満員電車の経済損失「年6兆7000億円」解消なるか? 『通勤電車のはなし』【書評】

ZUU online / 2017年9月14日 17時10分

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満員電車の経済損失「年6兆7000億円」解消なるか? 『通勤電車のはなし』【書評】(画像=Webサイトより) (ZUU online)

サラリーマンだったら誰もが経験する満員電車。東京圏における通勤時間は、ドア toドアで1時間とされている。東京圏では、自宅から駅までと駅から会社までの所要時間は合計で各15分ほどなので、電車に揺られているのは約45分。ホームでの電車待ち時間を5分、通勤・退勤の往復だから×2とすれば、東京圏のサラリーマンが通勤電車に費やしている時間は、一日2時間にも達する。

通勤電車のはなし-東京・大阪、快適通勤のために
著者:佐藤信之
出版社:中央公論新社
発売日:2017年5月18日

満員電車が社会的問題として浮上するのは、まだ世間にサラリーマンという企業勤め人が浸透する以前からだ。物理学者の寺田寅彦は1922(大正11)年に東京市内の朝・夕のラッシュアワーを考察する『電車の混雑について』という論文を発表。その論文からも、大正時代から通勤電車が混雑を極めていたことがわかる。

そして、戦後にサラリーマンが増加すると都市圏、特に東京圏の混雑は拍車がかかる。東京圏の混雑率は上昇の一途をたどり、高度経済成長には限界に達した。定員の3倍以上を超す乗客が押し寄せる“殺人的ラッシュ”では、押し込まれる乗客の圧力で窓ガラスが割れてしまう事態も発生した。“通勤”は“痛勤”などとも揶揄されるようになり、職場にたどり着くのも一苦労。始業前に体力・精神力が披露してしまうという、本末転倒も珍しくなかった。

■満員電車の経済的損失は「年間6兆7000億円」

こうした事態から、満員電車対策に政府や国鉄も乗り出すことになる。国鉄は1965(昭和40)年から「五方面作戦」と通称される輸送力増強に傾注するようになる。同プロジェクトの具体的な内容は、東海道本線・中央線・東北本線・常磐線・総武線の5路線で線路増設、電化に取り組むというものだった。複線を複々線化することで列車の運転本数を増やすとともに電化で汽車から電車へと転換し、運行のスピードアップと定時運行を目指した。

五方面作戦が奏功し、混雑率はいったん落ち着きを見せた。しかし、相変わらず東京圏の人口は伸び続け、その間も高い混雑率は社会問題として残った。

当時、満員電車の経済的損失という概念はなかったが、時代が下るにつれて満員電車の経済的損失が指摘されるようになった。国土交通省は2005(平成17)年に通勤定期旅客の経済的損失を年間6兆7000億円と試算している。

通勤・退勤時間も仕事のうちと考えれば、身動きの取れない列車内で過ごす2時間は、時間的な損失でもある。例えば、電車内でゆったりと座って通勤するだけで、始業時のパフォーマンスはまったく異なる。また、出社したらまずメールチェックをするというサラリーマンも少なくないが、それだって座って通勤できるようになれば、会社に向かう電車内で済ますことができる。通勤スタイルの変化などもあり、満員電車の経済的損失という概念はここ10年ほどで着実に広まった。

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