特集2016年12月5日更新

あなたのお宅は大丈夫?火災予防特集

秋の全国火災予防運動は終わりましたが、冬は暖房器具の使用が増え、また空気が乾燥して火災の起こりやすい季節のひとつです。火災の起こりやすい条件や、火災を発生させやすい意外なものなどを紹介します。火災を防ぐためにどうすればいいか、この機会に考えてみてはいかがでしょう。

2015年の日本の火災について

前年より減少したが、それでも13分に1件の火災

消防庁による資料「平成27年(1月~12月)における火災の状況」によると、総出火件数は、39,111件で、これは、おおよそ1日あたり107件、13分に1件の火災が発生したことになります。前年と比べると4,630件の減少(-10.6%)になります。
また火災による総死者数は1,563人で、前年より115人減少(-6.9%)しています。負傷者数は、6,309人で、前年より 251人減少(-3.8%)しています。
また火災損害は824億1,542万円になるとされています。これは1日あたり22,608万円、1件あたり211万円という計算になります。

出火原因の1位は「放火」、2位は「たばこ」

総出火件数の39,111件を出火原因別にみると、「放火」4,033件、「たばこ」3,638件、「こんろ」3,497件、「放火の疑い」2,469件、「たき火」2,305件の順となっています。また、「放火」及び「放火の疑い」を合わせると6,502件となっています。

全火災39,111件の出火原因内訳

全火災の死者数の1/4が放火によるもの

全死者数のうち「放火」が原因なのは20.7%、また「放火の疑い」も5.0%となっており、25%が放火絡みで亡くなっていることになります。

全火災の出火原因別死者1,563人の内訳
※死者の発生した建物用途による。

全死者数のうち「放火」が原因なのは20.7%、また「放火の疑い」も5.0%となっており、25%が放火絡みで亡くなっていることになります。

住宅火災の死者のうち2/3が65歳以上の高齢者

住宅火災による総死者(放火自殺者等を除く)数は914人で、前年より92人減少しています。このうち65 歳以上の高齢者は611人で、住宅火災による死者(放火自殺者等を除く)数の66.8%を占めています。2位の「ストーブ」は、エアコン以外の暖房器具を含みます。

住宅火災の出火原因別死者数914人の内訳(放火自殺者等を除く。)
※死者の発生した建物用途による。

大都市で多い放火

「放火」及び「放火の疑い」を合わせると6,502件で、件数が多い主な都道府県は東京都1,023件、大阪府547件(24.5%)、神奈川県495件、埼玉県446件、愛知県405件の順となっており、大都市を抱える都府県の件数が多いことがわかります。

放火を防ぐには?

放火は「誰でも自由に出入りでき、燃えやすいもの」が置かれてる場所で無差別に発生しています。放火を未然に防ぐためには「放火されない環境」を作ることが一番です。

●家の周りはいつも整理整頓し、新聞紙や段ボールなどの燃えやすい物を置かないようにしましょう。
●ゴミは、決められた収集日の決められた時間に出しましょう。
●外灯などを取り付け、家の周りを明るくしましょう。
●物置や車庫などは、必ずカギをかけておきましょう。
●自動車やオートバイなどのボディカバーは、防炎品を使いましょう。
●外出するときは、隣に一声かけて行きましょう。
●地域ぐるみ、まちぐるみで放火防止に取り組みましょう。

消防庁による「放火火災防止チェックシート」

静岡市のサイトに、エクセル版もありました。

火事の原因になりやすい暖房器具

上で触れたように、ストーブなどの暖房器具が火災の原因になりやすいことは今さら言うまでもありません。今の季節はその暖房器具の使用頻度が増える時季ですので、その取扱には十分注意しましょう。

暖房器具の近くにおいては危険なもの

私たちが普段何気なく使っているスプレー缶も要注意! ストーブの近くや車の中などに置いておくとオーバーヒートしたスプレー缶が爆発する可能性があるということです。
もちろん、使い終わったスプレー缶をそのままゴミ箱に捨てるのもNG! 注意書きをよく読み、正しい処理の仕方をしてくださいね。

