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日本アクセスの〝情報卸〟構想 「食品だけでなく情報も卸す!」

財界オンライン / 2021年7月18日 18時0分

2021年度では合計で10社の導入を目指すD&Sソリューションズの“情報卸”

食品だけでなく情報も卸す──。食品卸大手の日本アクセスが情報に重きを置いたビジネスを展開している。従来までは小売りへの販売価格や取引条件が競争の主軸だったが、スーパーやメーカーにシステムや販促機能情報を提供するという付加価値のある情報を卸すビジネスの育成に乗り出す。食品卸が情報の世界に乗り出す意義とは?

小売店舗のデジタル化を実現

 東京・多摩地盤の食品スーパー。そのスーパーでは対話アプリ「LINE」上で自社のサービスを展開できるミニアプリを導入した。特売チラシやポイントがもらえる電子クーポンの配信、自社のプライベートブランド商品の情報やおすすめレシピを紹介した動画なども提供する。

 いわば小売店舗のデジタル化だ。例えば、過去の購買履歴から血圧を気にする消費者に血圧を抑える機能を持った商材を推奨することも可能だという。

 実はこのサービスの構築を支えたのが日本アクセス。2002年にシステム開発子会社「D&Sソリューションズ」を設立し、当初は自動発注システムの提供を手掛けていたが、今は取引先のアプリ開発などのプラットフォーム提供をしている。

 なぜ食品卸がシステム構築に携わるのか。背景には小売業界が抱える構造的な問題がある。例えば、少子高齢化。特に人口減で働き手を確保できないために人件費の上昇を招き、利益が減ってしまえば店舗への投資が難しくなるという悪循環だ。

 一方で、食品スーパーでは店舗のデジタル化が避けて通れない課題となっていたが、そこにコロナ禍が襲来。各スーパーは費用のかかる基幹システムを変更することなくデジタル化に対応できるツールを探していた。

 大手スーパーはデジタル専門の人材を登用し、多額のデジタル投資で先行するが、中堅・中小、あるいは地方のスーパーではなかなか難しい。それでも顧客との接点をどう持つかが悩みの種だった。この課題に着目したのが日本アクセス。同社は食品卸として小売り約2000社、メーカー約1万社と接点を持つ。

 この接点を活用し、冒頭に挙げたようなデジタル化における共通ニーズを汲み取り、ニーズに対応したシステムやアプリを構築したのだ。「エンジニアがいなくても様々なITサービスが一瞬で使えるようになる」とD&Sソリューションズ取締役共同CEOの望月洋志氏は語る。

 通常、食品スーパーは自社のシステムを構築する際、個別にシステム会社と契約し、多額の費用を投じる必要があった。しかし、D&Sソリューションズの場合、初期投資額はゼロ。基本料金が月額定額の継続課金モデルだ。「大手システム会社に依頼すれば桁が変わる」と望月氏。

 同社は小売企業から購買データを預かる「データの倉庫・情報流」(同)という役割を担う。預かったデータを同社が自社開発したシステムやアプリに連携することで、小売企業は様々なデジタルの仕組みを一瞬で使えるようになる。過去の導入事例でも企画から導入まで僅か2カ月というケースもあったほどだ。

 しかも、スーパーでは当たり前の「店頭価格の値下げ」から脱却し、ダイナミックプライシングも展開できるようになる。例えば、ワインのヘビーユーザーだけに特化したポイント還元による実質的な割引などができるわけだ。「個人別に・自動的な・実質売価」で商品を売ることができるだけに過度な安売りとは一線を画すことができる。

 望月氏は「小売企業のPOS(販売時点情報管理)やメーカーの商品情報などのデータを活用すれば、できることはたくさんある」と語る。小売企業のPOSはメーカーにとっても貴重だ。そこで同社がメーカーに商品の開発ストーリなどを取材し、それを食品スーパーに配信することで顧客に直接、商品の良さが伝わる。

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食品流通の中間に立つ卸であるからこそできる!

 食品流通の中間に立つ卸であるからこそ、スーパーのPOSや在庫情報をメーカーに仲介したり、メーカーの商品情報をスーパーに橋渡しするといった、きめ細かな対応ができる。ネット時代に入り、卸は省かれる傾向にあるが、日本アクセスは子会社のD&Sソリューションズを通じて、情報を小売企業に提供する卸の側面をさらに強くする考えだ。

 望月氏は「小売り・メーカーの両方の役に立てなければ卸の存在価値はない」と役割を語る。導入事例は現在4社だが、導入企業では月間売り上げを1億円以上向上させた事例も出ている。

 同社は2020年11月にスーパーなど約5千店に需要予測や自動発注のシステムを提供するシノプスと提携。今後はスーパー各社の了承を得た上で、「どの商品がどれだけ売れているか」「在庫がどれくらいあるか」をリアルタイムで把握し、その状況が一目でわかる店舗をデジタル上で再現する構想も描く。情報を小売企業・メーカーと共有することによって需要に見合った生産計画を立て、「将来的
には物流の最適化にも貢献できる」とも望月氏は期待する。

 日本独自の存在である「食品卸」。数ある中小・中堅スーパーや食品メーカーが個別に商談や物流を担うのは困難であるからこそ、卸が発展した。だが今では大手の食品卸でも売上高営業利益率は1%を切るなど、付加価値をいかに高めるかが共通課題となっている。その中で日本アクセスは卸業界でも唯一、「情報卸」という新たな柱を育て始めており、価格だけではない対応を目指している。

 望月氏は「売上高2兆円を見込む卸業界のリーダーとして業界を変えなければならない」と話す。デフレの際たる業界である食品流通の世界で、情報に付加価値を置いた日本アクセスの〝情報卸〟構想と言える。

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