特集2017年3月30日更新

てるみくらぶ破産の多大な影響

3月27日、旅行会社「てるみくらぶ」が破産手続き開始決定を受けました。9万人といわれる利用者への旅行代金の全額返済は厳しいという見方が広がる一方で、新年度を間近に控えたタイミングでの破産に思わぬ影響も広がっています。

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日刊SPA! / 2017年7月17日 8時44分

記憶に新しい格安ツアー会社「てるみくらぶ」の経営破綻。激安商品で痛い目を見た人も多数出た。 [全文を読む]



負債150億円…リーマンショック後、最大規模の倒産

事件の概要

3月27日、旅行会社「てるみくらぶ」が東京地裁に破産を申請し、破産手続き開始の決定を受けました。代理人弁護士らによると負債額は約151億円におよび、旅行会社の倒産としては史上4番目に大きな破産となります。影響を受ける旅行客は約9万人となり、代金の総額は99億円あまりに上るようですが、旅行者の支払い済みの代金の全額返済は厳しいとみられています。また同社に今春から就職予定だった内定者50人の内定取り消しも通達され、波紋を呼んでいます。

現在、同社のホームページにアクセスすると、「お知らせ」と題した破産手続開始決定の報告や利用者へのQ&Aなどが表示されます。

関連旅行会社「自由自在」も営業停止

破産手続き開始決定を受けた格安海外旅行会社「てるみくらぶ」に連鎖し、関連会社で海外旅行ツアーを販売する「自由自在」が3月27日、営業を停止した。

半年で50億円…急激に増加していた債務超過額

東京商工リサーチが独自に入手した試算表によると、2016年9月期の債務超過額は約75億円。破産を申請する直前の3月23日には約126億円まで急速に膨れ上がっていた。

「20年の経営実績」「売上高195億円」に対する信用も仇に

てるみくらぶは1998年設立で20年近くの経営実績を誇り、格安の海外パック旅行会社として評判は上々だったといいます。また、昨年9月期の売上高は195億円に達するなど、旅行会社としての信用は十分だったようで、それが逆に利用者にとっては仇となった部分もありそうです。

男性はおかしいなと思ったが、20年以上も経営していて以前に利用していた経緯があったので「信用していた。料金が安かったので早い者勝ちなら」と思って支払ってしまったと、やり場のない気持ちを語った。
てるみくらぶの評判は上々でした。最大の理由は広告にウソ偽りがなかったこと。『イタリア人気都市7泊8日』のツアーが、標準のホテル利用で1人10万円を切る破格の値段で売り出されることもザラでした。知る人ぞ知る超人気の旅行会社だったのです。

破綻の原因は?

広告費がかさみ、資金繰りが悪化

27日に会見した山田社長によると、経営悪化の原因は「新聞広告の広告費」。昨年春まではインターネットを基盤にした若者向けのビジネスだったが、新聞広告でシニア層にも客層を広げる狙いがあったといいます。

2015年春からネットだけでなく、中高年向けの広告を新聞に積極的に掲載するようになった。2016年9月期で193億円の売上高があったが、広告費がかさみ、資金繰りが悪化したという。

近年、厳しさを増している旅行代理店

「今は旅行は自分でネットで予約してホテルとか取るようになった。代理店が成立しなくなっていることが、今回の最たるものだと思う」と旅行業界を取り巻く環境の変化を要因に挙げた。

上記で指摘されている「自分で予約」のほかにも、旅客機の小型化といった効率化で座席が余らなくなり、「空席分のチケットを航空会社から安く仕入れて格安のツアーを実現する」というビジネスモデルが成り立たなくなってきたという状況も指摘されています。

自転車操業で「現金」確保に必死だった模様

知る人ぞ知る人気の旅行会社だったものの、上記のような理由で経営状況が悪化。近年は自転車操業状態だったようで、“現金払い”ならさらに値引きするという「現金一括入金キャンペーン」を約2年前から始めたといいます。そして、破綻ギリギリまでこのキャンペーンの広告を大手新聞に出していたことからも、現金確保に必死になっていた様子がうかがえます。

