間もなく改元 「平成」の次…新元号はどうなる?

2019年3月25日公開

あと1カ月と少しで「平成」が終わり、5月1日からは新元号の時代がスタートします。それに先立ち、4月1日に発表される新元号について、ネット上や企業の企画などで多くの予想が行われています。そこで、元号の決め方や豆知識など予想に役立つ情報から、今飛び交っている新元号予想・候補に至るまで、一挙にまとめてみました。

新元号はどうやって決める?

新元号決定までの流れ

新元号決定までの流れは以下のようになります。

【1】候補の考案委嘱と提出

内閣総理大臣が若干の有識者に候補名の考案を委任。考案者は2~5の候補名を提出する。

【2】候補名の検討・整理

候補案を内閣官房長官が検討・整理して、内閣総理大臣に報告。

【3】候補名の精査・選定

整理された候補名を精査し、新元号の原案として数個の案を選定。

【4】新元号の決定と発表

新元号の決定は発表される4月1日に行われます。その流れは…

官房長官が有識者による「元号に関する懇談会」を開催

内閣総理大臣が衆参両院の正副議長から意見聴取

全閣僚会議で協議

閣議で改元の政令を決定し、直ちに発表

すでに水面下で多数の元号案の提出を受けている模様

時事通信の記事によると、政府はすでに複数の学者から水面下で多数の元号案の提出を受けているとか。

考案者は不明

「【1】候補の考案委嘱と提出」について…

内閣総理大臣名で、考案委嘱が行われる。これは何名かの人に「候補名」を考えてもらうよう依頼することだ。主に大学教授など学識経験者だとされているが、誰に依頼するのかは公表されないため考案者は不明である。

菅官房長官「3月14日、正式に委嘱」

今月14日に候補名の考案を正式に委嘱したことを、菅義偉官房長官が昨日(24日)明らかにしています。

菅氏は新元号選定について「平成改元時の手続きを踏襲して進めている。元号の考案者には14日に正式に委嘱した」と述べた。委嘱した学識者の人数や専門分野は明かさなかったが、内閣官房幹部は委嘱前日の13日の参院予算委員会で、国文学、漢文学、日本史、東洋史などの専門家に委嘱する方針を示していた。

元号は「漢字2文字」

「読みやすいこと」などの複数のルールが存在

「【2】候補名の検討・整理」のところでは以下の留意点が検討されます。

1.国民の理想としてふさわしいようなよい意味を持つものであること
2.漢字2字であること
3.書きやすいこと
4.読みやすいこと
5.これまでに元号またはおくり名として用いられたものでないこと
6.俗用されているものでないこと

選考作業の“秘密司令部”は内閣府本庁舎の地下1階

内閣府本庁舎の地下1階にある「関係者以外 立ち入り禁止」の張り紙が出された部屋。官邸と地下通路で結ばれたこの部屋が「皇室典範改正準備室」で、事実上、新元号選考作業の“秘密司令部”となっている。

原案選定で重要な役割を果たす菅官房長官

「【3】候補名の精査・選定」では菅官房長官がキーパーソンとなるようです。

最終候補のうち、誰がどこで1つに絞り込むかも不透明だ。最も重要な役割を果たすのが、「新元号の原案として数個の案を選定する」(元号選定手続きについて)と定められている菅官房長官だ。
新元号が決定される4月1日、菅官房長官は複数の原案を選ぶと、「元号に関する有識者懇談会」を開いて意見を求め、結果を首相に報告する。有識者は考案した学者とは別で、そのメンバーも官房長官が決める。

事務レベルで20~30候補に絞り込む

政府は平成に代わる新元号について、まず20~30程度の候補を事務レベルで選んだ上で、菅義偉官房長官が4月1日の決定当日までに数個の原案に絞り込む方針を固めた。
菅長官は横畠裕介内閣法制局長官の意見も聴いた上で数個の原案を選ぶ。原案は3案程度になるとみられ、政府はこの中から新元号を決める。 

「元号に関する懇談会」のメンバーは?

iPS細胞の山中伸弥教授らの起用を検討

「【4】新元号の決定と発表」にある「元号に関する懇談会」の候補メンバーには、以下のような名前が…

元号懇の有識者候補に名前が挙がっているのは、山中伸弥・京大教授や作家の林真理子氏、宮崎緑・千葉商科大教授をはじめ、メディアからは、日本新聞協会会長の白石興二郎・読売新聞グループ本社社長、上田良一・NHK会長、民放連会長の大久保好男・日本テレビ社長たちだ。

このほか、法曹界から寺田逸郎前最高裁長官、経済界から榊原定征前経団連会長、教育界から鎌田薫前早稲田大学総長と計9人の名前が挙がっています。

4月1日の発表時間は現時点で不明 手続きの所要時間は2時間程度

4月1日の発表時間はいまだ明らかになっていない。当日は一連の手続きに2時間から2時間20分程度が必要と見込むが、具体的な運びは国会サイドと調整が続く。2019年度予算案が成立する見通しの27日以降に固まるとみられる。

発表者は菅官房長官ではない可能性も?

