特集 混迷を増す「豊洲“盛り土”問題」

一度は移転が決定していた築地市場の豊洲移転。小池知事が移転の延期を発表後に発覚したのが、豊洲の地下に盛り土をしていなかったという事実。これまでの経緯と問題点を探ります。(2016年9月23日更新)

[写真] 【中継録画】豊洲市場の盛り土問題で再設置の専門家会議 平田座長が会見 / THE PAGE

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(産経新聞)

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そもそも築地市場の豊洲移転とは

築地市場移転の経緯

築地市場の移転計画が浮上したのは、今から30年以上も前のこと。

市場が手狭になったこと、物流が鉄道輸送からトラック輸送へとシフトして市場の構造が時代に合わなくなっていたこと、老朽化などを理由に築地市場を閉鎖と市場の移転計画が検討されていた
移転方針は石原慎太郎元知事が2001年に決定し、都側はこれまで豊洲市場への整備費として5884億円を投じている。

盛り土問題が発覚する前に移転延期を発表していた。

8月31日、小池知事は11月7日に予定されていた築地市場の豊洲移転を延期すると発表。

今回の盛り土問題発覚により、すでに延期の影響で環状2号線の整備が遅れて東京五輪に間に合わないとの懸念が示されていたが、さらなる延期で大会に支障の及ぶ可能性が高くなった。

以前より指摘されていた情報
豊洲の各棟の建築面積は、仲卸売場棟が7万平方メートルで卸売場棟は4万9000平方メートル、青果売場棟は5万8000平方メートル。東京ドーム約4個分もの広大な面積
豊洲の敷地内では過去、環境基準の4万3000倍もの有害物質が検出されている
豊洲市場は、水産卸売場棟など主要3施設の建設工事の平均落札率が99・9%に及ぶなど、総事業費が5884億円にまで膨張しており、「不透明」との指摘がある。

問題発覚直前には「底が抜けるのではないか」という疑念を伝える記事も。

さらにその前に汚染対策の怪しさを指摘する記事も。

豊洲市場の土壌汚染対策をめぐる経緯

都幹部が施設下に地下空洞をつくる計画を、石原慎太郎氏や猪瀬直樹氏ら歴代3知事に報告していなかったことが分かった。

(写真:産経ニュース)

盛り土をめぐる経緯

(写真:産経ニュース)

豊洲市場は主要な建物の下に盛り土がされないで空洞になっていることが判明。外部有識者や専門家会議では敷地全体で盛り土をするよう提言。東京都もWebサイトなどで提言通り実行したとする図面を掲載し続けていた。
11~14年に858億円をかけて敷地を2メートル掘り下げ、その上に4.5メートルの盛り土をしたとしてきた。しかし、実際は、水産や青果など主要な5棟で盛り土をしておらず、地下にその部分の空洞ができていた。

都は独自の判断で盛り土を行わないことを決めていた。

土壌汚染対策にすでに858億円投じた。
小池知事が9月10日に緊急会見で問題を明かした

(動画:Youtube)

会見直前にも指摘されていた。

「専門家会議」と「技術会議」とは 
土壌汚染対策は、もともと07年5月に当時の石原知事が平田健正・放送大学和歌山学習センター所長を座長とする「専門家会議」を設置。会議は翌08年7月まで計9回開催し、敷地全体に盛り土をするよう提言をまとめ解散した。
その直後の08年8月に、都は専門家会議の提言をいかに実現すべきかを検討する「技術会議」(座長=原島文雄・首都大学東京前学長)を発足させた。
技術会議は14年11月までに計18回開かれた

わざわざ新たな組織を作ったのはなぜか?

