全米オープン優勝! 大坂なおみ、強さのヒミツ

2018年9月20日更新

テニスの4大大会である全米オープンで、大坂なおみがセリーナ・ウィリアムズを破り、4大大会のシングルスで日本選手としては初めての優勝という快挙を成し遂げました。彼女の強さの秘密や、日本や海外で巻き起こっている「なおみフィーバー」、彼女の家族の物語などを特集します。

日本人初全米オープン優勝! 世界で「なおみフィーバー」

4大大会(グランドスラム)制覇も日本人初

20歳の大坂が元世界1位の女王にストレート勝ち

テニスの今季4大大会最終戦、全米オープンは8日(日本時間9日)、女子シングルス決勝で世界ランク19位の大坂なおみ(日清食品)が元世界1位の女王セリーナ・ウィリアムズ(米国)に6-2、6-4でストレート勝ち。日本人史上初となるグランドスラム制覇を成し遂げた。

絶対アウエーでも冷静さを失わなかった

「レッツ・ゴー・セリーナ」の合唱も巻き起こった絶対アウエーで、大坂は冷静さを保った。夢にまで見た憧れ、セリーナとの頂上決戦。ついにやってきたマッチポイントで大坂は鋭いサービスを放つ。ラケットを合わせるのがやっとだったセリーナ。リターンに失敗した瞬間、大坂の優勝が決まった。

大会公式ツイッターアカウントも祝福

大会公式ツイッターは「日本のプライド! ナオミ・オオサカがセリーナ・ウィリアムズを6-2、6-4で倒し、グランドスラムシングルス優勝を果たした初めての日本人となった」と速報。偉業を祝福した。

対戦相手セリーナ 審判に抗議

史上最多タイとなる4大大会24度目の優勝を狙った元世界ランク1位のセリーナによる審判への抗議が論争を巻き起こしました。

第2ゲームで観客席にいるコーチから、試合中に禁じられた助言を受けたとされたのが1回目。第5ゲームでブレークバックを許すとラケットをへし折る“暴挙”に出て2度目となり、大坂に1ポイントが与えられた。
第7ゲームで再びブレークを許すとベンチに戻っても抗議を続け、立ち上がり際に「あんた、私からポイントを奪った泥棒よ!」などと審判への暴言で3度目。次の第8ゲームは戦うことなく大坂に与えられた。3―5となり、勝負はほぼ決まった。

表彰式はブーイングが響くなかでスタート

決勝戦は、ウィリアムズ選手が3度の警告を受け、主審と口論、直後の表彰式は、会場からのブーイングが響くなかでスタートした。
優勝者としてのコメントを求められた大坂選手は、「みなさんがウィリアムズ選手を応援していたことと思います。こんな終わり方で、すいません。ただ試合を見てくれて、ありがとう」という意味の話をし始めた。そのうえで、「セリーナと全米の決勝でプレーすることは夢だったので、夢が適って嬉しかった」と続けた。

表彰式ではセリーナが大坂に声をかける場面も

試合中だけでなく表彰式でも、ブーイングし続けた観客に対する批判の声は強い。悲しい表情で涙を見せる大坂選手に対してウィリアムズ選手は、「あなたを誇りに思っているわ。あなたへのブーイングではないのよ」と耳打ちしたという。

首相も修造も 日本中から祝福の声

安倍首相がツイート

松岡修造「おめでとう!ありがとう!そして大好きです!」

元プロテニス選手の松岡修造は自身の公式サイトで、大坂のプレーに勢いがついたことを「なおみエクスプレス」「なおみキャンドル」と独特の言い回しで表現しつつ、「おめでとう!」と祝福しました。

「なおみエクスプレスは終着駅『全米オープン優勝駅』に辿り着いた。これからは、新しい旅が始まる。なおみスーパーエクスプレスの行き先は、なおみさんの夢でもある『グランドスラム全制覇駅』、『世界一駅』、そして『オリンピック金メダル駅』だ!」
「なおみキャンドルの炎は、今後より強い炎として日本だけではなく、世界中に幸せな炎を灯し続けてくれる! なおみさん、おめでとう!ありがとう!そして大好きです!」

羽田空港ではファンと報道陣が出迎え

早朝の羽田空港は「おかえりー」と出迎えたファン約50人に、報道陣も約50人集まる盛況ぶり。横浜での凱旋会見、日産とのスポンサー契約会見と回を追うにつれ、報道陣の数は160人、250人超と膨れあがった。テレビカメラ30台が一挙手一投足を追い掛けるフィーバーぶりに直面して「これほどの注目には慣れていない。うれしいし、ますます頑張りたい」と現実感のない様子だった。

