特集2018年2月24日更新

29連勝後も快進撃続けスピード昇段 藤井聡太六段

デビューするやいなや将棋界の連勝記録を塗り替え日本中にその名を知らしめ、先週行われた「朝日杯オープン戦」では準決勝で羽生竜王、決勝で広瀬八段を下し、最年少で中学生初の一般棋戦優勝を果たした藤井聡太六段。この歴史的快挙を振り返るとともに、「29連勝」後の歩みや最近の活躍、プライベートについてもまとめてみました。

目次

第11回朝日杯将棋オープン戦で優勝

中学生の一般棋戦優勝は初

17日、東京都千代田区で指された朝日杯オープン戦本戦の準決勝で羽生善治棋聖(47)=竜王=を破り、決勝でも広瀬章人八段(31)に勝ち、最年少の15歳6カ月で中学生初の一般棋戦優勝を果たした。
午前の準決勝では羽生棋聖を撃破した。約600人が見守る公開対局の緊張感が漂う中、藤井五段の先手番で始まり先攻したが、羽生棋聖も反撃。最後は藤井五段の攻めが決まり、119手で制した。決勝は広瀬八段と初対局。秒読みでの将棋となったが、最後は相手玉を追い込み、117手で勝った。

会場の大ホールに鳴り響いた20秒以上の喝采

約600人をのみ込んだ大ホールに万雷の拍手が鳴りやまない。タイトル経験者の難敵・広瀬八段を下して優勝を決め、ペコリと一礼した藤井五段、いや六段。彼は本当に15歳なのか。驚がくと祝福が交じり合った喝采は20秒以上も続いた。

準決勝では羽生善治竜王を撃破

準決勝で対局したのは、将棋界史上初の永世七冠を達成し、国民栄誉賞を授与されたばかりの羽生善治竜王。これまで非公式戦で2度対戦(1勝1敗)していましたが、快進撃を続ける中学生棋士と将棋界のレジェントによる公式戦での初顔合わせということで、対局前から大きな話題となっていました。
羽生竜王のレジェントたるプロフィールはこちら。

1970年(昭45)9月27日、埼玉県所沢市生まれの47歳。故二上達也九段門下。82年六級で奨励会入りし、85年に四段昇格し史上3人目の中学生プロに。89年竜王戦で初タイトル獲得。96年王将戦で初の全7大タイトル同時制覇を達成。2017年12月に史上初の永世7冠を達成した。タイトル獲得は歴代最多の通算99期、現在竜王位と棋聖位の2冠。通算1960局で歴代2位の1394勝564敗(持将棋2)、勝率.712。96年内閣総理大臣顕彰。

決勝で対局した広瀬章人八段も現在A級のトップ棋士

羽生竜王を倒して進んだ決勝の舞台で対戦した相手、広瀬章人八段も元タイトル保持者で現在も将棋界の最高クラス「A級」に在籍するトップ棋士です。

順位戦A級で堂々と戦うトップ棋士。この大会の本戦では菅井竜也王位(25)、渡辺明棋王(33)、久保と3人のタイトル保持者を破っての決勝進出は圧巻だった。早大進学と同時にプロとなり、在学時の2010年には大学生として史上初めて王位のタイトルを獲得。大きな話題となった。

史上最年少で六段に昇段

朝日杯を制したことにより、六段昇段規定の「五段昇段後全棋士参加棋戦優勝」を満たしたため、藤井“五段”は六段に昇段。2月1日に中学生初の五段に昇段したばかりで、「藤井五段」だったのはわずか2週間あまりということになりました。

五段昇段後、わずか16日で中学生初の六段に。六段昇段も、加藤九段の16歳3カ月を抜き、最年少記録となった。

「自分の実力的には望外の結果。でも自信になりました」

棋戦を制した藤井六段のコメントには喜びと驚きが交わっていました。

「全棋士参加棋戦の優勝という大きな結果を残せたことは自信になった」と喜び。「まだまだ足りないところが多いが、こうして優勝できたことを励みにさらに進んでいきたい。(六段昇段は)自分でも思ってもいなかったので驚いている」と話した。
「自分の実力的には望外の結果。でも自信になりました。これからもさらなる高みを目指して精進したい」

