<Wコラム>康熙奉(カン・ヒボン)の「日韓近世史は面白い! 」朝鮮出兵後の国交回復(後編)
Wow!Korea / 2016年7月28日 19時30分
朝鮮出兵の際に、豊臣軍の大名たちは大勢の人を日本に連れ去った。主に農民だったが、陶工や学者も多かった。さらに、利発な少年を連れ去る大名も少なくなかった。その少年の1人が洪浩然(ホン・ホヨン)だった。彼は、朝鮮半島南部の晋州(チンジュ)で佐賀藩主の鍋島直茂にとらわれた。1593年6月のことだった。
■日本で学問を積んだ洪浩然
鍋島直茂は利発な少年が後々に役に立つ存在になると思い、佐賀に送った。
洪浩然の家族は豊臣軍に殺されていた。孤独になった少年にとって、日本に対する憎しみがどれだけ強かったことか。
そんな洪浩然を興味深く見つめたのが、鍋島直茂の息子の勝茂であった。勝茂はそのとき13歳で、洪浩然より1歳年上であった。
しかしながら、自分より年下の少年が達筆で文章を書くのを見て驚いた。
……なぜ朝鮮半島の子供は、学問に優れているのか。
洪浩然としても、勝茂が領主の息子であることを理解しなければならなかった。何かと興味を向けてくる勝茂に対して洪浩然も少しずつ心を開いていった。
1598年に戦乱が終わり、本来なら捕虜として日本に連れてきた者たちを朝鮮半島に返すべきなのだが、鍋島直茂はそうせずに、洪浩然を京都に留学させた。
鍋島直茂は、洪浩然を学者にする腹積もりだった。
洪浩然は京都で儒教や仏教を学んで佐賀藩に帰ってきた。
やがて鍋島直茂が世を去り、勝茂が継いだ。
藩主となった勝茂は、信頼する洪浩然を大いに取り立てた。その頃には、洪浩然の名声も高まり、彼に教えを乞う人たちが絶えなかった。
■悩んだ末に帰国を決意
大いに出世しても、洪浩然は故郷に帰りたかった。望郷の念は歳と共に増すものである。しかし、ジレンマがあった。彼は日本で結婚をしており、最初の妻は先に亡くなったが、再婚もして子供が何人もいた。日本に基盤ができてしまっており、帰ろうにも帰れない状況であったのは確かだ。
しかし、白髪の老人になってから、やはり最後は故郷に戻りたかった。その思いが断ちきれなくなり、ついに勝茂に願いでた。
「年齢を重ねて、さしたる用もなくなったようです。かくなるうえは、ぜひとも故郷で一生を終えたいと存じます」
「それは困る。そなたがぜひとも必要なのだ。考え直してはくれぬか」
「よくよく考えた末なのでございます。なにとぞ願いを叶えさせてくださいませ」
勝茂は洪浩然の目を見た。
異国に連れてこられてから数十年、その悲しみをようやく理解したような気がした。勝茂はそれ以上は言えず、ただうなずくしかなかった。
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