特集2017年11月28日更新

アメリカに広がるセクハラ告発“パンデミック”

米ハリウッドの大物プロデューサーに端を発するセクハラ疑惑がアメリカのエンタメ業界から政界や経済界、メディア界、スポーツ界にまで波及。さらに世界各地で過去のセクハラ被害を告発する動きが相次いでいます。

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目次

“パンデミック”の発端は「米映画界の重鎮」のセクハラ騒動

ワインスタイン氏が30年以上にわたりセクハラ行為

ニューヨーク・タイムズ紙に告発記事が掲載される

一連のセクハラ告発“パンデミック”の呼び水となったのは、「米映画界の重鎮」「ハリウッドの大物プロデューサー」などと称されるハーヴェイ・ワインスタイン氏のセクハラ騒動。さらにこの騒動の発端となったのは、10月5日のニューヨーク・タイムズ紙のスクープ記事でした。

発端は10月5日(現地時間)の米ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された記事。過去30年以上にわたり、アシュレイ・ジャッドやローズ・マッゴーワンら有名女優を含む多数の女性に対し、ワインスタインが行ってきたとされるセクハラ行為が赤裸々につづられている。
米紙ニューヨーク・タイムズが、ハーヴェイは女優やモデルなど複数の女性からハラスメントや暴行行為等で訴えられ、過去に8件の示談に応じていたと報道。彼は2015年にも同様の事件で警察から取り調べられていた。

「恋におちたシェイクスピア」「シカゴ」でアカデミー作品賞を受賞

ワインスタイン氏といえば、341本もの作品がアカデミー賞にノミネートされ、うち81本で受賞、自身もプロデューサーとして1999年に『恋におちたシェイクスピア』、2003年に『シカゴ』で作品賞を受賞した。
1979年に弟ボブと創立したミラマックス時代には、「恋におちたシェイクスピア」「パルプ・フィクション」「ギャング・オブ・ニューヨーク」など名作の数々でインディーズ映画界を牽引。05年にワインスタイン・カンパニーを立ち上げて以降も、「世界にひとつのプレイブック」やアカデミー作品賞受賞の「英国王のスピーチ」をはじめとする数多くの名作・ヒット作を世に放ってきた

「もののけ姫」の英語版製作総指揮も務める

過去には弟ボブ・ワインスタインと共同で映画会社ミラマックスを設立しており、当時には『もののけ姫』のアメリカ配給の際の英語版製作総指揮として名を連ねたこともあった。

絶大な権力を背景にセクハラ行為に及ぶ

マッサージや混浴を強要

彼のセクハラは映画業界における絶大な権力を背景にしてのものだ。ミラマックスで脚本ライターを務めたリザ・キャンベルは英サンデー・タイムズの取材に対し、「ワインスタインのホテルの部屋に仕事のミーティングとして招かれた結果、一緒にバスタブに入るように求められた」と語った。
ワインスタインは他の新人女優たちからも同様な訴えを起こされており、キャンベルは「私が受けた仕打ちも、彼女たちと同様のものだった」と述べている。報道によると8名の女優らが、全裸もしくは全裸に近い状態のワインスタインから、マッサージを行うことや一緒に入浴することを求められたという。

アンジェリーナ・ジョリーら大物女優もセクハラ被害を告白

「恋におちたシェイクスピア」でアカデミー賞主演女優賞を獲ったグウィネス・パルトローに加え、アンジェリーナ・ジョリーといった大物女優もワインスタイン氏のセクハラ被害に遭ったことを明かしています。

New York Times紙によると、グウィネスの場合、22歳の時に映画『Emma エマ』の主演に決まり、撮影前にやはりミーティングという理由でワインスタインにホテルの部屋へ呼ばれたという。ワインスタインはグウィネスに手を置いて、マッサージをしに寝室へ行こうと誘ったとのこと。
アンジェリーナは1999年の映画『マイ・ハート、マイ・ラブ』で、ワインスタインに不快な目に遭わされたという。詳細は明らかにされていないが、それが原因で「二度と彼とは仕事をしないと決め、他の人たちにも警告した」とのことだ。

要求拒絶で“干された”と感じる女優も

このほかに『パルプ・フィクション』(94)に出演したロザンナ・アークエット、フランスの女優ジュディット・ゴドレーシュも被害に遭っている。1995年に肉体関係を迫られ、拒絶したミラ・ソルヴィーノも「ほかの理由もあるかもしれないけれど、ハーヴェィを拒絶したことが影響していると感じた」とキャリア低迷について「ザ・ニューヨーカー」に語った。
彼の誘いを断ったことが、自分のキャリアに悪影響を及ぼしたとケイトは信じているそうだ。しかし、仕事を貰うためにワインスタインの誘いに乗る女優たちもいたそうで、ケイトの男友達は、ある女優に「ハーヴェイに気をつけろ」と言ったために仕事を干されたという。

