2018年の10大ニュース 国内編

2019年1月1日更新

あけましておめでとうございます。新年になったばかりですが、今回は2018年の国内10大ニュースを振り返り。昨年は、西日本豪雨に加えて大阪北部や北海道の地震、そして記録的な猛暑といった自然災害が目立つ一年だったように感じます。今年は平穏な年であってほしいですね。

記事・画像提供:時事通信社

オウム松本元死刑囚らの刑執行

 法務省は7月6日、オウム真理教の元代表松本智津夫(麻原彰晃)元死刑囚=当時(63)=と元幹部6人の刑を一斉に執行した。同26日にも、元幹部6人の刑を一斉執行。1995年3月に発生した地下鉄サリン事件から23年余を経て、一連の教団事件で死刑が確定した13人全員の執行を終えた。
 松本サリン、坂本堤弁護士一家殺害などの教団事件の犠牲者は29人に上り、負傷者も6000人を超えた。教祖として教団を率いた松本元死刑囚は一審東京地裁の法廷で不規則発言を繰り返し、動機などの詳細を語らないまま、起訴された全13事件で有罪とされ、死刑判決を受けた。弁護人が期限までに控訴趣意書を提出せず、二審東京高裁は控訴棄却を決定。2006年、最高裁で死刑が確定した。

日産ゴーン会長を逮捕

 日産自動車のカルロス・ゴーン会長(64)が11月、巨額の役員報酬を隠したとして、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で東京地検特捜部に逮捕され、会長を解任された。仏自動車大手ルノーも統括し、業績不振の日産をV字回復させたカリスマ経営者逮捕のニュースは、世界に衝撃となって伝わった。
 日産は逮捕後、報酬隠しに加え、投資資金の流用や経費の不正支出疑惑も明かし、会社の「私物化」を公表。特捜部は日産の外国人執行役員らとの間で、他人の犯罪を明かす見返りに刑事処分を軽減する日本版「司法取引」に合意し、関連証拠を入手したとされる。弁護側は虚偽記載を否認しており、事件は検察、弁護側の全面対決となる様相を呈している。

財務省が森友文書改ざん、20人処分

 学校法人「森友学園」へ国有地を格安で売却した問題で、財務省が決裁文書の改ざんや学園側との交渉記録の廃棄という不正に手を染めていたことが分かり、通常国会が騒然となった。財務省は6月、内部調査の結果を公表。改ざんを行った当時の佐川宣寿局長ら国有地を管理する理財局ぐるみで不正が行われたと認定し、関係者20人を処分した。理財局主導を強調する内容だったため、佐川氏らに責任を負わせたとの批判も起こった。
 文書改ざんは3月に発覚した。佐川氏は国税庁長官を辞任し、国会で証人喚問が行われた。財務省が大揺れとなる中、福田淳一事務次官は4月、自身のセクハラを報じられ辞任に追い込まれた。一連の不祥事で国の予算編成を担い「最強官庁」と呼ばれる財務省の権威が失墜した。

西日本豪雨、北海道地震、災害相次ぐ

 6月の大阪北部地震は、学校のブロック塀が倒れ通学中の小4女児が死亡するなど6人が犠牲となった。7月の西日本豪雨は14府県で計220人を超える死者を出し、平成最悪の豪雨災害となった。広範囲な土砂崩れなどで1万7000戸以上が全半壊。避難所で暮らす被災者は一時、1万2000人を超えた。「災害級の猛暑」が続き、同月23日には埼玉県熊谷市で国内観測史上最高の41.1度を記録した。
 9月の台風21号は近畿地方を縦断し、10人以上が死亡。高潮などで関西国際空港が閉鎖され、関西経済に打撃を与えた。最大震度7を記録した同月の北海道地震では、厚真町を中心に41人の犠牲者が出た。震源地に近い苫東厚真火力発電所が停止し、道内ほぼ全域の295万戸が停電するブラックアウトも発生した。

安倍首相、「2島先行返還」へかじ

 安倍首相は11月14日、シンガポールでロシアのプーチン大統領と会談し、北方領土問題に関して1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速させることで一致した。同宣言は条約締結後、歯舞、色丹両島を「日本国に引き渡す」と明記。これまで国後、択捉を含む4島返還を主張してきた立場から、安倍首相が「2島先行返還」にかじを切った形で、領土問題は大きな転機を迎えた。
 両国政府は、河野太郎外相、ラブロフ外相を責任者に交渉を進める方針。ただ、歯舞、色丹両島の「引き渡し」後の主権は「当然、日本側」(菅義偉官房長官)とする日本政府に対し、プーチン氏はロシアの主権が残る可能性をにじませている。双方の認識に隔たりがあり、交渉の先行きは見えない。

