特集2017年8月18日更新

他人と違う外見を武器に 難病と闘い輝く女性たち

病気などにより人と少し違う見た目になったものの、それをハンデとせず、逆に「自分だけの武器」としてモデルなどの世界で輝く女性たちを紹介します。

ウィニー・ハーロウ(Winnie Harlow)

職業モデル
生年月日1994年7月27日(23歳)
出身地カナダ

「尋常性白斑」で“まだら肌”を持つモデル

マイケル・ジャクソンも患っていた尋常性白斑

ウィニー・ハーロウ(本名・シャンテル・ブラウン・ヤン)さんは4歳のころから皮膚の病気に悩まされてきました。
それは人口の約1%未満の確率で発症し、肌の一部の色素がところどころ無くなってしまう非常に珍しい自己免疫疾患、尋常性白斑だったのです(マイケル・ジャクソンも実はこの病気を患っていたという)。

別名「シロナマズ」 完治しにくい皮膚病

"尋常性白斑"――別名「シロナマズ」とも呼ばれ、皮膚の色素が抜け落ちてしまう、未だ謎に包まれた部分も多い慢性的な皮膚疾患である。体のいたるところに現れて、徐々に広がっていくこの病気は、皮膚病の中でも完治しにくいと言われている。

「シマウマ」「牛」と呼ばれてイジメを受けた幼少期

決定的な治療法がない尋常性白斑に悩んだ幼少期のウィニーは、イジメで精神的にも辛い思いをし、一時は自殺を考えるほどだったといいます。

黒い肌をベースに持つ彼女の肌に、白い斑点は目立ってしまい、学校では「シマウマ」や「牛」というあだ名をつけられて、いじめにあってしまったのです。

人気オーディション番組への出演をきっかけにモデルに

彼女に訪れた人生の転換期は、アメリカの人気オーディション番組「America’s Next Top Model」への参加でした。

数多くの候補者の中で、彼女は誰とも違う皮膚をもつということが助けになり、この夏に始まる最新シーズンの出演者に選ばれました。これをきっかけに大きく自信を取り戻すことができ、それ以降、肌を露出することが躊躇なくできるようになったと彼女は言います。

世界中に向けて力強いメッセージを発信し続ける

彼女が世界中の注目を集める要因には、その特徴的な外見だけでなく、SNSやメディアを通じて同じ病気を持つ人や逆境に悩む人に対して力強いメッセージを送り続けている点もあります。

「みんな、ささいな欠点を理由にやりたいことができないって思ってる。でもそんなことないわ。私はそれを証明する為にここにいるの」と世界中に向けて、力強いメッセージを発信している。
さらに、若い女の子に対して「自分についてどう思っているか自分の意見だけに集中して。まわりがあなたに対して持っている意見じゃなくてね」とアドバイス。

前向きなメッセージに背中を押された追随者も続々

同じ病気を持つ彼女のファンからは、「私が小さい頃にあなたに出会っていたかったわ。もう病気を恥じたりしない。ありがとう」といったコメントが届いており、彼女の存在が大きな励みとなっているようだ。

…というふうに、尋常性白斑に悩む人の中にはウィニーの活動やメッセージから勇気をもらう人が多いようで、モデルの道に踏み出す女性も何人かいるようです。

ウィニーの追随者たち

Never let the fear of striking out, keep you from playing the game ⚾

April Star ⭐official account⭐さん(@redefinedmybeauty)がシェアした投稿 -

この女の子はエイプリル・スター(April Star)さん。キッズモデルとして活躍しているようです。

また、憧れのウィニーとの対面も果たしています。

こちらは4児の母であり2人の孫を持つという37歳の女性、イオミコー・ジョンソン(Iomikoe Johnson)さん。

「ある日、ウィニー・ハーロウ(カナダ出身の白斑のモデル)のFacebookを見て彼女をとても美しいと思ったんです。私と同じ病を抱えていても、彼女は自分の美を受け入れている。だから私もそうすべきだと思いました」そのように決心したジョンソンさんは、世間一般の人が“美しい”と評価するものの基準に疑問を感じていたこともあり、「それならば本当の美とは何か、自分が伝えていきたい」と思うようになった。

メラニー・ゲイドス(Melanie Gaydos)

