トヨタ・スープラ復活! 国産スポーツカー特集

2018年4月5日更新

日本が世界に誇るスポーツカー「スープラ」が16年の時を経て復活。ファミリーカー人気や“若者のクルマ離れ”などの影響で縮小傾向にある国産スポーツカー市場ですが、近年、スープラのように一旦「生産終了」となっていたブランドが復活したり、新作が登場したりと、スポーツカー人気が再燃しています。

トヨタ「スープラ」が16年ぶりに復活

レーシングカーとして蘇る

3月6日に開幕したジュネーブ・モーターショーで、トヨタが「GR スープラ レーシング コンセプト」を公開した。トヨタによれば、このクルマは2002年に生産終了した同社のフラッグシップ・スポーツカー「スープラ」を「16年ぶりに蘇らせたコンセプトモデル」であるという。

「GR Supra Racing Concept」とは

TOYOTA GAZOO Racingが手掛けるスポーツカーシリーズ「GR」のスタディモデルとして、往年の「スープラ」をイメージしながら製作。「トヨタ世界最高峰のFun to Driveを提供する新たなスポーツカー」を目指して、欧州のモータースポーツ活動拠点であるトヨタモータースポーツ有限会社(Toyota Motorsport GmbH)が開発を担当しました。

タイヤ、ブレーキなどはレース専用部品を装備

「ロングノーズ&ショートデッキ」の伝統的スポーツカーのフォルムをまとった「GR Supra Racing Concept」は、フロントエンジン・リヤドライブの2ドアクーペ。コンパクトなボディには、レースの最前線で使われる軽量かつ高剛性なカーボン・コンポジット材などを採用した。左右に大きく張り出したフェンダーや大型リヤウィング、リヤディフューザーなどは、優れた空力性能と走行性能とを狙って開発した。
サスペンション、ホイール、タイヤ、ブレーキなどは、レース専用部品を装備している。インテリアも、後方確認モニターがついたダッシュボードやレーシングシートに加え、パドルシフト付きステアリングホイール、コラム、ペダル、ロールケージなど、各種レース用装備を組み込んでいる。

レース仕様車からスタートさせた理由とは

「あとでレースカーにする際に改造するための時間がかからなくて済む」

通常、レース仕様車は市販車(量産車)をベースに作るため、初披露が市販車のコンセプトモデルではなくレース仕様車となるのは異例のこと。この理由について、開発主査の多田哲哉氏は次のように述べています。

「多くのレースカーは、市販車をベースにして作るでしょう。でも今回、僕らはその逆のプロセスを考えました。まず、スープラがレースに出ることを想定して作りました。当然、量産車ベースのカテゴリーについて色々調べた結果だったけどね」と、多田さんは話し始めた。つまり、空力抵抗を重視したレースマシンを作っておけば、市販車に必要なエアロが分かる。
初めから競技ベースに作っておけば、あとでレースカーにする際に、改造するための時間がかからなくて済むわけです。

「量産車にもいいフィードバックができる」

これまで量産車→レーシングカーに仕立てる際に『量産車の段階でこうしておけばよかった』と後悔することばかりでしたが、先にレーシングカーを仕立てることで、量産車にもいいフィードバックができるというわけです

スープラの歴史

「スープラ」年表
1978~81年初代(A40 / A50型)「Supra」北米で発売。日本では「セリカXX」
1981~86年第2世代(A60型)北米で発売。日本では「セリカXX」
1986~93年第3世代(A70型)世界各国で発売
1993~2002年第4世代(A80型)発売
2002年生産中止
「スープラ」は、国内では1986(昭和61)年に初代(A70型)が登場。1993(平成5)年には2代目(A80型)が登場し、2002(平成14)年まで生産されていたスポーツカーです。「2000GT」などと並び、トヨタのフラッグシップスポーツとして長年親しまれてきました。

モータースポーツの世界でも記憶と記録に残るスープラ

「The Sports of Toyota」として、四半世紀にわたり世界中のファンから愛され続けた「スープラ」は、モータースポーツの世界でも確かな足跡を残した。特に、1993年に発売された第4世代のスープラは、全日本GT選手権(現在のSUPER GT)のGT500クラスで4回の年間チャンピオンを獲得。1980年代にはアメリカのIMSAレース、1990年代にはル・マン24時間レースに参戦するなど、多くのファンを魅了した。

また、2007年のスーパー耐久第3戦「十勝24時間レース」では、初のレース専用ハイブリッドシステムを搭載した「スープラHV-R」が総合優勝。準国際格式のレースでハイブリッド車が総合優勝したのは世界初の快挙でした。

市販車版新型スープラのウワサ

市販版の新型スープラは、新型BMW Z4と主要コンポーネントを共有すると予想されていて、トヨタとBMWの共同開発という前提であるものの、SUBARU BRZとトヨタ86の関係性のように、BMWが開発を主導しているのでは? と見る向きも多いようです。果たして実際のところはどうなのか気になりますが、それはもう少し待つ必要がありそう。
歴代スープラから継承しているポイントは「FR駆動」と「直列6気筒エンジン」の2点。パワートレインに関しては具体的なスペックは公表されていないものの、BMWのエンジンラインアップから推測すると350~400馬力前後の3Lターボエンジンを搭載するだろう。

MTは設定されない?