布団・毛布

寝室で・・・
布団、毛布が電気ストーブに触れて火災が発生、死亡事故に。
毛布やカーテン、衣類などがストーブに触れて火がついたり、ストーブの近くに干していた洗濯物が接触し、火災が発生したケースが多く報告されています。このように、ストーブなどから発生する事故防止のため、就寝時や外出時は必ずスイッチを切る(消火する)こと、ストーブなどの周囲に燃えやすいものを放置しないことを心がけましょう。

まだある、家庭の燃えやすいもの

どんな家庭にもある、とある「モノ」が実はものすごい可燃性物質を含んでいるというのはあまり知られておりません。例えば、スプレー缶などは火に近づけてはいけないという認識は強いが、オレンジの皮なども火に近づけると激しく燃える。これはオレンジの中に含まれる成分「リモネン」が火に近づけることで激しく燃える作用があるからだという。

下の動画ではハンドクリームやマニキュア落としなど、発火性のある材質のものを紹介しています。

暖房器具のチェック項目5つ

■1:去年の灯油は使わない
■2:石油ストーブ・電気ストーブはつけたまま寝ない
■3:石油ストーブで洗濯物を乾かさない
■4:ストーブをつけたまま給油しない
■5:暖房器具の近くにスプレー缶を置かない

子供がいる家庭は注意を!

ちなみに暖房器具をガードする柵のようなものも販売されていますが、ガードをしたとしても小さなお子さんがいるご家庭で石油ストーブはオススメできません。
子どもが折り紙で折った紙飛行機が誤って石油ストーブに当たってしまったり、柵の前で引き出して遊んでいたティッシュが柵の中に入ってしまったら、火事の原因になってしまうことだってあります」
コードに引っかかったり、誤ってぶつかって暖房器具を倒してしまうことは大人でもやってしまうことがありますよね。
「子どもが倒すだけでなく、地震で暖房器具が倒れてしまうことだってありますから、安全のためにも倒れたら、自動停止する機能があるものを選ぶようにしましょう」
倒れる心配のない、ホットカーペットや床暖房などを上手く使ってみましょう。

高齢者はこんな点にも注意!

高齢者に暖房・燃焼器具の製品が多くなっています。これらは高齢者以外でも発生しやすいですが、住居内にいる時間が多く、身体機能が衰えている高齢者に事故の危険が高くなります。

調理などで火を使っている間はその場を離れないようにし、離れるときは必ず火を消しましょう。また、火を使って調理する際は、袖や裾が広がった衣服は避け、火の上に身体を乗り出さないようにしましょう。また、タオルやふきん等の可燃物などを周囲に置かないよう注意してください。

政府による暖房器具の事故防止啓蒙動画です。動画では身近な製品に潜む危険性や誤操作、不注意による事故を紹介しています。正しい知識、正しい取り扱いで暖房器具の事故を防ぎましょう。

■1:こたつの中で洗濯物を干す、衣類を温める
■2:こたつで座椅子を使う
■3:こたつのコードを脚で踏ませている

他にもある、こんな出火原因

IH調理コンロも注意が必要

また、大人でも事故は多く発生しています。直火ではないから発火しないと思っている人もいますが、IHは熱量が高いため、温度が急激に上がりやすいのです。高い温度の鍋に油を注げば、発火の要因になります。
安全装置があるものの、IHと近距離に金属があれば加熱されることも。IHは安全な調理器具ではありますが、“火災や事故になることもある”ということを忘れずに、専用の鍋を使うなどして、安全に使いたいですね。

意外と多いコンセントからの火災

コンセントを長期間差し込んだままにすると、プラグの周辺にほこりが溜まって湿気が付着し、プラグ放電を繰り返す「トラッキング現象」が発生、これが発熱を起こし火災の原因となることもあります。下の記事では、コンセントが原因の火災について認知しながら、定期的なほこりの除去をしていない人が半数以上にもいるという調査結果を紹介しています。

