消費税増税へ…複雑な「軽減税率」対象品目を詳解

2018年10月19日更新

10月15日、安倍晋三首相が来年10月に予定通り消費税率を10%に引き上げると表明し、増税そのものの話題や景気の冷え込みを回避する施策の話題が世間を賑わすようになってきました。その中でも、「対象品目がわかりづらい」などとして注目を集めている「軽減税率」について、対象となるパターンの具体例を挙げて徹底解説していきます。

2019年10月1日から消費税率が10%に

増税の狙いは「全世代型社会保障」への転換と財政健全化

安倍晋三首相は15日午後の臨時閣議で、2019年10月の消費税率10%への引き上げを予定通り実施すると表明した。
首相は増税の狙いについて「お年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障へと大きく転換し、同時に財政健全化も確実に進めていく」と強調。

安定した社会保障財源を確保

消費税増税は安定した社会保障財源を確保するのが目的だ。国の一般会計に占める社会保障関係費は1990年度の11兆6000億円から18年度は33兆円と約3倍に拡大。内閣府の試算では「団塊の世代」が全て75歳以上の後期高齢者となる25年度には41兆円に達し、財政を大きく圧迫する。

増税と同時に幼児教育を無償化

17年末に首相は子育て世帯の負担軽減のため、増収分の1兆7000億円を保育士の増員や幼児・高等教育の無償化などに新たに振り向ける方針を決定。年内に具体化し、来年度当初予算案などに反映させる。首相は15日、「来年10月1日から認可・無認可合わせて幼児教育を無償化する」と強調した。

これまで二度、増税が延期されていた

消費増税は、民主党政権時代の12年8月、民主、自民、公明の3党合意に基づいて成立した社会保障・税一体改革関連法で決まっていた。15年10月に10%に引き上げる予定だったが、安倍首相は増税が消費に悪影響を及ぼすとして、2回にわたって延期。法改正し、19年10月に引き上げると明記した。

一度目(14年11月に表明)は「15年10月」の予定を「17年4月」に、二度目(16年6月に表明)は「19年10月」に先送りしています。

二度あることは三度ある?

なお、今回の表明で来年10月の増税は確実視されていますが、あくまで首相は消費増税を「予定」と表現し、経済情勢によっては「二度あることは三度ある」になる可能性も残しているようです。

首相は消費税率10%実施に関する臨時閣議での発言で「法律で定められたとおり、2019年10月1日に現行の8%から10%に2%引き上げる“予定”だ」との表現を使った。
菅官房長官は臨時閣議後の記者会見で、「リーマン・ショックのようなものがない限り、(税率は)引き上げる」と述べ、世界的な経済危機が起きれば、さらに延期もあり得るとの認識を示した。

「消費税10%引き上げ」表明に対する反応は?

経団連会長「非常に良いことだ」

安倍晋三首相が15日、消費税率を2019年10月に予定通り10%へ引き上げる方針を表明したことを受け、中西宏明経団連会長は東京都内のホテルで記者団の取材に応じ、「非常に良いことだと歓迎する」と述べた。

57%の企業が「予定通りに増税を実施すべき」

ここで挙げるロイターのアンケートは、安倍首相の引き上げ表明前(9月27日~10月10日)に実施されたものですが、ごく最近の調査結果なので紹介しておきます。

消費税率10%への引き上げ(現在8%)についてロイターが企業に聞き取り調査を実施したところ、57%の企業が予定通り実施すべきと回答した。
実施すべき理由としては、「財政健全化を先送りすべきではない」(化学)というのが代表的な意見。少子高齢化が進行する中で、「(増税しなければ)社会保障制度が維持できない」(電機)、「これ以上の先送りは、国民の先行き不透明感をあおるだけ」(卸売)との見方だ。

一般消費者「これから暮らしが厳しくなるのでは」

夕食に向けた買い物などでにぎわう東京都品川区の商店街。買い物客らも消費税増税方針に、さまざまな反応を見せた。
同区の大久保章さん(84)は「支給額が上がらない年金生活だが、これから暮らしが厳しくなるのでは」とため息をつく。
女性会社員(37)も「消費税が5%から8%になったとき、社会福祉が良くなったとはあまり感じなかった。10%になったところで長男(1)が保育園に入れるか不安だ」と話す。

マツコ「グチャグチャのままで増税しても意味がない」

マツコは「消費税の話以前に国としてどういう未来を目指すのかを議論すべき。(増税しても)付け焼刃で終わってしまう」と口を開く。
政府が発表した増税対策を「どうでもいい話」と呆れながら、他国を例に「消費税25%の国は、最低限人間として守られるべきものが税金で賄われると国民が知っている。だから『残ったお金で豊かに暮らそう』って発想になって経済が回る」といった趣旨で熱弁。
現況を省みて「グチャグチャのままで10%にしても意味がない」と増税への反対姿勢をみせた。