日本環境学会元会長の畑明郎氏「専門家会議の提言通りに対策工事を行うと、1000億円以上の費用がかかることが予想された。専門家会議の提言を“骨抜き”にするために、新会議を設立したのではないか」

技術会議は08年11月の第6回会議で、専門家会議の指摘さえ問題視。提言の実現という発足のタテマエすら逸脱していた。

なぜ盛り土問題は発覚したのか
都政事情通は「地下の工事のため、これまで表沙汰にならなかったが、地下空間の状況を知り得る数少ない職員が詳細な事実をキャッチし、それが各方面に伝わったという情報がある。共産党都議団も情報を入手し、7日に豊洲新市場を視察して把握していた」と指摘した。
問題発覚の経緯は共産党都議団の視察だった。9月7日、外部からの指摘を受けて現地視察した共産党都議団は、水産卸売場棟、水産仲卸売場棟、青果棟など主な建物の床下が総て空洞になっていることを突き止めた。この動きを知った小池知事は、10日に緊急会見し公表した。
問題発覚後の反応
築地市場協会の伊藤裕康会長は、マスコミ取材に「ショックで驚いている」と心境を明かした。そして、盛り土のことを自分たちに告知するのは当たり前だとして、「怒り心頭だ」と話した。
築地東京青果物商業協同組合の泉未紀夫さん「安全性に関する風評被害が広がることだけは避けたい」
水産仲卸業、関戸富夫さん「いつかこういうことが明るみに出るのではないかと思っていた。『やっぱりな』という感じだ」

小倉智昭キャスターは「都民だってバカじゃないよ!」都の対応を痛烈に批判。

市場関係者の中には「俺ら、魚屋をなめんじゃねえぞ!」とテレビのインタビューに答えて怒っている人もいた。

都議会自民党の島崎義司副幹事長は、地下空洞について「まったく知らなかった」

なぜ盛り土ではなく地下空洞にしたのか?

汚染トラブル時の重機搬入用だったとの見解を調査報告に盛り込む方向。

当初は配管用と説明。その後、雨水などをためるタンクなどの存在も発覚。調査は迷走を続けている。

専門家は「モニタリングのためだったのではないか」とみる。

日本環境学会元会長の畑明郎氏「地下空間についても、工事費をケチった結果である可能性があります」

中央大の佐々木信夫教授(行政学)は「土壌汚染の対策グループと市場施設の建設グループが、それぞれの立場で計画を進めた『縦割り行政』の弊害だ」と指摘。
都関係者は「豊洲の工事を急いだ可能性がある」と指摘。

盛り土にしなくて何が問題なの?

安全性
そもそも、外部識者の専門家会議がなぜ、盛り土を提言したのかというと、汚染土壌から発がん性の高いベンゼンなどの有害物質が揮発し、建物に拡散するのを防ぐためだ。
「豊洲市場は工場跡地だが、もともとは埋め立て地。建設前から液状化が想定されていた。だからこそ、専門家会議は盛り土で地下水を抑えるとしたわけだが、その前提が崩れた」
都の対応
都はこれまでホームページ(HP)で敷地全てで盛り土を実施したという誤った情報を発信。小池氏は幹部会議で「情報公開の観点から大きな瑕疵(かし)があった」と指摘。

専門家会議は盛り土を提言したが「提言をどう実現するかは都の裁量の範囲なので都に報告を求めなかったし、報告もなかった」

空洞にしたことを隠していたわけではない。資料上は盛り土未実施が図示されていた。

「提言内容と違ったことを行うなら、まっさきに市場関係者へ情報を開示するのが大事」と、築地市場の関係者への配慮が足りなかったとした。

「都民には『盛り土』をした上での建設計画を示してきたわけで、望ましい状況とはいえない」と、都中央卸売市場の新市場整備部の職員。

技術会議委員の一人で産業技術大学院大学の川田誠一学長「専門家会議の提言に従わずに工法を変更するなら、専門家会議にもう一度諮るのが筋だ」

地下空洞にたまっていた水

(写真:産経ニュース)

深いところで15センチ程度の水たまりができ、異臭も漂う空間だった。
水深はコンクリの上が1、2センチ。砕石層の部分は15センチほどありそうだ。

豊洲市場地下空洞内の水質調査の結果

(写真:産経ニュース)

都が行った調査の結果、青果棟の水からはヒ素が0.003mg/l、六価クロムが0.005mg/l、水産仲卸売場棟の水からはヒ素が0.002mg/lが検出された。水産卸売場棟の水からはいずれも検出されず。

