特集2017年4月9日更新

多様化する訪日外国人向けサービス

日本を訪れる外国人の数は年々増加傾向にあり、日本政府観光局によると昨年は2,403万人となりました。日本の各観光地や宿泊施設、交通機関などでは増え続ける訪日外国人に向けたサービスを強化し、多様化が進んでいます。より便利に、快適になっていく訪日外国人向けのサービスについてまとめてみました。

訪日外国人の旅行を快適に

観光案内ロボットをレンタル

京浜急行電鉄、シャープらが京急羽田空港国際線ターミナル駅にて、シャープのコミュニケーションロボット「ロボホン」のレンタルを4月25日から開始。ロボハンは日本語、英語、中国語の3言語に対応しており、旅行中の観光ガイドをしてくれます。

ロボホン流のおもてなし「ロボてなし」

「ロボてなし」には、現在東京都、神奈川県あわせて30カ所の観光情報が入っている。近くにくると、ロボホンがウゴウゴし出して、利用者に通知してくれる。「どうしたの?」などと、ロボホンに話しかけると、しゃべって説明してくれる仕組みになっている。

音声翻訳デバイス「ili(イリー)」

東京メトロは将来的な導入に向けて、銀座駅の旅客案内所、明治神宮前および原宿駅の改札口にて、ログバーが開発した音声翻訳デバイス「ili(イリー)」を使用した、日本語と英語、日本語と中国語の音声通訳の実証実験を行いました。「ili」はネット接続の必要のないデバイスで、いつでもどこでも瞬時に音声翻訳ができます。

「ili」は、ネット接続の必要がなく、瞬時に、旅行に関係する会話に特化して、日本語から英語又は中国語、若しくは英語又は中国語から日本語への音声翻訳に対応できるサービスだ。訪日外国人の乗客に対して、様々な状況に応じた案内を瞬時かつ的確に行うことが期待されている。

観光地やWEBサービスの多言語対応化

実際に観光地を訪れた訪日外国人へのガイドや接客、また訪日中や訪日前の外国人に向けて、各社のWEBサービスの多言語対応化も進んでいます。

通話オペレーターによる接客サポートの増加

ユネスコの世界遺産に登録されている奈良県の春日大社では、訪日外国人増加により外国語での観光ガイドや接客の機会が増えたため、タブレット・スマートフォンを利用したリアルタイム映像通訳サービスを利用。現地に外国語が話せるスタッフがいない場合でも、通話オペレーターが接客をサポートしてくれるサービスを駆使して外国人との接客対応を行うケースが増えています。

訪日外国人参拝者の増加に伴い、神社内各施設での説明が必要な機会が増え、片言の外国語でのコミュニケーションでは参拝者の理解を得られないのではないかという課題がありました。そこで実際に「みえる通訳」をトライアルで試したところ、操作性、利便性が優れていたことに加え、屋内、及び屋外でも問題なく通訳サービスを使用することが出来たため、通訳品質の高い「みえる通訳」の導入に至りました。

訪日外国人向けのツアー検索サイト「アクティビティジャパン」

アクティビティジャパンでは日本中で体験できる「着地型観光体験プラン」を旅行前に事前検索してもらえるよう、多言語対応化も進めています。

訪日外国人旅行者の需要も多様化してきており、爆買いを代表とした「モノ消費」から、日本各地域において、日本文化体験などの「コト消費」へ、訪日リピーター客を中心にニーズが移行してきております。長期滞在をする傾向がある欧米圏のお客様には日本の自然・気候・文化体験を、タイ、特に台湾のお客様に向け、このたび、「アクティビティジャパン」を中国語(繁体)、タイ語でのサービスを開始いたしました。

訪日外国人向けのコンシェルジュサービス「ANA EXPERIENCE JAPAN」

ANA EXPERIENCE JAPANは訪日外国人向けに注力したサービスを展開している事業者を募り、WEBメディアと、旅行代理店や機内で配布される冊子にて紹介。3言語(英語、中国簡体字、中国繁体字=台湾・香港)に対応しています。

●インバウンドに注力している事業者を募り、様々なサービスや地域の魅力を発信する訪日外国人旅行客へのビジネスソリューション(送客・体験)を目的として、2015年11月からスタート(サイトオープン)した事業です。
●訪日への関心を持ち始めた外国人に旅行前から接触できるよう、情報発信メディアとして、ウェブサイトと情報冊子の配布によるオンライン/オフラインの両面で展開しています。3言語(英語、中国簡体字、中国繁体字=台湾・香港)で展開し、情報冊子は旅行代理店、発着空港、海外支店、ANAの国際線路線の機内で配布します。

