特集2017年9月1日更新

前原氏vs枝野氏の一騎打ち 民進党代表選挙

蓮舫代表の辞任表明を受けて開始され、9月1日に新代表が決まる民進党代表選挙。党内保守派とリベラル派の代表選手とされる前原誠司氏と枝野幸男氏が立候補し、二人の一騎打ちとなった選挙戦のポイントをまとめました。

目次

前原氏が枝野氏破り民進党新代表に

蓮舫代表の辞任に伴う民進党代表選は1日午後、東京都内で開いた臨時党大会で投開票され、前原誠司・元外相(55)が枝野幸男・元官房長官(53)を制し、新代表に選出された。
任期は2019年9月末までの約2年間。前原氏は低迷する党勢を回復させ、政権交代につながる道筋をつけられるかが問われることになる。

臨時党大会後の前原誠司・民進党新代表による記者会見

蓮舫代表辞任表明に伴う約1年ぶりの代表選

都議選惨敗で「蓮舫おろし」激化…わずか1年で退場

7月27日に辞意表明

今回の民進党代表選挙は、蓮舫代表が7月27日に辞任を表明したことに伴うもの。辞任の原因は、東京都議選の惨敗とされていて、それに加えて、本人は否定しているものの、自身の「二重国籍」問題も背景にあるのではとささやかれています。

※「二重国籍」問題について詳しくはコチラ → 民進党・蓮舫氏の「二重国籍」問題

投開票は9月1日 「地方票」は投票済み

「地方票」と国会議員らの票による獲得ポイント数で新代表を决定

民進党の新代表は、「地方票」と呼ばれる一般党員・サポーターと地方自治体議員党員の郵便投票と、国会議員と国政選挙の公認予定者による投票で選ばれます。
新代表の任期は2019年9月末までの2年間。

代表選では、両候補がそれぞれ10分ずつ演説を行った後、地方議員や党員・サポーターの郵送投票結果が発表され、会場の国会議員と公認候補予定者が投票を行う。郵送の地方票と国会議員票の合計ポイントで新代表が決まる。
党員・サポーターは231ポイント(22万8753人)、地方議員は209ポイント(1543人)で、国会議員(145人)と公認予定者(128人)は人数分がそのままポイントになる。計858ポイントを前原氏、枝野氏で競う。

立候補者

前原誠司氏

生年月日1962年4月30日(55歳)
選挙区/当選回数衆議院京都2区/8回
現在の主な役職民進党「尊厳ある生活保障総合調査会」会長
これまでの主な役職党代表、国土交通、外務、国家戦略、内閣府特命担当大臣など

重点政策

1.野党第一党の責任として徹底して長期政権の政治や行政のゆがみを正す。
2.All for Allの理念のもと「自己責任社会」と決別し、自由、共生、未来への責任を旨とした将来の社会像・国民の選択肢を明確に示す。
3.挙党体制を構築し国民に期待され信頼される執行部をつくる。政策論議や国会運営、選挙対策等において我が党の主体性と主導権を確立する。
4.民進党の掲げる理念・政策の旗のもと、あらゆる勢力との協力関係を構築する。

政見動画

枝野幸男氏

生年月日1964年5月31日(53歳)
選挙区/当選回数衆議院埼玉5区/8回
現在の主な役職民進党憲法調査会長
これまでの主な役職党幹事長、内閣官房長官、行政刷新担当、経済産業大臣など

重点政策

『多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う。』
そんな日本を目指します。

1.医療、介護、子育て、教育を支援し、賃金底上げで可処分所得を押し上げ、消費を拡大、経済再生にもつなげます。
2.一日も早い原発ゼロを目指します。再稼働は、その前提条件が満たされておらず、認めることはできません。
3.専守防衛を逸脱した集団的自衛権は認めません。これを前提とした憲法9条の改悪と、徹底して戦います。

政見動画

前原・枝野両氏による主な発言・政策の比較

野党共闘

前原氏…「見直す」 枝野氏…共闘路線継続

枝野氏が「野党共闘路線の維持」を明確に主張しているのに対し、前原氏は「理念、政策が違う政党とは組めない。その是非を含め見直す」と主張している。

政界再編(小池百合子都知事との連携)

前原氏…前向き 枝野氏…小池新党への不信感も

小池百合子都知事の側近の若狭勝衆院議員が年内結成を目指すいわゆる「小池新党」について、前原氏は政界再編論者として「しっかり見極めたい」と将来の連携に含みを持たせるが、枝野氏は「まず、単独で政権を取る覚悟と努力が必要だ」とし、小池新党への不信感も隠さない。

消費税率引き上げ

前原氏…容認 枝野氏…当面見送り

消費税増税について、前原氏は「(10%に)上がることは法律で決まっている」と強調。その上で「しっかりと(現行方針から)組み替え、どういう具体的な受益があるか国民に示したい」と述べ、介護や子育て支援など増税分の使途を明確化していく考えを示した。
これに対し、枝野氏は「現在の経済の足元、消費不況という状況で消費税を上げられるのか」と指摘し、増税を当面見送るよう求めた。