2002年に生産中止になった旧型スープラには6MTがあった。今回の5代目はどうなるかと聞いて、時代が変わったことを感じた。多田氏曰く「マニュアルの方が8速ATよりシフトが遅いし、加速性が遅いし、クラッチも消耗するので、6MTは要らないと感じている」ということで、6MTは検討中だけど、2019年、量産車が出るときに、おそらく6MTのオプションはないと僕は思う。

スポーツカーはオヤジ世代に人気 近年のクルマ事情

一時期、次々と「生産終了」のニュースを耳にしていた感があるスポーツカーですが、近年「復活」してきた背景には何があるのでしょうか?

現在のスポーツカー人気を支えているのは「アクティブシニア層」

近年のスポーツカー人気について、ジャーナリストの福田俊之氏は次のように話しています。

スポーツカーを選択する客層は、若かりし頃にスポーツカーに憧れた50代、60代のオヤジ世代がほとんどです。
仕事や子育てがひと段落し、ファミリーカーを卒業して純粋に走りを楽しみたい人や、個性的なクルマであちこち出掛けて自分をアピールしたいアクティブシニアは一定数います。

アクティブシニア層のセカンドカーとして中古スポーツカーが人気

中古車の買取と販売を手がける「カーセブン」によると、アクティブシニアによる中古スポーツカーの販売台数が増加しているといいます。

60歳以上のお客さまがスポーツカーを購入した台数が、2011年と2016年を比較すると2.5倍に増加しました。
中古スポーツカー人気の背景には「スポーツカーに再び乗ってみたいけれど、新車ほど高額だと、妻がOKしてくれない」という、お客さまの経済的、家庭的事情もあるようです。お客さまの多くは普段、ハイブリッドなどのエコカーを運転しており、スポーツカーはセカンドカーという方々。このため、300万円代という新車よりも、100万円代で購入できる中古車に人気が集まっています。

「若者のクルマ離れ」の実態とは

若者は車離れしていない。従来の購買型から離れただけではないか。レンタカーを見ると、若い人の利用は毎年伸びている。東京だけで見れば、車を買って維持するのは難しいだろう。交通機関もたくさんある。だけど車を使いたいと思ったらレンタカーやカーシェアで自由に車を選べる。昔も本当に若者が車を買っていましたかと聞きたい。収入が少ないのは同じだ。ある調査で車への関心度を大学生に聞いたところ、今と昔でほとんど差がないことがわかっている。

「体感」する機会が薄れている現代

クルマの面白さとは、根源的には「機械を操ることの楽しさ」に由来すると思われる。子供たち、特に男の子は、今でもみんな持っているはずだ。動く機械への憧れ、仕組みへの好奇心、そして、その実践に対する欲望、などなど。母親から教わるのでは決してない。本能的に好んでいる。
機械を操ってみたいという本能的な欲求を、幼少の頃に体感する機会がないこと。これは、クルマ離れのひとつの要因だと思う。

現代の若者が選ぶクルマは「運転のしやすさ」「メーカー・ブランド」

ソニー損保は、今年の新成人(1997年4月2日~1998年4月1日生まれ)1000名にアンケート調査を実施しその結果を公表した。
クルマを選んだ理由としては、男女別にみると、男性は「運転のしやすさ」と「メーカー・ブランド」が同率で1位(53.9%)、次いで「燃費の良さ」(51.8%)。女性は「運転のしやすさ」が63.8%で1位、「価格の安さ」が54.9%、「燃費の良さ」が49.1%となっている。

「クルマ離れ」に立ち向かう自動車メーカーの新ブランド

トヨタ「GR」

世界ラリー選手権などに参戦するトヨタのモータースポーツブランドGAZOO Racing(ガズーレーシング)の頭文字からとった「GR」は、エンジンの性能を高め、“究極のスポーツモデル”を追求した「GRMN」を頂点に、量販スポーツモデルの「GR」、気軽にスポーツモデルを楽しめる「GR SPORT」の3つのシリーズを設定。
GRブランドの立ち上げを機に「GRガレージ」の展開も発表。“町一番の楽しい車屋さん”をコンセプトに、「GRコンサルタント」という専門性の高いスタッフが常駐し、GRに関する相談に乗ってくれるなど、“車を共に楽しむ”という構想だ。
若者の車離れがいわれて久しい日本であるが、「86」や「G's」のスポーツモデルを購入した3、4割は30代以下の若年層であったという。GRガレージは若年層とのフェイス トゥ フェイスによるコミュニケーションの場という役割も担うそうだ。