タクシーのちょい乗り

1月30日に実施された東京都内のタクシーの料金改定。世界標準と比較すると割高に感じる日本でのタクシー利用でしたが、この「タクシーのちょい乗り」によって訪日外国人が気軽にタクシーを利用できるよう促進しています。

 近年増加傾向の外国人観光客の都内観光の移動手段としてご活用頂けます。インバウンド施策のひとつとして、都内観光の活性化を図り、目的地への道のりに迷ったり、荷物が多い場合などに、東京のタクシーをご活用頂けるように致します。

自転車シェアリング

都内でのちょっとした移動に便利な「自転車シェアリング」。東京都内では千代田区、中央区、江東区、港区の4つの区で実施されていて、区をまたいでの自転車の貸し出し、返却ができます。2020年の東京オリンピックに向けてこの貸し出し、返却の対象区間の拡大が進められています。

日本も2020年に東京五輪が開催するというのもあり、それに向けて本格的に自転車シェアリングに力を入れているところ。東京五輪開催時は多くの観光客が東京に集中する可能性があるため、自転車シェアリングを利用することにより、渋滞時の混雑解消や観光もスムーズにできるというメリットがあります。
今後は既に実施されている4区だけに限らず、東京都内で順次拡大していく傾向です。

訪日外国人向けサービスの強化

ビックカメラではビットコイン決済を導入

世界に約2000万人いるといわれているビットコイン。ビックカメラは日本でも仮想通貨の利用が認められたことを受け、訪日外国人の利用を見込んで、決済への導入を決めました。4月7日に訪日外国人客比率の多い有楽町店と新宿東口店で試験導入されています。

 ビットコインユーザーのうち7割超(約1500万人)を占める中国人の取り込みも狙いの1つだ。ビックカメラでは、家電製品を購入する一般層の中国人客こそ増えているものの、1日当たり数十万円〜数百万円の“爆買い”をする富裕層の中国人客は減少中。同社はビットコインの利用環境を整備して顧客満足度の向上につなげ、さらなる中国人客の獲得に注力していく。

「タトゥー有」でも宿泊OK

日本の銭湯や温泉ではこれまでNGとされていることが多かった刺青やタトゥーの入った客の利用。しかし外国では文化的にタトゥーを入れている人も多く、訪日外国人の増加に合わせて、タトゥーの入った人も利用可能とすることで宿泊客の呼び込みを図る事業者も増えています。

「昨今の急増するインバウンド需要に対し、日本の多くの宿泊施設では、海外ではメジャーであるこの『タトゥー文化』を受け入れる体制が整備できているとは言いきれない中、人工温泉も完備している『安心お宿プレミア新宿店』では、『タトゥー』を入れている外国人旅行者の方々も積極的に受け入れて、インバウンド対応温浴施設としての地位確立を目指しています」

ドン・キホーテは多言語対応のECサービスを強化

ドン・キホーテグループでは訪日外国人の旅行前の商品予約や免税対応、多言語対応、フリーWi-Fiなど、すでに様々なサービスを提供していました。そして今度は「majica Premium Global」というサービスで会員登録することで、訪日外国人が帰国した後でも、気に入った商品を購入することが可能となります。

「majica Premium Global」はドン・キホーテ来店時に会員登録し、帰国後、専用サイトやアプリから希望の商品をご注文いただくことで、各国のご自宅へ商品を配送するサービスです。訪日時にドン・キホーテでご購入いただいた商品の“おかわり(リピート)注文”などに対応し、次回ご来店時までの需要を補完します。

訪日外国人に人気のガチャポンを大量設置

低価格の割りにクオリティが高い、日本的なお土産にお手軽でちょうど良いと、訪日外国人に人気のガチャポン。観光地ではガチャポンを大量に設置して訪日外国人の利用を促しています。何が出てくるか分からないギャンブル性も人気の要因となっています。

秋葉原「ガチャポン会館」は大小合わせて500台のマシンを常設している、日本最大級のガチャポンショップである。土日ともなると身動きが取れないほどの人で溢れ、外国人観光客も多く詰めかける、まさに “ガチャポンの聖地” ともいうべきお店なのだ。日本のガチャポン事情最前線を知るには、このお店以外あり得ない……!