60人以上が実名でセクハラ被害を告発

映画業界におけるワインスタイン氏の影響力が大きいため、セクハラ被害を訴えたら女優としての未来がなくなるかもしれないという恐怖があり、泣き寝入りする人は多かったようです。しかし、セクハラ行為が表沙汰になったことで、これまで黙っていた女優たちが次々に「私も!」と声を上げ始め、これまでにワインスタイン氏からセクハラ行為を受けたと実名で名乗り出た女性は60人以上といわれています。

「口止め料」提示や告発防止工作も

セクハラの域を超え、レイプされてしまった女優も既に何人か名乗り出ている。そのうちの1人、ローズ・マッゴーワンが9月に「レイプについて黙っていれば100万ドル(約1億千万円)支払う」という申し出を受けていたことをTIMES紙に明かした。
ワインスタインは昨年、自身を告発する可能性のある人物や、自身の過去を探っている記者の監視を「クロール」と「ブラック・キューブ」に依頼していたことをニューヨーカーが報じた。クロールは世界最大級の情報収集企業、ブラック・キューブは元モサド(イスラエルの諜報機関)の高官が設立した探偵社だ。

自身が設立した会社から解雇 ハリウッドからも追放

ニューヨーク・タイムズ紙の記事が出た当初は抗議声明を発表したことが報じられていたワインスタイン氏ですが…

ハーヴェイ・ワインスタインは、自身が設立した会社「ワインスタイン・カンパニー」を解雇された。
ワインスタイン・カンパニーの役員メンバーは10月8日、声明で次のように述べた。「ワインスタインの過去の不適切な行いが明るみに出たことを受け、会社として彼を即座に解雇することを決定した」

米アカデミーから追放

アカデミー賞を主催する米映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が2017年10月14日(現地時間)、緊急会合での採決で、映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタイン氏の会員資格を剥奪することを決定した。
今回のAMPASからの除名によって、ワインスタイン氏は事実上、映画界から追放されたことになる。

妻からは離婚を言い渡される

妻で、高級ブランド「マルケッサ」の共同設立者兼デザイナーのジョルジーナ・チャップマン(41)が、離婚を決意したことをPEOPLE誌に向けた声明で発表した。
「許しがたい行為によって多大な苦しみを背負わされた女性たちを思うと心が張り裂けそうです。私は夫との別れを選択しました。小さな子どもたちの心をケアすることが、今の私にとっての最優先事項です。どうかプライバシーを尊重してくださるよう、お願いします」

米ニューヨーク市警や英ロンドン市警などが捜査を開始

ハーベイ・ワインスタインに対し、米ニューヨーク市警が捜査に乗り出したことが、米ハリウッド・レポーターにより明らかになった。
また、10月12日(現地時間)には英ロンドン市警も、「80年代にロンドン市内でワインスタイン氏から性的暴行を受けたとする被害者が名乗り出た」という声明と共に、正式な捜査を開始した。

さらには米ロサンゼルス市警が強姦の疑いで捜査を開始しています。

作品の公開延期や制作中止などの影響も

ワインスタイン氏のセクハラ騒動を受け、制作済みの映画の公開が延期されたり、制作予定のドラマが白紙になったりといった影響も出ています。

ベネディクト・カンバーバッチが発明家トーマス・エジソンを演じた映画『ザ・カレント・ウォー(原題) / The Current War』の公開延期をワインスタイン・カンパニーが発表した。
11月24日の全米公開を予定していたが、2018年まで延期されることになってしまった。具体的に来年のいつ公開するのかは未定。
アマゾン傘下の制作会社アマゾン・スタジオは対応を協議。準備中の2作品のうち、「世界にひとつのプレイブック」のデビッド・O・ラッセル監督が制作総指揮を務める新ドラマを白紙にすると決定した。
同作は、ラッセル監督が企画・制作総指揮を務め、ロバート・デ・ニーロ、ジュリアン・ムーアが共演する注目作だったが、セクハラ騒動を受けて白紙撤回に。ラッセル監督とデ・ニーロ、ムーアの3人は共同で、「被害者への配慮のためこの企画を前進させないことを決定しました」と声明を発表している。

これらのほかに、フランス映画「最強のふたり」のリメイク「The Upside(原題)」も延期になり、Appleが獲得していたエルビス・プレスリーの伝記ドラマも制作中止になったといいます。

