東日本大震災を体験したママが今も続ける「1日1防災」とは?
Woman.excite / 2019年3月7日 19時0分
いつ来るかわからない地震などの災害。とくに小さな子どもがいると、「安全に避難できるのか」「生活に困らないか」など、あれこれ不安になりますよね。
「いつもと変わらない、いつもどおりの日のはずだった」。2011年3月11日の東日本大震災の日をそう振り返るのは、当時1歳の男の子を育てていた宮城県在住のイラストレーター、アベナオミさん。アベさんは宮城県多賀城市で車を運転中に地震に遭いました。
イラストレーター。防災士。宮城県出身、在住。2 児の母。日本ビジネススクール仙台校(現在の日本デザイナー芸術学院仙台校)卒業後、地域情報誌編集部に勤務しながらイラストレーターとして活動を開始。2010 年に漫画家としてデビュー。2011 年に東日本大震災にて被災し、そのときの様子や防災を伝えるコミックエッセイなどを執筆。被災体験をもとに、本当に必要な防災、続けられる防災に取り組む。2016年の熊本地震の際には地震のノウハウをツイッターで発信したところ、大きな話題に。
ブログ:http://illustrator-abe-naomi.blog.jp/
instagram:@abenaomi
幸い家族は無事で、家屋の被害も少なかったものの、ライフラインや食料を断たれた中で1歳の子どもを育てるのは想像以上に大変だったそう。被災生活の中で湧いてきたのは、震災前への自分への後悔だったといいます。
「本当に、ほんの少しだけ気をつけていればよかったことだらけだった」というアベさんは、それ以来「1日1防災」として、備蓄品を買ったり、家具の配置をチェックしたり、1日になにかひとつでも防災にまつわることに気を配るのが日課に。
そうした防災ノウハウを、コミック、イラストでわかりやすく解説したのが『被災ママに学ぶ ちいさな防災のアイディア40』です。今回は本の中から小さな子どもがいるファミリーがぜひ用意しておきたいものをピックアップして紹介します。
■停電でまっくら…子どもやママがホッと安心できるものを
「東日本大震災の日はとても寒かったのですが、エアコンやファンヒーターが使えず、明かりもランタンひとつ」だったというアベさん。停電になってしまうと、家電製品も使えないし、スマホの充電もできません。
●停電中にあってよかったモノ(1) 「照明」
明かりは大きな安心材料。寒いうえにまっくらだと子どもの不安も増大してしまいます。明かりはいろいろな種類がありますが、懐中電灯やランタン以外にも、太陽光で充電できるソーラーライトや手回しライトなど、電池がなくても使えるタイプも便利。
人に反応するセンサーライトはトイレ近くなどに置くのによく、意外なところではクリスマスツリーを飾るイルミネーションライトなどもホッとする明かりに。100均やイケアで日常使いできるかわいい照明を見つけておいてもよさそうです。
●停電中にあってよかったモノ(2) 「保温ポット」
赤ちゃんがいる家庭では、保温ポット(魔法瓶)もぜひ用意しておきたいアイテムのひとつ。いつもは母乳というママも、震災時はストレス等から母乳が出なくなってしまうこともあるようです。ミルクのためのお湯は給水所でもらえますが、保温ポットがあると、温かいお湯をそのまま持ち帰れて便利。「ミルクを作ったあと、コーヒーを淹れて飲んだとき、ホッとしたのを覚えています」とアベさん。
■長引く断水…困るのは飲料水より生活用水
震災時は断水も起こりがち。飲料水は救援物資として届くのでまだなんとかなることも多いようですが、困るのが生活用水。アベさんの自宅は完全復旧まで1か月かかったといいます。「せっかく自宅が無事で、備蓄もあって、自宅避難ができる状況でありながら、生活用水がないばかりに避難所へ行くしかなかった人もいました」
