年金を通して夫婦を考える(1)-パートナーってありがたい

ZUU online / 2019年7月17日 19時20分

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年金を通して夫婦を考える(1)-パートナーってありがたい(画像=PIXTA)

■公的年金だけで期待できる生活水準を客観的に俯瞰する

「公的年金だけでは生活できないってことですか?」これは、2か月前に公表した退職前の生活水準を維持するための必要資産額を年収別に試算した筆者のレポート(1)に対し、数多く寄せられた質問である。筆者が推計した必要資産額は、退職前の生活水準を維持することを前提としているので、生活水準を下げれば年金だけでも生活できるのではないかと思う。極論を言えば、日本国憲法によりすべての国民は健康的で文化的な最低限度の生活を営む権利が保障されているのだから、年金を受給できなくても生活保護制度などもあるため、生活できないことはない。重要なのは、老後にどの程度の生活水準を求めるかだと考える。筆者の根底には、このような考えがあるので、「年金だけで生活できるかどうかや、必要資産額も、世帯の置かれている状況や考え方によって異なりますよ」と答えると、たいがい白黒はっきりして欲しいという反応が返ってくる。

そのような反応が返ってくるのは、私が明確に説明しきれていないからだろうと少し反省している。筆者は老後にどの程度の生活水準を望むのかが重要なポイントだと考えているため、冒頭の質問に対しはっきり肯定も否定もできないのだが、公的年金だけで期待できる生活水準をもう少し客観的に説明できれば、少しは満足して頂けたのではないかと思う。そこで、平成28年国民生活基礎調査の概要と、平成26年財政検証を基に、公的年金だけで期待できる生活水準を客観的に俯瞰したい。

貧困には、必要最低限の生活水準が満たされていない状態の「絶対的貧困」、これに対して、ある地域社会の大多数よりも貧しい状態の「相対的貧困」という見方がある(2)。平成28年国民生活基礎調査の概要によると、相対的貧困状態にある人の割合(以下、相対的貧困率)は15.7%に及ぶ。相対的貧困状態にあるか否かは世帯の等価可処分所得によって判断する。等価可処分所得とは、可処分所得をベースに、世帯人員数を考慮し世帯の生活水準を表すよう調整したものである。具体的には、世帯人員数による生活コストの違いを考慮し、可処分所得を世帯人員数の平方根で割ることで得られる。なお、相対的貧困状態にあると判断されるか否かの分岐点である貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は、年額122万円である。

これに対し、平成26年財政検証によると、モデル世帯(3)が受け取る年金は月額21.8万円(年額261.6万円、2014年時点)だから、等価可処分所得は年額185.0万円(261.6万円÷√2)で、貧困線を大きく上回るが、年額185.0万円だと等価可処分所得の中央値(年額244万円)つまり、日本の中間層の等価可処分所得をはるかに下回る。現役世代とは異なり貯蓄に回す必要性が低下するとはいえ、年金だけで日本の中間層と同程度の生活水準を維持することは難しい。退職後も日本の中間層と同程度の生活水準を維持したければ、やはり老後に2~3千万円の資産を各世帯で用意する必要がある。しかしながら、これを理由に、貧困線を大きく上回る生活水準を維持できるモデル世帯が「公的年金だけでは生活できない」と公的年金制度に不平を言ったら、相対的貧困状態にある15.7%の人たちはどう思うだろう。

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