次なる記録の可能性は「最優秀棋士賞」や「最年少タイトル挑戦」など

この日の2勝で公式戦11連勝。17年度の成績は56勝11敗となり、年度表彰項目の対局数、勝利数、連勝(29)、勝率(・836)の4部門で全棋士トップを独走中。あと4勝で04年羽生以来、史上4人目(7度目)の年度60勝に到達する。連盟が毎年度選出する「将棋大賞」の最優秀棋士賞の可能性も出てきた。
4月には高校生となるが、屋敷伸之九段(46)の持つ17歳10カ月でのタイトル挑戦、18歳6カ月のタイトル獲得と記録へのチャレンジは続く。

広瀬八段「とんでもない新人だと思いました」

準優勝に終わった広瀬八段は「初めての対戦ですが、とんでもない新人だと思いました」と、藤井新六段の実力を素直に認めた。
「(対局中、解説担当の)佐藤名人に代わってほしかった」「藤井さんを応援している皆さんと、ひとりぼっちの私」と自虐気味に話し爆笑を誘う。「多くの棋士がいつ藤井さんと当たるかという心境かと思うんですが、こんな大役を担う感じになるとは思わなかった。私には荷が重かったかなというのが正直なところ」

羽生竜王「新しい感覚が必要と痛感した一日でした」

「まだ15歳。藤井さんは大きな可能性を秘めています。成長期で、ますます伸びていく。今後を私が予想するのは難しいです」。
藤井の強さを「パターン認識の能力が高い」と評す。「将棋は読み、予想し、手を選ぶものだが、良い形の認識度の高さを感じる。また常に冷静沈着で落ち着いていた」。
「新しい感覚が必要と痛感した一日でした」。
「藤井さんは必ずタイトル戦の舞台に間違いなく立つ。そこに私がいるかどうかが問題」と笑った。

将棋界をはじめ各界の著名人からのコメントが相次ぐ

杉本昌隆七段(藤井六段の師匠)

おごることなく臆することなく全力で相手に立ち向かう、藤井将棋の良さが出ていました。弟子が頂点に立つ瞬間を間近で見ることができ、師匠としてもこれ以上ない喜びです。

佐藤康光九段(日本将棋連盟会長)

全棋士参加棋戦、しかも最年少記録更新ということで、29連勝に続いてまた素晴らしい記録を打ち立てました。これからもしっかりと地に足をつけて歩んでもらいたいと思います。

谷川浩司九段

「羽生竜王の強さを一番知っている身なので、今回は貫禄を示すのではないかと予想していた」と話し、「藤井五段が先に攻めて終始ペースを握っていた」と振り返った。
名人と竜王を破り堂々の棋戦初優勝。引き合いに出されるのが、羽生が優勝した88年度のNHK杯だ。18歳で五段の羽生は谷川をはじめ名人経験者4人を立て続けに破り、トップ棋士への道を駆け上がった。だが谷川は「15歳での優勝は比較にならないほど価値が高い」と称賛。

加藤一二三九段

「並大抵ではない重圧を軽やかに力へと変え、新たな将棋界の歴史を日々創造するお姿を、心から頼もしく思います」と祝福。「これからもその若芽をすくすくと伸ばし将棋界の大樹へとご成長されるお姿を、棋士の一人として温かく見守っていきたいと、楽しみにしております」とコメントした。

また、Twitterでも祝福のコメントを投稿しています。

羽生理恵さん(羽生竜王の妻)

タモリ

「スポニチのお正月企画で初めてお会いした時、まだ中学生なのに凄いなあと思いましたが、まさか国民栄誉賞の羽生さんに勝つとはね。しかも一気に六段昇格!2カ月前に会った時は“藤井四段”だったのに(笑い)」

大村秀章(愛知県知事)

石原伸晃(政治家)

舛添要一(前東京都知事)