エンタメ業界に蔓延するセクハラが次々と明るみに

ワインスタイン氏のスキャンダル発覚をきっかけに、別の監督やプロデューサー、さらに大物俳優によるハラスメントを告発する人たちが続出。ハリウッドやエンタメ業界に蔓延するセクハラ行為が次々と明るみに出ることになりました。

これらの告発の中から、いつくか有名どころをピックアップして紹介します。

ケヴィン・スペイシー

子役に性的関係を持ちかけ

アカデミー賞を2度受賞の実力派俳優ケビン・スペイシーに性的被害を受けたとする俳優が現れた。
名乗りをあげたのは、人気ミュージカル「RENT レント」のオリジナルキャストとして知られ、現在は「スター・トレック:ディスカバリー」に出演中の米俳優アンソニー・ラップ。14歳のときに、当時26歳だったスペイシーに性的関係を迫られたと、米バズフィードの取材で告白している。
このバズフィードの記事に対し、スペイシーは自身のTwitterで声明を発表。30年も前のことなので記憶にないとしながらも、「もし私が彼の言うように振る舞ったのであるならば、自分の不適切極まりない酔っ払いの行動を心からお詫びしたい。また、長年にわたり辛い思いをさせたことも謝罪する」

このタイミングでの“ゲイ”カミングアウトに非難殺到

ケヴィン・スペイシー(58)が、自身のTwitterを通して、少年時代に彼にセクハラを受けたという主張する俳優に対して謝罪。また同声明の後半で彼はゲイであるとカミングアウトしたが、SNS上では「失望した」「言い訳にもなっていない」「注意をそらそうとしている」と批難が殺到している。
文章の後半部分がすぐさま批判を受けました。
「(セクハラ告発の)この話はわたしが自分の人生の色々なことに対処する勇気をくれた。プライベートを秘密にしていたため、噂が助長されていったのは理解している。わたしはこれまでの人生で男性たちとロマンティックな出会いをし、愛してきた。いまわたしはゲイの男性として生きることを選ぶ」
この文章は未成年者への性行為の強要を、同性愛者だというカミングアウトに問題をすり替えていると指摘されています。

騒動の余波!? 主演ドラマの終了が決定

謝罪と自身のカミングアウトを組合せたことで非難が殺到しているケヴィン・スペイシーが主演している人気ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」が第6シーズンで終了することが明らかになった。
Netflixとメディア・ライツ・キャピタルは「ハウス・オブ・カード 野望の階段」の終了を以前から決めていたというが、今回のスキャンダルが正式発表のきっかけになったようだ。

なおNetflixは、この発表の翌日にはシーズン6の製作を一時中断することを発表。さらにその後、スペイシーを完全に解雇しています。

セクハラの代償は7億円?

ネットフリックスの代表的ドラマ「ハウス・オブ・カード」からのクビを宣告された、俳優ケヴィン・スペイシーは金銭的にも重大な打撃を受けることになりそうだ。
今回のドラマへの出演停止で、彼は最大で650万ドル(約7億4000万円)の出演料を失うことになる。フォーブスの「最も稼ぐTV俳優」ランキングの常連であるスペイシーは昨年、1200万ドル(約14億円)を稼いでいた。

騒動の影響が各方面に 撮り直しの損害額は11億円以上

セクハラ疑惑が浮上したことで、上記の主演ドラマ終了のほか、12月公開の新作映画からカット(代役で撮り直し)、受賞予定だった2017年度国際エミー賞功労賞の取り消し、特番の出演シーンカットといった影響が出ています。なお、映画の撮り直しによる損害額は推定で1000万ドル(約11億円)以上にのぼるとか。

セクハラや性的虐待疑惑が拡大

彼に対するセクハラや性的虐待疑惑がドミノ倒しに拡大しており、米国の元ニュースキャスター、ヘザー・アンルーは、彼女に近しい関係にある人物が彼から性的虐待を受けたと主張している。
また、これを受け、ケヴィンが芸術監督を務めているロンドンのオールド・ヴィック・シアターの関係者が次々と反応。「彼は、私たちがオールド・ヴィック・シアターで仕事をしていた時、私の若い男性の友人に痴漢行為をした。いつも避けるべき人物として知られていた。だから、あんまり驚いていない」
ケヴィン・スペイシー(58)にセクハラ行為をはたらかれたとされる男性がさらに名乗りを上げている。1986年に若干14歳であったアンソニー・ラップに対して性的行為を求めたとして非難されているケヴィンだが、今回新たに3人の男性がセクハラ行為をされたと名乗り出た。
ラップ以外にも次々と告発者が出てきたほか、「ハウス・オブ・カード 野望の階段」の撮影現場でも多くの男性スタッフがセクハラ被害を受けていたことが明らかになってきた。スペイシーの広報はすでに仕事を辞めている。

