特集2017年4月7日更新

「副業・兼業容認」に転換で働き方が変わる?

これまで企業によっては“タブー”なこともあった副業・兼業ですが、昨年末の政府の宣言により、自由に副業できるようになりました。とは言え、副業のメリット・デメリットは働く側・雇う側双方にあるはず。将来のためにも?副業に関するあれこれをしっかり学んでおきましょう。

2017年は“副業解禁元年”!?

厚生労働省が掲げている「モデル就業規則」の最新バージョン(平成28年3月30日)では、「第3章 服務規律」の「(遵守事項)第11条 労働者は、以下の事項を守らなければならない」に、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」と記載されています。

しかし2016年12月26日に、政府によってこの副業規定を廃止し、副業を「原則容認」すると発表されました。これは大きな転換です。

政府は「働き方改革」として正社員の副業や兼業を後押しする方針を打ち出し、企業が就業規則を定める際の参考に使用できる厚生労働省「モデル就業規則」の副業・兼業禁止規定を年度内にもなくし「原則禁止」から「原則容認」に転換する指針を発表しました。

なぜ解禁になったの?

要するに、副業による経済活性化への期待が大きいようです。

副業や兼業をすることによって、自分が所属している1つの会社に留まることなく新たな発想で事業を起こし、日本の経済全体がより活性化することが目的としてあるようです。

世耕経済産業大臣の講演での発言

企業は、話題の副業解禁を増やしていくべきでしょう。もちろん、健康管理は前提条件です。しかし副業は、視野の拡大や、新しい価値観の入手、新たなビジネスへの可能性にもつながります。その結果、これまで日本企業全体の課題でもあった「人材の低流動性」を解決する手立てにもなりえるのです。

世耕大臣の「副業解禁」への狙いは…

世耕経産大臣は、フリーランスという働き方について、「安倍内閣にとって「働き方改革」は最大のチャレンジであり、「兼業・副業」や 「フリーランサー」のような、「時間・場所・契約にとらわれない、柔軟な働き方」は、働き方改革の「鍵」となると思っています。」と発言をしており、日本のフリーランスの拡大はこれからが本番だろう。

サラリーマンの働き方が変わる?

結局政府がそういうのを言い始めたのって、いま日本の人口が徐々に減ってて経済力がどんどん下がってるという状況があって、そうなると一人一人の生産性を上げていく必要があるんだけど、じゃあ生産性を上げるにはどうすればいいのって考えたときに、みんなに副業をさせて一人頭の売上を高く作るのが早いっていうのがあると思うんです。

現状、日本企業の多くが副業を認めない理由は…

冒頭で紹介した「モデル就業規則」の存在により、日本の企業の多くが副業を認めない社内規定や就業規則を掲げています。
ただしこれらは、法的には意味がないため副業してもOK…なはずですが、なかなか足を踏み出せない人も多いと思われます。

Q.「副業全面禁止」という会社のルールは違法じゃないの?

A.違法です。会社は従業員の終業後のプライベートな時間にまで干渉する権限を持ちません。
実は就業規則による副業禁止は法的にはあまり意味がありません。なぜなら、従業員が終業後何をするかはその人の自由なので、プライベートな時間にまで会社が口出しをして副業を禁止するという権利は会社にはないのです。

よって、副業が禁止されている会社であっても副業することは全く問題ありません。

副業容認を発表した企業とその思惑

ロート製薬

ロート製薬は2016年2月、兼業制度である「社外チャレンジワーク制度」を制定しました。

「副業はメリットの方が大きい」

「個人が持つあらゆる可能性を活かしてほしい」という想いで副業解禁に踏み切ったという山田氏。「本業がおろそかになるのでは、という懸念もわかるものの、それは従来の考え方。新しい可能性に目を向ければ、副業はメリットの方が大きいのでは」との考えを語ります。

そのメリットについても、吉野社長が具体的に語っています。

吉野:本業に近いところでいえば、薬剤師の資格を持つ人が、土日に調剤薬局で勉強をしながら直接生活者の方と接したいという提案。他には、NPO法人での活動や、故郷を活性化するために企画を考案したいという話などもありました。本業とは一見関係ないようですが、地方創成や地元の産業との取組みは、これから企業が存続していく上での課題でもあります。今後取り組む上でゼロからスタートするよりも、副業先から成果やアイデアを持って帰ってもらうことで、より発展的な内容にできるメリットがあります。
副業は、自分の勤めている会社や業界外でどのようなことが起こっているか、環境の変化を実際に体感することにつながります。自分なりに得た知識を企業に還元できるということは、新しいビジネスや制度改革の可能性につながります。

