『成功者K』で自分の顔写真を使ったのはなぜ?【山崎ナオコーラ・羽田圭介】

ウートピ / 2019年7月17日 20時45分

山崎:でも顔を覚えてもらって本を売ろうとしているのでは?

羽田:小説の中ではそんなふうに書きました。でも、理想を言えばテレビ出演をするときだって何か被って出たいんですよ。紙袋でもいい。それくらい顔を覚えられたくない。でも、出版不況の今日、出版社の人たちもどうやれば本をより多く買ってもらえるかがわからない。だから販促のPOPや帯等に、とりあえず著者の顔写真を使いたくなってしまうみたいで……。『成功者K』のあとに新刊を出す際も、顔写真の使用を打診されましたね。

山崎:どうするんですか?

羽田:その時は「僕の顔は一切出さないです」と言いました。作者が小説の邪魔をしたくないから、そんな写真は使いたくないです、と。

山崎:でも『ポルシェ太郎』(河出書房新社)では本の帯に本人写真を使っていますよね。それはどうして?

羽田:出版社の戦略に任せてみました。出版社の人たちは会議で考えるわけです。その分析の結果と対策として、「帯に写真を使いましょう」と求められたら、仕方ないな、と。何が効果的かなんて誰にもわからないけど、数人以上で話しあってそう結論づけられたなら、従うしかないですよ。

稼ぎだけではない、本を売りたい理由

山崎:本を売りたいと思うのはなぜなのですか? 

羽田:えっ、売りたくないですか?

山崎:売りたいです。ただ、少部数の出版にも意義があるとは思っています。多様性を肯定するためには、売れる本だけでなく少部数の本も必要です。それに、出版社にとっても、すぐに利益に繋がらなくても企業イメージを上げる本にはなっているかもしれない。でも、まあ売れるにこしたことはないですよね。それにしても、羽田さんが売ることまで考えるのは、お金だけじゃない、何かを求めて、どこかに向かっているのかな、って。

羽田:ああ、なるほど。本を読んでもらいたいからですね。もはや自分の稼ぎのためではないです。

山崎:何万部売れると読まれたと思いますか?

羽田:5万部以上ですね。出版までにかかる、原稿料や出版社の皆さんの人件費や経費、印刷代なんかを考えると、実売で3、4万部売れないとペイできないんじゃないかなと思っていて。だから、確実にみんなに利益を出すには5万部くらい売る必要があると考えているんです。

山崎:みんなというのは?

羽田:出版社も込みで。自分の食い扶持のためだけなら、別に出版社に赤字を出してもらってもいいのかもしれないけれど……。ただそれだと、作家が慈善事業で食わせてもらっている感じがするというか。本を出してもらってすみません、みたいな。そう思わなくてすむひとつの指標が5万部。そのラインに到達するのも簡単ではないのですが。

山崎:羽田さんはそういうところまですごく考えている、ということですね。

最終回は7月18日(木)公開予定です。
(構成:安次富陽子)

『ブスの自信の持ち方』は7月10日発売。ウートピでは山崎ナオコーラさんのインタビュー記事も近日公開予定です。お楽しみに!

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