スペイシーからセクハラを受けたと証言した人は11月11日の時点で14名にのぼり、さらに16日には、スペイシーが芸術監督を務めていたロンドンの劇場で20人の男性からセクハラ被害の訴えが寄せられていることも明らかになっています。

ベン・アフレック

ヒラリー・バートンに“不適切な行い”

俳優のベン・アフレックが、セクシャル・ハラスメントを非難され、謝罪した。
あるツイッターユーザーがベンが2003年に「Total Request Live」の司会を務めていたヒラリー・バートンの胸をインタビュー中に触ったことをツイートし、ヒラリーが「私は忘れていない」「私はあの時泣かないように笑わなくちゃいけなかった」とつぶやいた。
そして、ベンは現地時間11日に「バートンさんに不適切な行動をしました。本当に申し訳ありません」と謝罪した。

ワインスタイン氏絡みの追加報酬を全額寄付すると表明

女優ヒラリー・バートンに過去のセクハラ行為を非難された俳優ベン・アフレックが、セクハラスキャンダルの渦中にあるハーヴェイ・ワインスタイン絡みの映画で発生する再放送料などの追加報酬を全額寄付することを発表した。

これは、ワインスタイン氏のセクハラ行為をベン・アフレックが批判したあとに上記のセクハラ行為をツイッターユーザーに指摘されて謝罪…という流れがあったための動きです。

スティーヴン・セガール

20年以上に及ぶセクハラ疑惑浮上

インターネットメディア『Inside Edition』によると、セガールに対する疑惑も複数持ち上がっており、その期間は20年以上に及ぶ。ジェニー・マッカーシーは、キャスティングセッションの際にセガールから「(『Playboy』誌の)プレイメイト・オブ・ザ・イヤーだったんだって? ドレスを脱げ」と言われたという。
ゲレロ記者が『Newsweek』誌に述べたところによれば1996年、当時女優だった彼女は、セガールが製作・主演した映画『沈黙の断崖』の主演女優のオーディションを受けるため、オーディション会場のセガールの自宅を訪れた。出迎えたセガールはシルクローブ1枚しか身に着けていなかったという。

上記の10月に浮上した疑惑に続き、11月に入ってからも新たに複数の女優からセクハラ行為を告発されています。

2010年にも元秘書から訴えられていた

セガールは2010年に元秘書の女性からセクハラで訴えられたことがあります。
この訴えをきっかけに、他にもふたりの女性が被害を告発。彼自身が疑惑を否定し、結局訴えは棄却された

ダスティン・ホフマン

30年以上前の未成年へのセクハラ行為を暴露される

ホフマンが主演した1985年のテレビ映画「セールスマンの死」(フォルカー・シュレンドルフ監督)に、プロダクション・アシスタントとして参加したアナ・グラハム・ハンターさんがこのほど、ホフマンからセクハラを受けたという告発手記を米ハリウッド・レポーターに寄稿した。
ハンターさんは当時17歳。
その後、脚本家のウェンディ・リスも1991年にホフマンからセクハラを受けたと、米バラエティで告白。ニューヨークのホフマンの製作会社パンチ・プロダクションを訪れた時、近くのホテルに誘われたという。

メリル・ストリープも被害か 昔の記事が蒸し返される

どうやらダスティンの“素行の悪さ”は、それに始まったことではないということが明るみに出はじめた。
1979年に『クレイマー、クレイマー』でダスティンと共演したメリル・ストリープは、撮影前に初めてダスティンと対面したときに、なんと胸を触られて非常に不快な思いで撮影に臨んだというのである。この打ち明け話はメリルのインタビュー記事として当時のタイム誌に掲載されており、これがいまになって浮上し、ダスティンにとっては非常に不利な話題となっている。

昔の記事が浮上したことを受けてメリル・ストリープは「あの記事は間違っている」と否定。しかし、今になって否定したことに批判が殺到する騒ぎも起きています。

ルイス・C・K

5人の女性がセクハラ被害を告発 事実と認める

New York Times 紙の記事で、5人の女性が米コメディアンで俳優のルイス・C・Kにセクシャルハラスメントを受けたと主張していることについて、ルイスは事実であると認めた。