日産「AUTECH(オーテック)」

2017年11月24日、日産は「NISMO(ニスモ)」に加えて、新たなスポーティサブブランド「AUTECH(オーテック)」を投入すると発表しました。なお、現在のニスモロードカーは、オーテックジャパンに新設された「ニスモロードカー」で企画開発されています。
「AUTECH」ブランドは、走りのパフォーマンスを追求しながら、より上質で快適なスポーティモデルを志向する日本のニーズに応えるために、プレミアムスポーティブランドとして投入するものだそう。

スバル「STI Sport」

最初に「STI Sport」が設定されたレヴォーグでは一番の人気グレードとなっており、当時から横展開が宣言されていましたが、BRZ STI Sportは第二弾ということになります。
そのコンセプトは、SUBARUのモータースポーツ活動を支えるSTI(スバルテクニカインターナショナル)のノウハウを量産ラインで製造できるレベルに落とし込んだスポーティ仕様というもの。カタログモデルとしての安定供給と、STIコンプリートカーに比べると手頃な価格を実現しているのがセールスポイントです。
「STI Sport」の走りは、ノーマルとははっきりと異なっています。テストコースということで、メーター読みで140km/hに迫ろうかという速度で高速道路を模した大きなコーナーを駆け抜ければ、その速度を出しているとは思えないほど安定していて、さらに自在に車線変更が可能なくらいのフレキシビリティを持っていることを実感します。

話題の国産スポーツカー

ここからは、名車の復活や人気車のフルモデルチェンジ、さらには新作まで、近年話題となっている国産スポーツカーを紹介します。

トヨタ「86」

この新型トヨタ86(ハチロク)は、スバルとの共同開発車。スバルの水平対向エンジンにトヨタの直噴技術D-4Sを組み合わせ、エンジンをフロントミッドシップに搭載し後輪を駆動するFRスポーツカーだ。
86(ハチロク)という名前は、1980年代にヒットしたスポーツカーであるカローラ・レビン/スプリンター・トレノの型式AE86に由来する。当時は、カスタマイズ暗黒時代。タイヤ&ホイール、マフラー交換程度でも、ディーラーでは整備を受け付けてもらえない状態。そんな中、AE86絶大な人気を誇り、オーナーたちはカスタマイズ暗黒時代であっても、それぞれが自分だけのハチロクを目指してカスタマイズを楽しんでいた。そんなオーナーそれぞれに育ててもらえ、クルマをもっと楽しんで欲しいという想いから名付けられた。

スバル「BRZ」

スバルとトヨタが共同で開発した後輪駆動のスポーツ・クーペ。排気量2.0リッターから200馬力を発生する水平対向エンジンを、フロントに低く、車体中央寄りに搭載することで、「優れたハンドリング性能を実現」し、「誰もがクルマを操る愉しさと悦びを感じることができる」と、主に車体の開発を担当したスバルは胸を張る。双子の兄弟である「トヨタ 86」とともに、現在日本だけでなく世界中のスポーツカー好きから注目を浴びているニュー・モデルだ。

ホンダ「S660」

2013年の東京モーターショーでコンセプトカーとして発表され、2015年3月に市販化された。このコンバーチブル型の軽自動車は、ホンダ初の普通乗用車である「S500」や、その系譜を受け継ぐ「S2000」、そしてミドシップ・オープンの軽自動車「ビート」に敬意を評したモデルだ。

スバル「WRX S4」

「インプレッサ WRX」として1992年に登場した初代モデル以来、スバルが世界に誇るスポーツセダンの名前を受け継ぐ新型は、「WRX S4」という車名になることが今回初めて公表された。プレスリリースによればこのWRX S4は、"『スバル最高峰のAWDスポーツパフォーマンス』を有しながら、「EyeSight(ver.3)」を含めた『独自の総合安全性能』、『優れた環境性能』、『洗練された質感』を実現したスポーツセダン"であるという。

スバル「WRX STI」

富士重工業のモータースポーツ部門「スバルテクニカインターナショナル」の頭文字を冠したさらなる高性能バージョン「WRX STI」も、今回は同時に発売される
従来型と同じく「モータースポーツにおいてその性能と信頼性を磨き上げてきた」という「EJ20」型2.0リッター水平対向4気筒ツインスクロールターボ・エンジンを採用。最高出力308ps/6,400rpm、最大トルク43.0kgm/4,400rpmというスペックも先代と変わらない。トランスミッションは6速マニュアルのみの設定。ただし、従来型よりも節度感、吸い込み感が向上し、よりスポーティなシフトフィーリングとなっているそうだ。