東京消防庁の「火災の実態」によれば、平成15~24年の10年間で“トラッキング現象”による火災は27%も発生しているそう。
どんなに多忙な共働きカップルも“他人事”ではなく身近に潜む危険として、覚えておきたいですよね。

トラッキング現象防止に、こんなグッズも

ホコリが原因で発生する「トラッキング」火災を予防するため、新形状を採用した電源タップを、ヤザワコーポレーションが販売中だ。
タップの真ん中に穴が空いていて、ホコリがたまりにくいのだそう。
普段使わないコンセントの入り口にフタをし、火災や感電事故を防止するための安全キャップを、サンワサプライが発売した。

コードや乾燥機による火災も

ドライヤーは、コードを本体に巻きつけて収納したくなりますが、これが断線をまねくもとに。そのまま使いつづけると、火が発生する可能性があります。
また、乾燥機による火災事故も報告されています。原因は、アロマオイルのついたタオル。アロマオイルは酸化すると発熱しやすく、発火する恐れがあるのだとか。

コードに関してはドライヤーだけでなく、こたつや電気ストーブなども火災の危険性が高いと指摘されています。また、火災だけでなく感電の危険もありますよね。子供のいる家庭は特に気をつけたほうがいいかもしれません。

ちょっと「予想外」な火災原因

動物が原因になることも?

家で飼っているペットが原因で、火災を引きおこすケースも。線香などの火がついたものを倒してしまうだけでなく、コンセントに尿をかけてしまい火事になることもあるそうです。
ペットを飼っていなくても、いつの間にか侵入したゴキブリやネズミが火災の原因になることもあるそうです。とくにゴキブリは、どんなに狭い隙間にも入ってしまいます。
分電盤やコンセントと壁の間に入ると、配線をかじられることもあるそうです。また、死がいなどがトラッキング現象を引きおこしたりすることも。できるだけ家に近寄らせないよう、殺虫剤で駆除するなどして、リスクを防ぎたいですね。

こちらはレアケースな、動物が犯人?の火災。もっとも一番大きな理由は火災報知器の電池が切れていたことのようですが…

ではなぜパイから火が出たのか。原因はこの家で買われている犬のティア(7歳)だったのである!
ティアは深夜2時過ぎにアダムさんの焼いた2つのコーンビーフパイが、ガスコンロの天板に置いてあることに気づき、どうにかして「夜のオヤツ」にありつこうと必死にジャンプをしていたらしい。そのうちに前足でガスコンロのスイッチを押してしまい、パイに着火したということだ。

今年の夏に連日起きた「冷却スプレー」による火災事故

同様の車両火災は前日に名古屋市港区の路上でも発生しており、軽貨物車を運転していた20代の男性が、車内で「冷却スプレー」を使った後に、煙草を吸おうとして火を付けた際、男性と助手席の男性の体に火がつき、顔などに重傷を負ったそうです。

ノート7問題はひとごとではない「リチウムイオン電池」

記憶に新しい、サムスンの「ギャラクシーノート7」発火・爆発事件。この原因は内蔵されているリチウムイオン電池ということですが、このリチウムイオン電池、現在ほとんどの携帯型電子機器に内蔵されているので注意が必要です。

リチウムイオン電池はその性質上、電子機器を構成する主要パーツの中で、唯一と言ってもいいほど「燃えやすい」パーツだ。構造などによって派生種(リチウムポリマーなど)はあるものの、バッテリー内に有機溶剤を用いているため、過熱などの条件が重なると燃えやすい性質を持っている。無機溶剤が用いられる他の二次電池との大きな違いだ。

超レア?手術中のオナラで火事

それによると患者は30代で、新宿の東京医科大学病院でレーザーを使用する手術を受けていました。病院からの報告では「患者の腸内ガスが手術(室)空間に漏れ出て、レーザー照射で発火、燃え広がり、最終的に外科用ドレープに達し火災となった」そう。