記者会見では「私を目標にしないでください」

「なおみワールド」全開のコメント

子供たちへのメッセージを求められても「ゲームなので楽しんで。あとベストを尽くすこと」と真面目に答えた後で「私を目標にしないで。そこまで責任持てないから」とごまかし、国籍のアイデンティティーを問う長ったらしい質問には「それって質問なの?」と突っ込むなど、大坂らしい自由なペースで会見は進んだ。

「終わってみればハッピーなトーナメントだった」

「決勝戦では(対戦相手のセリーナの抗議や、表彰式のブーイングで)やや残念だった。優勝後も楽しめなかったのでは?」という質問には…

「私はそれほど残念とは思っていません」ときっぱり。「私の初めてのグランスラムでの決勝進出で、初めての優勝でしたので、そこでどれだけのものを期待すべきか、わかっていませんでした。終わってみれば、自分としてはハッピーなトーナメントだったと思っています。十分にたくさんのことは成し遂げられたと思っています。私に全く知らなかった経験をもたらしてくれていたので、そういう意味では経験がなかったぶん、何を考えていいか、わかっていなかったので、それほど多くを考えていませんでした」と振り返った。

海外でも大きくクローズアップ

アメリカの大手芸能誌でも特集

ニューヨークで誕生した新女王はスポーツメディアのみならず、経済紙などが特集。さらに、国民的人気番組に登場するなど話題を集めていたが、大手芸能誌も脚光。
「20歳の全米王者について知るべき全てのこと」と見出しを打って特集したのは、芸能誌「ピープル」だった。ピープル誌といえば、1974年に創刊され、毎年選ばれる「最もセクシーな男」など、世界的な知名度を誇る。そんな伝統ある大手誌が、テニス界の新女王をクローズアップしている。

アメリカ版『徹子の部屋』に出演

テニス界の新女王はグランドスラム優勝後、米べディアでも引っ張りだこ状態だった。そのハイライトは米放送局「NBC」のお昼の人気番組「エレン・デジェネレス・ショー」出演だった。新女王は司会の世界的な人気コメディエンヌ、エレン・デジェネレスと爆笑トークを展開した。
番組公式YouTubeは大坂の出演コーナーを「エレンが全米オープン王者のナオミ・オオサカとマイケル・B・ジョーダンの仲人役を果たす」というタイトルで公開すると、視聴回数は200万回を突破。急上昇ランキングにも入っている。

世界女性アスリート長者番付で1位になりそうな勢い?

新規スポンサー契約で10億円超は確実

凱旋会見のあとに契約1億円超の日産自動車のブランドアンバサダー就任発表会に出席して声援を浴びた。今季獲得賞金はすでに579万7826ドル(約6億5000万円)、新規スポンサー契約で10億円超は確実。世界の女性アスリート長者番付でも、全米オープン決勝で下したセリーナ・ウィリアムズ(米国)をしのいで1位になりそうな勢いだ。

好きな車は「GT-R」に対して執行役員「差し上げましょう!」

日産自動車は9月13日、グランドスラムを制覇した大坂なおみ選手がブランドアンバサダーに就任したと発表し、本社で就任発表会を開催しました。
好きな車を聞かれると「GT-R(白)。速い(から好き)」との答え。その場で日産の専務執行役員星野朝子さんが「差し上げましょう!」と約束する一幕もありました。

ネットでは「大“坂”半端ないって!」

話題のCMも再ブレーク必至だ。同社は5月下旬からホームページにCM動画「大坂半端ない編」を掲載。サッカーW杯日本代表大迫勇也(28)に関する名言のパロディーで、W杯での大迫の活躍で注目を集めた。今度は大坂本人の大活躍で再び熱い視線が注がれ、ネット上には「大坂半端ないって!」の言葉が躍った。

大坂の真似をする芸人も話題に

ものまね芸人・小坂なおみも祝福

全米オープンを制し、日本人初の4大大会優勝を果たした大坂なおみ(20=日清食品)のものまね芸人・小坂なおみ(33)が9日、自身のツイッターを更新。「大坂なおみ選手!!優勝おめでとうございます」と祝福した。
昨年1月から大坂のものまねを始めた小坂は「大坂なおみ選手!!優勝おめでとうございます」と決勝で元世界1位のセリーナ・ウィリアムズ(36)を破った20歳を祝福し、「言葉にならなくて、しばらく放心状態でした」と喜んだ。

八幡カオルも大坂のものまね披露

AKB48の峯岸みなみさんや、小池百合子・東京都知事のモノマネなどで人気のピン芸人・八幡カオルさん(@gogokaochan)。
20歳の大坂選手にしては「おばさん感」があるようで、八幡さんも「まだ未完成」とツイートしていた。

