再延期後の英国のEU離脱の行方~削がれた離脱への勢い

ZUU online / 2019年4月23日 20時30分

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再延期後の英国のEU離脱の行方~削がれた離脱への勢い(画像=PIXTA)

■要旨

  1. 4月10日のEU首脳会議で英国のEU離脱の期限の再延期を決めた。5月の欧州議会選挙への参加を唯一の条件に長期の延長を認めた点で、EU首脳会議は寛容だった。
  2. メイ首相は、与野党協議を通じて妥協点を探り、早期の協定承認を目指す方針だ。2回の「示唆的投票」結果からは、メイ首相の協定案、あるいは、関税同盟などソフトな将来関係のソフト化案と、協定の信認を問う国民投票を組み合わせるという党派の妥協の余地はありそうだが、切り捨てられる強硬離脱派には容認し辛い方向転換だ。
  3. そもそも、2度にわたる期限延期の結果、妥協を通じて離脱を推進しようという機運は低下している。世論調査では、離脱プロセスを舵取りしながら、期限内の離脱に失敗した与党・保守党への風当たりは強く、ナイジェル・ファラージ氏率いる「Brexit党」という受け皿の出現が、支持率低下に拍車を掛けている。労働党のコービン党首にとっては、政権交代への好機と言え、敢えて与野党合意を急ごうとはしないだろう。
  4. 英国のEU離脱プロセスは、離脱日に終るわけではない。離脱後に予定される移行期間中の将来関係協定のための協議の対象は、離脱協定よりもはるかに広範だ。
  5. 世論の分断を抱え、政治の混乱が深まるばかりの英国が、果たしてEU離脱のプロセスを遂行しきれるのか、疑念を抱き始めている。

■英国の離脱期限は再延期

4月10日のEU首脳会議で2日後に迫っていた英国のEU離脱の期限の再延期を決めた。当初の期限である3月29日からの延期は、メイ首相の要請よりも短期間だったが、2度目の延期は10月31日までと要請よりも長期の延長を認めた。10月31日以前でも、離脱協定を承認し、法律上の手続きが終れば、翌1日には離脱が可能だ。

長期延長には、フランスのマクロン大統領が強く反対したとされるが、結果として、5月の欧州議会選挙への参加を唯一の条件に長期の延長を認めた点で、EU首脳会議は寛容だった。

■メイ首相は超党派の合意を通じた「合意あり離脱」の道を探る

英下院が12日からイースター休暇に入ったことで一時休止となった離脱手続きは、23日の下院審議の再開で本格的に動きだす。メイ首相は、EU首脳会議の再延期の決定後の11日、下院で与野党協議を通じて妥協点を探り、早期の協定承認を目指す方針だ。

メイ首相の協定案は、過去3回の採決で、徐々に賛成票を増やした。1月15日の第1回の採決での大差の否決の後、メイ首相は、EUと再交渉し、離脱派が強く懸念した「アイルランド国境の厳格な管理を回避するための安全策」の発動回避を目指す方針などを確認した「付属文書」を引き出し、3月12日の2回目の採決では賛成票が40票増えた。さらに、1回目の離脱期限延長後の3月29日に実施した3回目の採決では、メイ首相がEU離脱後の辞任の方針を表明したことで、賛成票が44票増えた。しかし、強行離脱派と政権協力するDUPが「アイルランド国境の安全策」が残る協定に反対を続ける一方、よりソフトな離脱や離脱撤回への布石となる再国民投票を望む野党が反対を続けたことで可決には至らなかった。

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