「平成」の際は当時の官房長官が発表

新元号の発表といえば、上の写真でおなじみ、「平成」発表時の小渕恵三氏が有名です。

額縁に入った「平成」の文字を掲げるシーンはテレビで幾度となく流され、平成改元時の首相が誰だったのかを覚えていなくとも(ちなみに竹下登だった)、官房長官は全国民が知っている。小渕氏は後に首相になったが、国民には「平成オジサン」としての方が有名なほどだ。

今月18日の時点で「現在、検討中」

小渕氏は当時の官房長官で、今回も前回を踏襲して官房長官の菅氏が発表するものと思われていましたが、まだ誰が発表するかは決まっていないようです。
今月18日の参院予算委員会では…

安倍晋三首相は4月1日に事前公表する新元号に関し「発表方法は、発表者も含め現在、検討中だ」と語った。

安倍首相が“横取り発表”?

5日の日刊ゲンダイDIGITALの記事では、自民党関係者の声として以下のように伝えています。

安倍首相が自分で発表することに意欲を示しているそうなのです。レガシーづくりに躍起の安倍首相にとって、新元号発表は歴史に残る大役。もともと安倍―菅は微妙な関係ですから、安倍首相には菅官房長官にやらせたくないという気持ちもある。菅長官も安倍首相の気持ちを忖度して、『総理がやるべき』と進言するんじゃないか。

NEWSポストセブンの覆面政治部記者座談会でも…

記者A:新元号を誰が発表するかでどんでん返しが起きた。時事通信は2月16日付で「新元号、菅官房長官が発表」という見出しで「安倍晋三首相が菅長官による発表を了承した」と報じた。誰もが順当だと思ったが、菅官房長官はその2日後の会見で、わざわざ「まだ決まっていない」と否定、その後、朝日新聞が「安倍首相が自ら発表する可能性もある」(2月25日付)と報じた。わが社の取材でも、決定に待ったをかけたのは安倍総理だったと聞いている。

元号についての豆知識

「元号」と「年号」の違いとは?

現在は「ほぼ同義語」

内閣府・大臣官房総務課の担当者に聞いてみた。
「『年号』も『元号』も、年数の上に任意の漢字をつけて表す称号という点では同じため、ほぼ同義語として扱われています。
日本は明治の改元から『一世一元』となっており、以来公称として『元号』が使われています。それまでは必ずしも元号と天皇の在位の期間は同一ではありませんでしたが、現在は一世一元となっているため、年号という言い方は、あまり一般的ではありません」

「元号」は「元年」の意味を持つ

また、「元号」は「元年」の意味を持ち、天皇の即位から数えるものという性質も。

本来「元号」も「年号」と言っていたのだが、改めた年号のはじめの年を、「昭和元年」「平成元年」のように、元という字を用いて表現するため、「年号」を「元号」とも言うようになったのである。

元号の起源は中国

そもそも「元号」はいつ生まれたのか。その起源は中国にある。紀元前140年、中国・前漢の武帝が即位したときに、「建元(けんげん)」という元号を宣言したのが元祖だ。古代中国は先進国だったので、周辺の朝鮮半島やベトナム、日本でも、真似をして元号を使うようになった。

元号が残っているのは日本だけ

元号は、かつては朝鮮半島でも用いられていたし、安南(ベトナム)も使っていた時期がある。古代日本も、そんな国のひとつだった。ただ、現在は“本家”の中国でも元号は使われておらず、韓国やベトナムでも使用されていない。日本は現在、世界で唯一の元号使用国ということになる。

日本最初の元号は「大化」

日本ではじめての元号は、よく知られているように「大化」である。645年、中大兄皇子(天智天皇)と中臣鎌子(藤原鎌足)が朝廷の実力者・蘇我氏を討ち、天皇中心の政治を目指した。このとき制定されたものだが、中国(当時は唐)をモデルとした国づくりをおこなうという意志表示でもあるだろう。
だが、大化・白雉(はくち)とつづいたものの、すぐには根づかず、途絶えた時期も長かった。

