特集2017年1月28日更新

読むと腹が減る!?飯テロ漫画特集

最近、グルメ系漫画の中でも一大ジャンルとして勢力を増しつつあるのが「飯テロ漫画」。「飯テロ」とは…例えば深夜、テレビやSNSで美味しそうな料理やお菓子の写真を大量に目にするとむしょうに食べたくなってしまうことってありませんか?「夜中なのに!お腹が空いてきた!これはテロだ!飯テロだ!」となってしまう、ネットスラングのひとつです。これを漫画でやるのが飯テロ漫画と呼ばれるジャンル。最近、そんな「飯テロ漫画」が増えて来ているのでいくつか紹介します。

最近の「グルメ漫画」の主流?の「飯テロ漫画」

通常のグルメ漫画といえば料理で事件を解決したり、勝負をしたりとあくまで「料理シーン」が主流なのですが、飯テロ漫画はどちらかと言うと「食べるシーン」がメイン。美味しそうな料理やその料理を食べるシーンの描写に力を入れて、いかに読者の空腹感を誘発するか、それが「飯テロ漫画」です。

 ここ数年続く、グルメマンガブーム。それまでグルメマンガの定石であった対決路線や珍レシピものではなく、『孤独のグルメ』(扶桑社)、『深夜食堂』(小学館)、『めしばな刑事タチバナ』(徳間書店)、『きのう何食べた?』(講談社)、『いつかティファニーで朝食を』(新潮社)などに代表されるように、いわゆる日常の食べ物にスポットを当てたものが主流となっている。

紹介する飯テロ漫画

孤独のグルメ深夜食堂ラーメン大好き小泉さんダンジョン飯ゴールデンカムイ山賊ダイアリー胃弱メシおとりよせ王子 飯田好実野原ひろし 昼メシの流儀ワカコ酒忘却のサチコ

※単行本の巻数は2017年1月時点のものです。また「発売日」は第1巻のものとなります。

孤独のグルメ

ドラマ化で大ヒットした飯テロ漫画界の王者

昔から独特なセリフ回しでカリスマ的な人気を誇っていた漫画でしたが、実写ドラマ化で一大飯テロブームを巻き起こした作品。実在の店を舞台にしていることもあり、ファンによる聖地巡礼も。

作者久住昌之(作), 谷口ジロー(画)
出版扶桑社
単行本1~2巻
発売日1997年10月
 ここ数年、ひとりで寂しくご飯を食べることを“ぼっち飯”と呼び、なかばバカにする風潮がある。しかし、そんな“ぼっち飯”の時間を、とても幸福なものとして描いているマンガがある。そう、『孤独のグルメ』(久住昌之:原作、谷口ジロー:作画/扶桑社)だ。本作は、松重豊の主演で実写ドラマ化され、中年男性・井之頭五郎がただひとりでご飯を食べるという地味な内容ながらも、非常にコアなファンを獲得。なんとシーズン4まで制作され、この10月からはシーズン5の放送が控えている。

ドラマBR&DVDの発売及び「Season6」の制作も決定

 個性派俳優・松重豊主演で、同名漫画(作:久住昌之、画:谷口ジロー/扶桑社『週刊SPA!』)を映像化したグルメドキュメンタリードラマ『孤独のグルメ』。テレビ東京系で正月2日に放送された東京が舞台の『正月SP~井之頭五郎の長い一日』に、2016年1月と8月に放送された『北海道・旭川出張編』と『東北・宮城出張編』を加えたスペシャルドラマ3作を収録したBlu-ray&DVD-BOXが、4月12日に発売される。また、連続ドラマの「Season6」の制作も決定した。

深夜食堂

人情味あふれるノスタルジックな飯テロ漫画

こちらも実写ドラマ化だけなく、映画化もされるほどの人気で飯テロ漫画の火付け役となった作品のひとつ。客の注文する品とその裏にある人間模様が魅力となっています。

作者安倍夜郎
出版小学館
単行本1~17巻
発売日2007年12月
作品の舞台は、新宿歌舞伎町のゴールデン街と思わしき飲食店街にある「めしや」という食堂。営業時間は、夜12時から朝7時頃まで。つまり真夜中メインなので、常連たちはみんな「深夜食堂」と呼んでいる。