陸自「イラク日報」見つかり公表

 防衛省は4月、存在しないとしていた陸上自衛隊のイラク派遣部隊の日報が見つかったと発表した。同月に公表した日報には、治安情勢について「戦闘が拡大」などと記載されていた。同省は5月、組織的な隠蔽(いんぺい)を否定し、情報共有の不足を原因とする調査結果を公表するとともに、統合幕僚長や事務次官ら17人を処分。防衛白書では「文民統制に対する懸念や不信感を生じさせた」と記した。
 問題をめぐっては昨年2月、防衛省が国会議員の資料要求などに「存在しない」と回答する一方、当時の稲田朋美防衛相が再探索を指示。翌月に陸自研究本部(当時)で日報が発見されたが、上層部に報告はなかった。再探索の実施要領や方針が示されなかったため、同本部では指示を認識していなかった。

平昌五輪で最多メダル

 第23回冬季五輪平昌大会が2月、韓国で開催された。日本選手団はメダル13個(金4、銀5、銅4)を獲得し、冬季の最多記録を更新。2020年の東京夏季五輪に向けて弾みをつけた。
 フィギュアスケート男子では、羽生結弦が右足首のけがを乗り越え、66年ぶりの連覇達成で感動を呼んだ。スピードスケートはメダルラッシュ。女子500メートルで小平奈緒が日本女子初の金に輝き、高木美帆は女子団体追い抜きの金を含むメダル3個。姉の高木菜那は新種目のマススタートで頂点に立った。カーリング女子はLS北見(現ロコ・ソラーレ)が銅メダルを獲得し、プレー中の会話「そだねー」は流行語大賞に。ノルディックスキーのジャンプでは高梨沙羅が銅。期待に応えた女子選手の活躍は話題をさらった。

中央省庁で障害者雇用水増し

 中央省庁が長年にわたり障害者雇用を水増ししていたことが発覚した。弁護士ら第三者による検証委員会が調べた結果、28の行政機関が不正を行い、2017年6月1日時点で3700人を障害者として数えていたことが判明。本来なら法制度を整備・推進する立場にある中央官庁のモラルの低さが批判された。政府は約4000人を新たに雇うことを決めた。
 障害者雇用促進法は国や企業に一定割合の障害者を雇うよう定めている。基準をクリアしたように見せるため、中央省庁では障害者手帳を持たない職員や退職者を障害者に含めるなどのずさんな運用が目についた。省庁別では国税庁が1103人で最多。制度を所管する厚生労働省でも不正があった。地方自治体などでも水増しの実態が明らかになった。

働き方改革、外国人就労で関連法

 2018年は仕事と日本社会の在り方に大きな影響を及ぼす二つの法律が整備された。6月に成立した「働き方改革」関連法は、残業時間の上限に罰則付きの規制を導入することが柱で、70年ぶりの労働法制の大改正。高収入の専門職を労働時間規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度」の創設なども決まった。
 高度な専門分野に限ってきた外国人労働者を、新在留資格を創設して農業、建設など多分野に広げる改正出入国管理法は12月に成立した。19年4月にスタートするこの制度には「事実上の移民政策」との指摘もあるが、深刻な人手不足への対策として安倍政権が法制化。具体的な対象分野や人数、受け入れ体制は成立後に定める省令などに委ねており、野党からは「拙速だ」との批判を浴びた。

日銀が政策修正、金利上昇容認

 日銀は7月31日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和政策の修正を決めた。デフレ脱却を目指す日銀は個人や企業がお金を借りやすいよう金利を極めて低く抑える政策を採ってきたが、国債取引の低迷や金融機関の収益悪化など副作用も大きくなってきた。このため住宅ローンの目安などとなる長期金利の上昇を一定程度容認し、こうした副作用を和らげつつ緩和を長く続けられるような仕組みに変えた。
 市場では、黒田東彦総裁の就任から5年以上にわたって緩和一辺倒で突き進んできた日銀が路線を転換した重要な決定と受け止められた。政策修正を先取りする事前報道の段階から円相場や金利は大きく変動したが、しばらくすると国債取引は再び低迷。日銀の大規模緩和策は行き詰まりが鮮明になりつつある。