安倍首相「経済に影響を及ぼさないよう全力で対応する」

今回の増税表明で最も注目されているのは経済への影響と、それに備えた対策です。安倍首相も「全力で対応する」と述べています。

「あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応する」と述べ、増税による景気悪化を防ぐための対策の具体化を関係閣僚に指示。

かつてあったような景気の冷え込みを回避したい政府首脳

景気対策に力を入れる背景には、過去の税率アップ時に起きたような景気の冷え込みを何としてでも避けたいという思惑があるようです。

安倍首相ら政府首脳の念頭にあるのは、2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた際、駆け込み需要とその後の反動減の振れが大きかったことだ。5.5兆円の経済対策をまとめたが、予想を上回る反動減が景気を冷やした。
今回は「前車の轍を踏まない」という堅い決意が、安倍首相にあるとみられる。

注目される駆け込み需要・反動減対策

続いては、安倍首相が「あらゆる施策を総動員する」と言うほど力を込めている景気への対策を見ていきましょう。

景気対策① 軽減税率

飲食料品などの税率を8%に据え置き

政府は、「酒類と外食を除く食品全般」と「週2回以上発行し、定期購読されている新聞」で、税率を8%のまま据え置く「軽減税率」の仕組みを導入する。増税による家計の負担を軽くし、消費の落ち込みを抑制する効果があるためだ。

8%の税率が適用される品目や状況が不明確などとして話題になっている軽減税率。これについては、のちほど詳しく紐解いていきます。

景気対策② 2%分をポイント還元

「キャッシュレス決済」のみが対象

首相が対策の目玉としたのは、中小小売店での買い物の際、カードなどキャッシュレス決済を利用した消費者に増税分の2%をポイント還元する制度の導入だ。「一定期間」の限定付きで還元分は国が負担することになる。

この施策のポイントは、「中小規模の小売業」で「キャッシュレス決済」した場合が対象である点。「中小規模」を対象としていますが、現状では規模の小さい店ほどキャッシュレス対応をしていない場合が多いと思われるため、レジ改修などの支援も検討されているようです。

世耕経済産業相は同日の閣議後の記者会見で「小規模小売店の負担にならないよう準備する」と述べ、小売店の負担軽減に取り組む考えを示した。

「中小」の線引きは資本金1億円

麻生太郎財務相は15日の臨時閣議後の記者会見で、2%の消費税増税分をポイントで還元する制度に関し、資本金1億円程度までの企業や小売店が対象となるとの認識を示した。

「すべての商品・サービス」で還元検討

本日(10月19日)到着した最新の記事によると、軽減税率と重複して適用されるパターンも生まれそうな気配です。

キャッシュレス決済を利用した際の2%のポイント還元策について、税率を8%のまま据え置く軽減税率が適用される飲食料品も含め、原則全ての商品・サービスを対象とする方向で検討に入った。
対象となる店舗は原則、小売店のほか、飲食店や宿泊業など、消費者向けのビジネスを展開する全ての中小事業者とする案が浮上している。

キャッシュレス化促進の思惑も

このポイント還元案には、先進国に比べて立ち遅れているキャッシュレス決済の普及を進めたいという狙いもあるようです。

経産省内では、2020年の東京五輪開催時までにG7(主要7カ国)で最低水準のキャッシュレス化を推し進めたいとの声が大きかった。今回のポイント還元は、増税時の対策を推進しつつ、キャッシュレス化を推し進める狙いもあるとみられる。

問題点の指摘も…

ポイント還元分の国庫負担の対象となる中小小売店と、負担がない大規模店との”差別”も「政治問題」となる可能性が大きい。
しかも、生活弱者が多い高齢者層はクレジットカードや電子マネー、スマートフォンの保有率が低いため、恩恵にあずかれないことも問題

景気対策③ 自動車や住宅への税制措置や補助

来年10月以降の購入にメリットが出る措置を準備

自動車や住宅といった大型耐久消費財について19年10月1日以降の購入にメリットが出るよう税制・予算措置を講じる。

これまでの増税時の状況を思い出すと、増税前には駆け込み需要でモノが売れて、増税後にはその反動で消費が冷え込むということが起き、特に支出額が大きい自動車や住宅についてはその傾向が顕著に見られました。
それだけに、自動車については来年10月1日以降に購入する自動車の保有に係る税負担の軽減について検討を行い、同様に住宅についても、来年10月以降の購入やリフォームについてメリットが出るような施策を準備するとのことです。

