特集2017年12月9日更新

2017年の「年間ベストセラー」を一挙紹介

12月1日、出版取次大手の日本出版販売(日販)とトーハンが2017年の「年間ベストセラー」を発表しました。双方にランクインしている書籍を、それぞれに関連する話題とともに紹介します。

目次

九十歳。何がめでたい

日販1位 トーハン1位

著者佐藤愛子
出版社小学館
発売日2016年8月1日
公式ページ『九十歳。何がめでたい』佐藤愛子
九十歳。何がめでたい

累計発行部数は110万部突破

日販、トーハンともに1位という、文句なしの今年ナンバー1のベストセラー。発売は昨年8月で、特設サイトによると発行部数は累計で110万部を突破しています。

総合1位はともに佐藤愛子さんの「九十歳。何がめでたい」(小学館)だった。94歳となった直木賞作家が、歯にきぬ着せぬ物言いで世の中を斬る痛快エッセー。昨年8月の刊行後、「元気が出る」「勇気をもらえる」と共感を呼び、発行部数は23刷105万部に達した。

ヒットの秘密は「本音トーク」と「ユーモア」

本書の特徴の一つは本音トーク。長寿はめでたいという常識を、タイトルでいきなり引っくり返した。本の内容は90歳超えの著者本人が語る赤裸々な体験談と腹の内の思い。年を取るにつれ面倒なことが次々と起きる。生きることが厄介になる。そんな日々の苦労や失敗、イラ立ちを、歯に衣着せぬ物言いで思い切り打ち明けている。
もう一つの特徴はユーモア。とかく「老い」をめぐる話は暗くなる。それを佐藤さんは明るく、笑いを誘うように書いた。

佐藤さん「素直に嬉しい」

年間ベストセラー1位になったことについて、著者の佐藤さんは小学館を通じてコメントを発表。

佐藤さんは「素直に嬉しいです。私自身、自分が面白がることが好きだから、人が面白く思ってくれたと思うと、ああよかったと思いますね」とコメントしている。

このコメントの一方で、売れ行きや読者の反応に対して「日本人がずいぶんと変わった」「変な時代ですね」といったコメントもされています。

「この本を読んで勇気をもらった、元気をもらったという人が多いそうですが、私は自分が思ったことを書いているだけなので、どうして読んだ人が勇気が湧くんだか私自身にはわからないんです。私は昔から同じように好き勝手書いてきて、かつては顰蹙(ひんしゅく)を買ったり悪し様に思われたりしていましたから。それが時代が変わって、顰蹙じゃなくて勇気となった。日本人がずいぶんと変わったんだなぁと思いますね」
〈「ありがたい話ではあるが、そもそも私は本がどれだけ売れるかということにあまり関心がない」〉
〈「今の人たちは率直でなくなっているので、私のように言いたい放題言うのが現れたから、珍しく感じたのでしょうか。変な時代ですね」〉

蜜蜂と遠雷

日販3位 トーハン3位

著者恩田陸
出版社幻冬舎
発売日2016年9月23日
公式ページ恩田陸『蜜蜂と遠雷』<特設ページ>
蜜蜂と遠雷

史上初の直木賞&本屋大賞のダブル受賞作

「第156回直木賞」と「2017年本屋大賞」をダブル受賞した史上初の作品。1位の『九十歳。何がめでたい』と同じく昨年発売の作品ですが、これらの受賞が話題になったことをきっかけに売上を伸ばしていったようです。

『蜜蜂と遠雷』はピアノコンクールを舞台に、4人のピアニストが自らの才能と運命を互いにぶつけ合う青春群像小説です。2016年9月の発売以降、さまざまなメディアで紹介され、2017年1月には第156回直木賞を、さらに同年4月には2017年本屋大賞を受賞しました。直木賞と本屋大賞のダブル受賞、そして同一著者が2作品で本屋大賞を受賞したのはいずれも史上初の快挙で、大きな話題となりました。

「構想12年、取材11年、執筆7年」

プレスリリースや広告などで使われたフレーズ「構想12年、取材11年、執筆7年」。この言葉もどこかで目にした人は多いのでは?

構想から12年、
取材11年、執筆7年。
著者渾身、
文句なしの
最高傑作!!