北朝鮮問題への対応

前原氏…直接対話が必要 枝野氏…慎重な姿勢

日本外国特派員協会で共同会見し、北朝鮮ミサイル問題への対応などをめぐり論戦を交わした。前原氏が北朝鮮との直接対話が必要との考えを表明したのに対し、枝野氏は対話に慎重な姿勢を示した。 

「原発ゼロ」の実現時期

前原氏…「2030年代に」 枝野氏…「一日も早く」

前原氏は「私が政策調査会長時代にまとめた『2030年代原発ゼロ』をめざして、あらゆる政策資源を投入する。原発のない社会を着実、現実的につくっていく」と発言。
これに対して、枝野氏は「目標の時期が重要とは思わない」と切り出した。「いかにすれば一日も早く原発ゼロを実現できるか、リアリティある工程表をしっかり示す」として、「年内に法案を国会提出したい」と力説した。

離党者への対応

前原氏…「総合的に勘案」 枝野氏…「厳しく」

枝野氏「離党者には厳しく対応しなければいけない。きちっと(離党者の選挙区に)対抗馬を立てるべきだ」
前原氏「さまざまなことを含んで、総合的に勘案すべきだ」

民進党の未来は…?

安倍政権の支持率が下がる中、最大野党として無党派層や反自民の受け皿になりえてないことから、離党者が相次いでいたり、世間からは「解党したほうがいいのでは?」といった意見も飛び出すなど、現在の民進党は厳しい立場に立たされています。
そんな民進党の未来について触れられている記事をいくつかピックアップしてみました。

“小池新党”結成で離党者が大量発生?

新代表に期待される「離党ドミノ」の歯止め

新代表には、党内結束を実現し「離党ドミノ」に歯止めをかけられるか手腕が問われる。両候補とも挙党態勢の構築を訴えており、執行部人事が試金石となる。

この記事にあるように、新代表には離党者が増えるのを防ぐことが期待されています。これは“小池新党”の動向にも左右されそうです。

野党に目を向ければ、8月3日の時点で、自民党を離党した若狭勝氏、民進党を離党した長島昭久氏らによる新党はできていない。改めて言うまでもなく、小池百合子都知事が率いる都民ファーストの会の国政版だが、年内には5人以上で新党が結成されるもようだ。
「“小池新党”という受け皿ができれば、わが党からは大量の議員が離党し、“移籍”すると見られています」
こう語るのは民進党関係者だ。

“魔の幹事長”人事

上で紹介した時事通信の記事で「執行部人事が試金石」と書かれているように、代表選挙が終われば新代表が行う人事に注目が集まります。
そして、「前原氏、有利」が伝えられる中、早くも「最初にして最大の仕事」として幹事長人事を心配する記事があります。

民進党は、前身の民主党時代から、幹事長人事の失敗で代表が求心力を失ってきた。
昨年9月、圧倒的な支持を受けて初当選した蓮舫氏は自身に近い野田佳彦前首相を幹事長に起用。党内から猛反発を受け、1年足らずで辞任に追い込まれた。
遡れば、2002年の代表選では鳩山由紀夫氏が3選を果たしたが、中野寛成氏を幹事長に起用したことで、党内が混乱し、3カ月後には補欠選挙の敗北の責任をとる形で代表を辞任した。

記事では、枝野氏ら数人の幹事長候補者の名前を挙げ、それぞれの一長一短が簡潔に紹介されています。

「気の毒なぐらい注目度が低い」代表選

「民進党の未来」には険しい道が待っているようですが、「未来」という以前に「現在」がすでにかなり厳しい状況と言えそうです。というのも、今回の代表選の「注目度の低さ」を指摘する記事がいくつもあったからです。これが現在の民進党の立ち位置を如実に物語っているように思えました…。

民進党代表選が、前原氏と枝野氏の間で争われているが、気の毒なぐらい注目度が低い。今年に入って5人もの国会議員が離党し、さらなる離党予備軍もいるそうだから、「党の存立」そのものが危うくなっている。

過半数が新代表に「関心ない」

民進党内では盛り上がる代表選だが、世間の関心は極めて薄い。
毎日新聞の緊急世論調査(5日朝刊)によると、蓮舫代表の次の代表に誰が選ばれるか「関心がない」という回答が52%を占めた。
民進党人気もイマイチで、産経新聞・FNN合同世論調査(19、20両日実施)では、民進党の支持率は前月比0・1ポイント減の6・9%。また、民進党が自民党との間で政権交代可能な政党になるかとの質問には、「思う=14・5%」「思わない=80・7%」だった。

「どっちが勝っても党再生は困難」あきらめの声も

政界での経歴が似ていることから「政治的同志」「親友」などと表現される二人だけに、「新味ゼロで、どっちが勝っても党再生は困難とのあきらめムードがある」との声も。

「路線問題を最終決着させなければ政権を狙う政党としての未来はない」(党長老)にもかかわらず、前原、枝野両氏の論戦には「相手を追い詰めない身内の友情」(党若手)が目立つ。「長年の盟友であっても徹底的に戦う」(自民幹部)という自民党総裁選と比べると民進党代表選は「のどかな小学校の級長選挙」(自由党幹部)にもみえる。
(中略)
弁舌さわやかな前原、枝野両氏の親友対決は「結局、どっちが勝っても党分裂や野党再編への流れは変わらない」(党長老)のが実態かもしれない。

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