【医師監修】子どもは熱中症にかかりやすい…マスク着用は大きな負担に【子どもの「病気・けが」教えて!ドクター 第3回】
Woman.excite / 2020年7月20日 14時0分
出典:『マンガでわかる!子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK』(KADOKAWA)
毎年、夏になると熱中症の危険が叫ばれます。とくに感染症の流行でマスクを外すことに躊躇されるなか、熱中症のリスクが高い夏になりそうです。
今回は、熱中症のリスクから子どもを守る方法について、書籍『マンガでわかる!子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK』からご紹介します。
■熱中症になったらどうする?
出典:『マンガでわかる!子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK』(KADOKAWA)
熱中症とは、おもに初夏から夏にかけて、環境に体が適応できないことで起こるさまざまな症状の総称です。暑い日だけではなく、湿度の高い時期にも起きやすいため、注意が必要です。
■子どもは熱中症にかかりやすい?
子どもは、熱中症のリスクが高いのが特徴です。
●体温が上がりやすく脱水になりやすい
●大人よりも背が低く地表の熱を受けやすい
また、年齢が低い子ほど自分の症状をうまく伝えることができないため、とくに注意深く様子を見る必要があります。
外出時は休憩や水分補給をこまめに取らせる、室内の温度調節をするなどして、子どもの様子をこまめに見てあげましょう。
■熱中症予防のポイント
それでは、熱中症にならないために、普段から心がけたい予防のポイントについて、見ていきましょう。
●体調のコントロール
・十分な睡眠(午後の昼寝が効果的)
・食事をしっかりとる
・胃腸炎や風邪などにかかっている時は熱中症にかかりやすいので注意する
●暑さに慣れさせる
・日頃から適度に外遊びをして、体を暑さに慣れさせておく
●十分な水分と電解質補給
・こまめな水分補給が大切
●日焼け対策
・適した服装をする
(薄い色、吸水性や通気性のいい素材)
・屋外では帽子を着用
・直射日光を避ける
・保冷剤の併用
・ベビーカーの日よけ
そして、とくに注意が必要なシーンは次の項目です。
●天候:梅雨の晴れ間、梅雨明け、30度以上
●地面:地面の熱に注意
●屋内:屋内でも油断しない
●車内:暑い環境に置き去りにしない
生活のふとした瞬間にも熱中症のリスクは潜んでいます。とくに注意したいタイミングを把握しておくことで、子どもたちを熱中症のリスクから守ってあげましょう。
■おうちでできる応急処置
子どもが軽い熱中症になった場合にできる、おうちでの応急処置についてご紹介します。
1、涼しい場所に移動し、仰向けに寝かせる
出典:『マンガでわかる!子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK』(KADOKAWA)
クーラーがきいた室内など、涼しい場所に移動させましょう。
2、身体冷却
出典:『マンガでわかる!子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK』(KADOKAWA)
服を緩め、保冷剤やタオルで首や脇の下、太ももなど太い血管の部分を冷やしましょう。肌に水をかけたり、ぬれタオルなどで拭き、厚紙などで仰ぎます。
3、水分摂取
脱水の治療のためには、経口補水液がおすすめです。ただ、意識レベルが悪い場合や、おう吐がある場合は、水分摂取は控えましょう。
おうちでの応急処置をしても症状が改善しない場合は、病院を受診しましょう。熱中症の症状は進行することがあるので、経過には十分注意してください。
また、そもそも頭痛や吐き気がある、体温が高い、呼びかけへの反応がおかしいなどの症状が出ている場合には、中等症や重症の熱中症になっている可能性があります。すぐに病院を受診するか、救急車を呼ぶ必要がある場合もあるので、子どもの様子をしっかりと見て、対応してあげましょう。
■【子どもの熱中症】教えてドクターQ&A
最後に、「教えて!ドクタープロジェクト」に熱中症にまつわる心配事について、教えていただきました!
――マスクをしながら、熱中症を予防するためにどのようなことができますか?