男性は1月にウェブサイトから、家族6人での総額51万7150円のグアム旅行を申し込んだ。すると、その日にてるみくらぶから連絡が来た。その内容は「翌日までに全額を支払ってください」というものだった。
親戚が5月にハワイで挙式するので、先月、家族3人で予約しました。4泊5日で1人15万円以上のツアー料金が、現金一括だと10万円に値下げできると説明され、慌ててATMで現金を下ろし、計約30万円を支払いました。
男性によると、21日に「旅行代金を早く支払ってほしい」と同社から電話があり、男性は同社に出向いて約23万円を直接支払った。領収書も渡されたが、特に変わった様子はなかったという。男性は「今思えば既にお金が足りなくなっていて電話してきたのではないか」と憤る。

「ギリギリまで広告」に詐欺の可能性も

下の記事では、「倒産が確実」という認識を持ちながら旅行代金を徴収していたのなら詐欺罪が成立する可能性に言及。弁護士へ破産手続開始申立ての依頼をした点を考慮すると、「おそらく3月20日前後」には破産を確信していたのではないかと推測し、詐欺罪が成立する可能性はゼロではないと指摘しています。

てるみくらぶは3月22日の時点でも「現金一括の場合に限り格安」といったツアー広告を出していたわけです。これは、破産を確実に認識しながら、顧客に対し旅行契約を申し込むよう誘因したといえますので、詐欺、少なくとも詐欺未遂の故意がなかったとの主張は無理があるのではないでしょうか。

異例の「弁済率1%」

すでに代金を支払っている利用者に対する返金制度として「弁済業務保証金制度」があるものの、弁済率は1%程度にとどまる見通しだといいます。つまり、利用者はほぼ支払った分を丸々損することになりそうだとして騒動が大きくなっています。

旅行会社が経営破たんした場合、旅行業法に基づき、旅行者に旅行代金を返金する弁済業務保証金制度がある。旅行会社が売上高に応じて、日本旅行業協会などに分担金を負担するもので、てるみくらぶは2016年度2400万円を支払っていた。弁済業務保証金は分担金の5倍を限度額に支払われるため、今回は1億2000万円となるが、旅行代金の返金額約99億円に対し、弁済率は1%程度にとどまることになる。
あとの弁償に関しては、破産手続き上での配当ということになります。ですが、旅行代金は破産手続き上、一般破産債権となりますので、優先的に支払いがなされる債権に劣後します。配当はほとんど無いと覚悟された方がよさそうです。

上のJ-CASTの記事によると、現行制度となった2008年度以降、弁済業務保証金が支払われたケースは17件あり、うち15件は弁済率100%で、残る2件の弁済率も70%と40%だったといい、今回の「弁済率1%」の異例さが際立ちます。
「シェアしたくなる法律相談所」の記事では、カード決済の場合は損害を回避できる可能性があると指摘しつつ、「配当はほとんど無い」と厳しい状況も示しています。多くの被害者が「泣き寝入り」せざるを得ない状況のようです。

利用客や内定者への影響

「ツアー代金150万円以上」という被害も

破産の影響がおよぶのは9万人に上るといわれているだけに、SNSには被害者と思われる人たちの悲痛な叫びが数多く寄せられています。中には「結婚式のハワイ旅行の代金150万円以上…」と嘆く人も。

芸能人からも被害の声

矢部みほ大激怒

タレントの矢部みほは友人と3泊4日の韓国旅行に行く予定で申し込み、現金で支払いも済ませていたといい、29日のテレビ番組や自身のブログで怒りをぶちまけています。

「私の場合(支払ったのが)4万5千円ですから、返ってきたとしても450円ぐらいってことですか?そんなのいらないですよね。それで済む話じゃないじゃないですか」と憤った。
同社の山田千賀子社長が会見で「(利用者には)自力で対処してもらうしかない」と話したことにも触れ、「無責任すぎます。お金払って何もないんですよ」と声を荒げた。

約60万円を支払ったお笑い芸人、ハワイ旅行が静岡旅行に

お笑いコンビ「ブッチャーブラザーズ」のぶっちゃあ(62)が、一家での米ハワイ旅行が中止になっていたことが判明。所属事務所によると、本来、南国のビーチにいるはずだった28日、予定変更を余儀なくされたぶっちゃあ一家は、静岡県裾野市の動物園「富士サファリパーク」を訪問。