ざんねんないきもの事典

日販2位(「続」は8位) トーハン5位

著者今泉忠明(監修) 下間文恵 ほか(絵)
出版社高橋書店
発売日2016年5月21日
2017年6月10日(「続」)
公式ページざんねんないきもの事典

「どうしてそうなった!?」とツッコミを入れたくなる「残念な」生き物を紹介

「ざんねんないきもの」に注目して笑いを誘うこちらの絵本は、驚異的な能力を持つ生物が多くいる中 「どうしてそうなった!?」 とつっこみたくなる生き物の存在を教えてくれます。「だまされて子育てするオオヨシキリ」「自分のにおいに気絶するカメムシ」「「だちょうの脳は目玉より小さい」といった内容に「あえて残念なところが愛しく思えます」「かんぺきじゃないから親しみやすい」という口コミも多く寄せられ、生き物の生態の多様さを実感できる絵本となっています。

児童書の上位ランクインは珍しい

第2位には児童書の『ざんねんないきもの事典』がランクインしました。「ハリー・ポッター」シリーズ以外の児童書がここまで上位に入ることは珍しく、2000年以降「ハリー・ポッター」シリーズ以外の児童書がベスト5に入ったのは初となります。6月に発売になった続編も第8位にランクインしています。

今年の夏休みに日本一売れた本&シリーズ累計120万部突破

児童書は通常5万部売れたらヒットと言われる中で、シリーズ2点で120万3000部という異例の数字を叩き出した。
日販月間(8月)の「総合」ジャンルの売上ランキングで、「続ざんねんないきもの事典」が第1位、「ざんねんないきもの事典」が第2位となり、今年の夏休みに日本一売れた本となった。

うんこ漢字ドリル

日販4位 トーハン6位

出版社文響社
発売日2017年3月24日
公式ページ日本一楽しい漢字ドリル|うんこ漢字ドリル (公式)

ドリルが異例のランクイン キラーワード「うんこ」が子供の心をつかむ

発売直後からの爆発的な売れ行きが多くのメディアで取り上げられて話題となり、ユーキャン「新語・流行語大賞」のノミネート30語に選ばれるほどのムーブメントを巻き起こしました。

第4位には学習参考書の『日本一楽しい漢字ドリル うんこ漢字ドリル』がランクインしました。ドリルが総合ランキングに入ったのも近年にない出来事です。
子どもの笑いのツボのひとつでもある「うんこ」を題材に使った学習教材が異例のヒットを見せた。
多感な子どもたちの心に“突き刺さる”キラーワードは意外な場所にまだまだ眠っていることを再認識させてくれた。

例文全てに「うんこ」 わずか3カ月で260万部超の大ヒット

「うんこ漢字ドリル」(全6冊)には、「父が会社でうんこをもらして帰ってきた。(2年生)」など、3000超の例文全てに「うんこ」が入っている。学習指導要領に沿って学ぶ1006字を網羅しつつ、教材としてのタブーをやぶり、つまらない勉強を楽しいものに変えた。発売わずか3カ月で260万部を超すベストセラーになった。

ボードゲームやお菓子も登場

今年爆発的人気となった「うんこかん字ドリル」がすごろくになって登場。その名も『うんこかん字ドリルのボードゲーム』(バンダイ)。ゴールにたどり着くまでに、“うんこカード”を多くゲットした人が勝利というすごろくゲームで、コマには「おとし玉袋にうんこを入れる」など、独特な文面が…。
「うんこ漢字ドリル」がお菓子になった!
販売するのは、バンダイ(東京)のキャンディ事業部。「うんこ漢字ドリル グミ」(100円 税抜)を11月7日、「うんこ漢字ドリル ソフトキャンディ」(200円 税抜)を12月12日に、全国の量販店・スーパー・コンビニエンスストアなどのお菓子売場で販売をスタートする。

騎士団長殺し

日販5位 トーハン7位

著者村上春樹
出版社新潮社
発売日2017年2月24日
公式ページ騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編―
騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編―

「発売日深夜の行列」などのフィーバーは健在

本作は、2010年に発表された『1Q84』以来7年ぶりとなる村上氏の書き下ろし長編。妻から離婚を切り出され、山の上のアトリエに暮らす主人公に起こる不思議な出来事を描いた作品。毎回新作が出るたびに話題になる発売日前後のフィーバーぶりは健在で、今回も発売日の深夜0時には書店店頭にファンの行列ができるなど盛り上がりをみせた。

オリコン「“本”ランキング」では文芸・小説部門で首位

村上春樹氏の長編小説『騎士団長殺し-第1部 顕れるイデア編-』(新潮社/2月発売)が期間内売上50.2万部で、「第10回オリコン年間“本”ランキング2017」(集計期間:2016年11月21日~2017年11月19日)の「文芸・小説部門」で首位を獲得。村上氏の同ジャンル年間1位は、2009年『1Q84 BOOK1』(新潮社)、10年『1Q84 BOOK3』(新潮社)、13年『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)に続く4度目で、同一作家による最多1位記録を更新した。