日本だけが独自の元号を使い始めた

古代中国、特に唐の時代は中国の皇帝が世界の中心であり、周辺のアジア諸国は基本的に中国の元号を使っていたにもかかわらず、日本だけが独自の元号を使い始めました。

例外と言えるのが厩戸皇子(うまやどのみこ)(聖徳太子)とそのグループだ。彼は朝貢外交を快く思っていなかったとみえて、できるだけ対等を装うようにしていたようだ。
さらに日本は、表向きは中国に仕えているように振る舞っていたが、実際には、そうするつもりはなく、奈良時代からは独自の元号を次々と使うようになっていた。日本のこうした動きを、中国皇帝は面白く思っていなかったのではないだろうか。

元号が定着したのは「大宝」から

元号が本当に定着して使われるようになったのはいつなのか。それは、大宝律令が制定され、日本が国家としての体を成した「大宝」(701年)からであろう。事実、「大宝」からは途切れずに「平成」まで続いている。

「明治」は天皇自らのくじ引きで決定

くじ引きで決めたのは後にも先にも一度きり

数ある元号の中でたったひとつ、くじ引きで決まった元号があることをご存じだろうか。東京・明治神宮のホームページには、次のような文言がある。
「『明治』の元号もいくつかの候補の中から明治天皇さまがくじを引いてお選びになられたのでした」
慶應4年9月7日の夜、前越前藩主・松平慶永(まつだいら・よしなが)が考案したいくつかの元号案をくじにして、天皇自らが賢所(かしこどころ)で抽籤(ちゅうせん)、その結果「明治」を引き当てたという。
くじ引きによって新元号が決定されたのは、後にも先にもこの一度きりだ。

元号の平均年数は5.5年

たった2カ月で改元されたケースも

元号の平均年数は5.5年で、この数字からもいかに頻繁に改元が行なわれてきたかがわかる。中でも最も短いのが鎌倉時代の「暦仁(りゃくにん)」。災害に伴う“ゲン直し”で制定されたが、「りゃくにん」が「略人(世から人が略される)」を連想させるため、たった2か月で「延応(えんおう)」に変えられた。

最長の元号は「昭和」

最長の元号は、言わずとしれた「昭和」(64年)。じつは世界最長でもあり、これに中国・清の「康煕(こうき)」(61年。1662~1722)、「乾隆(けんりゅう)」(60年。1736~95)がつづく。日本に話をもどすと、2位は「明治」(45年)、次いで「平成」(31年)かと思われるだろうが、「応永」(35年)が3位である。

かつては4文字の元号もあった

日本の元号には、奈良時代の一時期だけ「四文字の元号」が相次いで登場したことがあります。天平感宝(てんぴょうかんぽう)、天平勝宝(てんぴょうしょうほう)、天平宝字(てんぴょうほうじ)、天平神護(てんぴょうじんご)、神護景雲(じんごけいうん)といった元号が連続して登場したのです。唐の女帝・則天武后(そくてんぶこう、武則天=ぶそくてん、とも)が四文字の元号を好んで制定したことに倣ったものと見られています。

元号は「漢字2字の熟語」ではない

元号を、漢字2字の熟語だと思われている方もいるかもしれないが、元号は基本的に既成の熟語ではない。ある一連のセンテンスの中から、核になる言葉を2字選び、合成するのが一般的である。
たとえば、「平成」は『書経』の「地平天成」と、『史記』の「内平外成」という2つの出典から、また、「昭和」は『書経』の「百姓昭明、協和万邦」から2字を選んだものだ。いずれも熟語ではないことがわかるだろう。

何度も候補に挙がってやっと採用されるケースも

元号の歴史を紐解くと、ひとつの元号が何度も候補になっては消え、最終的にやっと採用されるなど、ひとつひとつの元号にドラマがあることがわかるという。たとえば「平成」は幕末にも候補に挙がり、「明治」は10回目、「大正」は5回目で採用されている。

最も多く使われている漢字は「永」

これまでに使われた漢字はわずか72種類

元号は基本的に漢字2文字だ。四文字元号も5つだけあるので、元号に使われた漢字の総数は、247×2=494に、四文字元号の増加分5×2=10を足したもの。つまり、504だ。なのに、そこに使われた漢字は、わずか72種類しかない。
では、元号に使われた漢字のランキング上位を紹介しよう。
第1位 「永」(29回)
第2位 「元」「天」(各27回)
第3位 「治」(21回)
第4位 「応」(20回)
第5位 「和」「文」「長」「正」(各19回)
第6位 「安」(17回)