「専門家会議」座長の平田氏は「この数値なら(安全性に)問題はない」

地下水なのか雨水なのか

平田氏はヒ素が検出された点について、地下水による影響の可能性が高いと述べた。

日本環境学会・畑明郎元会長の見解「ヒ素は雨水に含まれない。地下のたまり水は地下水に由来していることを示している」

小池知事は「降雨による雨水なのか、毛細管現象によって地下水が上がってきているのか、重大な論点になる」としている。

石原慎太郎氏の発言

2008年の発言

08年5月30日、コンクリートの箱を埋め込むことで「ずっと安くて早く終わるのではないか」と語っていた。

08年5月16日の会見で「もっと費用のかからない、しかし効果の高い技術を模索したい」と説明。その後、専門家会議の座長が「新しい方法論を試すにはリスクが高い」と指摘したのに、同23日には「その人の専門性というのはどんなものか分からない」などといちゃもんをつけた。さらに、専門家会議が盛り土計画を固めていたにもかかわらず、同30日には「コンクリートの箱を埋め込むことで、その上に市場とかのインフラを支える、その方がずっと安くて早く終わるんじゃないか」と持論を展開
問題発覚後の発言

13日の発言

◆「だまされた」発言に対する反応

「だまされたのは都民」「他人事すぎてあきれる」など批判の声が殺到。

15日の発言

TBS記者の取材には「豊洲市場の盲点は急に設計事務所が変わったこと。変えたことで盛り土がなくなった」と言い放った

「都庁の役人からそういう情報を聞いたから、そういう意見があると取り次いだだけ」「全部、下(都職員)や専門家に任せていた。建築のいろはも知らないのにそんなこと思い付くわけがない!」

部下の記憶はやや違う。当時の都中央卸売市場長だった比留間英人氏は「(コンクリート箱の検討は)自分の提案ではなく、知事からの提案だった」と語っている。

17日の発言

17日には一転して「(自分が)専門家から聞き、都の幹部に検討したらどうだと言っていた」と前言撤回

21日の発言

文書で「私の東京都知事在任中の件で、皆様に多大な混乱やご懸念を生じさせるなどしておりまして、まことに申し訳なく思っております」と謝罪。
都内で取材に応じ、小池百合子都知事(64)の面会要請に対し「もちろんいつでも会いますよ」と応じる考えを示した。
なぜ「地下空洞」案を提案?

盛り土では約670億円と見込まれていた汚染対策費が約1000億円にまで膨れるマイナス面があったため、石原氏は08年5月16日の会見で、「もっと費用のかからない、効果が高い技術があるかもしれない」と指摘。

「新銀行東京」について1000億円の減資と400億円の追加出資を決めたばかりだったからとジャーナリストは分析。

今後の調査ポイント

(写真:産経ニュース)

都は「専門家会議」と「市場問題プロジェクトチーム(PT)」を設置

専門家会議は盛り土や「地下水」など豊洲市場の移転問題を「再評価」する。

PTは土壌汚染、建築物、経済性の3テーマの調査研究を行う組織で、土壌汚染に関しては専門家会議の議論を踏まえて取り組みを進める。
PTは土壌汚染や建築などに詳しい大学教授ら8人で構成。都顧問で環境問題に詳しい小島敏郎・青山学院大教授が座長を務め、土壌汚染の安全性や地下空洞施工に伴う耐震性の検証などを行う。
再設置された専門家会議は何をする?

「盛り土があるという前提がなくなったのだから、あらためて現在の安全性チェックが必要」

専門家会議では今後、(1)地下空間の状態の確認と評価、(2)リスク管理上必要な対応策の検討、に取り組む。

「盛り土も含めていろんな可能性を検討する」としつつ、これから持ち土をするのは物理的に難しいだろうと述べた。

建築エコノミストの森山高至氏「地下空間をきれいな土で埋め直すのは不可能に近い」

1級建築士の水谷和子氏「工事費用、期間がどれだけ必要になるかは想像もつきません」