米中の覇権争いが続く中、「IPEF」が13カ国で発足
財界オンライン / 2022年6月10日 11時30分
日本はIPEFをてこに米国のTPP復帰を切望
米バイデン大統領は、新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の発足を宣言した。東南アジアへの影響力を強める中国を念頭に、自由で公正な経済秩序をインド太平洋地域に広げることが狙い。ただ、自由貿易協定(FTA)のような関税撤廃に踏み込まないため、対米貿易を拡大したい東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国などにはメリットが少ないだけに、IPEF参加国が一致結束できるかどうか不透明だ。
自国優先主義を掲げていた米トランプ政権(当時)は2017年、環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱。米国がTPPから抜けてインド太平洋地域への関与が弱まった間隙を突くかのように、貿易やインフラ投資などで中国が頭角を現した。
日中豪やASEAN加盟10カ国など計15カ国が参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)の発効をめぐっては、中国が主導する形で1月に実現。新型コロナ感染源の調査を求めた豪州に対し、豪産ワインに制裁関税を課す「経済的威圧」で脅すなど、中国は身勝手な振る舞いを続けている。
こうした状況に危機感を覚えた米バイデン政権が、インド太平洋地域への回帰に舵を切るためひねり出したのがIPEF。日本はIPEFについて「歓迎する」(岸田文雄首相)立場。日本はIPEFをてこに米国のTPP復帰を実現させたい考えで、経団連会長の十倉雅和氏も「米国にはTPPに戻ってきてほしい。まずIPEFを進めることが現実的」と話す。
ただ、米国は国内で反対論が強いTPPに代わる新たな通商ルールづくりを目指しているため、TPPに戻る可能性は低い。
IPEFは貿易、サプライチェーン(供給網)、インフラ・脱炭素、税と反汚職の4本柱で構成されているが、具体的なルール形成はこれから。現在、参加するのは日米豪印やタイ、ベトナムなど13カ国。参加国は環境などでの規制を受け入れなくてはならないため「ルール交渉になるともめる」(外務省幹部)との見方もあり、実効性ある枠組みに仕上げられるか、米国の指導力が問われる。
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