日本より元号数が少ない中国は倍の148字を使用

中国の元号数は、元号が制度化された唐の建国(618年)から辛亥革命によって清が滅亡するまで(1911年)の間で189とされている。一方、日本は「大化」(645年)から「平成」(1989年)までを合わせると247もあり、数だけで比べると、意外にも日本のほうが多い。
ただ、元号に使用された文字の種類は、中国が148字、日本が72字となり、中国のほうが多いのだ。日本は中国の約半分の72字で247もの元号をつくり出していることになる。

同じ元号が使われたことは一度もない

中国の元号と比べて特筆すべきことは、日本の場合、元号の重複がないという点である。
中国では「建武」「太平」の元号はそれぞれ5回、「永興」「太和」はそれぞれ4回も使われている。しかし、日本ではこれまで同じ元号が使われたことは一度もない。

「大正」はベトナムでも使われていた

日本は他国の元号との重複も避けていましたが、例外がいくつかあります。ひとつは中国で複数回登場した「建武」。漢の光武帝が漢王朝を再興した際の元号にちなんで、改革を推し進めたかった後醍醐天皇が強引に採用したとされています。
ほかにも…

実は「大正」も、ベトナムでも使われていた元号であった。この事実を知っていたのが、かの森鷗外である。ベトナム(安南)では10世紀中頃から第二次世界大戦後まで元号を使用しており、「大正」は1530~1540年に使われていた。そのため、このことを知っていた鷗外は、「不調べの至(いたり)」と新聞で批判している。

参考文献は中国の古典

四書五経がほとんど

元号の出典は、中国の古典である四書五経(『大学』『中庸』『論語』『孟子』の四書と、『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』の五経)がほとんどである。四書五経は儒教に関する文献の中でも重要視されているものである。
東京大学名誉教授で東洋史が専門の山本達郎氏が考案した「平成」は、前漢の時代に司馬遷によって編纂された『史記』と、中国最古の歴史書『書経』が出典で「国の内外にも天地にも平和が達成される」という意味が込められている。

今回は日本の書物も参考に?

〈これまでの元号はすべて中国の古典から選ばれているが、安倍首相は周辺に対し、「元号の出典は日本で書かれた書物がいい」と話しているということで、今回は、室町時代までに漢文で書かれた日本の古典に由来する案も候補にあがっているという〉
元号懇のメンバーでもある大久保好男氏が社長を務める日本テレビの3月1日の“スクープ”だ。

考案委嘱対象に日本史専門家も

政府の担当幹部は元号の考案を国文学や日本史学などの専門家に委嘱する方針を明らかにした。
今回の答弁を受け、日本古典が出典として選ばれるのかどうかが注目されそうだ。

世紀の大誤報「光文事件」

大正天皇崩御直後に新元号を「光文」と報じる

過去には、大正から昭和に改元される直前の「光文事件」がある。大正天皇崩御直後に東京日日新聞が「元号制定『光文』と決定」と報じたが、実際に発表された元号は「昭和」だったため、世紀の大スクープのはずが一転して歴史的大誤報となってしまったのだ。真相をめぐっては諸説あるが、事前に報道されてしまったために急遽、次点扱いだった「昭和」が正式採用されたともいわれる。

「スクープされたので急遽差し替えた」説は正しくない?

「光文とスクープされたので、昭和に差し替えた」といううわさもあるが、どうやらそれは正しくない。
元号を決めるときにはいくつかの候補案がある。このときの最終案が、第一候補「昭和」、参考「元化」「同和」だった。ここに「光文」はない。しかし、最終案になる前の候補には(立成、定業、光文、章明、協中、神化)もあった。ここの「光文」が漏れた。だから「光文スクープ」に関係なく、もともとの第一候補「昭和」になっただけ、という。

ただ、この記事では「実際は差し替えだったが、それを否定するためにこういうストーリーを作ったのかもしれない」とも。

免許証を4月に更新したら「平成」?

免許証も国民健康保険証も「平成」表記のまま

警察庁は今年3月以降、運転免許証の有効期限に西暦を併記すると発表している。〈2022年(平成34年)4月12日まで有効〉などと表記される。では、新元号発表後の4月に免許の交付・更新をしたケースはどうなるのか。
「免許証の新元号表記はあくまで5月からで、4月中の更新者の有効期限は平成表記のままです」(免許更新センター)
国民健康保険証の切り換えは毎年「4月1日」に行なわれる。
「新元号が始まるのは5月1日なので、今年4月に発行される保険証の有効期限は『平成32年3月31日』になります。5月以降に加入するケースは準備が整った市町村から新元号に切り替わることになる」(厚労省国民健康保険課)

「平成32年」と記載の契約書は有効?