副業解禁後の現状は

吉野:副業への希望者は63名ほどで、実際には20名強の人数が他社と兼業をしています。社内のダブル業務は100名ほど応募があり、30名ほどがスタートしています。 (中略) 予想外のことをひとつ挙げると、応募者が、20代から50代まで均等に分かれたことです。キャリアを築いた人ほど挙手しないのではないかと思っていましたが、そうでもありません。皆が熱意をもって応募してきている様子でした。
人材の流出についてですが、今の時代は人材が流動的であることは当たり前です。これまでも制度の有無に関係なく、中途採用、退職者の例はありました。兼業した先で、個々の才能を伸ばすことができたのならば、弊社を卒業してもいいと考えています。
「系統は大きく4つに分けられます。1つ目はボランティア。2つ目は起業。3つ目は資格を生かした労働です。例えば薬剤師として調剤薬局に立ったり、キャリアコンサルタントのスキルを生かして大学で講義したり。4つ目は社内の業務と関係のない職種での労働です。『毎週水曜』などレギュラーで働くより、単発で働いている人の方がうまく活動できている印象です」(山本さん)
ロート製薬では、2016年2月に「社外チャレンジワーク制度・社内ダブルジョブ制度」を導入しました。この制度を利用し、薬剤師の資格を持っている人がドラッグストアで働きたいと希望を出しているようです。また、生産管理を担当していた人が地ビールの製造・販売会社を立ち上げたケースもあります。

サイボウズ

サイボウズは、今年1月から複(副)業前提での中途採用、つまり「サイボウズでの仕事を副業にしたい人」向けの求人を開始しています。

「2012年から弊社でも複業を認め、実践する社員も増えました。しかし、複業先としてサイボウズへの入社を考える人は多くありません。フルコミットでなくとも貢献してくれる人材が増えれば、私たちの掲げる“世界で一番使われるグループウェアメーカーになる”というビジョンの実現に近づくと考え、複業採用を打ち出しました」(サイボウズ人事部・武部美紀さん)
複業前提の人材を採用するメリットを武部さんに聞くと、「そもそも“複業”したいと考える方は自立していて、エネルギーも大きい。多様な働き方を目指す弊社の考え方への共感度も高い方と出会えると思うからです」とのこと。
2017年1月17日に公開された募集内容によると、職種はエンジニア職とビジネス職の2種類。それぞれ開発、運用、品質保証、プロモーションなどに振り分けられ、契約形態は個別に決定するそう。複(副)業の人材は専門が多彩になるため、登用によってチームワークの活性化を図る狙いなのだとか。

副業経験者の割合は?

副業経験者はすでに半数以上

転職支援サービスサイトを運営するエン・ジャパンが2月に発表した「ダブルワーク(副業)」についてのアンケート結果によると、59%がダブルワークの経験を持っていて、2008年の調査開始以来で過去最高の水準になったそうです。

経験者にダブルワークをした理由を複数回答で聞くと、「副収入が必要」(68%)、「空いた時間の活用」(45%)、「貯金をしたい」(28%)が多かった。また、ダブルワークを成功させるポイントを同様に聞くと、「メインの仕事に支障がない条件を選ぶ」(39%)、「体力的に無理をしない」(37%)、「勤務日や時間の調整がしやすい仕事を選ぶ」(35%)などの回答が多かった。

副業をする理由はやはり「収入」

同じアンケートより、副業経験者の、副業をした理由は「副収入が必要」が第1位となっています。

「現在ダブルワーク中」「過去にある」と回答した方に、ダブルワークをした理由を伺いました。もっとも多かったのは「副収入が必要」(68%)。経験した感想でも「副収入が得られてよかった」が最多となっており、当初の目的を達成できた方が多いようです。このほかの感想としては「良い経験になった」(36%)、「体力的に大変だった」(32%)が並びました。

副業解禁の方針は9割が「賛成」

人材紹介事業を運営するUZUZ(ウズウズ)が第二新卒・既卒として就職活動経験のある20代男女を対象に行った「副業・兼業に関する意識調査」によると、兼業・副業を後押しする政府の方針に対して、賛成派が92.1%、反対派7.9%という結果だったとのこと。

賛成派の意見としては、
・「やりたい事を一つに絞る事は難しいのと、現在一つの職業だけでは収入に不安があるから」(女性)
・「所得が増えることによって世の中にお金が出回りやすくなり経済成長が見込まれるから」(男性)
というものが代表的でした。
収入が伸び悩む中、働く人々は副業をすることにより「自分の経済的人生をもっとコントロールできるようになりたい」と思っているようです。

副業経験者の「副収入」は月に5万円未満が圧倒的

また、副業・兼業での収入については、女性全員が「5万円未満」と回答。男性は「5万円以上10万円未満(14.3%)」「20万円以上(14.3%)」との回答が一定数あることから、副業・兼業により注力しているのは男性の方が多いのかもしれません。男女全体でみてみると、最大月収額は「20万円」との回答もあったものの、「4万1,000円」が平均月収額ということが分かりました。

副業することにデメリットは?