実写化も人気。ドラマだけではなく映画化も。原作は男性向け漫画雑誌の連載作品だが、女性人気も高い

「飯テロ系ドラマは好きでよく見るのですが、20代女性にも『深夜食堂』は人気です。お客さんが『生姜焼き定食』『焼うどん』『赤いウインナー』など、食べたいものを頼むのですが、ただ食べたいだけではなく、その裏に想いがあるんです。
マスターもなんだかそこを理解して作っているようで、やさしさとほっこりするところがある。『ああ、そうだよね』と、ほっとするところがよいです」
 本作は、安倍夜郎のコミックからテレビドラマ、そして映画へと広がってきたのだが、マスターと客たちの微妙な距離感の中で、心地良い人情ドラマを展開させ、見る者を、出来のいい連作短編集を読んでいるような良い気分にさせるという基本路線は何も変わっていない。まさに行きつけの店の定食の味わいといった感じがする。

ラーメン大好き小泉さん

美少女JKがラーメンを食べまくる!ドラマ化もされた飯テロ漫画

「ラーメンが大好きな女子高生」という異色の組み合わせで人気に。名店の紹介からコンビニのカップ麺まで、あらゆるラーメンを食いまくる!

作者鳴見なる
出版竹書房
単行本1~4巻
発売日2014年10月
本作は“美少女が大好きな女子高生”大澤悠が、クールな美少女にも関わらず、ラーメンが大好きな転校生・小泉さんにつきまとうことで、ラーメンの魅力にハマっていくというストーリー。
どんなジャンルのラーメンに対しても敬意を払い、ベストな食べ方を編み出す姿勢はお店のラーメンに対峙する時となんら変わりがない。 彼女のお嬢様な見た目らしからぬ、“コンビニ食を堪能する”庶民ぽいおギャップが印象的だ。

ドラマも好調で、スペシャルドラマが新年に放送された

とにかくラーメンが美味しそうで、見ている方もお腹が空いてしまう「飯テロ」ドラマとして有名な同作に、「早く小泉さんがラーメンを勢いよくすする音が聞きたい! 興奮してきた」と期待の声が上がっている。

ダンジョン飯

モンスターを調理する!? 斬新なファンタジー飯テロ漫画

ダンジョンで倒したモンスターを調理して食ってしまうというファンタジー・飯テロ漫画。丁寧な調理シーンでモンスターなのに美味しそうに見える!?

作者九井諒子
出版KADOKAWA
単行本1~3巻
発売日2016年4月
そんなグルメ漫画でも、一際尖っているのが『ダンジョン飯』です。「え? ダンジョンってあのドラクエとかに出てくる迷路とかの?」と思った人も多いと思いますが、そうです、RPGゲームに出てくるあのダンジョンです。『ダンジョン飯』は、ダンジョンに潜入した登場人物たちが、スライムやミミック、大サソリなど、倒した魔物を調理するという異色のグルメ漫画です。

「全国書店員が選んだおすすめコミック」第1位に

 第11回目となる今回は、2,228名の書店員による投票の結果、『ダンジョン飯』(九井諒子/KADOKAWA)が第1位に輝きました。

ゴールデンカムイ

歴史ロマン飯テロ漫画

エンタテインメント作品としても極上なんですが、見どころはなんといってもアイヌの少女が「リス」や「アザラシ」などをさばいて調理するシーン。「マンガ大賞」受賞作だけあって、読み応えあります。

作者野田サトル
出版集英社
単行本1~9巻
発売日2015年1月
 もちろんグルメは日常シーンを彩る一要素にすぎず、本来の『ゴールデンカムイ』はミステリーや歴史ロマン、そして過激なアクションを詰め込んだ超重量級のエンターテインメント作品である。
 主人公の青年・杉元佐一は、常人離れした戦闘力と生命力を誇り“不死身の杉元”とあだ名される、日露戦争帰りの元兵士。戦死した親友の妻(杉元の幼馴染でもある)の病気治療のため、大金が必要な杉元は、北海道で砂金掘りをしていたところ、ふとしたことから莫大な“アイヌの金塊”の情報を得る。だが、そのありかを示す暗号の入手だけでも一筋縄ではいかず、金塊を狙う他勢力からの妨害も激化。それでもアイヌの少女・アシリパ(※リは本来は小文字)の助けを得ながら、前へ前へと突き進む杉元の奮戦が鋭い筆致で描かれている。

「マンガ大賞2016」大賞を受賞した人気作

 ノミネートされた11作品から、「マンガ大賞2016」の大賞に輝いたのは、野田サトルの『ゴールデンカムイ』。同作は2014年から『週刊ヤングジャンプ』に連載されている一攫千金サバイバルマンガ。「2015年度コミックナタリー大賞」第2位、「このマンガがすごい! 2016」オトコ編・第2位を獲得し、累計180万部を突破した人気作が2位に13ポイント差をつけて見事大賞を受賞した。