つるの剛士

「29連勝」後の藤井六段の歩み

ここからは、29連勝の“藤井フィーバー”が一段落したあとの藤井六段の活躍と、最近の棋戦をいくつかピックアップして紹介していきます。

2017年9月、森内俊之九段に勝利

「永世名人」の資格を持つ強豪

「第67回NHK杯将棋トーナメント」の2回戦で、“羽生世代”の強豪で永世名人の資格を持つ森内俊之九段に勝利。NHK杯は通常、収録放送ですが、この対局は異例の生放送として注目を集めていました。

2018年1月、佐藤天彦名人に勝利

現タイトル保持者に初白星

優勝した朝日杯の準々決勝では佐藤天彦名人を撃破。タイトル保持者からの初白星となりました。

18年2月、五段に昇段

順位戦でC級1組に昇級

藤井聡太四段が1日、「第76期順位戦 C級2組第9回戦」で梶浦宏孝四段を下し、C級1組への昇級を決め規定で五段に昇段した。

同月、第68期王将戦一次予選で五段として初勝利

五段昇段後初の対局となった第68期王将戦一次予選で、南芳一九段と対戦。自身最長となる230手を要して五段として初勝利を収めました。

杉本七段との公式戦初「師弟対局」が決定

日本将棋連盟は14日、藤井聡太五段(15)と師匠の杉本昌隆七段(49)が公式戦で初めて対戦する第68期王将戦1次予選2回戦の日程と場所が3月8日、関西将棋会館に決まったと発表した。

話題を集めた藤井六段のプライベートやパーソナリティ

卓球・張本選手との「音楽談議」が注目浴びる

藤井聡太四段(15)が、ロックバンド「スピッツ」のファンから、にわかに注目を集めている。
きっかけは、スポーツ報知が2017年12月30日にウェブ版でも掲載した、藤井四段と卓球の張本智和選手(14)の対談記事だ。その中で、藤井四段がスピッツへの「愛」を語る部分があったのだ。

藤井六段の「推し曲」の渋さにネットが反応

対談でスピッツ好きを明かした藤井六段は、セカンドアルバム『名前をつけてやる』収録の『魔女旅に出る』を「スピッツ屈指の名曲」として挙げます。
この渋い選曲に対して、ネットでは次のような声があがりました。

「推し曲が魔女旅であるあたり藤井四段のスピッツ好きはガチですね。嬉しい」
「スピッツの魔女旅って...激シブやな...応援したくなる」
「選曲が完全にコアなスピッツファンのそれで、分かってるねぇ~ってなった」
「スピッツの語り方が完全にオタクだよ」

スピッツのほかにスガシカオもよく聴くようで、これを知ったスガ本人もTwitterでこの話題について触れています。

バレンタインデーに「持ち帰れないほど」のチョコレート

くしくも“バレンタインデー対局”となったこの日。日本将棋連盟の広報担当によると、藤井宛のチョコレートは前日13日から郵送で同会館に届いており、個数については明らかにしないとしながら「とても本人が持ち帰ることができないほどたくさん」という。
「今まではまったく縁がないことでしたけれど、応援していただけることはありがたいと思っています」と笑顔で答え、対局時には自ら持参するほどチョコレートが好きだと明かした。

異例の“手渡し自粛令”も出ていた

連盟は8日に同会館のツイッターで、藤井フィーバーなどによる混乱を危惧して全棋士へのこの日のプレゼント手渡し自粛を要請。

17年10月、高校への進学を発表

10月26日(木)、公益社団法人日本将棋連盟より、藤井聡太四段(15歳)が自身の進路について、「在学中の名古屋大学教育学部附属中・高等学校への進学の意向を固めました」と発表されました。
「藤井四段が通う名古屋大学教育学部付属中学校は国立で、中高一貫教育のため、エスカレーター式に進学することができます。藤井四段自身は『すべてのことをプラスにする気持ちで、これからも進んでいきたいです』と進学についてコメントしています」(スポーツ紙デスク)