アベさん宅が断水したのは、震災の翌日。もし震災後、まだ水が出ていたら湯船などに即貯めることが大事だといいます。また、揺れやすいマンション高層階などお湯を貯めておくのが難しい住居では、日頃から飲んだあとのペットボトルを入れてトイレに置いておくなど、場所に合わせた対策を考えておくのがよさそうです。
●断水中にあってよかったモノ(1) 「キッチンバサミ」
断水が長引くと、まな板と包丁を洗う水の確保も難しいので、キッチンバサミやピーラーが便利。「少しの水で洗えるし、殺菌力のあるウェットティッシュで拭くだけでもしばらくはしのげます」
●断水中にあってよかったモノ(2) 「赤ちゃん用沐浴剤」
赤ちゃん用沐浴剤は洗浄力がありつつも、洗い流す必要がないので非常時にはとても便利。大人もタオルを浸してカラダを拭けば、さっぱりしますし、香りに癒されます。
また忘れがちですが、断水するとメイク落としもままなりません。アベさんは、メイク落としシートやふき取り化粧水、オイルなど、水なしでメイクを落とせるものを備蓄しておくようになったそうです。
■冷蔵庫が使えない…被災時の食べもの備蓄アイディア
先ほどキッチンバサミのアイディアを紹介しましたが、そもそも食べものがなければ話になりません。救援物資や配給食の中にも野菜はほとんど含まれず、「震災後の野菜不足は深刻でした」とアベさん。食は子どもの健康にも直結します。
●「まごはやさしい」は防災ストックにも最適
最近注目されている食事法に、栄養バランスがとれる食材をわかりやすく表した「まごわやさしい」という言葉があります。冷蔵庫がなかったころから伝わる食文化なので、保存がきく食材が多く、防災用の備蓄にもバッチリ!
・ま(豆類)…豆の乾物や水煮、高野豆腐など
・ご(ごま)…ごまやナッツなどの種子類
・わ(わかめなどの海藻類)…乾燥わかめや昆布、ひじきなど
・や(野菜)…根菜やフリーズドライの野菜、青汁、野菜ジュースなど
・さ(魚)…魚の缶詰や鰹節、あごだし、にぼしなど
・し(しいたけなどのきのこ類)…乾燥しいたけ、乾燥まいたけやしめじ
・い(いも類)…いも類や根菜
こうした食材はいざというときに溜めこむのではなく、ストックしながら日々使っていくのがおすすめです。
●家族でバーベキューや家庭菜園を日頃から楽しもう
昨今はキャンプなどアウトドアブームですが、火や水が限られた中で料理を作る経験はいざというとき役立ちます。インドア派の人もたまにキャンプやバーベキューなどを楽しんでみるのもおすすめ!
また、ベランダなどでのプランター菜園はちょっとした防災食になるので、アベさんもプランターで野菜を育てるようになったそうです。夏はミニトマトやピーマン、ナスなどの実もの、冬は小かぶやミニ大根など根菜をメインに。ベランダが使えなければキッチンに置けるスプラウトが手軽です。
本ではこのほかにもアベさんが今も続けている防災術がイラストでわかりやすく紹介されています。面倒でお金のかかる防災ではなく、家にあるものを見直したり、小さな工夫をしたりすることですぐに取り入れられるアイディアばかり。しかも、インテリアを損なわないセンスのある防災なので「防災のためにインテリアやファッションがダサくなるのは嫌」というママにもおすすめ。防災は気になるけれどなにから手をつけたらいいか悩んでいるママへのヒントが詰まった1冊です。
『被災ママに学ぶ ちいさな防災のアイディア40』
アベナオミ著(株式会社学研プラス) 1200円(税別)
宮城での被災経験をふまえた「熊本応援ツイート」が話題となったイラストレーターによる、防災&避難生活の心得集。著者が体験した東日本大震災と被災後の生活をつづり、今も続けている防災術をイラストでわかりやすく掲載。さらに熊本地震の震源地に近い空港保育園の対応や日本防災士会などを取材し、防災力を高める秘訣も紹介。必ずやって来る「その日」に備える、防災初心者にもわかりやすい1冊。
(古屋江美子)
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