大坂なおみ 快進撃のヒミツを探る

今季からチームに加わったコーチの存在

友人のような関係でベストのパフォーマンスを引き出す

偉業の立役者として注目が高まっているのがドイツ人コーチ、サーシャ・バイン氏(33)だ。選手と友人のような関係を築き、ベストのパフォーマンスを引き出す指導法は、日本のスポーツ界で告発が相次ぐ「パワハラ的指導」と正反対だ。
大坂はもともと引っ込み思案で物事をネガティブに捉える一面があったというが、バイン氏は「できるだけ楽しく、ポジティブな雰囲気を作ろうと思っている」とし、練習前のアップやトレーニングの間も笑顔で一緒に汗を流した。「ラリーで負けたら渋谷の交差点で踊る」などユニークな罰ゲームを設け、大坂も「ハッピーでポジティブな人の近くにいることが、いい影響になっている」としている。

大坂を徹底的にリラックスさせるムードメーカー

バイン氏は、インタビューで、「彼女は完璧主義で、自分自身に厳しすぎるところがあるから僕は真逆でいなければならない。だから『大丈夫。地球は丸くて、草は青いさ、すべてうまくいく』って言うんだ」と語っている。「最初はもっと内にこもり、控えめだった」という大坂選手を徹底的にリラックスさせ、その殻から出てくるように導き、ムードメーカーとして励まし続けた。
彼は「誰かが、選手にどちらの道を行けと指示するのではなく、選手が自分で道を見つけられるほうが価値がある。だから僕はある程度、選択肢を狭めておいて、最終的には、つねに彼女が自分で決断をできるだけの余地を残しておくことが大切だ」と述べている。

肉体改造とストイックな食事制限

茹でたチキンやブロッコリーを食べて制限

引き締まったボディは肉体改造の成果だったという。
「昨年始めたの。オフは本当に厳しいダイエットで、オーストラリアに行ったときにはすごく調子が良いと感じた。それがここまで継続している。これまでにないほど動けている実感があるの」
食事制限についても語り、トレーニング中の食事については「ちょっとやり過ぎに聞こえるかもしれないけれど、オフには茹でたものを食べています。ボイルしたチキンとブロッコリーとか。炭水化物はとらないの」と説明している。

日本で楽しみにしているのはご飯ものだけど…

「日本で楽しみにしているもの? たくさん素晴らしいご飯ものがあるの。でも、大会前は炭水化物を摂取することは禁じられているの。だから、ちょっと悲しい。でも、最低一回は美味しいご飯が食べたいわ」

大坂なおみ流の験担ぎ

<3 勝負めしベーグル 験担ぎは朝食>負けるまでは同じメニュー。3月のBNPパリバ・オープンでは小麦パンを食べ続けていたが、決勝の朝だけ急にサワーブレッドを出されてろうばい。「負けたらサワーブレッドのせいだと思っていた」とひやひやしつつも優勝した。今大会はベーグル。3回戦後に「もう500個もスモークサーモンベーグルを食べた気がする」と漏らしていたが決勝当日も食べたという。優勝後は「何でもいいならカツ丼かカツカレー、あと抹茶アイスが食べたかった」とさすがにうんざりの様子。

マルチカルチャーな背景が大坂なおみの原点

日本人の母とハイチ出身のアメリカ人の父

3歳のときに日本からアメリカへ渡る

大坂は日本人の母とハイチ出身のアメリカ人の父を持ち、3歳の時にアメリカへ渡った。父の勧めでテニスを始めると早くからその才能が開花。2013年にプロに転向し、女子ツアー最速クラスの200km/hを超えるサーブで世界に衝撃を与えた。2016年には、日本勢初となるWTA最優秀新人賞を受賞。その後も着実にランキングを上げ、今年3月にはグランドスラムに次ぐグレードの大会であるインディアンウェルズ(BNPパリバオープン)で優勝し、世界トップ選手の仲間入りを果たした。

日米の二重国籍で日本を選択

アメリカの芸能誌『ピープル』の記事では、大坂をこのように伝えています。

ハイチ出身の父・フランソワさんと日本人の母・環さんの間に大阪で生まれ、3歳で米国に渡ったプロフィールを紹介。日米の国籍を保有しているが「オオサカの二重国籍はどちらの国でプレーするのか、彼女は選択しなければいけなかったことを意味する。しかし、フランソワは日本を選んだ。それが彼女のチャンスをより広げると考えた」。
「マルチカルチャーなバックグラウンドと猛烈なフォアハンドで、大坂は国際的なセレブになる絶好の立場を築いた。そして、その勢いが衰える気配は見せない」と新女王の株価上昇を伝えている。

大坂の父が「自分の娘をテニスで世界一にする」と決めた

父はなおみが3歳の時、4大大会でのウィリアムズ姉妹(ビーナスとセリーナ)のプレーに感動。自分の娘を「テニスで世界一にする」と決めて米国のニューヨークに渡った。なおみが小学校を卒業するとフロリダに移住。ジュニアの試合には出場せず、14歳でプロ転向。16歳のツアーデビュー戦で2011年全米OP覇者のサマンサ・ストーサーを破ってテニス界を驚かせた。
日本でも米国でも周囲に笑われた「娘を世界チャンピオンに」という両親の夢は、11度目の4大大会で、くしくもテニスを始めるきっかけともなったセリーナを破り、現実のものとなった。優勝直後、娘をしっかり抱きしめた母はスタンドで号泣した。

