パースと東京、二拠点生活を5年続ける私が発見したこと【小島慶子】

ウートピ / 2019年9月26日 20時45分

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恋のこと、仕事のこと、家族のこと、友達のこと……オンナの人生って結局、 割り切れないことばかり。3.14159265……と永遠に割り切れない円周率(π)みたいな人生を生き抜く術を、エッセイストの小島慶子さんに教えていただきます。

第22回のテーマは「二拠点生活」です。複数の拠点を持つ生活に憧れつつも、実際のところはどうなのでしょう? オーストラリアのパースと東京で暮らす小島さんに聞きました。

孤独はあまり感じないけれど…

「居場所がない」ってよく聞きますね。安心して過ごせる場所がない、っていう意味です。私も20代まではまさに居場所がない寂しさに苛まれていました。30代で出産し、二人の息子たちの存在が世界を劇的に素晴らしい場所に変えてくれたおかげで、今はかつてのような底抜けの孤独はあまり感じません。

ただ、いわゆる二拠点生活をもう5年半以上も続けていると、それこそ居場所が定まらない、なんだか宙に浮いたような気分になることがあります。

夫と息子たちは一年中オーストラリアのパースに住んでいますから、文字通り地に足がついた生活です。彼らにとってのホームはパース。でも、私は東京と行ったり来たりの生活で、持ち物のほとんどは東京で借りている部屋に置いてあるし、仕事のベースも、友達がいるのも東京です。

パースには大好きな家族がいて、家も借りているけれど、置いてあるのは必要最低限の服と、IKEAのキッチンワゴン二つ分だけ。あとは本ぐらい。もちろん、家に着けば「ああ帰ってきたな」とホッとするんですよ。でも、自宅のほかに、パースの社会のどこにも私の居場所はないのです。

パースでは朝から晩までひたすら家にこもって原稿を書き、資料を読み、日本とテレビ会議をしたり取材を受けたりしてばかりいるので、2週間の滞在中に外に出るのは数度、しかも近所だけということもしょっちゅうです。そうなると、5年以上いても当然人脈も広がりません。日本にいた時からママ友付き合いはしていないし、別に友達がいないならいないで生きていける……となると、家から出る理由もないのです。

どちらも本当の自分

それでもなお、オーストラリアは私にとって大事な場所です。生まれてから3歳まで過ごしたので、記憶はわずかながらも、パースには「ここは自分が初めて見た世界なのだ」という特別な思いがあります。夫や息子たちと一緒に出かけたあちこちの国立公園の素晴らしい自然の風景や、何度見ても飽きることのない近所の海の色も、私の心の深い深いところにまで鮮やかに染み透って、もはや魂と切り離すことはできません。

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