職業モデル・女優
出身地アメリカ

「外胚葉異形成症」で髪の毛も歯も生えていない

陶器のように滑らかな肌

生まれつき外胚葉異形成症という疾患を抱えながらもモデルとして活躍しているのは、アメリカ人で28歳のメラニー・ガイドスさんだ。
この疾患は毛髪や歯、爪や汗腺などの外胚葉組に形成異常が起こるため、彼女には髪の毛や歯が生えておらず、毛穴も存在しないため肌は陶器のように滑らかなのである。

歯のインプラントを拒否

メラニーさんは自身の病気を気にしたことがないそうです。歯がなくてもインプラントを拒否。「人は歯があったほうがいいって言うけれど、私はそう思わないのです」と言っています。

30回を超える手術、中傷、虐待…壮絶な過去

「18歳を迎えることはないだろうと考えていた」

疾患による身体の異変に対処するため、これまでに少なくとも30回を超える手術を重ねたメラニーは、自身の身体だけでなく、人々からの中傷や、アルコール中毒だった保護者の虐待に苦しんだといいます。

「このまま大きくなって、18歳(成人)を迎えることはないだろうと考えていました。自殺しようと思っていたわけじゃありません。だけれども、年を重ねてゆくうちに、いつか私は自殺してしまうだろうと考えていたんです」

美術学校で学んで自分なりの“美”を発見

モデルになることは長年の夢だった

「私は常に人生よりも大きいものに魅せられていました」と語る彼女は、看板や大きな映画の画面に出る人になりたかったことから、モデルという夢に向かい始めました。
ニューヨークの美術学校で学んでいた彼女は、自画像に焦点を当て、彼女自身のユニークな美を発見したことが、モデルへの情熱につながったそうです。

容姿に宿る独創性が評価される

ニューヨークの大学でアートを学ぶメラニーさんが、既存の型に当てはまらないモデルを探していた広告会社の募集に応募したところ採用。
それ以来、彼女のアンドロイド的な容姿が注目され、数々の有名フォトグラファーやファッションデザイナーに起用されるようになったのだという。
メラニーさん曰く、「山ほど仕事をこなしつつも、ステレオタイプに飽き飽きしていたファッションフォトグラファーたち」が、最初に彼女に対して興味を示した。美術学校に通いつつも、週末は撮影に明け暮れる日々。雪だるま式に彼女のキャリアは膨らんでいった。

マデリン・スチュアート(Madeline Stuart)

職業モデル
生年月日1996年11月13日(20歳)
出身地オーストラリア

ダウン症のモデル

18歳の時、NYのランウェイに登場して話題に

現在20歳のダウン症のモデル、マデリン・スチュアートが注目を浴びたのは2年前。2015年9月に開かれた世界最高峰のファッションショー「ニューヨーク・ファッション・ウィーク」に出演したことを大々的に報じられたことがきっかけでした。
この年の5月に母親がマデリンの写真をFacebookに投稿すると、写真は瞬く間に広まり、多くのフォロワーを獲得。2ブランドのキャンペーンモデルに起用され、さらにはNYファッションウイークへ招かれる、といった具合にトントン拍子に話が進んでいったといいます。

「モデルになる」と決意して20キロの減量に成功

ファッションモデルへの道を切り開くきっかけになった母親の投稿は、一緒にファッションショーを見に行ったマデリンが「私、モデルになる」と宣言し、母親が全力でサポートしようと決めたからこそ生まれたといいます。
このサポートを受けながらマデリンは20キロの減量に成功。母親や周り人たちに支えられながら、自らの努力でモデルの夢をつかみ取ったというわけです。

イジメや仲間外れはなかった幼少期

上に紹介した二人とは異なり、マデリンは幼少の頃、障害があることでイジメられたり、仲間外れにされたりといった差別を受けることは全くなかったということです。

まだいる「ダウン症のモデル」

ジェイミー・ブルーワー(Jamie Brewer)

NYファッションウイークのランウェイを最初に歩いた「ダウン症のモデル」は、実はマデリンではありません。マデリンが登場した7カ月前に開催されたショーで、女優として活動するジェイミー・ブルーワーが史上初となるダウン症のモデルとして登場しました。

コニー=ローズ・シーボーン(Connie-Rose Seabourne)

2歳の時にモデル事務所と契約を結んだというニュースが話題になり、日本のネット上からも「大きな瞳に吸い込まれそう」「愛くるしい!」などの声が寄せられたイギリス在住のコニーちゃん。それから2年たった今でも、愛くるしさは変わっていないようです。

ダウン症のキッズモデルは多い?

