特集2016年11月24日更新

ビジネスに役立つ行動心理学特集

行動を観察することで人間の心理を研究する学問、行動主義心理学。この行動主義心理学によって判明した様々な法則を使って、人の心理を探ったり行動に影響を与えるのが「行動心理学」です。近年、恋愛やビジネスにもこの行動心理学が使えると脚光を浴びています。今回はビジネスに役立つ行動心理学についてまとめてみました。

行動心理学とは?

科学的に行動を研究するという心理学のアプローチ。行動そのものを研究することで、人間の行動の法則を導き出し、ひいてはそこから心理を理解することができるという学問です。

学術的には「行動心理学」という言葉はないようですが、近年テレビなどで紹介されて一般的となりました。

ビジネスで使える行動心理学5選

一口に心理テクニックと言っても色々ありますが、比較的取り入れやすいものを集めてみました。

カリギュラ効果

──「絶対にやらないでください」と禁止されるとやりたくなる

行動心理学の専門用語。由来はローマ帝国の皇帝カリグラをモデルにした1980年の映画『カリギュラ』。過激な内容だったため一部で公開禁止になったが、それがかえって関心を呼んだ。

最近、スマホゲームのCMで「絶対やるなよ!」というコピーが話題になりましたね。ホラー系のCMが「怖すぎて放送禁止」というニュースも一時期よく話題になりました。
ビジネスシーンで使う場合は、頭ごなしに禁止するより「効果が出すぎてしまうので、この場合の利用はあまりオススメはしませんが…」というように、理由付けもあるとより良いかもしれません。

アンカリング

たとえば、せっかくドーナツを買った次の日から、同じものが100円で売られ始めると、顧客はやはり損をしたような気分になります。このような経験をすれば、次からは100円セール以外の日は購入するのを控えようと思うことは当然のことといえるでしょう。結果として、ミスタードーナツは、100円セールをしない限りは、売り上げをアップすることは難しくなるという悩ましい状況に陥ってしまっていたのです。

このような顧客行動は「アンカリング効果」と呼ばれ、同じ商品であれば最安値が顧客の購買基準に設定され、それを上回る価格の場合、余程の緊急な必要性が起こらない限りは購買に結びつかなくなります。つまり、セールは短期的な売り上げアップに貢献するというメリットがある反面、一旦行ってしまうと、やり続けなければ消費を刺激することはできなくなるというデメリットもあるというわけです。このようなセールのメリットとデメリットを天秤にかけた結果、デメリットの方が大きいという結論に至り、100円セール廃止を決定したのでしょう。

比較する基準を変えることで、相手の判断をコントロールするという手法。数値を多くも少なくも感じさせることができるのと、基準を設定するだけなので、比較的取り入れやすいテクニックです。

ランチョン・テクニック

人間の脳は、気持ちのいい体験をしたときのことはよく覚えているといいます。心理学者グレゴリー・ラズランは、飲食をしながら相手と交渉すると、美味しい食事や楽しい時間がポジティブに話に結び付くとしました。この気持ちよさを利用したのが、ランチョン・テクニックです。

これも取り入れやすいテクニック。一緒に食事をとるという行動自体が、相手と仲がいいと錯覚させる心理効果を生み出すものと思われます。どんな心理テクニックも、相手が心を開いてくれていないと効果が出にくいものです。
美味しいご飯が食べられて、プレゼンも通るとなれば一石二鳥?

フレーミング

嶋氏は「10年以内にNTTドコモを抜く」という孫さんの言葉に心を動かされたそうですが、これは「フレーミング(枠組み)」をうまく使った方法です。政策提言に置き換えると、「いまの政府は××がダメだ」と異議を唱えるばかりの政治家より、「政府の対応が遅れている××を実現します」と訴える政治家のほうが支持を集めやすい。前者はネガティブ・フレーミング、後者はポジティブ・フレーミングと呼ばれます。

非常に有名なテクニックなのでご存じの方も多いでしょう。同じ数字でも、「死亡率が低い」と説明されるより、「生存率が高い」と説明された方がよりポジティブに聞こえ、聞き手にとって受け入れやすい表現になります。色々と表現を模索してみてください。

メンタルセット

相手が引き受けられそうな簡単なお願いを何度か続けると、相手は「Yes」と言い続けることになり、自然と「Yesと言う気持ちの流れ」が作られます。このような心の状態を「Yesのメンタルセット」と呼び、よく勧誘等の場面で使われます。

「ピザって10回言ってみて」というあの遊びをイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれません。YesだけではなくNoのメンタルセットも作り出すことができるので、あまり肯定的ではない相手には、わざとNoばかり言わせるという応用手法もあります。

行動心理学を使って、自分を変える方法4選

相手を動かす心理テクニックもビジネスには必要ですが、せっかくなら、自分をより成長させるためにも使いたいもの。自分に使える心理テクニックを集めてみました。

何事も、なかなか続かない…

ところで行動科学マネジメントでは、人が望んだ結果を得られない理由は「たった2つ」だとされているのだそうです。

(1)「やり方」を知らない
(2)「やり方」は知っているが、「続け方」を知らない

逆にいえば、この2つさえ理解すれば、望んだ成果を手に入れることが可能。そして、その点を踏まえたうえで重要なのは、行動を続けて習慣化すること。

できることから始めてみる、というのはよく言われることですが、こんなことでいいの?という簡単なことからでいいので、まず始めてみましょう。

失敗ばかり…こんな自分を変えたい!

「失敗は成功のもと」と言われますが、実際は一度失敗すると、そこから挽回するのは難しいもの。そこで、失敗を反省するよりも有効な方法があります。それは「個人的な失敗を口にしない」ということ。失敗を意識し続けると、「ハウリング効果」によって、同じ失敗を繰り返す可能性が高くなってしまうのです。いつまでも過去の失敗を悔やむくらいなら、「反省なんかしない」と割り切ったほうがうまくいくのです。

自信がない。もっと自信が持てれば…

私たちは、身につけているものも含めた持ち物すべてを「自分」と考える傾向があります。これは「拡張自我」と言われ、他人の印象よりも、自分で自分のことをどう認識するかということ。拡張自我を高める手っ取り早い方法が、持ち物をランクアップさせる方法です。「まず格好から」というのは、心理学的にもあながち間違っていないのです。ちなみに、家柄や学歴、会社や職業も拡張自我に含まれるとされます。

とはいえ、めんどくさいんだよねえ

「やらなきゃ」と思わないようになることは意外に簡単。それは、「やらなきゃ」という考えを、「やりたい」とか「やってもいい」と変えることだそうです。たったそれだけのことで、「めんどくさい」という気持ちがなくなるということ。

いかがでしたか?
目的や悩みに応じて、「これならできそう」と思うものから始めてみることをオススメします。