将棋界の先輩から応援のコメントも

中学生らしいファッションにも注目集まる

朝日杯では「上下黒のスーツ」と「黒のスニーカー」

「中学生らしいなと思ったのが、靴がスニーカーだったんです。すごいかわいらしさもある」
朝日杯の会場で解説をつとめた山口恵梨子女流二段(26)は、こうツッコミを入れた。上下黒のスーツに、ダイヤ柄があしらわれたエンジのネクタイ姿で対局にのぞんだ藤井六段だったが、足元に視線を移すと、たしかに黒のスニーカーを合わせている。

熱視線が注がれる「バリバリ財布」

藤井六段の中学生らしさをめぐっては、「財布」も忘れてはならない。藤井六段はマジックテープなどの面ファスナー式の布製折りたたみ財布を愛用していた。
対局中、出前の支払いをする際はファンの熱視線が注がれ、財布から響く「バリバリ」という音に耳を澄ます人もいるほどだ。

この財布は小学校4年生の時に、とある方からいただいた記念の品なんだとか。

藤井六段は無類の「麺好き」

「藤井四段は無類の麺好きで知られています。この対局の前に食べたのは、大阪市福島区にあるそば・うどん店の『小雀弥』の『胡麻味噌とじうどん』。会館近くにあり、師匠の杉本昌隆七段に“あそこはうまいからぜひ食べたほうがいい”と言われて行ったそうです。藤井四段は6月15日の対局でも、ここのぶっかけそばといなり寿司のセットを食べたそうですよ」
5月25日の対局では千駄ヶ谷・将棋会館近くの「ほそ島や」で注文したチャーシューメンが話題になった。

これまでも注目された藤井六段の「将棋めし」をピックアップしてみました。

熱冷めやらぬ「藤井フィーバー」

昇段スピードについていけず将棋専門誌が悲鳴

将棋専門誌のツイートには、「校正アンド雑誌社泣かせ」「記事書く方も添削する方も大変」といった同情の声が集まっていたほか、「専門誌の想定の範囲を颯爽と駆け抜ける中学生凄すぎ」「宇宙の法則が乱れんばかり」と藤井六段を賞賛するツイートも多数集まっていました。

檀蜜の『サンデー・ジャポン』での発言にネット共感

2月15日に発刊された『スポーツ・ニッポン』ではバレンタインデーに行われた対局の際、将棋会館に大量のチョコレートが届いていたことを報道。藤井は「今までまったく縁がなかった、ありがたい」とコメントしている。
藤井のコメントに壇蜜は…
「浮かれることなく、縁がなかったから嬉しいみたいな感じで、『ありがたい』と言って。これから、ますます『落ち着き萌え』する女性が増えそうですね。人生二回目かしら、みたいな」
と、藤井の落ち着きぶりを称賛した。

ネットでは、檀蜜のコメントに共感する声が見られました。

「観る将」「観る将女子」の増加

昨年、前人未到の29連勝を成し遂げた藤井四段。その“藤井フィーバー”の影響で、自分では将棋を指さずに観戦だけを楽しむ「観る将」と呼ばれるファンが増えている。
「公式戦の大半は非公開で行なわれますが、対局終わりに『出待ち』をする『観る将女子』も現われた。棋界でも羽生さんが独身だった頃以来のことです。年齢層も女子高生から40~50代の母親世代まで幅広い。藤井四段が佐藤天彦名人(30)を破った対局は公開対局だったので、一目観たいという『観る将女子』が数多く集まりました」

昨年7月に大相撲観戦で一時騒然

藤井聡太四段が師匠の杉本昌隆七段と大相撲名古屋場所の4日目を観戦したのは去る7月12日。
「中入り後最初の一番、千代丸と佐田の海の取組直前の4時ごろに愛知県体育館に藤井四段が現れると場内は騒然。千代丸と佐田の海の取り組みを見た人はほとんどいなかったのではないか、とNHKの実況でアナウンサーが言うほど、場内の注目を集めてました」

横綱・白鵬とも対面 幼少期は番付表を暗記するほどの相撲通

藤井四段は4、5年前に家族で観戦したことがあるそうで、今回が2度目。横綱・白鵬とも対面できて、満面の笑みを浮かべていました。幼稚園の時には、番付表を暗記していたという藤井四段ですから、とてもうれしかったでしょうね。