特集2017年1月9日更新

気をつけたい…いろいろなハラスメント

つい最近もパワハラによる会社員の自殺が話題になったように、様々な「ハラスメント」による被害が深刻な社会問題となっています。ハラスメントのパターンを紹介するとともに、ハラスメントにあった場合は?またハラスメントをしないためには?など対策についてもまとめてみました。

どれだけ知ってる?ハラスメントの種類

セクハラ=セクシャル・ハラスメント

セクハラとはセクシャル・ハラスメント(性的な嫌がらせ)の略で、一般的に学校や職場等で「相手の意思に反して不快や不安な状態に追いこむ性的な言葉や行為」を指します。
一言にセクハラといっても、同じ言葉でも、発言する相手との関係によって受け止め方も変わりますし、多くは男女間のコミュニケーションによるものなので非常にセンシティブな問題です。

パワハラ=パワーハラスメント

厚労省によれば、パワハラの定義は「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」とされます。
(1)暴行・傷害(身体的な攻撃)(2)脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)(3)隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)(5)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

マタハラ=マタニティハラスメント

厚生労働省がマタハラと定めるものには、大きく2つのものがあります。
従業員が妊娠・出産・育休の申し出・取得等をしたことを理由として、事業主が解雇その他の不利益な取扱いをすること。
職場におけて行われる上司・同僚からの言動により、妊娠・出産した「女性労働者」や育休等を申し出・取得した「男女労働者」等の就業環境が害されること。
さらに、この2.のマタハラには、2つのタイプがあります。
「制度利用への嫌がらせ型」
「状態への嫌がらせ型」
ですから、「不利益な取扱い」「制度利用への嫌がらせ」「状態への嫌がらせ」の3つのタイプに分類することができます。

アルハラ=アルコールハラスメント

適度にお酒を飲み交わすのであればお互いの親交を深める事もできますが、そんなに量を飲めない人やそもそもお酒が好きではない人に対してお酒を強要すると、アルコールハラスメント(いわゆる「アルハラ」)と言われてしまいかねません。では、実際に同僚にアルハラをしてしまった場合に会社から処分されてしまうことはあるのでしょうか?

モラハラ=モラル・ハラスメント

「モラハラ」の実際の概念は実ははっきりとはしませんが、一言でいえば、「言葉や態度で人の心を傷つける精神的暴力」と考えていただければよいのではないでしょうか。
近年は、肉体的暴力(DV)の被害もさることながら、モラハラによる被害を理由に離婚を望む人も少なくありません。

オワハラ=就活終われハラスメント

「オワハラ=就活終われハラスメント」、つまり企業が優秀な人材を自社に囲い込むために、他社への内定辞退や選考辞退を、内定を出す条件にしたり、内定を出した後に強要・示唆したりすることである。
オワハラは、2016年新卒採用のトレンドワードと呼ばれることが多いが、昨年の採用活動から突然生まれたものではない。行為自体はずっと以前から存在していたが、「オワハラ」という行為を象徴する言葉が存在していなかっただけである。「オワハラ」というネーミングの妙や、就職関係者や大学教授らがメンバーに名を連ねるNPO法人DSSがユーチューブにアップした解説動画が話題になり一気に一般化した。

アカハラ=アカデミック・ハラスメント

「まず一般論として、教授には、学生の指導方法や指導内容について、一定の『裁量』が認められています。しかし、これはあくまで、よりよい指導効果を上げるという教育上の配慮に基づく裁量です。
したがって、教授が教育上の上下関係を利用して、学生に対して行った言動が、教育上の裁量を逸脱・濫用している場合には、民法709条の不法行為に該当します。
いわゆる『アカデミック・ハラスメント(アカハラ)』と呼ばれるものですね」

スメハラ=スメル・ハラスメント

本来ならば心地よくないといけないはずの“香水”が、気分を害すほどの“悪臭”になる。ちまたではこれをスメル・ハラスメント、通称『スメハラ』と呼ぶらしい。とはいえ、香水をつけること自体はその人が周囲を意識し、よかれと思ってやっている行為なのでなかなか注意しにくいものだ。

他にもある、こんなハラスメント

カラハラ=カラオケ・ハラスメント

何を歌うかはもちろん個人の自由だが、最近は、嫌がる相手を無理にカラオケに誘うことを「カラハラ(カラオケ・ハラスメント)」とする風潮にあるようで、注意が必要だ。職場の仲間で歌うときに、部下に無理強いすれば「パワハラ」、デュエットを強要すれば「セクハラ」にもなりかねない。

カジハラ=家事ハラスメント

「せっかく洗濯物を干したのに、妻から言われたのは“シワがついてるから洗い直すね”の冷たい一言」──家事を手伝った夫が妻からキツい言葉でダメ出しされてしまうのが、今メディアを賑わす「家事ハラスメント」なんだとか。そんな「家事ハラ」を受けた男性の、悲痛の叫びを紹介する。

ブラハラ=血液型ハラスメント

あくまで一般論として流布されている血液型占いだが、A型のユキさん(仮名)のバイト先では、オーナーの考えで特定の血液型の人は採用しないという取り決めになっていたそう。こうした血液型による差別は「ブラッドハラスメント」、略して「ブラハラ」と呼ばれる。

えっ?これもハラスメント?