プロテニス選手である姉・まりとの絆

東レ パンパシフィックオープン予選では

昨年の「東レ パンパシフィックオープン」では姉妹でダブルスを組みました。

世界ランキング344位の大坂まり(22)は予選1回戦で同156位のアントニア・ロットナー(22=ドイツ)に3―6、6―4、3―6で敗れ、本戦出場はならなかった。2年前からフランス人コーチをつけ、今季はクレーコートが主戦場。この日が今季ハードコート初戦とあって「相手のサーブに慣れるのに時間がかかった。もっと早くなれれば第1セットも取れたはず」と残念がった。
この日の試合前には姉妹でコンビニに出かけて一緒におにぎりを食べ、第2セット途中からはなおみも応援に駆けつけるなど仲良しぶりは相変わらず。姉妹同時本戦出場はならなかったが、大会初制覇を狙う妹に向けて「上手にプレーできれば誰にでも勝てる」と信頼を寄せ、「フツーにやれ」とエールを送った。

全米オープン決勝当日も姉に電話

子どものころからセリーナ選手の大ファンで知られる大坂選手。試合前のインタビューでは、記者からの「勝てると思うか」という質問に「ノー」と即答していたそうです。
さらに、当日は緊張のあまり食べ物がのどを通らず、パリにいる同じくテニス選手の姉に何回も電話をしてようやく気持ちを落ち着かせたといいます。

全米オープンに優勝したとき、姉は

プロテニス選手の姉・まりとの心温まるエピソードも明かしている。
「彼女も誇らしいと言っていた。そして、試合を見て泣いたとも言っていた。私はもう、あなたがここにいなくて神様に感謝という感じだった。だって、もしも泣いている姿を見てしまったら、私ももっと泣いてしまっただろうから。もっと? そうよ。大変でしょ。そうなったら酷いことになっていたと思うわ」

Instagramでプリクラ写真公開

黒のTシャツにキャップ姿の大坂の隣にいたのは、姉のまりだった。色々な表情を作り、画像も加工。やはりコートを離れれば、20歳の女の子。プリクラを思う存分堪能しているようだ。
大坂は「プリクラ生活」のタイトルで数種類のプリクラ画像を公開。日本のファンのみならず、海外ファンの大反響も集めている。

優勝後第一戦は「東レ パンパシフィックオープン」

全米オープン優勝後の第一戦は日本開催

今大会は全米オープン優勝後の第一戦目で日本開催ということもあり、日本中の注目が集まるが、連続Vへの道のりは厳しいものとなりそうだ。
その中でも最大の敵となるのが、元世界ランク1位で現在2位のキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)だ。同大会2連覇中で、2016年には決勝で大坂を破って優勝している。また、2018年全豪オープンでは悲願のグランドスラム初Vを達成。若干20歳で世界ランク1位に登りつめ、その後の低迷期を経て今年完全復活を果たした。

これまで大坂はウォズニアッキに2度挑み、いずれも敗退しているそうです。

調整不足が不安材料されていたが…

大坂の不安材料となるのが調整不足。「なおみフィーバー」に沸き返る中、帰国した12日は、午前から凱旋会見を行い、その後も行事が続き、メディアに出ずっぱりだった。マイペースな大坂といえども、テレビ画面を通じて見る表情には疲労の色が濃く見て取れた。まず最優先されるのが疲労回復。そしてメディアに振り回されずに本戦に向けて集中力を高めるか。大坂は2回戦からの出場が予定されており、19日か20日のいずれかにコートに立つ。

帰国後初戦はわずか59分で圧勝

世界30位に59分でストレート勝ち

テニスの「東レ パンパシフィックオープン」(アリーナ立川立飛)は19日、シングルス2回戦を行い、全米オープンを制した世界ランク7位で第3シードの大坂なおみ(日清食品)は同30位で2014年の全豪準Vのドミニカ・チブルコバ(スロバキア)と対戦。6-2、6-1でストレート勝ち。わずか59分で準々決勝進出を決めた。

凱旋優勝ある? ベスト4からが本当の戦いか

凱旋大会Vへ向けてこれ以上ない好スタートを切った大坂。21日に予定される準々決勝は、世界ランキングで下回る25位バルボラ・ストリコバ(チェコ)-同27位アネット・コンタベイト(エストニア)の勝者と対戦する。世界ランキング2、3,4位が出場する今大会。大坂の本当の戦いはベスト4からとなる。