弁護士「契約書が無効になることはない」

契約期間について「平成32年9月まで」と書かれていた場合、この契約書は有効だろうか。水町雅子弁護士は次のように解説する。
「平成32年は存在しませんが、新元号2年であることは明らかなので、契約書が無効になることはありません。わざわざ書き直して契約をし直す必要もありません」

新元号予想のヒントになる“暗黙のルール”や法則

そろそろ新元号の予想でも…と思いましたが、これまで見てきた新元号決定までの流れや元号についての豆知識以外にも、明文化されていない“暗黙のルール”や法則があるようなので、それらを先に押さえておきましょう。

次の元号も「初出漢字」と「頻出漢字」の組み合わせ?

最近の「昭和」と「平成」はこのパターン

「とくに昭和と平成の2つの元号には共通する特徴的な傾向があります。これまでの元号に使われたことがない『初登場』の漢字と『頻出』漢字の組み合わせになっていることです」
昭和の「昭」は初登場で、それまで元号にも一般にも使われていなかった漢字。「和」は19回使われている。平成は「平」が12回使われているが、「成」は初登場だ。

頻出漢字では「長」「延」「保」「文」「永」あたりが候補?

元号に関する著作もある東京大学史料編纂所の山本博文教授は次のように語っています。

新元号に入りそうな字は、“(よき時代が)これからも長く続くように”という意味合いで『長』や『延』。また、“いろんなものを保つ”という『保』。“日本文化を大切にする”ということで『文』。そして過去に多く使われている『永』が有力な候補です。

頭文字は「M」「T」「S」「H」以外?

元号をアルファベットの頭文字で表記する習慣があることを考えると、明治の「M」、大正の「T」、昭和の「S」、平成の「H」が頭文字となる元号名は外される可能性が高い。

「平成」も頭文字の重複を避けて選ばれた

1989年1月の平成改元の際も、アルファベット表記は重要な要素だった。最終候補には「平成」のほか「修文」と「正化」の2案が残ったものの、頭文字が「昭和」と同じ「S」になるため「紛らわしい」と政府の担当者が有識者会議で指摘し、最終的に「平成」に決定した経緯がある。

最も多い頭文字は「K」

これまで元号の頭文字に使われたのはアルファベット15文字、そのうち明治(M)、大正(T)、昭和(S)、平成(H)と近代以降の重複を避けるなら11文字になる。最も多いのは慶応などの「K」(61回)、次いで「E」(27回)「J」(21回)「G」(15回)「B」(15回)などと続く。

「俗用されているものでないこと」が最も厄介

最初に紹介した「新元号決定までの流れ」の「【2】候補名の検討・整理」で触れた「俗用されているものでないこと」というルール。社会学者の鈴木洋仁氏によると、これが最も厄介だとか。

天皇のお名前でもあるからこそ、人名や地名、商品名や企業名であってはなりません。それこそ中国やベトナムの中華料理屋の屋号で使われていないかまで調べる必要があります。平成の時は岐阜県にある地元の人だけが使っている地名(こあざ・小字)とかぶってしまいましたが、そのレベルまで慎重にケアしなくてはならない。

「安久」が人気 新元号予想を一挙紹介!

これまで触れてきた知識や法則などを踏まえ、いよいよ各方面で盛り上がっている新元号の予想を一気に紹介していきます。
まずは有識者の予想から。

頻出の頭文字「K」が有力?

「感永」「喜永」「景永」

さきほど紹介したばかりの頭文字に注目すると、最も使われている「K」はM・T・S・Hと重複しないことから有力候補となっているようです。
前出の鈴木氏は、2017年6月の記事で次のように予想しています。

「昭和と平成に見られるのは『初出漢字』と『頻出漢字』を組み合わせるパターンです。この“法則”から予想されるのは、過去に最多の29回使われた『永』と初出の『感』を組み合わせた『感永(かんえい)』ではないか。“いまの平和な感性が永く続くように”との意味を込めています。また、大きな戦争がない喜びが永く続くようにとの願いを込めた『喜永(きえい)』もあり得そうです」

また、鈴木氏は今月の記事で「景永」も候補に挙げています。

第二候補は『景永』で、景は過去に1度しか使われていない。これも“平和な時代の景色が永く続くように”の意味です。頭文字はどちらもKなので、明治以降と重複することはありません