テレビ業界でも地位を確立していた「てるみくらぶ」

女優の真矢ミキは28日の「白熱ライブ ビビット」で、同番組のロケでも「てるみくらぶ」を利用したことを含め、テレビ業界でも利用することが多いことを明かしています。また、井上貴博アナもテレビ業界で「ある程度の地位を確立していた」という同社の破綻に驚きの表情を見せたということです。

真矢も「私、番組で台湾に行かせていただいたんですけど、その時はてるみくらぶでした。本当に多いですよね」と続け、同番組のロケでも利用した過去を明かした。

アンガールズの山根も利用経験

お笑いコンビ「アンガールズ」の山根良顕(40)も利用経験があるといい、「被害者じゃないけど、使ったことがあって、今月もチラシが届いているんです。一括入金してくれって。(届いたのは)今週です」

入社5日前…内定を取り消された学生たち

破産が決まった27日、来年度の新入社員として採用されることが内定していた約50人に内定取り消しが伝えられ、ちょうど新年度が始まる直前というタイミングだったため大きな波紋が広がりました。

平成29年度の新入社員として約50人の採用を内定していたことが28日、わかった。同社の代理人弁護士によると、山田千賀子社長が27日に内定者を集めて破綻の経緯を説明、採用取り消しを伝えたという。

中には新生活のために引っ越しを済ませて「私の人生を返してほしい」と嘆く学生もいるといい、損害賠償請求はできるものの利用客と同じように賠償金が支払われる可能性は低い見通しです。

官民が内定取消者救済に素早い動きを見せる

この事態に、厚生労働省が相談窓口を設置するとともに、「無試験で採用」と名乗り出る企業・団体が相次ぐなど、官民が内定取消者救済に向けた素早い動きを見せています。

厚生労働省は3月29日、破産手続き開始決定を受けた格安海外旅行会社「てるみくらぶ」の内定取消者に向けて、特別相談窓口を東京都と大阪府の新卒応援ハローワークに設置したと発表した。

財団法人宿泊施設活性化機構

宿泊業界のコミュニケーション支援を行う促進財団法人宿泊施設活性化機構(JALF)は28日、「その身柄、JALFで引き受けます」キャンペーンの実施を発表。てるみくらぶをはじめとする内定取消を受けた学校卒業生を対象に、無試験・無面接で採用する取り組みを行うという。

警備会社のJSS

警備会社のJSS(本社・東京都台東区)も門戸を広げている。倭文浩樹(しとり・ひろき)社長が3月28日、ツイッターで「てるみくらぶに内定されてた新卒の方は無試験で株式会社JSSで採用させていただきます。※法令で定める欠格事由に該当する方を除きます」と表明。こちらも「無試験」を明示している。

軌道保守などを行う「濃建」

軌道保守と土木事業を請け負う濃建も、「このような会社でよろしければ、軌道工または本社総合職として採用させて頂きます」として、採用に前向きであることを公式Twitterで発信。

アディーレ法律事務所

弁護士法人・アディーレ法律事務所(本社・東京都豊島区)は3月29日、「『てるみくらぶ』から、内定取り消しを通告されてしまった学校卒業生の皆さまの採用を行う」と公式サイトで発表。17年4月2日15時までに連絡すれば「選考を行わず内定を出す」という。

旅行客と内定取消者、両者のフォローを表明する企業も

航空券予約サイト「skyticket」を運営する株式会社アドベンチャーは、海外渡航中の客に対する無料相談窓口を設置するとともに、新卒内定者の受け入れも表明。同じ旅行業界の企業ながら「てるみくらぶ」との間に取引実績はないとしつつ、「旅行者および旅行業界全体のため」に全力で対処するということです。


負債額は150億円と倒産規模が大きく、9万人もの利用客の大半が泣き寝入りを余儀なくされそうな状況。
また、時期が時期だけに「入社5日前の内定取消」という人生を左右する事態に巻き込まれた内定者の行く末にも大きな注目が集まっています。
また3月30日には少なくとも3年前から粉飾決算を繰り返していたという報道があり、今後もまだまだ波紋を呼びそうです。

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