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「そんなことしちゃダメ!」と言いがちな親たちへ【「ちゃんと失敗する子」の育て方 Vol.3】

Woman.excite / 2019年8月20日 16時0分

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イラスト:まえだゆずこ


「その子自身の成長に着目してあげると、学習意欲と向上心が育ちます」と言うのは、花まるグループ「西郡学習道場」代表の西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん。失敗を「今、できないこと」と考えたら、「明日には、できるかもしれない」と、目線が未来に向かいます。

そうはいっても、そもそも「失敗するのが嫌」とトライする前にフリーズしている場合は、どうしたら良いのでしょうか? 引き続き西郡さんにお話を伺いました。
「Vol.1 “良い大学”では生き抜けない時代。子育ての新しい道筋は?」
「Vol.2 なぜ親は子どもが失敗することを恐れるのか?」
の続きです。
「教育現場だけではなく、親も、知らず知らずのうちに、子どもを失敗から遠ざけようとしている」と話す花まるグループの西郡さんは、「わからないからおもしろいんだよ」と子どもに教えて欲しいと話します。

■「失敗するのが怖い」と思う人に伝えたい言葉


© WONG SZE FEI- stock.adobe.com


失敗するのが嫌だから、絶対にやりたくない。正解はわからないけれど、自分自身で何らかの判断を下さなければいけない…。

そんな状況は、大人になってからもたくさんあります。そんなときに、背中を押してくれるフレーズを、西郡さんに教えていただきました。それは、「まぁ、なんとかなるんじゃない?」

「どんな状況でも、人の背中を押してくれるのは、『まぁ、なんとかなるんじゃない?』という根拠のない自信、いわば自己肯定感なんです」(西郡さん)

■「失敗しないでね」と言いがちな親に必要なこと


© imtmphoto- stock.adobe.com


自己肯定感。この言葉も、教育の取材をしていると必ずといっていいほど出てきます。では、自己肯定感は、どうすれば育つのでしょうか?

「自己肯定感。いわば自分の芯とも言える部分をしっかり育てていなければ、人は自分自身を認めることはできません。その芯とは、親からの絶対的な愛情です。親からの惜しみない愛情が、人生を生きていく上での拠り所となるのです」(西郡さん)

「子どもを絶対的に愛する」ということ。

そんな境地に強い憧れは、あります。けれども、自分が想定する「枠内」に子どもが入ってくれていれば愛せるけれど、そうでなければそこまで言い切ることはかなり難しい…。正直に言ってしまえば、筆者は「その程度」をウロウロしている母です。

そして、それは、そのまま「失敗しないでね!」「そんなことしちゃダメでしょ」という子どもへのメッセージに繋がっていくということに気がつきました。このあたり、どんなふうに考えていけば良いのでしょうか? 

■正解のない世界を生きるための「自分軸」とは


© kornnphoto - stock.adobe.com


西郡さんは言います。「自分だけの基準がなければ、判断はすべて世間的な価値基準に従うものになってしまいます。これからは、自分自身で何が正しいかを選ぶ軸が必要です」

そのために必要なことは、「感覚」を蓄積していくことだと言います。

「『感覚』とは、外から与えられた知識や世間的な価値基準などとは別のところで判断を下すための絶対的な自分自身の基準ともいえます」(西郡さん)

「『感覚』という、一見捉えどころのないものを言語化できるようになることで、ただ感じるだけではなく、自分のなかに哲学を蓄積していくことができるようになります」とも西郡さんは言います。

「行動して、感じて、考えて、言葉にする。その連続が自分の哲学となり、正解のない世界を生きていく上での自分なりの基準になるのです」(西郡さん)

■世界的に重視されてきていること

実際のところ、欧米では「感覚を磨く」という意味でアートの重要性が高まっているといいます。かつてビジネスの世界で重視されていたMBA(経営学修士)を持っている人よりも、MFA(美術学修士)を持っている人の方が評価されるようになってきているそうです。

たしかに、いままでの教育のなかでも、「感覚」を養う勉強はありました。わかりやすい例としては、図工や音楽、美術です。

「それだけではなく、じつは国語や算数の中にも感覚を磨く要素が潜んでいるんですよ」(西郡さん)


© tkyszk - stock.adobe.com


●算数で「感覚」を磨く
平行四辺形を見たとき、その中に二つの三角形をつくる補助線がパッと浮かぶ

●国語で「感覚」を磨く
小説などを読んで、主人公に感情移入したり、細かな描写に自分と近い感覚を見出す



■普段の生活でできる「感覚」の磨き方


「感覚を磨くことが、これからは大切」と言われても、従来の教育で育ってきた筆者には、正直ピンときません。どうしたら良いのでしょうか?

「子どもの感覚を磨くためのひとつが『つくる遊び』です」(西郡さん)。とりわけ自然の中で日が暮れるまで遊ぶような「外遊び」の経験が、何より子どもたちの「感覚」を磨くそう。

「できあがった施設のなかで、用意された遊具を使って遊ぶことよりも、何もない野原で拾った棒切れ一本を使って、どんな遊びをしようかと考えることのほうが、子どもの『感覚』を磨きます」(西郡さん)

クリエィティブともいえる遊び。「自分で考えて遊びを『つくる』という試行錯誤を繰り返すことによって、『感覚』は磨かれていくのです」(西郡さん)

■子どもが楽しく遊んで入ればOK

遊びが、感覚を磨く。こんなふうに書くと、「子どもを思いっきり遊ばせなきゃ!」と、何やら焦りにも似た気持ちになってしまうママもいるかもしれませんね(私も焦ります)。

「『遊ばせなきゃいけない』と考えすぎずに、『子どもが楽しく遊んでいるのであればそれでいい』という姿勢で良いと思います。ただ、その遊びが、ゲームなどに偏り過ぎないように注意してあげてください」(西郡さん)

■子育ては、「子どもを信じる」から始まる


© UTS- stock.adobe.com


本連載第1回目の冒頭にも書きましたが、西郡さんは「完璧に正しい子育てなどありません」と繰り返し言います。

「子どもに少しばかり間違ったことを教えてしまったとしても、それが子どもの未来を奪うことにはなりません。親が心配するまでもなく、子どもたちは自分で考え、人生を切り拓いていくことができます」(西郡さん)

「私が少しくらい間違えたって、大丈夫!」そんなふうにママがふっと肩の力を抜くことができたなら、「ちゃんと失敗する子」を育てるスタート地点に立てたのかもしれませんね。

「子どもはいずれしっかりと自立していく。そう信じることから子育ては始まります」(西郡さん)

<「失敗する子」の育て方>
1)「まぁ、なんとかなるんじゃない?」が、人の背中を押す
2)「つくる遊び」が「感覚」を磨く
3)子どもはいずれしっかりと自立していく。そう信じることから子育ては始まる


■花まる学習会/西郡学習道場代表 西郡文啓さんの新著
『ちゃんと失敗する子の育て方』



高濱 正伸、西郡 文啓 (著)/総合法令出版 1,300円(税抜き)
●高濱 正伸さん
花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1959年熊本県生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。
ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳パズルなぞぺー』など、著書多数。
花まる学習会公式サイト:http://www.hanamarugroup.jp/hanamaru/

●西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん
1958年生まれ。熊本大学教育学部卒業。花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として「西郡学習道場」を設立。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。
高濱さん曰く、「私が経営者という立場で運営部分に頭を働かせているときも、彼はただただ、子どものことだけを考えてきた人間です。頭のてっぺんから足のつま先まで、根っからの教育者で、どんな子でも一度も見放したことはありません」。

(楢戸ひかる)

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