他にはこんなハラスメントも。
・エアハラ……真剣な雰囲気や和やかな雰囲気を壊す行為
・ジェンハラ……「女らしく」「男らしく」のように社会通念上の固定概念による性差
・ゼクハラ……未婚の子に対して結婚へのプレッシャーを母親からうける行為
・ソーハラ……SNSにおいて、職場などの上下関係を背景に行われる嫌がらせ行為
・ペット・ハラスメント……飼い主がペットに対する嫌がらせ

ヌーハラ=ヌードルハラスメント

「ヌードル・ハラスメント」(ヌーハラ)といった新語が独り歩きしている。ヌードルは蕎麦やラーメンなどの麺で、ハラスメントは人を困らせる事、嫌がらせといった意味だ。外国人には麺をすするといった習慣がないため、すする音を聞かせて不快な思いをさせないよう、音を立てずに食べるべきだ、という主張が裏にはある。

コミュハラ=コミュニケーションハラスメント

2015年9月20日放送・松本人志の「ワイドナB面」(フジテレビ系)では、コミュハラというハラスメントを紹介していた。
「コミュ障」と言う言葉は前からあって、これは、企業が新人に求める能力としてコミュニケーション力を喧伝するようになってすぐ生まれた言葉だ。コミュニケーション力に長けていないと就職できないと若者達は言った。

知名度ゼロ、こんなハラスメントも

ちなみに上述の調査で、なんと1票も入らなかった認知度0の「〇〇ハラ」が以下の3つ。
(1)テクハラ(テクノロジー・ハラスメント)
IT機器の操作に不慣れな人に対する嫌がらせ
(2)レイハラ(レイシャル・ハラスメント)
人種的偏見に基づく嫌がらせ
(3)レリハラ(レリジャス・ハラスメント)
宗教団体やその関係者から受ける精神的・肉体的・経済的な苦痛を伴う嫌がらせ

「ハラスメントではない」と思うハラスメントもある?

Q2.あなたがハラスメントだと思わないものはどれですか。(いくつでも)
全部がハラスメント 62.0%
ハラスメントだと思わないもの
1位 エアハラ
2位 ブラハラ
3位 ジェンハラ
4位 ゼクハラ
5位 カジハラ
30数種類あるハラスメントの中で、ハラスメントだと思わないものがあるか聞いたところ、62.0%の方は「全部がハラスメント」と回答しました。
ハラスメントだと思わないものがある人304人の回答は左記の通りです。
2007年、新語・流行語大賞にエントリーされた「KY(空気読めない)」が、現在ではハラスメントのひとつとして認知をされているようです。

ハラスメントのない環境にするためには

4人に1人が「ハラスメントを受けたことがある」

職場や家庭、学校などでハラスメントを受けて嫌な思いをしたことがある人は4人に1人にあたる26.6%でした。受けた場所は職場が男女とも一番多いのですが、男性で次に多いのが学校、女性は家庭と受けた場所が性別によって異なることが分かりました。

ハラスメントをしてくる相手は圧倒的に「上司」

ハラスメントや嫌がらせをどんな人がしてきたか聞いたところ、最も多かったのは上司(70.4%)でした。
続いて、先輩(15.0%)、同僚・同期(14.1%)とほぼ勤務先で行われていることが分かりました。

加害者の性別は男性が6割超

実際にハラスメントをしてきた人の性別を聞いたところ、加害者の67.6%は男性だということが分かりました。
ただ、女性被害者の場合、女性が加害者の場合も多くいる事が分かりました。

ハラスメントを受けても「何もしない・できない」が大半

ハラスメントや嫌がらせをされた時の対応を聞いてみました。ほぼ半数の45.1%は何もせず、やり過ごしていることが分かりました。直接抗議した人は16.4%、上司に相談した人は10.3%と少数です。中には「直接抗議したら無視されるようになった」や、「上司に相談したら、退職勧告された」などの二次被害に遭われた方もいました。

ハラスメントを受けたら

パワハラの「自己防衛策」は

まず、仕事と自分に距離を取る。仕事が本当にあなたの最終目的なのかつねに問う。何のために仕事するかといえば、おカネ、家族、自分の存在価値の確認、人それぞれでしょう。だけど死ぬことではないはずです。わが仕事・わが社じゃなく、この仕事・この会社と距離を置くんです。
そして心臓がドキドキするとか肩が凝るとか、この症状が出たら危ない、即休養という自分の限界サインを見つけておく。もしもうつ病になってしまったら勝手な自己判断で治療を中止しないこと。その場合10年間に5割が再発している事実を念頭に置いてください。回復期は波の高低を小さくするために、調子のよいときは6割主義で。5個やれそうでも、あえて2個はやらないということです。