「景星」

国文学研究資料館の相田満准教授は「景星(けいせい)」と予想する。
「出典は、中国の唐の時代の法律を元に平安時代の日本で編纂された『延喜式』。その中にいくつか“めでたい言葉”が出てくるのですが、それらのなかでも最も初めに出てくる、一番めでたいものといわれている言葉が『景星』です。これは『めでたいことの予兆として見える星』『徳のある人』という意味で、徳のある日本、徳のある日本人であるようにという願いが込められると思います」

国書由来の元号を検討するならば…

「養暉」「礼弘」

伊勢神宮とゆかりの深い皇學館大学神道研究所の佐野真人助教は国書を典拠とした元号のイメージを挙げた。
「『日本書紀』神武天皇即位前紀の〈蒙以養正……積慶重暉〉(蒙(くらく)して正しきを養ひ……慶び積み暉(ひかり)を重ぬ)の、自然災害などで困難な時にでも正しい道を養い、慶びを積み徳の光を重ねるという意味から『養暉(ようき)』。
また、『続日本紀』の〈道徳仁義。因礼乃弘〉(道徳仁義は、礼に因(よ)りて乃(すなわ)ち弘まる)から『礼弘(れいこう)』も考えられます」

超安定の1位、2位を組み合わせ

「永元」

『元号って何だ? 今日から話せる247回の改元舞台裏』(小学館新書)を著した作家・脚本家の藤井青銅氏は、4月1日に発表される新元号を「永元(えいげん)」と予言する。
これまでに元号に使われた漢字は1位が『永』、2位が『元』と『天』。
超安定の1位、2位を組み合わせてみました。
元号は『これまでにない漢字2文字の組み合わせ』です。『永元』という言葉は存在しないのでOK。逆にして『元永』は『幻影』に通じるのでNG。『天永』もアルファベットがTで、『大正』があるからNGです。さらに、南北朝の動乱期のあとに『応永』(1394~1428年)という元号で安定したが、ここに『永』が含まれるから縁起がいい

アンケートなどの有力候補

SNS上やショップのキャンペーンなど、さまざまなところで“新元号予想”が繰り広げられていますので、それらをくまなく調べてみようと思っていたら、ITmedia ビジネスオンラインの記事ですでにまとまっていたので、これを紹介しておきます。

安久(あんきゅう)
安化(あんか)
和平(わへい)
文承(ぶんしょう)
建和(けんわ)
玉英(ぎょくえい)
永光(えいこう)
永明(えいめい)
光元(こうげん)
弘栄(こうえい)

記事では、これらの候補についてさまざまな視点から検討を重ねて絞り込み、一番の有力候補として「文承」、二番手として「弘栄」(もしくは「栄弘」)を挙げています。

「年号ワイン.com」の予想ランキング中間発表

1位「安久」 2位「安永」 3位「安始」

ヴィンテージワイン専門店「年号ワイン.com」を運営する和泉屋が島崎酒造とともに実施中の「新元号予想キャンペーン」。これにおける予想ランキング中間発表の結果は以下のようになっています。

1位 安久(60通)
2位 安永(46通)
3位 安始(32通)
4位 栄安(31通)
5位 安明(25通)
6位 永安(21通)
7位 永和(20通)
8位 永明(19通)
9位 安成(17通)
10位 和平(15通)
10位 安栄(15通)

1文字目、2文字目それぞれの予想も

この予想キャンペーンでは「1文字目」「2文字目」の予想も募集。それぞれの中間結果は…

【新元号1文字目の予想/順位・1文字目の漢字(応募数)】
1位 安(414通)
2位 永(124通)
3位 光(90通)
4位 和(85通)
5位 栄(65通)
6位 新(36通)
7位 開(28通)
8位 仁(27通)
8位 幸(27通)
10位 慶 (26通)
【新元号2文字目の予想/順位・2文字目の漢字(応募数)】
1位 安(148通)
2位 和(114通)
3位 永(92通)
4位 明(90通)
5位 久(87通)
6位 光(54通)
6位 成(54通)
8位 栄(48通)
9位 始(36通)
10位 平 (31通)

Twitterの「#新元号考えてみたジェネレーター」

「安久」「安永」「永安」が人気

Twitter Japanは3月12日、スマートフォンから好きな漢字2文字を使って新元号をツイートできるサービス、「#新元号考えてみたジェネレーター」を発表しました。4月30日までの期間限定。
スマートフォン専用のコンテンツとなる「#新元号考えてみた ジェネレーター 」の利用方法は、とっても簡単。
まずは、自分が考える新元号を漢字2文字で入力。続いて「新元号を伝えるニュース画像」など数ある画像の中から好きなものを選んだら、あとは完成した新元号案をツイートするだけ!
なおツイッター社の発表によると、人気がある漢字は「安」「和」「永」の3つとのこと。「安久」「和平」 「永明」 といった例があがっています。