「環境性能割」の免除や「すまい給付金」の拡充

具体的には、自動車については新たな税金「環境性能割」の免除、住宅については「すまい給付金」の拡充などが検討されているようです。

政府と与党が自動車関連税制のうち、燃費に応じて購入時に課す新たな税金「環境性能割」を一定期間免除する案の本格検討に入ったことが13日、分かった。増税後の買い控えを抑える狙い。
環境性能割は現行の自動車取得税が消費税増税時に廃止される代わりに導入される。
住宅ローン減税は、住宅ローン残高の1%が10年間、所得税などから控除されるものです。現在は一般住宅の場合、10年間で最大400万円の控除が受けられます。
また、すまい給付金とは、一定以下の収入の方が、住宅を取得する際に支給される補助金です。今は最大30万円ですが、消費税が10%になると最大50万円に引き上げられることが決まっています。
これら2つの制度は、’21年12月まで行われますが、これを延期、拡充しようという動きがあります。

景気対策④ 値上げ時期・幅は原則自由

「消費税還元セール」も解禁?

ここまで紹介した①~③ほどの大きな柱ではありませんが、前回8%に引き上げられた際に法律で禁止されていた「消費税還元セール」が解禁されるかも…という話も出ています。

景気変動を生む一斉値上げを避けるため、小売店の値上げ時期・幅は原則自由だと周知。消費税を納めなくて済むと誤解される宣伝さえ避ければ増税後の値引きセールも柔軟に認め、増税分の緩やかな価格転嫁を促す。
前回’14年の増税時には、政府は特別措置法を作って、消費税還元セールを禁止しました。当時、流通業界などから「自由な価格競争を阻害する」と批判されましたが、それでも「セールを行うと中小の納入業者が値下げを強要され、増税分を取りはぐれる事態を防ぐため」と押し通したのです。
しかし、今回は一転。容認の方向で議論が進んでいます。

複雑すぎる「軽減税率」を徹底解剖

一部品目について税率を8%に据え置きする制度

対象品目は飲食料品と新聞

軽減税率とは、酒類以外の飲食料品と新聞(週2回以上発行で定期購読)は、増税後も、消費税を8%に据え置くというものです。

飲食料品の中でも「酒類」「外食」などは対象外

軽減税率の対象品目には、低所得者層などへの配慮として「食料品」や「新聞」などがあげられています。
もう少し細かくみると、飲食料品の中でも「酒類」「外食」「ケータリング・出張料理等」は「対象品目から除く」とされています。

軽減税率制度の導入の背景は

消費税を上げるにあたり、一律に消費税を8%から10%に引き上げてしまうと、生活費が家計を圧迫して買い控えによる消費停滞が起こると危惧されています。そこで、「消費税は10%になるけれど、生活者が日常的に購入する食料品などは、現状の8%のままにしましょう」という軽減税率制度の導入が決定しました。

なぜ新聞に軽減税率が適用されるのか?

上の補足になりますが、軽減税率の適用対象となる「新聞」とは「定期購読契約が締結された週2回以上発行されるもの」なので、コンビニや駅の売店などで売っている新聞には軽減税率が適用されません。電子版の新聞も対象外です。
…と、その前に、軽減税率の対象品目に新聞が入っていることに「なんで?」と思った人がいるかもしれません。軽減税率が「日常的に購入するモノを増税の対象から外す」という目的なら、食料品のほかにも日常的に買うモノ、例えばティッシュペーパーや洗剤、歯磨き粉などのいわゆる日用品が対象品目に入っても良さそうなものですが、これら日用品は対象外です。その割に、なぜ新聞が対象になっているのかというと…

新聞界では、ニュースや知識を得るための負担を減らすことにより、活字文化の維持、普及に不可欠を主張しています。現在欧州を中心に、標準税率は20%前後でも、新聞の税率は10%以下の国が大半です。
週2回以上としているところから、新聞の宅配制度の維持のために帳尻を合わせた、国民の利益というより、一部の方の利益のための制度と言えるでしょう。

批判の声も

「軽減税率」の概要を紹介したところで、ここからは対象となる品目、特に紛らわしいものを中心に細かく見ていきましょう。

「イートイン」で食べる場合はどうなる?