山賊ダイアリー

作者自身のリアルなハンター生活をつづった狩猟飯テロ漫画

作者はなんと現役の猟師。シカやキジバト、イノシシなど鉄砲や罠で仕留めた動物をさばいて調理。時にはカラスなんて食材も。猟のテクニック、先輩や仲間など猟師同士の交流や自然と共生する猟師という生き方など、「お仕事漫画」としても新鮮で読み応えあります。

作者岡本健太郎
出版講談社
単行本全7巻
発売日2011年12月
狩猟免許を持つ作者の岡本健太郎氏がリアルなモンハン生活をつづる狩猟漫画。作中ではイノシシやシカ、鳥類などの獲物を解体して食べるシーンも多分に出てくるのだが、その中には絶対に食べないカラスの姿もアリ。
 特におもしろいのが、料理の過程。キジバトやカラスならば、普通にマンションのベランダで、袋の中で羽をむしり(カラスの黒い羽根の下には白い羽毛が生えているそう)、ガスコンロでうぶ毛を焼き、肉は串に刺してグリルで焼く。マムシは頭を落とし、皮をはぐと“ゴムホース”みたいに。「魚より簡単にさばけますよ」と言われると、思わず「あ、できそう」な気分に。

マンガ大賞2013の大賞候補になった話題作

書店員や有識者が選考する「マンガ大賞2013」の大賞候補にノミネートされ、注目を浴びた『イブニング』(講談社)連載中の狩猟漫画『山賊(さんぞく)ダイアリー』。作者の岡本健太郎氏は実際に狩猟免許を所持し、自ら山の中に入って銃を片手に動物を狩る。

胃弱メシ

胃弱のための胃弱による胃に優しい飯テロ漫画

健啖家の多い飯テロ漫画の主人公において、この作品は「胃弱」な主人公という変わり種。紹介される料理は胃に優しい料理ばかりなので、お腹が弱い食いしん坊も安心。

作者マキゾウ, バーグハンバーグバーグ
出版KADOKAWA
単行本1巻
発売日2015年10月
胃が弱い=“胃弱者”の主人公・伊賀洋太が、胃に優しくて、なおかつ美味しい料理を提供するお店を食べ歩くというストーリー。ここで紹介される料理は、ヘビーで脂っこいものは一つもない。

がっつりグルメが辛い人にも安心の飯テロ漫画

 胃が弱くてヘビーなものを食べられなかった胃弱者たちも、本書で紹介されている料理なら、安心して食べられること請け合い!

おとりよせ王子 飯田好実

実際に注文が出来る商品をアレンジして食べる飯テロ漫画

お店で食べるのではなく、通販で全国各地の美味しいものを「お取り寄せ」して食べるという作品なんですが、この主人公がまあ美味しそうに食べること。「全国うまいものカタログ」としても“実用性”アリです。

作者高瀬志帆
出版徳間書店
単行本1~7巻
発売日2011年11月
毎週水曜日のノー残業デーはおとりよせの日――プログラマの飯田好実君の趣味は「おとりよせ」。全国各地の美味しいものを取り寄せ、食べます。これだけの漫画なのですが、実に美味しそうに食べ、「オレオリ(俺のオリジナル)」でアレンジして食べるのです。作中に登場するおとりよせは全て実在するため、読んだらそのままネットで注文可能。

2013年に実写ドラマ化。元SKE48・松井玲奈がオススメのグルメ漫画にあげたことも

SKE48ではメンバーらと"SKE2次元同好会"を設立。5月18日に放送された『乃木坂工事中』(テレビ東京系)でも、乃木坂46のメンバーに「グルメマンガ」をレクチャー。『ワカコ酒』『おとりよせ王子 飯田好実』(共に徳間書店)、『きのう何食べた?』(講談社)、『いつかティファニーで朝食を』(新潮社)といったマンガを紹介していた。
主人公の飯田好実役を演じるのは、連続ドラマでの主演は今回が初となる俳優集団「D2」の近江陽一郎。主人公の姉・飯田愛実役は青山倫子、会社の上司である主任役はドランクドラゴンの塚地武雅、後輩の朝倉麻世役は山下リオ、先輩役の遠藤佳子役は北陽の虻川美穂子、隣人・飴宮春菜役は伊藤修子、おとりよせ商品を届けてくれる宅配男・木下役は本多力など、豪華俳優陣が演じる。