成田空港にも大量のガチャポンが設置されコーナー化さています。帰国前の余った日本円をここで消費していく訪日外国人が多いようです。

 日本旅行の外国人観光客に、自国通貨に両替できないコインを、有効に使用してもらおうとの考えから始まったのだが、100円玉・両替機も2台設置されている。ガチャを10個以上購入する人も多い。

訪日外国人に評判の宿泊施設

高級ホテルやチェーン化したビジネスホテルも良いですが、特別に外国人向けのサービスを展開していたり、外国人の間では有名な宿泊施設を紹介します。

The Ryokan Tokyo YUGAWARA

訪日外国人が期待する「これぞ、日本」と思わせる作りや演出を意識した旅館。多少演出が過剰になったとしても、外国人の方に日本の文化を理解してもらいやすいよう、施設に工夫が施されています。

多くの訪日外国人が好んで投稿するインスタグラムに映えるよう、施設は写真映えする色使いを意識しています。

外観や内装には、外国人が日本に求める要素が凝縮されている。京都の伏見稲荷を模したゲートに枯山水を配したエントランス。そこを抜けて館内に入れば、浅草の雷門を思わせる巨大なちょうちんと、歌舞伎画が描かれた凧が視界に飛び込んでくる。廊下の両脇には京都の五重塔や奈良の大仏など、日本の観光スポットを網羅したフォトパネルを配置
客室では遠景の富士山が浮世絵で描かれたふすまを開けた先に、今度は赤富士を描いたふすまを配置。大浴場の壁にも一面に富士山が描くなど、サプライズのある劇場的な演出をすることも欠かさない。

また、前述のとおりインスタグラムなどSNS映えすることから、訪日外国人のSNS投稿そのものが旅館の存在を広めるプロモーションにつながっているようです。

「今は個人による情報発信がパワーを持つ時代。それぞれのゲストがSNSや口コミサイトに投稿する写真には、大きな宣伝効果があります。実際にFBやトリップアドバイザーを見て予約されるゲストは多いです」

旅館ファミリーイン西向

訪日外国人の間では有名な人気旅館。人気の理由は、日本らしい一般的な生活感を感じられることと、親切で温かみのある「おもてなし」。

この旅館は、宿泊客の要望があれば自家用の自転車を貸し出したり、相手のリクエストに合わせてガイドブックに載っていないような小さな和食居酒屋や町内のお祭りにエスコートしたりしてします。このようなちょっとした相手のニーズに応える『和のおもてなし』が、高級ホテルにはないサービスということで外国人にはウケているようです

ウェルカムパーティーで「尺八」を吹いてもらう。日本ならではの音色は海外の人にどう響いたのでしょうか。

自由にくつろいで思い思いの時間の過ごし方をする。どこかの日本の一般家庭にいるような、あたたかい風景があります。

「もしも高級ホテルに泊まっていたらこんな経験できなかったね。部屋は伝統的な日本のスタイルだし」
「普通に生活する人々や、ローカルな和食レストラン。これがリアルな日本だと感じたよ。僕たちが求めていたのはこれさ」

沖縄・住人交流型ソーシャルアパートメント「ESTINATE HOTEL」

互いのプライバシーを守りつつ、ラウンジなどで入居者同士が交流を図ることができる交流型ホテルのソーシャルアパートメントも人気です。

コンセプトは“旅人とローカルが集うライフスタイルホテル”。その交流を促す仕組みの一つが、南の島のリゾートホテルでよく見られるような、レセプションとラウンジの一体化
独立していては行き来しづらいレセプションとラウンジが一体化することで、人が自然と集まる場所になります。気軽に交流できる動線、そこに不可欠なリラックス感を突き詰めると、この形になりました

スタッフが企画するイベントが、訪日外国人同士や地元住人との交流を後押しになっているのも、インバウンド比率8割の理由のようです。

例えば、ハロウィンパーティやクリスマスなどの季節イベント、毎週開催のピッツァパーティ、コンプリメンタリーワインテイスティングなどだ。
「こういった世界共通のイベントには、多くの外国人ゲストが参加してくれます。地元在住の方にもSNSなどで告知しており、若者を中心にたくさんの方が集い、ゲストとの交流を楽しんでいます。お正月の餅つきや書道体験など、日本的なものも根強いニーズがありますね」

今後も増え続けるとされる訪日外国人の旅行客。「おもてなし」のこころでサービスがより便利に快適になることで、外国人の方がより多く、深く日本を知り堪能して帰っていただけると良いですね。