飲食料品の中でも「外食」は対象外となることから、「コンビニなどのイートインコーナーで食べる時はどうなるの?」という話や、テイクアウトができるファストフード店での話が、軽減税率に関する話題で一番指摘されています。

外食企業にとって問題なのは、店内飲食であれば税率10%、持ち帰りであれば8%というように、同じ商品に二つの税率が存在する点だ。
中でも不安視されるのがイートインコーナーの扱いだ。
近年、スーパー各社は購入した弁当などを店内の客席で食べられる、イートインコーナー併設店の充実に力を入れる。同コーナーでの飲食については、今回の税制改正では外食と見なされ、10%の標準税率が適用されることになる。

「店内で食べますか?」の返答次第で税率が決まる

例えば、ハンバーガー店で食事するときに、「店内で飲食」は消費税率10%、「テイクアウト」は消費税率8%となるのです。店員さんがよく言う「お持ち帰りですか? 店内をご利用ですか?」という問いかけへの返答によって、消費税率が決まることになるのです。

客の申告が“ウソ”でも問題ナシ?

国税庁によると、「イートインコーナーをご利用する場合、お申し出ください」などの掲示で済ませればよいという。「適用税率の判定時期は商品を売ったとき。客が申し出ない時点で軽減税率と判定されるので、気が変わって店内で食べても、税率は変わらない」(国税庁の担当者)。
つまり、商品購入時に「イートインコーナーを利用する」と利用者自らが申し出ないかぎり、税率は8%のままとなる。

この点で不公平感を指摘する声もあがっています。

小売り事業者で構成される日本チェーンストア協会の小濵裕正会長は「申告によって不公平感が出るおそれがある。そもそもイートインコーナーは交流の場を提供する社会貢献の意味合いもある」と憤りを隠さない。
横浜市のスーパー運営会社の男性社員も「持ち帰るといいながら8%で購入して店内で食べる客と、正直に申告した客とトラブルになるかもしれない」と悩みは尽きない。

「店内で食事」と「テイクアウト」が混在するパターンも

ここで、税込み支払額の具体例を見ておきましょう。例えば「レストランで食事したあとでコーヒーを持ち帰りにする」場合には次のようになります。

税込みの合計金額はいくらになるでしょうか。

ハンバーグ定食 @1,000円(税抜)×2名
コーヒー(持ち帰り)   @300円(税抜)×2名
回答の選択肢は、以下の3つです。
A.2,860円     B.2,808円     C.2,848円

正解は「Cの2,848円」です。以下が内訳です。
<イートイン:10%課税>ハンバーグ定食2,200円(=1,000円×2名×1.1)
<テイクアウト:8%課税>コーヒー(持ち帰り)648円(=300円×2名×1.08)
ポイントは、持ち帰りのコーヒーには軽減税率が適用される点です。

「飲食禁止」を明示すれば8%で統一可能に

財務省は4日までに、椅子やテーブルを置くコンビニやスーパーなどのルールを固めた。店内飲食の禁止を明示し「休憩所」として運営することを条件に、持ち帰り販売と区別せず8%の軽減税率に統一できるようにする。

ただしコンビニ業界は「飲食禁止」に慎重姿勢

コンビニ業界は飲食禁止とすることに慎重姿勢が強い。「日中の客の1割はイートイン目的。飲食禁止は客離れにつながる」(コンビニ店長)からだ。店舗の9割前後にイートインがあるミニストップの堀田昌嗣・取締役常務執行役員は11日の記者会見で「飲食禁止は考えていない」と述べた。

屋台での飲食料品の提供は?

テーブル、椅子、カウンターなど設備の有無がポイント

軽減税率制度における「外食」とは、テーブル、椅子、カウンターなどの「飲食設備」がある場所で飲食料品を提供することを指すため、これらの設備がある屋台のおでん店やラーメン店は軽減税率の適用外となります。
一方、テーブル、椅子、カウンターなどの飲食設備がない場合や、それらの設備があるものの、例えば公園などにある誰もが自由に利用できる公共のベンチに客が座って食べる場合は適用対象、つまり税率8%になるようです。

「ベンチのみ」「カウンターのみ」でも「外食」扱いに

例えば、上の動画に映っているような「軒先にベンチだけ」のような店や、カウンターのみの立食・立ち飲み形式の店も「外食」扱いとなり、税率10%となるようです。

「カラオケボックス室内」と「映画館の座席」は扱いが異なる

カラオケは「外食」、映画館の座席は「持ち帰り」扱い

カラオケボックスの客室内で注文した飲食料品を食べると「外食」になります。一方、映画館の売店でポップコーンなどを買って館内の座席で映画を見ながら食べるのは「外食」とならず、軽減税率の適用対象となります。
ただし、例えば「売店のそばにあるテーブルや椅子で食べる」「映画館の座席で飲食料品を注文できる」など細かい条件による違いがありますので、気になる方は下のPDFの37ページ目を読み込むことをオススメします。