「春樹台風」上陸 韓国でも一大ブーム巻き起す

韓国のインターネット書店「インターパーク図書」によると、6月30日に村上氏の最新作『騎士団長殺し』韓国語版の予約販売を開始したところ、すぐさまベストセラーにランクイン、6月第4週と7月第1週と2週間続けて販売数1位を記録した。
このブームについて韓国日報は、韓国に「『春樹台風』が上陸」との見出しを打ち報じている。

儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇

日販6位 トーハン4位

著者ケント・ギルバート
出版社講談社
発売日2017年2月21日
公式ページ『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(ケント・ギルバート)

「新書 ノンフィクション」部門では1位

総合ランキングでは日販で6位、トーハンで4位となった本書ですが、「新書 ノンフィクション」部門で見ると、次に紹介する『応仁の乱』とのデッドヒートを制して日販、トーハンともに1位となっています。

「ヘイト本」という評価も

日本出版販売が発表した今年の上半期ベストセラー新書によると、1位は『応仁の乱』(呉座勇一、中公新書)で2位がケント・ギルバート氏の『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社)だ。「日本最大の出版社である講談社から、ヘイト本が出た影響は大きい。他の出版社だったら40万部以上も売れなかったでしょう。2匹目のドジョウを狙って、今後他の出版社もこれに続きかねません」

応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱

日販11位 トーハン8位

著者呉座勇一
出版社中央公論新社
発売日2016年10月20日
公式ページ応仁の乱

名前は有名なのによく知らない「応仁の乱」を解説し異例のベストセラーに

日本の歴史上、最も有名な戦乱のひとつのはずなのに、大河ドラマになれば低視聴率。誰が登場したのかも、どんな理由で争ったのかもよく知らない──そんな「応仁の乱」をテーマにした新書が、異例のベストセラーになっている。
『応仁の乱』は英雄不在でこれまで不人気だった戦乱を、歴史学者・呉座勇一氏が読み解き異例のヒットになりました。50~70代の男性を中心に読まれています。

“凡人”たちによる“グダグダ”な戦乱の面白さを伝える一冊

応仁の乱の全容をわかりにくくしている要因の一つが、何といっても11年というその長さ。一方で、日本中世史を専門とする著者の呉座勇一さん(日本史学者、国際日本文化研究センター助教)は「応仁の乱は、始まったことではなく、長期にわたって続いたことにこそ独自の意味を持つ」(本書「はじめに」より)と記しています。
応仁の乱の面白さを伝えようとする呉座氏の論考について、歴史研究家で多摩大学客員教授の河合敦氏はこういう。
「近年の研究では、応仁の乱の後半は、守護大名同士が激突するというより、京都で庶民と傭兵の中間のような者たちが小競り合いを続けていただけだとわかってきている。ダラダラ続いた戦いとして応仁の乱を捉え直す試みは、斬新で面白く感じられました」

モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット

日販9位 トーハン10位

著者佐久間健一
出版社サンマーク出版
発売日2017年5月10日
公式ページモデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット

「運動すればするほど痩せる」は思い込みである――今年最も売れたダイエット本

がんばって運動しているのに、痩せたい部分が痩せない。食事を我慢して減量したものの、あっという間にリバウンド。エステに大金を払ったのに結果が出ない……などなど、多くの女性にとって、ダイエットは人生の大きな悩みの種。
そんななか50万部の大ベストセラーになっているのが、“続けなくていい!”“頑張らなくていい!”という『モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット』。
「運動すればするほど痩せる」は思い込みである――。50万部を突破した『モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット』の著者・佐久間健一氏はそう言い切ります。

「頑張らなくていい」ダイエット法の秘訣は「モデル体幹筋」

本書が提唱しているダイエット法は「1エクササイズ1分」「2週間で回数を減らす」「2カ月でやめてもOK」といった「頑張らなくていい」もの。無理なく痩せられる秘密は「モデル体幹筋」にあるとか。