セクハラは会社に慰謝料請求できる

業務に関連して行われたセクハラやジェンダー・ハラスメント(以下、「セクハラ等」)が原因で退職に追い込まれた場合、そのような発言をした社員だけではなく、会社に対しても、退職による経済的損失や慰謝料を請求することができます。
問題は、セクハラ等が原因で、退職に追い込まれたと言えるかですが、立証はそう簡単ではありません。また、セクハラ等にあたることを「言った・言わない」が争いになることも多いです。

証拠を残して周りの人に相談を

スマートフォンなどで発言を録音できればいいのですが、それができなくても、セクハラ等の内容や、身体的・精神的な不調を具体的に記録しておく、医者にかかっておく(診断書やカルテが証拠になる)、セクハラ等の発言をする社員本人や会社に対してメールなどで抗議しておく、友人などに相談しておく(メールの文面などが証拠になる)とよいでしょう。
セクハラ等で悩んだ場合は、1人で抱え込まず、誰かに話すだけでも、気持ちが楽になったり頭が整理できたりします。相談できる人が周りにいなければ、弁護士に相談をしていただければと思います。
パワハラ・イジメの場合、その立証が難しいことがあります。パワハラ・イジメをした人たちから、「そんなことはしていない」と反論されることがあるからです。一番良い証拠は、パワハラ・イジメをしているその場面をICレコーダーで密かに録音したものです。録音でなくても、パワハラ・イジメを受けた直後に親友に相談したこと(メールなど客観的なものが残っているのがいい)、あるいは医者に相談に行ったことなど、第三者が絡むものがいいでしょう。場合によっては、パワハラ・イジメについて書いた日記や手帳なども証拠になります。

セクハラに遭わないためには、まず…

まずはセクハラを許さないという社内の雰囲気づくりが第一です。セクハラは個人対個人の男女関係のもつれなどではなく、上下関係を利用した行為ですから、職場環境の問題だという意識を皆が持つ必要があります。
そのうえで、セクハラされる側から何ができるかですが、いろいろなケースを見ていて思うのは、やっぱり「嫌なことは嫌だ」と意思表示していいんだということですね。

ハラスメントの「ターゲット」にならないために

セクハラを「受けやすい人」と「受けにくい人」がいます。これは、必ずしも年齢や容姿に関する傾向ではなく、セクハラを受けやすい人に共通の「特徴」があるということです。その特徴を明らかにしながら、セクハラ被害防止につながる方策を見ていきましょう。
セクハラは、男性から女性だけではなく、女性から男性、もしくは同性同士でもありうることですが、今回は、男性から被害を受けないよう、女性の予防策という観点から挙げてみます。

ハラスメントの加害者にならないためには

ハラスメントの加害者にならないためには、ハラスメントの基本的な定義や周辺知識を学んだ上で、自分の言動に責任を持つというのが基本です。ハラスメントは、「相手に不快感や脅威を感じさせる不適切な言動」のことをいいますが、これは「判断基準は受け手にある」ということに他なりません。相手がどう思うかということを常に考え、さらに言動の受け止め方は個人によって大きな差があるということを忘れないことです。

相手に対しての配慮と尊重を

おそらくのところモラハラをしている当事者たちはまさか自分の発言がモラハラだとは夢にも思ってはいないだろう。自分のことを理解してもらうため、さらには相手の将来が良くなると信じている場合だってあるはずだ。
「自分の価値観を理解してもらいたい」と思うのは自由だが、他者の思考や感性を否定するのはいけない。むしろ、十分に配慮し、ひとりの人間として尊重するべきだろう。
たとえこちらにそのつもりがなかったとしても、今の時代、相手が不快感を示した時点で「モラハラ発言をする酷い奴」になり得るのだから。
感じ方、受け止め方は人それぞれで個人差がありますから、従業員が不快に感じた行為がすべて違法なパワハラとなるとは限りません。また、業務上必要な範囲の適切な注意指導、教育、指示にあたる場合には、それが業務上適正な範囲である限りパワハラとは評価されません。結局のところ、問題となっている行為が、業務上適正な範囲であるかどうか、行為の態様、回数、程度、その人の人権を不当に侵害しているかどうかという点から、総合的に判断することになります

ソーシャルメディア・ハラスメントの対処法

「SNSにはアップしないでね」とクギを刺すしかありません。ですが「自意識過剰!」と一蹴されたり、まともに取り合ってくれるかは相手次第です。
一番確実なのは、“そもそも写真に写らない”ということ。本当は写真を撮られるのが嫌でも、場の空気を読んで仕方なく写ることもあるでしょう。ちょっと勇気がいりますが、「写真撮られるの、苦手なの」とやんわり断るのがベスト。

ここに挙げたもの以外にも、ハラスメントの種類はまだまだたくさんあります。全部で40種類以上あるんじゃないでしょうか。これだけたくさんあると、知らず知らずのうちにハラスメントの加害者になっているかも…と思うかもしれませんが、まずは相手に対しての「配慮と尊重」を忘れないことが一番ではないかと思います。