火事を防ぐための工夫

住宅用火災警報器の設置・交換を

なお、平成25年から平成27年までの3年間、失火を原因とした住宅火災(住宅火災のうち原因経過が「放火」又は「放火の疑い」であるものを除く)について住警器の設置効果を分析したところ、住警器を設置している場合としていない場合を比べ、死者の発生は2/3、焼損床面積、損害額については約5割減少という結果となり、住警器を設置することにより、火災発生時の死亡リスクや損失拡大リスクが大幅に減少することが分かりました。

常備していますか?防災グッズ

「一人暮らし女子が「枕元に置いておくべき」6つの防災グッズ」という記事は、一人暮らし女子ではなくても参考になる情報ですので、抜粋して紹介します。

■1:火に強い洋服/■2:タオル/■3:スリッパや靴、厚手の靴下/■4:笛や音のなるもの/■5:ライト/■6:飲料水
※詳細は記事本文を!

「東京都防災」が教える「最小限備えたいアイテム」

今回紹介するのは、防災ブック『東京都防災』に記載された「最小限備えたいアイテム」だ。どれも震災後には重宝する物ばかりだが、各家庭における環境はさまざまなので、自分にとって必要な物を考えて備えるようにしよう。

いろいろな防災グッズがありますが、何よりも大事なのは「しまいこまない」こと。火事なんていつ起こるかわからないものに対応するためには、常に手の届くところ、少なくともどこにあるか把握して、すぐに使えるようにするべきです。

非常用持ち出し袋や靴は、家族それぞれが寝ている部屋に置いておきましょう。合わせて、靴を履くときには靴下が必要なので、靴と靴下をセットにしておきます。 更に、懐中電灯はどこへ設置していますか? 避難グッズに入れている方は、災害時は電気も街頭も切れて部屋の中も真っ暗という状態ではになる可能性が高いです。それでは安全に出口まで行くことができません。懐中電灯は、それぞれの寝室に置いていくと安心です。

消火器の“使用期限”のチェックを

一般社団法人 日本消火器工業会と、株式会社消火器リサイクル推進センターが調査したところによると、なんと製造後10年超え(使用期限切れ)のものが多く見つかったんだそう!
え、うちは大丈夫かな? そう思った方はぜひ消火器の製造年月日を見てみてください。
メーカーによって異なりますが、消火器の使用期限は業務用で10 年、住宅用で5年のものが多いようです。

ひそかなブームの「たき火」で注意すべきこと

今、アウトドア好きにたき火がブームなんだそうです。外で火を囲みながら仲間と語り合ったり、食事をしたりというのは楽しそうですね。ただ、当然ながらたき火には火事の確率が高く、出火原因でも上位にランクしていますので、その扱いには十分な注意が必要です。

◆焚き火をするなら必ずルールを守ろう
焚き火で最も注意が必要なのは言うまでもなく火事。細心の注意と準備が必要だ。
火の粉が飛んだり、焼け崩れた薪が焚き火台の外に落ちることは多々あるため、消火用の水を火の近くに常備しておくのは絶対のルール。特に秋冬の山野は枯れ葉が敷き詰められており、あっという間に一山が丸々燃え上がることも。

いかがでしたでしょうか。今回、このページを作成するにあたっって消防庁の方にお話を伺った際に強調されていたのが「火事が起きやすいのは冬だけではない」とのこと。冒頭で「冬は火事の起きやすい季節」といいましたが、あくまでも「火事の起きやすい季節のひとつ」であって、ここで紹介した大半は年間を通して意識して頂ければ幸いです。
最後に、今年の全国火災予防運動で消防庁長官が言っていた、「住宅防火 いのちを守る 7つのポイント」を紹介します。
-3つの習慣・4つの対策-
3つの習慣
○寝たばこは、絶対やめる。
○ストーブは、燃えやすいものから離れた位置で使用する。
○ガスこんろなどのそばを離れるときは、必ず火を消す。

4つの対策
○逃げ遅れを防ぐために、住宅用火災警報器を設置する。
○寝具、衣類及びカーテンからの火災を防ぐために、防炎品を使用する。
○ 火災を小さいうちに消すために、住宅用消火器等を設置する。
○ お年寄りや身体の不自由な人を守るために、隣近所の協力体制をつくる。