無理なく痩せられる、“がんばらなくていいダイエット”の秘訣は「モデル体幹筋」。一流モデルが日常的に使っているモデル体幹筋を使えるようになれば、基礎代謝がアップして、運動をしなくても脂肪が燃焼する体質になります。
佐久間:そうなんです。体の中心部分の体幹の筋肉が、姿勢の傾きによって崩れると、ランニングをしても太ももだけ太くなってしまったり、筋トレしても腕だけが太くなったりしてしまいます。ちなみにこの場合、「体の中心」とは、骨盤と背骨、肩甲骨や肋骨を指します。
ですから、エクササイズを始める前に、まずは体のバランスを「ゼロ」に戻すことが大事になってくるんです。つまり、体幹をリセットするということ。このメソッドを私は「体幹リセットエクササイズ」と呼んでいます。

ハリー・ポッターと呪いの子

日販13位 トーハン11位

著者J.K.ローリング ジョン・ティファニー ほか
出版社静山社
発売日2016年11月11日
公式ページハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部 特別リハーサル版
ハリー・ポッターシリーズ最新刊について

“完結巻”第7巻の後日談を描いた舞台脚本の書籍化

『ハリー・ポッターと呪いの子』は、小説『ハリー・ポッターと死の秘宝』のエピローグであり、ヴォルデモートとの闘いの19年後を描く。ポッターは3人の子どもを持ち、魔法省で働いている。しかし、それはこれまでの7作品とは違い、小説の形態ではなく劇作家ジャック・ソーンによる同名の演劇台本となる。
この作品は、これまでのシリーズのような小説形式ではなく、脚本形式で書かれている。そのためか、登場人物たちはよりいきいきと描き出され、まるで実際にハリー・ポッターの舞台を見ているかのような気持ちにさせられる。

8年ぶりの「新作」にファン歓喜

『ハリー・ポッターと呪いの子』の日本語版が2016年11月11日(金)に発売された。前作から8年越しの新作とあり、ファンからは「久しぶりにあの世界を味わうことができて幸せ!」と興奮の声が続出している。
さっそく作品を読んだファンからは「流石はローリング先生! 期待を裏切らない!」「唯一無二の世界観にまた浸れて最高の気分!」「極上の家族愛の物語だった! アルバスの葛藤や、アルバスとの接し方に悩むハリーの姿が胸に迫った」「ハリポタファンなら100%満足できる内容」と絶賛の声があちこちで上がっている。

昨年は発売わずか2週間で3位にランクイン

ちょうど1年前に発表された2016年の年間ベストセラーでは、日販で3位、トーハンで4位にランクイン。集計期間はともに15年11月27日~16年11月25日であるため、発売からわずか2週間で驚異的な売上を記録したことがうかがえます。

第3位『ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部 特別リハーサル版』は11月11日発売ながら3位にランクインしました。既に発行部数は100万部を突破しています。

内容が少し改定された「愛蔵版」も今月発売

ここまで紹介してきたものは正式名称に「特別リハーサル版」とあるように、リハーサル上演期間の脚本が書籍化されたものです。その後、手直しされた最終版の脚本も書籍化され、日本では「愛蔵版」として12月1日に発売されました。この愛蔵版には、ハリー・ポッターの家系図や年表などが新しく加えられています。

はじめての人のための3000円投資生活

日販12位 トーハン13位

著者横山光昭
出版社アスコム
発売日2016年6月24日
公式ページはじめての人のための3000円投資生活

ビジネス書部門で1位

本書は、日販では「単行本ビジネス」部門で1位、トーハンでも「単行本 ビジネス書」部門で1位となっており、昨年6月の発売から1年半が経過しても、まだまだ売れているロングセラーの投資本です。

著者はテレビ番組へも多数出演している「家計再生コンサルタント」の横山光昭さん。専門用語を使わない初心者向けの内容と、毎月3000円から始められる気軽な投資法がウケて、40~60代の世代を中心に大ヒットしています。一般的に投資本は男性の読者が多いのですが、こちらは女性が半数以上を占めているのも特徴。「投資は難しそうだからちょっと……」と敬遠していた方が、「これなら私にもできそう」と手に取る姿が浮かびます。

今年6月発売の「実践編」も好調

「実践編」と位置付けられている続編『3000円投資生活で本当に人生を変える!』も7~9月の「お金・投資関連本」ランキング(日販 オープンネットワークWIN調べ)で『はじめての人の~』に次ぐ2位に入り、好調な売れ行きとなっているようです。

第2位は、『3000円投資生活で本当に人生を変える!』。第1位の『はじめての人のための3000円投資生活』の”実践編”にあたり、貯金・投資にまわすお金を増やすための家計の見直し方、運用コストの低いおすすめファンドの紹介など、さらに一歩踏み込んだ内容となっています。