映画の公開中止などの複数の作品に影響

プロデューサー、脚本家、俳優としても活躍する人気コメディアンだけに、セクハラ騒動の影響は大きいようです。

今回のスキャンダルで、自閉症患者のためのHBOのチャリティー番組「ナイト・オブ・トゥ・メニー・スターズ(原題) / Night of Too Many Stars」に出演予定だったルイスはカットされたほか、Netflixと契約していた2本のスタンドアップ特別番組は、2本目の録画が中止になっている。4月に配信された1本目はライブラリーに残す意向のようだ。また、クロエ・グレース・モレッツと共演し、11月17日にアメリカで封切り予定だった映画『アイ・ラブ・ユー・ダディ(原題) / I Love You, Daddy』も公開が中止されている。
セクハラ行為が暴露されたことで、大ヒット長編アニメーション「ペット」の続編から降板したことがわかった。
主人公のテリアのミックス犬マックスの声を演じたC・Kは、続編となる「ペット2(仮題)」にも同役で続投することが決まっていたが、米ニューヨーク・タイムズ紙が11月9日(現地時間)、C・Kからセクハラを受けたという女性5人の証言に基づく暴露記事を掲載したことで、降板を余儀なくされた。

ロバート・ネッパー

映画撮影中の“疑惑” 本人は反論

日本でも人気のあの人にも疑惑が持ち上がった。『プリズン・ブレイク』のセオドア・“ティーバッグ”・バッグウェル役で知られるロバート・ネッパー(58)だ。
衣装デザイナーのスーザン・バートラムは1991年、映画『Gas Food Lodging』の撮影クルーとして働いていた。ニューメキシコ州での撮影中、ネッパーのトレーラーに衣装を運んだ際に事件は起こった。The Hollywood Reporterにバートラムが語ったところによると、入室するやネッパーはすぐさま立ち上がり、彼女の股の部分を思い切りつかんできたという。
ネッパーはこの告発を受け、Instagramに反論メッセージを掲載。
「ここ数週間にわたり、女性たちが経験した痛みと、彼女たちが前に進むために見せた勇気について妻と私は語り合ってきました。私はある女性から暴力について誤った告発をされ、非常にショックを受けています。言われているのは私ではありません。今回のことで私を支え、元気づけてくれた人々に心からの感謝を送ります」

ジョージ・タケイ

1981年に起こった“事件” 本人は全否定

「スター・トレック」「HEROES/ヒーローズ」などで知られる俳優ジョージ・タケイを糾弾する男性が出てきた。
元モデルで俳優のスコット・R・ブラントンが The Hollywood Reporter のインタビューで語ったところによると、彼が23歳だった1981年に事件は起こったという。
タケイはツイッターでセクハラを否定しつつも、「男性の主張を深刻に受け止めている」と書き込んだ。タケイは性的少数者(LGBT)の権利を擁護する活動でも知られる同性愛者。

なお、このTwitterへの一連の投稿は「1」から「5」、そして「end」とナンバリングされ、6連続でツイートされています。

ジェームズ・トバック監督

女性38人が被害訴える

ロサンゼルス・タイムズ紙が、ジェームズ・トバック監督がこれまでに少なくとも38人の女性にセクハラを行ったとする暴露記事を掲載した。
同紙によれば、トバック監督は売れない女優や大学、高校に通う女性をオーディションと偽って呼び出し、セクハラ行為に及んでいたという。

その後、告発した女性は200人に

被害を告発した女性の数は200人を超えたとされているが、その中に女優のレイチェル・マクアダムスやセルマ・ブレアがいるという。

ブレット・ラトナー監督

6人の女優らが告発

映画『ラッシュアワー』シリーズや『X-MEN:ファイナル ディシジョン』で知られるブレット・ラトナー監督のセクハラ疑惑が浮上した。『X-MEN:アポカリプス』のオリヴィア・マンら6人の女性が LA Times に告発した。
また、当時21歳のモデル・歌手だったエリ・ササキは『ラッシュアワー2』の撮影にエキストラとして参加した際、撮影の待ち時間にラトナー監督にへそ出し衣装の腹部を人差し指でなでられ、一緒にトイレに行かないかと誘われたとのこと。

ジョン・ラセター監督

ディズニーの重役 “不適切なハグ”で半年間休職へ

80年代から「ディズニー」のアニメに携わり、「ピクサー」の立ち上げにも貢献。製作総指揮として『美女と野獣』や『ファインディング・ニモ』、『アナと雪の女王』などを大ヒットさせてきたアメリカのアニメ映画界の重鎮、ジョン・ラセターが半年間休業することになった。原因は、セクハラだ。
匿名を条件に「ピクサー」の従業員たちが語るには、ラセターは従業員やエンタメ業界の人々に(不適切な)ハグをすることで有名だったという。「つかんだり、キスしたり、体形についてのコメントをしてくる」とも。