野原ひろし 昼メシの流儀

あの有名漫画のキャラクターによる飯テロ漫画

身もフタもないことを言うと、「クレヨンしんちゃん版孤独のグルメ」。クレヨンしんちゃんのお父さん・野原ひろしが昼休みにうまいメシを求めて街をさまよう…というスピンオフ漫画。サラリーマンの悲哀と、彼の昼飯に対するこだわりが笑いを誘います。

作者塚原 洋一, 臼井 儀人
出版双葉社
単行本1巻
発売日2016年10月
 家族も知らないひろしの昼飯事情にスポットを当てた同作では、午前中の仕事の疲れを癒し午後の活力にするために、ひろしが旨い飯を追い求める。限られたお小遣いをやりくりしながら、こだわり抜いた男の昼飯の食いざまは「サラリーマンに特にグッとくる飯テロ漫画!」「思わずお腹が空く!」「これは夜にだけは見てはいけないマンガだな」と大好評。

塚原洋一によって描かれた野原ひろしにも注目

 同作は、キャラクター原作を臼井とし、パチンコ漫画『パチラッチ』などで特に男性読者から高い評価を受ける塚原洋一によって描かれており、「あの勢いがすごく好きなんだよな」「ぐわ~でお馴染みの塚原先生か! これは期待してしまう」との声が続出。

ワカコ酒

お一人様、呑兵衛女子必見の飯テロ漫画

最近、増えてますよね女性の「一人呑み」。彼氏からの誘いを断ってでも一人呑みを優先する酒好きOLワカコが、酒を呑んでは「ぷしゅー」となるゆる~い日常を描いています。主人公の顔より料理の方が描写に気合入っていますね(笑)

作者新久千映
出版徳間書店
単行本1~8巻
発売日2013年05月
どこであっても「マイ・酒呑みワールド」にどっぷり浸りきっていて、心底お酒とおつまみを楽しんでいるのだ。そこには「周囲からどんなふうに見られているのかしら」とか「浮いちゃってないかしら…」なんていう、変な自尊心というか、ナルシスティックな雑念はまったくない。ごくごくシンプルにお酒とおつまみを味わうワカコの姿は、潔くてかっこいい。

アニメにもドラマにもなった話題作。韓国でもドラマ化された

まず、最初にご紹介したいのは、武田梨奈さん演じる主人公のOL「村崎ワカコ」が、様々なお店で美味しい料理とお酒を楽しみ、プシューと締める女性主人公の飯テロドラマ『ワカコ酒』です。
実はこの作品はアニメ化もされており、「村崎ワカコ」の声優は沢城みゆきさん。あの『ルパン三世』の「峰不二子」を演じられている大人気声優です。ドラマももちろんですが、アニメ版もお薦めです。
原作マンガでは26歳のOL村崎ワカコがさまざまな店をさすらい、ひとり酒を楽しむ様子を描かれているが、韓国では“女性が一人でお酒を飲む”という習慣がない為、本作は「今夜は仕事の後に誰にも気を使わず自分だけの贅沢な時間を」という新たなライフスタイルを提案するといったコンセプトの下ドラマ化された。

忘却のサチコ

悲しみを忘れさせてくれる美味しいものを求めて主人公がひた走る異色作

結婚式で新郎に逃げられるという過酷な体験から逃れるために、美味いものを求めるサチコ。これだけ見ると「なぜ?」と思わなくもないですが、「嫌なものを忘れるために美味いものを食う」というコンセプトには思わず納得です。美味しいものを食べている間は、食べ物のことだけ考えていたいですよね。

作者阿部潤
出版小学館
単行本1~8巻
発売日2014年12月
式の最中に新郎が置き手紙を残して失踪してしまう。完璧な人生のため、妥協の果ての結婚だったのに、自分がショックを受けていることに気づいたサチコ。彼女は定食屋でサバ味噌煮定食を注文する。その美味しさは、すべてを忘却させた......。
 そんなわけで、この物語では、サチコが美味しいものを食べて、すべてを忘れて幸せを感じる姿が一話完結で描かれていく。

異色のグルメ漫画として話題になっている飯テロ漫画

本作は、「美味しいものを食べると、幸せな気持ちになれる」という、当たり前だけど忘れがちなことを教えてくれる。忙しさのあまり、食生活がおざなりになっている現代人に、ぜひ読んでもらいたい一作だ。

気になる作品はありましたか? どれも読めば腹が空いてくること確実! 深夜に読む時はご注意を。