【主張】日本再生をどう図るか 安倍晋三元首相・銃撃事件、参院選の結果を受けて
財界オンライン / 2022年7月20日 7時0分
「民主主義を守る!」
「もともと日本は人を信用する国と言われてきた。世界の中で治安のいい国と思われてきたのに、こんな惨事が起きてしまうとは……」と述べるのは、茂木友三郎氏(キッコーマン取締役名誉会長)。
茂木氏は、国のあり方を探る『令和臨調』の共同代表。民間人の立場から産・官・学連携で政治改革、財政改革などを模索・提言してきた。
惨劇が伝われた7月8日(金)の正午前、日本全国が何とも言いようのない陰うつな雰囲気に包まれた。
「信じられない」、「悲しい、なんとも痛ましい」、そして、腹の底から湧いてくる怒りといった感情がないまぜになったまま、どうしていいか分からない虚無感が漂った。
しかし、岸田文雄首相(自民党総裁)をはじめ、各野党のリーダーも「暴力には絶対に屈しない。民主主義を守る」という決意のもと、選挙戦に臨んだ。
そして、7月10日(日)の参院選である。結果は自民党・公明党の与党が大勝し、安定政権の出発となった。
第一次政権に続いて、第二次安倍政権(2012年末から20年夏)で、経済政策『アベノミクス』を打ち出し、デフレ脱却を果たし、日本を再び成長路線に持っていこうとした安倍晋三元首相。今回の参議院選挙の最終盤で、精力的に全国各地を回り、国民の前での演説を行っている時でのテロ行為である。
しかし、課題は山積している。
”失われた30年”と言われる日本に活力をどう吹き込んでいくか。また、コロナ禍、ウクライナ危機の中で、国の安全・安心、そして、国民の命と健康をどう守っていくのか。さらにはデジタル化の遅れをどう取り戻し、IT・デジタル関連の産業をどう育成していくか。はたまた、人口減・少子高齢化の中で、都市と地方の格差をどう是正していくかなどなど……。
そして、今回の安倍元首相銃撃事件に見られるように、人と人とのつながりがややもすると失われ、孤立化・孤独化している若者、高齢世代をどう立ち直らせていくかという課題もある。
こうした社会全体の立て直しは政治家だけでは解決できない。課題解決へ向けて、政治家が率先垂範していくのは当然だが、経済人もまた、政策を担う官僚、そして、教育や研究に携わる大学、さらには労働組合まで含めての連携作業になる。
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人と人とのつながりを
令和の世の中になって4年目の惨事である。
『令和』の元号は2019年に安倍氏が首相の時に制定。万葉集の大伴旅人の歌。『初春の令月にして 気淑(よ)く風和(やわら)ぎ……』という序文から引用。この元号制定の時、安倍氏は「人々が美しく、心を寄せ合う中で文化が生まれるという意味が込められています」と説明していた。
こうした古来日本に伝わる心情を、ほとんどの日本人が大事にしてきたのではないか。その心情に打撃を与える今回の蛮行だが、わたしたちはこれに怯んでいるわけにはいかない。
夏の暑い盛りに行われた今回の参議院選挙。投票率は前回より伸びたとはいえ約52%。半数の有権者は投票しなかったことになる。
18歳まで選挙権が引き下げられた中で、今後、若い世代はもとより、現役世代、高齢者を含めて、どんな社会を目指していくのか。
社会を担うのは「人」である。
ある識者が最近の若者かたぎについて語った言葉が気になる。
「最近の若者は『かな』と逃げを打つ表現が多い。素直に『嬉しい』と言えばいいところを『嬉しいかな』という言い方。物事をはっきりと断言せず、逃げを打つ姿勢が見える」
物事の責任をとらず、他人事のように扱う風潮、人と人とのつながりが薄くなっていることの証左ではないのか。そうした社会にしてきたことへの反省。今一度、一人ひとりが思いを致すことが『令和』に込められた社会を実現することにつながる。
日本の良さは守りつつ、課題を解決していく。何より、リーダーの責任は重い。
拓殖大学国際学部教授・佐藤丙午「専守防衛はいかに残酷な政策であるかが分かった」
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