まず大前提として、マスク着用している場合はとくに子どもが熱中症を起こしやすくなります。このためマスクをしながら熱中症予防を考えるということは、「暑い日に長袖で外出しても暑く感じない方法を考える」と同じようなものです。
ですから、「子どもは必要なときにマスクをつける」という考え方をお勧めします。
――子どもの体にはどのような特徴があるのでしょうか?
まず、子どもは大人より呼吸回数が多いです。大人は1分間に12〜20回ですが、乳児は30〜50回/分、幼児は20〜30回/分です。呼吸回数が多いことは、マスクで口元が覆われていると十分な空気を吸えないことになり、大人より苦しくなりやすいことを意味します。
また、呼吸筋が発達していないため、息を深く吸い込む深呼吸が大人ほど上手にできません。そのため、呼吸が苦しくなると深呼吸ではなく、呼吸回数を増やして対応します。ただでさえ多い呼吸回数がさらに増えます。心臓や肺も未発達なため、十分な空気を取り込めないと、これらの臓器にも負担がかかります。
――子どもにとって、マスクの着用が大きな負担になることがわかりますね
日本小児科医会は、2歳未満のマスク装着はしないように注意勧告しています。3才以上でも注意が必要です。
そもそも、子どもは大人よりも熱中症にかかりやすいという特徴も知っておいてください。
汗腺が未発達で、体温調節が大人ほどうまくできない、体重あたりの体表面積が大きく、暑いところで体温が上がりやすい、などです。息を吐くことで、人は体の中の熱を外に逃がすことができるのですが、マスクをすることで熱がこもってしまいます。子どもの熱中症リスクはさらに高くなります。
――それでは、子どものマスク着用についてはどのように対応すればいいのでしょうか?
これまでの報告から、子どもの感染の多くは保護者から感染していること、学校や保育所などでのクラスター発生の可能性は高くはないことがわかっています。
子どもの行動範囲は学校・保育園と家が中心です。いろいろな所に出かける大人の行動範囲と比べるとはるかに狭いのです。
つまり、感染リスクは大人が圧倒的に大きいのです。子どもを守るためには、大人自身の感染症対策がもっとも大切だと言うことを知ってください。
したがって、熱中症対策としては、「必要なとき以外にはマスクをしない」ことをお勧めします。外で遊ぶとき、運動するときにマスクをしてはいけません。
また、「暑くて嫌だ」、「気分が悪い」という子どもの訴えを尊重し、3才以上であっても強要してはいけません。そして普段の熱中症対策と同じように、こまめな水分補給と、しっかり休養をとることです。病み上がりは体力が落ちていて熱中症のリスクが上がるため注意が必要です。
マスク以上に効果的な感染症対策が、手洗いです。みんなで遊ぶ前と後、食事の前後、トイレに行った後は必ず手洗いをしてください。
――熱中症による頭痛や発熱などの症状は、新型コロナウイルスをはじめとする他の病気との見分け方が難しく感じます。どうやって判断すればいいでしょうか?
もともと夏に増える熱中症は、胃腸炎や夏かぜとの見分けが難しいです。この見分けは医師でも難しい場合が少なくありません。
今年の夏も、頻度としては新型コロナウイルス感染症より圧倒的に夏かぜや胃腸炎の方が多いと思います。保育園や学校で胃腸炎や夏かぜが流行している、家族に似たような症状がある、などは参考になる情報です。また公園で遊んでいる途中にぐったりするようなら熱中症の可能性も考えなくてはいけません。
夏に流行る病気はいずれもウイルス感染症が多く、水分を摂って安静にすることでよくなります。熱中症の対策もこまめな水分補給と体の冷却です。
見分けは難しくても、最初の対策は大きく変わらないので、本人の様子をしっかり観察し、ぐったりする、水分摂取ができないなどの症状があれば早めに医療機関で相談してください。
※本連載で紹介する情報は、2020年6月30日時点のものです。
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●「教えて!ドクタープロジェクトチーム」とは?
長野県佐久医師会・佐久市による、子どもの病気、ホームケア、地域の子育て支援情報などを発信するプロジェクトチーム。地域の子育て力向上事業としてだけでなく、SNS発信により「医師による確実な情報」を、リアルタイムで全国に発信している。
公式HP:教えて!ドクタープロジェクトチーム
(高村由佳)
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