「ワイスタイン症候群」エンタメ業界以外にも飛び火

ワインスタイン氏のセクハラ疑惑発覚以降、有名俳優や映画関係者の疑惑が次々と暴かれる事態は「ワインスタイン症候群」とまでいわれているようですが、この症候群はエンタメ業界の枠を飛び越えてアメリカの政界や経済界、メディア界、果てはスポーツ界やイギリスの政界にまで及んでいます。

ロイ・プライス(アマゾン・スタジオ社長)

セクハラ行為の疑いで辞職

アマゾン・ドット・コムの映画製作子会社のアマゾン・スタジオのトップ、ロイ・プライス氏が、セクハラ行為の疑いで休職扱いとなり、その後、辞職することになった。
プライス氏処分の理由は2つある。1つは、プライス氏の女性プロデューサーに対するセクハラ行為、もう1つは、女優のローズ・マッゴーワン氏が、ハリウッドスキャンダルの張本人ワインスタイン氏による性的被害を訴えたにもかかわらず、プライス氏や親会社のトップに無視されたというのだ。

ジョージ・H・W・ブッシュ(元アメリカ大統領)

8人の女性から昔のセクハラ被害を告発される

ブッシュ元大統領(93)は25日、米女優ヘザー・リンドさん(34)がセクハラを受けたと主張していることについて、広報担当者を通じて謝罪した。ただ、写真撮影の際、リンドさんを落ち着かせようとしたための行為だったと釈明した。
リンドさんはInstagramに、2014年に出演するテレビドラマのプロモーションイベントで、ブッシュ氏やバーバラ夫人らと写真撮影した際、ブッシュ氏に背後から体を触られたり下品な冗談を言われたりした、と書き込んだ。

この記事にある女優だけでなく、少なくとも8人の女性から昔のセクハラ被害を告発されているようです。

ロイ・ムーア(元アラバマ州最高裁判事・上院補欠選の共和党候補)

14歳少女ら複数の女性に性的な行為か

米アラバマ州上院補欠選挙の共和党候補であるロイ・ムーア元同州最高裁判事(70)に、未成年の少女にわいせつな行為をした疑惑がかかっている。
選挙を控えたムーア氏にかけられた疑惑は、当時32歳だった1979年、14歳の少女にアルコールを飲ませて体に触れたというものである。他にも3人の女性が、自身が16歳から18歳の間に、ムーア氏から性的に迫られたと主張している(ハフィントンポスト)。

11月9日に上記のスクープが報道されたあと、全部で8人の女性が性的な行為の被害者として名乗り出ているようです。

アル・フランケン(民主党上院議員)

コメディアン時代の共演女性が暴露

元芸能人で現在民主党上院議員のアル・フランケン氏は、ラジオの女性司会者から10年以上前にキスを強要され性的いたずらをされたと暴露され、証拠写真も公開されたため謝罪に追い込まれた。

ジョン・コンヤーズ(民主党下院議員)

米議会で最長の議員歴を誇る民主党の重鎮

米議会で最長の議員歴を誇り、市民権運動の象徴的指導者の一人でもあるジョン・コンヤーズ(John Conyers)民主党下院議員(88)は26日、同院の司法委員を辞任すると発表した。コンヤーズ議員に対しては、セクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)疑惑が持ち上がっている。
長老格のコンヤーズ下院議員が元スタッフの女性から、それぞれセクハラ行為を訴えられた。

マイケル・ファロン(イギリス国防相)

番組司会者の膝に触れたとして謝罪 辞任へ

セクハラ疑惑が浮上していた英国のファロン国防相は1日、自らの行動が国防相に求められる高い水準にもとるものだったとして辞任した。
ファロン氏は今週、2002年にラジオ番組の司会者の膝に触れたとして謝罪した。

チャーリー・ローズ(テレビ司会者)

8人の女性がセクハラ被害訴え…解雇

米CBSなどのTVネットワークは20日、インタビュアーとして知られるテレビ司会者チャーリー・ローズ氏(75)の番組放送や出演を一時中止すると発表した。ローズ氏については、8人の女性がワシントン・ポスト(WP)紙にセクハラを受けたと証言し、「不適切な行為」を謝罪している。
米CBSニュースは21日、セクハラ問題が報じられた有名司会者、チャーリー・ローズ氏(75)を解雇したと発表した。また、ローズ氏の名前を冠したトーク番組を放映してきた米公共放送(PBS)や、米経済テレビ局ブルームバーグも、番組の打ち切りと契約解除を決めた。

ゼップ・ブラッター(元FIFA会長)