ソニー生命保険の調査

1位「平和」 2位「和平」 3位「安久」

続いては、ソニー生命保険が昨年3月に1000人(平成生まれ500人、昭和生まれ500人)を対象に行った調査の結果。
トップ5は…
1位「平和」
2位「和平」
3位「安久」
4位「未来」
5位「自由」「新生」
となっています。

また、平成の次の新元号の予想ではどのような漢字が挙げられたのか算出したところ、1位「和」(165名)、2位「安」(118名)、3位「平」(112名)、4位「明」(91名)、5位「成」(58名)となりました。

女子200人が考えた新元号

1位「安泰」 2位「平和」 3位「安平」

週刊女性が20~30代の女性200人を対象に調査。
回答が多かった順のトップ5は…
「安泰」
「平和」
「安平」
「和平」
「羽生」

漢字2文字が基本ルールですが、意味が容易に想像できる“すでにある言葉”を挙げる人が多かったようです。いずれも安らかで安寧な時代を願うイメージですね。
6票集まった「安平」はオリジナル。安らかで平和な様を想起させ、いい雰囲気の元号ですよね。それにしても「羽生」が4票もあるとは! “時の人”である羽生結弦と羽生善治の影響はさておき、フラットに字面だけを見ると、なかなか趣深い……かも?

「愛名」「宇宙」などのキラキラ系も

同記事では少数意見として、「これはありそう!」と思えるものに加え、ユニークな“キラキラ元号”も紹介しています。
「ありそう!」と思える元号は…
「安久」
「永尚」
「栄和」
「光元」
「進開」
など。
続いて、“キラキラ元号”は…
「愛名(あいな)」
「宇宙(うちゅう)」
「金上(かなあげ)」
「杯杯(はいはい)」
「不倫(ふりん)」
などがありました。

横須賀市「平成町」で開催されたイベントでは…

「幸永」「和光」「安久」など

神奈川県横須賀市の平成町で3月1日に行われた催しでは、同町の住民や町内の大学に通う学生などが参加。そこでは以下のような新元号案が挙がっていたようです。
「成和」
「応久」
「飛翔」
「幸永」
「和光」
「海保」
「安久」
「多幸」
「弥生」

静岡県沼津市「伊豆・三津シーパラダイス」のアシカ

「安久」「安永」「永和」など

夜7時の「ニュース7」では、静岡・沼津市の水族館で筆を口にくわえて文字を書くアシカを紹介。書道歴16年のグリル(19=メス)が、ネットなどで予想される新元号を書く特訓の様子を伝えた。注目はグリルが筆で書いた2文字。写真の通り「安久」だった。

ネット上の予想を参考に、「安久」「安永」「永和」など計5種類を練習しているとか。

小林よしのり

「突破」

漫画家の小林よしのり氏は、新元号について次のように語っています。

また穏やかな元号を選んでも、同じようになってしまうんじゃないかな。それならいっそ、今のこの時代の閉塞感を打ち払うような言葉はどうか。たとえば、『突破』。
堕落する政治も、低迷する景気も、韓国やロシアの圧力もすべて突破する『突破元年』でどうだろう。突破2年、突破3年と、年を経るごとにレベルが上がっていく感じもいいじゃないか

ジェームス三木

「折鶴」

脚本家のジェームス三木氏は、新元号について次のように語っています。

2016年に当時のオバマ大統領が来日し、広島の平和記念公園に折り鶴を手向けた。あの鶴はまさに平和の象徴だった。そうした思いを込め、次の元号は『折鶴(おりづる)』を推したい。日本古来の文化である折り紙で千年生きる鶴を折る。そんな折鶴に日本人は安寧の思いを託す。
芸術は何百年経っても人々を救う。芸術・文化のもたらす安寧と平和の思いを『折鶴』という年号に込めたい。『鶴』という字がちょっと難しいけど、そのくらいは覚えなさい!