コニーちゃんのほかにも、アメリカのコーラちゃん(4歳・報道当時)、イギリスのリリーちゃん(2歳・同)といった記事が見つかったことから、ダウン症の子供はキッズモデルに採用されやすいのかもしれません。
そう思って調べていたら、欧米ではダウン症の子を子供服のモデルに起用することが多くなってきているとのこと。なお、アイルランドにはダウン症のある人専門のモデル事務所が開設されているとか(大人も所属)。

エヴィータ・デルマンド(Evita Delmundo)

職業インスタグラマー(猫カフェの店員)
出身地マレーシア

ホクロだらけの女性がミス・ユニバースに挑戦

「チョコチップクッキー」と呼ばれるイジメに遭う

幼い頃からいじめられていたというのは、マレーシア出身で20歳のエヴィータ・デルマンドさんだ。ホクロだけでなく、首と肩を黒いアザで覆われている彼女は、同級生から「モンスター」や「チョコチップクッキー」と呼ばれて、酷いいじめに遭っていたのだという。

自信を取り戻してミス・ユニバースに応募

中学校に入ると周りの生徒が彼女を受け入れるにつれて自信を持てるようになってきたというエヴィータさん。当初はホクロの除去する施術を望んでいたものの、健康へのリスクがあると医師に診断されて断念し、16歳の時に「これが私に与えられた体である」ことを受け入れたといいます。

常に自分の容姿にコンプレックスを抱えていた彼女は、母親と友人に支えられることで「ありのままの自分」を受け入れられるようになったのだとか。そして、ミスユニバースに応募するほどの自信を取り戻したのである!

前向きさが支持されてフォロワー増加中

エヴィータさんは、ミス・ユニバースの候補に選ばれなくても、すぐに別のコンテストへ参加する気満々だとか。そんなポジティブな姿勢が支持されて、彼女のInstagramのフォロワー数はどんどん増えているそうです。

サラ・グラーツ(Sara Geurts)

職業モデル
出身地アメリカ

“美の基準”に挑む26歳

「エーラス・ダンロス症候群」で皮膚がシワだらけ

サラ・グラーツさんは「エーラス・ダンロス症候群(EDS)」により、皮膚にシワが生じてしまう症状を持つ人物です。EDSとは、コラーゲン線維形成機構の異常を原因とする症候群のこと。

これは、体の組織をつなぎ合わせ、適切な強度と弾力性を保持するいわば「接着材」の役目を担うコラーゲンが脆弱かつ不安定であるために引き起こされる病気で、遺伝性の疾患であるとみられている。しかも、現時点で治療法が確立していない難病だ。

EDSの主な症状には、皮膚や関節が伸びやすく切れやすい、皮膚や血管がもろい、出血しやすいなどがありますが、グラーツさんはその中でも皮膚の過伸展性が目立つタイプのようです。

「22、23歳になってシワも愛せるようになった」

10歳の時にEDSと診断されたグラーツさん。高校の時には症状が目立つようになったものの、イジメに遭うこともなく、逆に友人や家族はよくサポートしてくれたそうです。一方で、本人は肌を隠すことに必死だったようですが、22歳の時に考えを改めることを決断。「22、23歳になって本当に自分の体を愛して、シワも愛せるようになった」といい、ちょうどその頃からモデルの活動を始めたそうです。

ファッション業界が推進する「完璧」に立ち向かう

彼女がモデル活動をする原動力は、ファッション業界が推進しようとしている「完璧」に立ち向かうためだといいます。
その目標に向かい、グラーツさんはモデル活動やSNSを通じて、「不完全さ」を武器に“美の基準”にチャレンジしていく強い意志と言葉を発信し続けています。


「他人と違う外見を武器に」と言葉にすれば簡単ですが、武器にできるまでには想像を絶する体験や決断があったばず。それらを乗り越え、前に向かう強い意志を持った人物には人を引きつける大きな力があるんだということをしみじみと感じさせてくれました。
今回紹介した方々のほかにも「義足のモデル」「車椅子のモデル」といった表現を見受けることがありますが、彼女らの活躍により、「〇〇のモデル」という言葉すら使われなくなる日が来るかもしれませんね。