元米国代表の人気GKソロが告白 元会長は否定

アメリカ女子サッカーを代表する選手であり、アメリカ女子代表の守護神であるGKホープ・ソロが、国際サッカー連盟(FIFA)の元会長であるゼップ・ブラッター氏のセクハラを訴えた。
昨年、現役を引退したソロによれば、それは2013年のFIFAバロンドール表彰式のことだったという。同僚のアビー・ワンバックを表彰するために登壇する際、FIFAの元会長ゼップ・ブラッター氏がソロのお尻を撫で回したというのだ。
ブラッター氏は、スイスメディア『ブリック』に対して「そんな批判は、木曜日にスイス代表がもらったPKのようにお笑い草だ」とスイスが獲得した2018 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選プレーオフでのハンドを引き合いに出し、一笑に付せた。

スティーブ・ジャーベットソン(投資家)

女性起業家に「不適切な振る舞い」

宇宙企業スペースXなどの役員を務める投資家スティーブ・ジャーベットソン氏が、パートナーだったベンチャーキャピタルを辞職。

ジャーベットソン氏のセクハラ疑惑についてはワインスタイン氏の騒動が起こる前から内部調査が進められていたようですが、表沙汰になったのはワインスタイン氏の騒動が大きくなっていた10月末。時期が時期だけに大きく取り上げられてしまったようです。なお調査によると、女性起業家に対して複数回の「不適切な振る舞い」があったといいます。

グレン・スラッシュ(ニューヨーク・タイムズ記者)

入社前の「性的に不適切な行為」疑惑で停職処分

米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は20日、入社前の職場で性的に不適切な行為をしたとの疑惑が報じられたホワイトハウス(White House)担当のベテラン記者を停職処分とすると発表した。
この記者は今年1月に政治サイト「ポリティコ(Politico)」からNYT紙のホワイトハウス政権担当記者に転職したグレン・スラッシュ(Glenn Thrush)氏。米ニュースサイト「Vox.com」がスラッシュ氏について、ポリティコ記者時代に若い女性らに対する不適切な行為があったと報じていた。

セクハラ告発“パンデミック”が起きた背景

「セクハラに厳しいアメリカ社会」の実像は…

アメリカ人の3人に2人「セクハラは日常的にある」

米国でこれだけセクハラ告発が頻発している背景には、セクハラ問題が社会全体に根深く蔓延っている実態がある。
米国といえばセクハラ行為に厳しい社会というイメージが強かったが、実態はそうではないようだ。米4大ネットワークテレビのNBCと大手新聞社ウォールストリート・ジャーナルが10月に共同で発表した調査結果によると、米国の被雇用者女性の48%は職場でセクハラを受けたことがあると回答し、米国人67%が職場でのセクハラは日常的にあると回答している。

ハリウッドの「歪んだ男性優位社会」

以下に紹介する記事はどちらもワインスタイン氏のセクハラ問題の背景に言及したものです。

関係者の中からは、今回のセクハラ問題の背景にはハリウッドの歪んだ男性優位社会があると指摘する声もあがる。ワインスタインは1997年のセクハラ裁判で、10万ドルを支払い和解に持ち込んだとタイムズは報道している。
「お金があってパワフルならばどんな振る舞いをしてもいい」という暗黙の了解がまかり通っていたハリウッド。…というよりは、どこの業界でもパワーを持っている者が下のものを足蹴にしたり酷い扱いをしたりということは往々にある。その頂点にあるのがセクハラだ。映画業界にセクハラが横行している理由に、「何が何でも俳優になりたい」という若者が溢れているという事実がある。

声を上げる気力を失う被害者たち

これだけ過去のセクハラ被害の告発が今になって相次いでいるということは、もとを正せば「被害者が声を上げにくい」という背景に行き着きます。

性犯罪は、恥辱を受けるという精神的苦痛が大きい犯罪です。被害者は思い出すたびに屈辱感や怒りに囚われながらも、性犯罪というナイーブな問題ゆえに、恥ずかしさによって過去を封印したりします。または事実を公表することで、規模は人それぞれ違えども、好奇心や悪意によるセカンドレイプが起こりかねません。さらに加害者が社会的地位であったり、巨大な権力を後ろ盾にしていた場合、個人が被害を訴えてももみ消されたり、これまでの生活の糧をなくす可能性すらあります。そんな二次被害も併せて起こり得るため、被害者は訴え出る気力を失うのです。

世界に広がる「#MeToo」で被害告発の連鎖が発生

ワインスタイン氏のセクハラ疑惑が報じられたことをきっかけに、SNS上でハッシュタグ「#MeToo(私も)」を使って被害体験を訴える運動が世界中に広がっています。

社会的地位の高い人物によるセクハラ自体は、今に始まった問題ではないが、今回はツイッター上のハッシュタグ(検索用の目印)「ミートゥー(私も)」を合言葉に告発の動きが拡散。国境や業界の垣根を越え、これまで封印してきた過去の被害を名乗り出る女性が続出した。