ベッキー

「広心」

タレントのベッキーが3月21日放送の「ノンストップ!」(フジテレビ系)に出演し、新元号を大胆予想した。
ベッキーの予想は「広心」。読み方は「こうしん」で、理由は「好きな文字を入れました。広い心でいこうみたいな。平和な感じ」と説明。

みやぞん(ANZEN漫才)

「心成」

お笑いコンビ「ANZEN漫才」のみやぞんは、1月26日にブログで新元号を予測。

「年号」と題して初めて更新したブログは、声で手軽にブログ投稿ができるアメブロの新機能『こえのブログ』を使い、50秒の“声”を投稿。
「みやぞんです 私が考える平成の次の年号は」と切り出し、笑い声を交えながら、次の元号は「心が成る」ということで「心成(しんせい)」がいいのでは、と予想した。

くっきー(野性爆弾)

「自歩」

お笑いコンビ「野生爆弾」のくっきーは、3月20日のイベントで新元号に言及。

「次の元号が気になって眠れない…」という女性に対し「ここだけの話、すでに僕(元号を)聞いているんですよ」と明かし、その場で筆で書き記した。くっきーが発表した新元号は「自分で歩くと書いて自歩(じっぽ)。近年禁煙化が進んで、ジッポ業界がだいぶ苦しくなってくる。そういう願いを込めて自歩です」と話すも、途中で「ジープでもいいです。お年寄りが増えて車に乗らなくなっていって、ジープの中古車がどんどん余りだします。そういう意味を込めてジープです」と読み方を変え、独特の新元号を予想した。

安倍首相の「安」は入らない?

ネットでは「入ってほしい」「絶対に嫌だ」などの声

これまで見てきたように「安久」をはじめ、ちまたでは「安」が入る元号が有力候補となっているようです。ただ、「安」は安倍晋三首相の名前の文字でもあることから、ネットがざわつき、「『安』は入らない」とする記事も散見されます。

ちまたでは「こんな漢字が入ると思う」「入ってほしい」「これは嫌だ」という世間話が賑やかだ。
そんな中、まことしやかに「安倍首相の『安』が入るのでは?」という声が聞こえてくる。ネットでは、「『安』が入る」「入ってほしい」「絶対に嫌だ」などの投稿も見かける。冗談だろうが、「安始(安倍首相が始める元号ということで)」や「昭恵」などの新元号案を考えるツイッターの投稿者もいた。

「安倍首相が『安』をねじ込んでくる?」という噂まで

ここにきて囁かれているのが「安倍首相が権力を誇示するために『安』をねじ込んでくるのでは?」という噂。「そうなったらもう元号は使わない!」など、一部では想像を膨らませてエキサイトしている

“安倍首相がねじ込む”は「見当違いな話」と専門家

再び社会学者の鈴木氏による見解。

鈴木氏によれば、おそらく100近い候補が平成元年からストックされ続け、厳重なチェックを経て3つほどの本命候補に絞られているはずだという。
こうしたプロセスがある以上、安倍首相の一存で「安」をねじ込むなど無理があると鈴木氏。
「ただし、『安』という漢字自体は何度も元号として使われてきており、今回も使用される可能性はあります。それは安倍首相の意向というよりも、先述したようなプロセスの結果として選ばれた形に過ぎない。ですから、過剰な反応は余計な混乱を招き、天皇のお名前に傷をつけることになるでしょう」

予想が人目に触れた瞬間“ボツ”になる!?

ここまで元号予想の話をしておいてなんですが、先に「光文事件」で紹介した一説のように「予想されたので差し替える」可能性もあり、「これが有力候補!」と言われるほど、採用されにくくなりそうです。
「安」にしても…

ハッキリわかるのは、「先に報道された漢字は、採用されない」ということだ。
ということはつまり、今回、世間が「安倍首相の『安』が入る!」と声高に叫べば叫ぶほど、(もし候補にあったとしても)「安」は採用されにくくなるわけだ。
『安』も使用回数が多いんですが、安倍内閣が決めるわけですから、この漢字は避けるでしょうね(笑)

ほかの予想記事でも…

これらが人目に触れた瞬間、「絶対に採用されない案」へと変わってしまう。“候補”であったとしてもこの中から新元号が出ることは絶対にないこともお伝えしておく。

新元号予想が的中する可能性も?

ただ、今回はあまりに多くの予想があることから、「予想が当たる可能性」を鈴木氏は指摘しています。

「ただし、今回は生前退位ということで、あまりにも多くの予想が出てしまっているので、最終候補がすべて網羅されている可能性があります。そうなると、今さら新たな候補を選んで俗用をチェックして……という作業は時間的に難しいので、誰かの予想が当たる可能性はありますね」

とはいえ、多くの予想アンケートなどで上位になっている「安久」は、その“ド本命”っぷりで逆に新元号になることはない気がしますね…。
果たして新元号は何になるのでしょうか。4月1日の発表が楽しみです。