ここまで、どちらかというとメリットの方ばかり紹介してきましたが、副業をすることのデメリットも存在します。働く側・雇う側それぞれの視点から紹介します。

働く人にとってのデメリットやリスク

残業したほうが稼げる?

始めたのがビル清掃のアルバイトです。時給は1200円で毎日20時~22時までの2時間。
(中略)
「残業したほうが生活は楽だ」

T君の月額給与は25万円。これを時間単価にすると1507円(25万円÷166時間)で、25%増しの残業代なら1884円(1507円×1.25)になります。つまり、無理して副業をするよりは他の社員のように残業したほうが給与としては断然多くもらえます。

休業補償や労災の問題も

労働者がいちばん注意すべき点は、事故に遭ったり、健康管理に支障が出てしまったりした場合です。例えば、副業中や副業に向かう途中で事故に遭った場合は、労災支給額は副業分のみから計算される場合があります。そうすると、副業の収入前提の補償となるので、十分な補償を得ることができません

健康&時間の自己管理が大変

デメリットとしては、複数の仕事を行うためのタイムマネジメントが重要になることです。例えば、副業に時間を取られ過ぎて本業がおろそかになった、一日の労働時間が長時間となり心身に支障をきたしたとういうことになってはいけません。

企業にとってのデメリットやリスク

割増賃金を「どっちが払うか」問題

副業をしていると、1日に複数の職業を掛け持ちしていた時に、1日の労働時間が8時間が超えるという事態が発生することがあるかもしれません。もしそうなった場合、副業であっても8時間を超えた分に対しては「残業代」として割増賃金が適用されるのです。

「確かに1日8時間以上働いた場合は、1日のうち後に就業する業務に対して時間外分の割増賃金が得られるとされています。しかし、私はこの規定はあまり実効性がないので早く改正すべきと思っています。なぜなら、副業が業務委託形式で行われていた場合はそもそも対象外ですし、割増賃金は労働者側が事業者に請求しなければ得られません。各事業者は自社以外の労働時間を把握していないためです。申請までして割増賃金を得たいという人は少ないのではないでしょうか」

具体的な例を上げてみましょう。

 たとえば、9時から18時まで本業とする企業に勤務し、19時から22時までコンビニエンスストアでアルバイトしたと仮定しよう。12時から13時までの1時間は昼休みをとり、かつコンビニには、副業として働く旨を報告しているものとする。

このケースでは、労働基準法第38条が適用されます。

第三十八条  労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

つまり、上記の場合は19時から22時までのコンビニでの労働は残業とみなされて通常の1.25倍の時給を支払う必要が出てくるのです。さらに早朝労働の場合も…

 では、本業の勤務前、朝5時から8時までアルバイトをする場合はどうか。副業の労働時間が先にスタートしているので、本業の就業時間のうち14時から18時までの労働が「残業」に当たるように思えるが、労働基準局によれば、この場合も割増賃金を負担しなければならないのはコンビニ側だという。すなわち、「通常は、当該労働者と時間的に後で労働契約を締結した事業主と解すべき」との見解だ。

ただしこれは、企業に雇用された場合のみ適用され、個人事業主には適用されないとのこと。企業側のデメリットとしては、就業時間の短い副業だとコンプライアンス教育が徹底出来ないため、情報漏えいなどのリスクもありそうです。

「本業への支障」や「転職のリスク」への不安も

「視野が広がる」「社員の採用・定着に有利」といった企業側のメリットを訴える声はあるものの、「疲れから、本業に支障を来すのでは」「転職されるリスクが高まるのでは」といった不安もぬぐえません。それなら、「あえて推奨する必要はない」というのが、経営者や人事担当者の本音ではないでしょうか。

「副業を禁止」する企業はまだ半数近い

株式会社リクルートキャリアによる兼業・副業に対する企業の意識についての調査によると、副業・兼業を容認する企業は少なく、逆に就業規則で禁止している企業が半数近いという結果になりました。禁止の理由は…

●兼業・副業を禁止する理由や背景について A.兼業・副業を禁止している理由は「社員の長時間労働・過重労働を助長する」が55.7%と最も高く、次いで「情報漏洩のリスク」が24.4%。

