相談を受けていて頭を悩ますことが多いのは、夫婦で『子供の進路イメージ』がかけ離れている場合が多いという事実です」。
じつは筆者自身、長男を中学受験させるかどうかで、夫と相当、揉めました。長男が小学校の2年生の秋、「中学受験させるかどうか?」を初めて話し合った日のことは、いまでも鮮明に覚えています。中高一貫校に通っていた夫は、「中学受験をして、俺の母校に行って欲しい」の一点張り。高校まで地方(京都)の公立育ちの私は、「中学受験!? 何のために必要なの?」。
あのときの、「私、こんな人と結婚していたんだ」という驚きは、まさに青天の霹靂レベルでした。この話は語り出すと長くなるので割愛しますが、「夫婦で『子供の進路イメージのすり合わせ』をするのは、とても大変なこと」だと、自分自身の実感を込めて思います。
でも、あの時点で、夫婦で何度も何度も、ときにはケンカになりながらも話し合いをしたので、長く厳しい(結果的に息子3人とも私立の中高一貫校に通っています)「教育費戦線」を、夫と「同志」として過ごすことができています。
■情報格差2、低所得世帯は進学をあきらめざるをえない?
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「シングルマザー・シングルファザー、低所得世帯の場合、教育資金については充実したさまざまな施策があるのですが、そのことを知らず、『人並みの教育を受けさせてやれない』と嘆いている世帯が多いようです」(竹下さん)
仕事も子育てもすべて一人で抱えていたり、生活や心身ともに余裕がないせいか、必要な情報をうまくキャッチできていない人が多いのかもしれませんね。
本連載の後半では、公的助成・奨学金などについても整理しますので、それをキッカケにして情報のアンテナを今より少し立ててみてはいかがでしょうか?
■情報格差3、親の時代の常識は、いまの時代に通じるのか?
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たとえば、「大学はとにかく国公立。授業料が私立の半額ですむから」という常識は遠い過去の話です。いまの国立の授業料は私立の3分の2程度。国公立にこだわって下宿になるより、自宅から私立に通うほうが総額は安くすみます。
また、「給付型奨学金」や「授業料免除」が充実している私立大学の数が、本当に多くなってきました。ですから、こういった制度を利用して私立大学に通う方が、国公立に進学するよりも割安になる場合もあります。
今回、竹下さんのところに取材に伺って、筆者が一番驚いたことは、この「私立大学の給付型奨学金」の充実ぶり。ただ、こういった奨学金は、「高校3年生の秋に予約が必要」など、さまざまな要件を満たさなければなりません。
これらは、情報がアップデートされている分野なので、まさに「情報力」が必要ですね。「情報を知っているか否か?」。それが、「子どもの進路の幅の差」になる時代になってきているのです。
次回は、教育資金。知らぬ間に陥りがちな2つの『落とし穴』についてお話しを伺います。
『「教育費をどうしようかな」と思ったときにまず読む本』
竹下さくら著/日本経済新聞出版社 ¥1,500(税別)
竹下さくらさん
ファイナンシャル・プランナー(CFP)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。慶応義塾大学商学部にて保険学を専攻。卒業後、損害保険会社・生命保険会社の本店業務部門等を経て、1998年よりFPとして独立、現在に至る。主に個人向けのコンサルティングに従事し、講師・執筆活動なども行っている。
(楢戸ひかる)
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