「涙があふれてくる」日本でも#MeTooでつらい心情を吐露

日本の利用者の間でも浸透し、被害から長い年月がたった今でも当時を思い出すと「涙があふれてくる」などとつらい心情を吐露した投稿も散見される。

きっかけはアリッサ・ミラノの呼びかけ

「#MeToo」の動きは、女優のアリッサ・ミラノが過去にセクハラや暴行の被害を受けたことのある人に「私も」と声を上げるよう呼びかけたことがきっかけになっています。

セクハラ被害にあった人たちが、単に“MeToo”と書くことで、世間にこの問題を訴えかけることができるのでは――。そんな提案を友人から受けたアリッサは、SNS上で「#MeToo」キャンペーンを展開。「性的な嫌がらせを受けたことがある人は“MeToo”と書いてリプライして」とツイートしている。
このキャンペーンには、レディー・ガガやガブリエル・ユニオン、エヴァン・レイチェル・ウッドなど多くのセレブがすでに賛同を表明。

「#MeToo」投稿は約1週間で170万件

10月24日付の CBSニュースがツイッター社に確認したところによると、#MeTooのハッシュタグは1週間ほどの間にツイッターで170万回使用された。#MeTooを付けたツイートの数が1000以上に達した国は85ヶ国に上ったという。一方、フェイスブックでは「MeToo」の動きが始まって24時間以内に、世界中の470万ユーザーから「MeToo」に関する投稿、コメント、リアクションが1200万件以上あった。

人気女優の告発に触発されて「連鎖」が発生

さきほど述べた「被害者が声を上げにくい」という壁を打破したのは有名女優らの行動だったようです。

CNNテレビ(電子版)は、ワインスタイン氏によるセクハラを訴えた中に、グウィネス・パルトローさんやアシュレイ・ジャッドさんら人気女優が多数いると指摘。知名度のある人が声を上げたことが、被害者が連鎖的に名乗り出る背景にあったという専門家の分析を伝えている。 

世界各地でセクハラへの抗議デモも

「#MeToo」のSNS上での拡散だけでなく、セクハラへの抗議デモといった被害者が声を上げる動きは世界各地に広がっています。

ワインスタイン氏が女性に対するセクハラなどで告発されている事態を受け、フランスの複数の都市で、セクハラへの抗議デモが行われ、数百人の女性が参加した。
デモでは、「女性の正義」「私たちは黙っていない」などのメッセージが書かれたプラカードが掲げられた。
10月末にはフランス各地で反セクハラデモが展開され、アメリカでは著名アーティストを含む7000人が業界の権力者のセクハラを非難する公開書簡を発表。11月に入ってからは、ペルーでミス・ペルー審査会の出場者たちが壇上から女性への暴力に抗議し、欧州議会ではセクハラ、レイプ被害を受けたことのある30人以上の女性議員が「Me Too」のプラカードを掲げ、性暴力の撲滅を訴えた。
NBCニュースは、アメリカの上院議員全21人に、セクハラに遭った経験について話してくれるよう依頼した。すると、4人の議員(全員民主党員)が、カメラの前で自らの経験を語ることに同意した。「政府の中で最も力のある女性でさえ、MeToo(自分もセクハラをされた)と言う人がいる」として、社会に出たばかりの若い頃に経験した、同僚から事務所で追いかけられた話や、力のある男性議員に言われた性的な冗談など、生々しい経験談(ビデオ)を NBCニュースのサイトに掲載している。

ここ数日だけでも、スウェーデンでノーベル賞関係者のスキャンダルが発覚したり、オーストラリアの著名なテレビパーソナリティーのセクハラ疑惑が浮上したりと、“パンデミック”の余波は世界中に広がっていて、さらに米政界のスキャンダルも現在進行系で記事が連日のように配信されてきています。こういった状況を見ていると感染症で例えれば、10月上旬に米映画界という“一部地域”の局所的な“感染症”が、遅れて“ほかの地域”で急速に流行りだしている…といった感じでしょうか。
また、アメリカは日本に比べてセクハラに格段に厳しいという漠然としたイメージがありましたが、今回の騒動によってその実態は違うということを知ることができました。アメリカ国内でも騒動をきっかけに「セクハラは悪だということを再確認する」世論が形成され、セクハラを黙認しない機運が高まっているといいます。
今回の“パンデミック”を通じて、セクハラ被害者を守るべき、セクハラをなくすべきという社会的風土が世界中で形成されていけばいいですね。

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