「出前」「宅配」は軽減税率適用対象

「ケータリング」は対象外

宅配、出前は単に客のもとまで飲食料品を届けるだけなので「外食」とはならず、軽減税率が適用されます。
一方、客が指定した場所に料理人が出向いて料理を提供する「ケータリング」や「出張料理」は外食扱いで適用対象外となります。ただ、ケータリングのような形態であっても、老人ホーム等で行う飲食料品の提供は軽減税率の対象となります。

ここまでは「外食」か否かに注目してきましたが、次からは別のポイントに着目していきます。

ビールは10%でもノンアルコールビールは8%

「酒類」=「アルコール分1度以上」か否かで判断

軽減税率の適用対象外とされている「酒類」とは、酒税法に規定されている「酒類」と同じため、アルコール分が1度以上なら「酒類」となります。したがって、アルコール分が1度未満のノンアルコールビールや甘酒などは軽減税率の適用対象に。
同様に、「酒類」にあたる料理酒や“みりん”は対象外、アルコール分が1度未満の“みりん風調味料”は適用対象となります。

ミネラルウォーターと水道水

ミネラルウォーターは軽減税率の適用対象

「飲食料品」は、人の飲用や食用に供されるものを指すため、ミネラルウォーターは「飲食料品」に該当し、軽減税率が適用されます。
一方、水道水は炊事や飲むために用いられるほかにも風呂や洗濯といった飲食以外の場面でも使われるため、水道水をペットポトルなどの容器に入れて飲用の「飲食料品」として販売する場合を除き、軽減税率の適用対象外となります。

「栄養ドリンク」はラベルに注目

医薬品等か否かを要確認

近年ではレッドブルなどが台頭して「エナジードリンク」と呼ばれるジャンルの商品も増えてきた「栄養ドリンク」。コンビニなどではだいたい同じコーナーに並べられているため違いに気づきにくいですが、医薬品等であるかどうかがポイントになります。というのも、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定されている「医薬品」「医薬部外品」「再生医療等製品」は「飲食料品」ではないため、これらに該当する栄養ドリンクは軽減税率の適用対象外になるのです。
わかりやすい商品名で言うと、リポビタンD、チオビタドリンク、ユンケルなどは医薬品等であるため税率10%。オロナミンC、レッドブル、モンスターなどはラベルに「炭酸飲料」と書いてあり「清涼飲料水」という扱いなので税率8%となります。

軽減税率について指摘されている問題点

判断が難しいところを一通り紹介したところで、最後のシメとして軽減税率の導入に関して指摘されている問題点をいくつか列挙しておきます。

包材コスト増の懸念

ある牛丼チェーン関係者は、「軽減税率で(割安となる)持ち帰り販売の比率が高まれば、包材などの関連コスト増が想定される」と語る。具体的な試算はこれからだが、年間数千万〜数億円のコスト増になるおそれがあるという。

財源は未確保

10%への引き上げでは、食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率が導入される。これに伴う1兆円程度の減収分の財源は一部しか確保されておらず、来年度税制改正で議論する。

会計時の計算や経理が面倒に

1つの「ギョウザ」という商品でも10%の場合と8%の場合が混在することになります。正直、これは手計算では極めて困難と思われ、レジやパソコンなどを利用しないとトラブルの原因ともなりかねません。
また、個人経営の飲食店などでは、いわゆる税込み経理(売り上げや仕入、経費など、消費税を含めた金額の経理)しているケースも少なくないと思われます。
これまでは、例えば、1ヶ月分の税込みの売り上げからまとめて消費税分を計算する方法が容易にできましたが、軽減税率が開始された後は、最低限10%分の売り上げと8%分の売り上げを分けないと消費税の計算は正確にできなくなります。

「持ち帰り」の確認などで接客の手間が増える

接客時の混乱を懸念する声も多い。別の外食チェーン幹部は「フードコートで(税率の低い)持ち帰り注文をした客が、テーブルに座って飲食することがありうる」と話す。接客時に店内飲食か持ち帰りかを確認する必要が生じ、接客の手間が増える。「クレームの原因にもなりそうだ。面倒な接客を嫌って、これまで以上に人手を集めることが難しくなる」(同)。

2%分が店側の負担になる?

会計時の混乱を避けるため、外食も持ち帰りも同一価格(税率8%)にするという店も増えそうです。その場合、本来の価格(10%)との差分は店が負担することになります。

イートインコーナーを併設する品川区の「後藤蒲鉾(かまぼこ)店」では、混乱を避ける形で店内でも持ち帰りでも8%を維持する方針だ。「結局は(店内で食べる分の)増税分は店側の負担になる」とため息を漏らす。