マツダ「ロードスター」

「ロードスターはマツダブランドの象徴。『人馬一体』の走る楽しさやオープン走行の爽快さ、手頃な価格などが高く評価され、四半世紀を超えて愛されてきました」
マツダ社長兼CEOの小飼雅道氏がこう自画自賛するほど、ロードスターは“走り好き”の間で根強い人気を誇ってきた。
初代ロードスターはマツダが1996年まで展開していたプレミアムブランド「ユーノス」のバッジで売り出された。
そして、1989年の発売以来4代目、先代より10年ぶりにフルモデルチェンジさせた新型モデルは、先代よりさらに100kgも軽量化したボディと力強い走り、240万円台~という手頃な価格設定が売り。「昔のロードスターを知らない若者にも気軽に乗ってもらいたい」と、マツダ幹部も今後の売れ行きに期待を寄せる。

リトラクタブルハードトップを採用したモデル「ロードスター RF」

ファストバックスタイルのリトラクタブルハードトップは電動開閉式。同種のオープンカーとしては世界最短となる13秒で開閉するというのも注目です。10km/h以下なら走行中でも操作が可能なので、信号待ちでもタイミングによっては開閉できます。さらに、複雑な機構を備えながら、トランクスペースはソフトトップ車同等の127リッターを確保することで、実用性もキープしています。

2016年には日本が世界に誇る2台のスポーツカーの新型が登場して話題を集め、スポーツカー人気をより熱くさせました。

日産「GT-R」

スポーツカーの象徴「GT-R」を2007年のデビュー以来9年ぶりに大幅改良。今年7月下旬に新モデルを発売したところ、車両本体価格996万円~と高価格帯ながら、わずか1か月で年間の販売計画800台を超える受注を獲得した。

ホンダ「NSX」

1990年に発売し、バブル絶頂期に人気を博したスーパーカー「NSX」の2代目が四半世紀の時を経て登場。なんとGT-Rの倍以上する2370万円~と目が飛び出るほどの価格にもかかわらず、受注開始の8月25日から2週間足らずで年間販売計画の100台を突破した模様だ。

スズキ「スイフトスポーツ」

スイフトスポーツは、今回のフルモデルチェンジで4代目となった。初代スイフトスポーツは、JWRCに参戦。スズキのスポーツイメージを体現したモデルとして成長を続けている。
また、スイフトスポーツは、安価なスポーツモデルとしての価値を生み出した。多くの自動車メーカーが、スポーツカーマーケットから撤退。もしくは、高額なモデルへとシフトした。スイフトスポーツもフルモデルチェンジするたびに価格がアップしていく。しかし、価格アップの幅は小さかった。4代目スズキ スイフトスポーツも200万円を切る価格で登場した。
爆発的な販売台数ではないものの、多くのファンに支持された。また、手が届きやすい価格ということもあり、若年層が楽しめるスポーツモデルとして高い人気を得ている。

ホンダ「シビック TYPE R」

1970年代、クリア不能と言われたアメリカの排ガス規制法(いわゆるマスキー法)を初めてクリアしたCVCCエンジンを搭載した初代から数えて10代目となるのが現行のシビック。
日本生まれ、日本育ちのシビックですが、代を重ねるごとに販売が伸び悩み、先代の9代目は日本に導入されませんでした。しかし、新しくなった10代目は2017年9月に日本での販売を再開しました。これが大ヒットして11月現在で目標販売台数の6倍にもなる1万2000台を受注しました。

ニュルブルクリンク北コースにおいて「世界最速のFF車」

5代目シビックタイプRは、5ドアハッチバックをベースに最高出力320馬力、最大トルク40.8kgf・mに及ぶパワフルな2000cc直噴VTECターボ・エンジンを搭載。6速マニュアル・トランスミッションを組み合わせ、専用設計の足回りを採用、ニュルブルクリンク北コースにおけるラップタイムは7分43秒80を標榜する。世界最速のFF(前輪駆動)車が現役車種の地位を取り戻した。

レクサス「LC」

驚きと感動を提供するライフスタイルブランドとしての進化を目指すLEXUSが、その変革の象徴として生み出したフラッグシップクーペ。
今後のLEXUS FRラインアップに展開されるGA-Lプラットフォームやマルチステージハイブリッドシステム、Direct Shift-10ATなど、最先端技術の採用に加え、徹底的な作り込みによって、独創的なデザインや、すっきりと奥深い走りを実現。運転する喜びを提供し、ユーザーのライフスタイルをより豊かにするクルマとなることを目指して開発された。