副業することのメリットは

副業のメリットは、お金に関すること以外にもあるようです。

働く人にとってのメリット

職を失った場合のリスク回避

最近ではサブ的な意味合いの「副業」ではなく、2つの仕事を同時進行する場合、どちらも本業として捉える「複業」を受け入れようという動きも広まってきています。 1つの仕事だけではなく、複数の仕事を掛け持ちする働き方は、生涯年収をあげるだけではなく、どちらかの会社が倒産になったり、リストラで職を失った場合のリスク回避にもなります。

「会社への依存」がなくなる

収入の柱を2本持っておくと、自分は本業がなくても生きていけるんだっていう意識が出てきて、会社に対して変に依存する体質もなくなると思うんです。例えばサービス残業も、見合わないと思ったら断るっていう選択肢も意識できるし。

視野が広がる

 私の場合は、本業副業という区別よりも、一つの価値観の世界にいることを窮屈に思ってしまうタイプでした。キャバクラは楽しいけれど、キャバクラ嬢的な価値観にのみ染まってしまうとそれはそれで貧困、新聞記者も楽しいけれど、新聞社の中でしか通用しない言語を話すようになるとそれはそれで視野が狭い。

人脈も広がる

複数の会社や組織と仕事の関係を持つことで、人脈を広げるメリットもあります。特に個人として仕事を請け負う場合、会社や組織の看板がありませんから、仕事を得るために人脈が非常に重要になります。

スキルアップ

社員にとっては、自身の能力を副業で磨き、転職や独立へのステップとしてうまく利用することも出来ます。

税金の知識が増える

税金関係は勤務先の人事部に「丸投げ」をすることが当たり前で、年末調整の時期になると生命保険料控除証明書など、扶養親族の証明書を提出することで「完了」している人が多いのではないだろうか。
副業になると所得になるため、ここに「必要経費」という考え方が生まれてくる。その報酬を得るのに支払った経費はどれくらいなのかを認識することで、大きく税金を抑えることが可能になる。

出会いの場が増える

「副業で婚活!」のように主客転倒なメッセージが出されるのは勘弁して欲しいですが、副業が解禁されれば、結果的に副業を通じて結ばれる人が増えていくのではないかと予想しています。

企業にとってのメリット

従業員定着率が向上

同調査では従業員の副業・兼業を認めている企業に、その効果を尋ねている。最も多い回答は「定着率が向上した」であり、26.6%が回答した。

優秀な人材の確保

「副業を活かして競争力を強化しようとしている企業もありますよ。今後、労働人口の減少が見込まれるなか、優秀な人材は企業間で取り合いになることが見込まれます。そのため、副業を完全に自由とすることで能力の高い人材を獲得する取り組みも一部では始まっています」

副業の経験を本業に活かす

社内では得られない知識や人脈、仕事に対する考え方の違いなどは個人にプラスの経験となるものの、それを持ち帰ることによって会社にとっても還元される話になってくるはずだ。

「副業容認」の流れになった背景は

企業は「仕方なく」容認へ?

「企業が副業を許可する背景は、高度経済成長期のように、終身雇用と年功序列による雇用と賃金の安定を労働者に提供しづらくなっていることも一因です。事業が拡大し続ける見込みもないため昇給を低く抑えなければならず、バブル期のように高い給与水準を提供することも難しい。労働者に与えられるものが少なくなったからこそ“仕方なく”許可をする企業が大半なのではないでしょうか」

「足りない分は自分で稼いでね」

今後は残業をして自分が欲しい収入まで持っていくっていうことができなくなる時代だし、ましてや昇給も難しいっていう状況だから、「じゃあ足りない分は自分で考えて稼いでね」っていうのが、副業解禁の流れにはあるんです。

とはいえ、まだまだ自由に副業できる環境には…

「企業が副業を許可するとひと口にいっても、大きく分けて3つの段階があります。(1)完全に従業員の裁量に任せる場合(2)どこで何を行うか届出制とする場合(3)届け出たうえで許可制とする場合です。そのうち、(1)を採用する企業は少数で、(2)と(3)が大半になるでしょう。企業は自社の機密を保持し、従業員が自社の評判を落とさないよう管理をする必要があるからです。労働者が過重労働となり、自社の就業に影響を及ぼさないかも確認したいでしょう。つまり、労働者が自由に副業をできる環境になるとは言い難いのです」

「BizLady」の記事に、本業と副業を両立させるコツが載っていたので紹介します。
(1)自分が興味があり、かつ得意な分野を選ぶ
(2)自動でお金を稼げる副業を選ぶ
(3)本業ではできないことを選ぶ
副業にはここまで紹介したように様々なメリット・デメリットがあります。何よりも収入と労働時間のバランスが崩れて、「働いている時間のわりに稼げない…」という状態になっていたら意味ないですよね。もし副業をするのなら、上記の3項目も頭に入れつつ、心と体の健康に気をつけてしっかり稼ぎましょう。