おいしいと感じる塩分濃度は何%? 「ロジカル調理」で誰でも料理上手になれる
Woman.excite / 2019年1月7日 20時0分
毎日料理は作るけれど、実はそんなに得意じゃない。レシピを見て作っても味がイマイチ決まらなかったり、肉がかたくなりすぎたり…。そんなママも少なくないのでは?
でも実は料理には「センスも勘も関係ない!」。そう言い切るのは、今年春に発売された話題の1冊『誰でも1回で味が決まるロジカル調理』を監修された、料理家で管理栄養士の前田量子さんです。
料理家。管理栄養士。ジュニア野菜ソムリエ。前田量子料理教室主宰。東京理科大学卒業後、織田栄養士専門学校にて栄養学を学ぶ。東京會舘、辻留料理塾、柳原料理教室、ル・コルドンブルーにて料理を学ぶ。保育園や病院での勤務、カフェ経営を経て、調理科学にもとづいた料理を教える教室を開催。「洋食」「和食&中華」「お菓子」の年間コースを開催している。本格的なのに誰もが再現しやすく、調理科学に裏づけされたレシピ作りに定評があり、美しい盛りつけが好評で、雑誌やテレビCM、企業へのレシピ提供なども多く手がける。
「本やスマホのレシピを真似して作っても、上手にできないとしたら、それはあなたのせいではありません。本当に必要な基本的なコツや知識が、レシピに書ききれていないからです。そしてそのコツは、科学にもとづいています」(前田さん)
科学なんていうとちょっと難しそうですが、「野菜を水からゆでるか、お湯からゆでるか」とか「誰もがおいしいと感じる塩分濃度」といったことには、ちゃんと科学的根拠にもとづいたおいしく決まるコツがあり、それさえ知っておけば誰でもおいしく作るそうです。
『誰でも1回で味が決まるロジカル調理』は、そのコツをわかりやすく、かつ論理的に解説。本の中から、毎日のごはん作りのヒントになる「ロジカル調理」の例をいくつか紹介します。
■「豚のしょうが焼き」おいしく仕上げる3つのコツ
まず1品目は「豚のしょうが焼き」。おいしく仕上げるコツは3つあります。
たれなどにつけ込むレシピもありますが、たれに塩分があるので浸透圧によって肉の水分が奪われてかたくなり、仕上がりもパサつきがち。焼いてから調味料をからめるだけで十分味はつくそうです。
焼けた肉を取り出すと冷めてかたくなるので、フライパンからは取り出さず、あとから入れた肉をひっくり返すタイミングで、先に焼けた肉をその上にすべて重ねます。重なった肉は蒸し焼き状態になるので、火は通りつつ、かたくない仕上がりに。
人がちょうどいいと感じる味つけの塩分濃度は、体液とほぼ同じ約1%。肉250gなら、しょうゆ・みりん・酒を各大さじ1(※)。調味料は加熱中に加えると蒸発したり焦げたりするので、必ず火を止めてから加えて混ぜ、再び火にかけて味をからめます。
※ 一般的なしょうゆ大さじ1の塩分量は2.6g みりん・酒には塩分は含まれない
具体的な作り方をご紹介します。
■「豚のしょうが焼き」レシピ
<材料 2人分>
豚肩ロース薄切り肉(しょうが焼き用) 250g
A
しょうゆ 大さじ1
みりん 大さじ1
酒 大さじ1
しょうが汁 2かけ分
サラダ油 小さじ2
<作り方>
1、油を入れて予熱。フライパンの片側に肉を1枚広げて入れる。
(予熱1分。強めの中火)
2、肉の色が変わったら裏返す、と同時に、次の肉を広げて入れる。
(強めの中火で片面20~30秒)
3、あとから入れた肉をひっくり返した上に、焼けた肉を重ねる。あいたところに新しい肉を入れる。
(強めの中火で片面20~30秒)
4、火を止め、Aの調味料、しょうが汁を加える。よく混ぜ、再び火にかけて煮詰める。
(強めの中火で1分)
ちなみに、しょうが焼きは通常は豚ロースが定番ですが、本レシピでは肩ロースを使用。赤身に脂が網目状に広がっているので、ロースよりコクのある味わいだそうです。
■臭くない、水っぽくない「ひじきの煮物」を作るコツ
副菜やお弁当に作っておくと便利なひじきの煮物ですが、臭みを感じたり、水っぽかったりすることも。おいしく仕上げるには、やはり科学的なコツがあります。
ひじきは重量比で8~10倍に増えるので、たっぷりの水がないとやわらかく戻りません。水の量は、乾燥ひじきの重さの約50倍(20gで約1リットル)を目安に。たっぷりの水に浸すことで、海藻独特のにおいも軽減されます。戻し時間は20~30分。長すぎると食感が悪くなるので注意。
ひじきはとにかくよく炒めることが大切! よく炒めると食材中の水分が抜けて、調味料が中までしみこみやすくなります。逆に炒め方が足りないと、水っぽい仕上がりになります。
■どうして、みそ汁は沸騰直前で火を止めるの?
毎日何気なく作っている人も多いみそ汁。昔からいわれる基本の作り方にもちゃんと科学的根拠がありました。
みその香りの成分はおもにアルコール。熟成中に酵母菌が糖を分解することで、アルコールやエステルなどの香り成分ができます。ただ、これらは90℃以上で揮発してしまう性質が。昔からみそ汁は煮たてずに沸騰直前で火を止めるのがよいといわれるのはこのため。最もみそ汁の香りが立ち、おいしく飲めるのは75℃くらいだそうです。
人がちょうどいいと感じる味つけは、塩分濃度約1%。1人分なら、だし150mlにみそ小さじ2が目安(※)。みそは水分が少なくとけにくいので、少量のだしでのばしてから加えるとムラがなくなり、加熱時間も短くて済むので、香りがより引き立ちます。
※一般的なみそ小さじ2の塩分量は1.5g
■理由がわかれば、いろいろな料理にもコツを応用できる!
料理のコツは、ちゃんと科学的根拠を理解しておけば、かんたんにほかの料理にも生かすことができます。
たとえば、豚のしょうが焼きを下味には長くつけ込まないのは、浸透圧で素材の水分が抜け、加熱でさらにかたくなってしまうから。この理由まで理解しておけば、「下味には長くつけ込まない」というコツをから揚げなど肉料理全般に応用できます。
また、誰もがおいしいと感じる塩分濃度は、体液温度に近い約1%。これはほぼすべての料理に応用できます。だしのうま味や酸味が効いている料理であれば減塩もできます。
『誰でも1回で味が決まるロジカル調理』の中では、このほかにも焼く、煮る、炒める、揚げる…などの調味料別のレシピとおいしく作るコツを多数掲載。本に紹介されているのは、ハンバーグや鶏のから揚げなど子どもたちも大好きな家庭の定番料理ばかり。
日頃何気なく作っていたものも、そうだったのか!と腑に落ちるとレシピも忘れないし、作るのも楽しくなります。料理が得意じゃない人はもちろん、料理好きの方にもおすすめの1冊です。
前田 量子監修 (主婦の友社) 1,200円(税別)
肉に火が通る温度、塩分濃度、だしの割合など料理の作り方には、科学的根拠があります。本書では誰でも必ず、おいしく作れるツボを論理的に解説。必要最低限の道具から解説もあり、料理初心者もすぐ真似できます。
(古屋江美子)
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