特集2017年4月5日更新

日本にも普及…仮想通貨って何?

新たな決済手段として知名度を上げつつある仮想通貨。日本でも2016年に仮想通貨に関する初めての法律案が国会に提出されるなど、徐々に普及に向けて整備されつつある状況です。世界中どこでも使えて、送金の手数料なども従来に比べて破格の安さ。とは言え、2014年のマウントゴックス社の破たん問題で、いまだに良くないイメージが残っているのも事実のようです。仮想通貨とは何か?その仕組は?などまとめてみました。

仮想通貨とは?

仮想通貨とは、一般的な通貨と違って目に見える形では存在しない「仮想」の「通貨」です。インターネットを通じてサービスの対価に使用できます。公的な発行主体や管理者は存在しませんが、専門の取引所を介して円やドルなどの通貨と交換できるお金です。

仮想通貨とはインターネットを通じて取引や決済を行うことができる新しい決済手段です。仮想通貨は全世界で約3,000種類以上あるといわれています。

仮想通貨という名称は、日本での通り名であり、海外では主に暗号通貨とよばれています。金融庁が定めた、仮想通貨の定義を見てみましょう。

5 この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。
 一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために 不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うこと ができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨 及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて 移転することができるもの
 二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって 、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

仮想通貨にはどんな種類が?

昨年行われた調査によると、仮想通貨の認知率はビットコインが圧倒的。それ以外では以下のグラフのような知名度となっています。

【知っている仮想通貨の種類】
知っている仮想通貨を、お聞きしたところ圧倒的な認知率で「ビットコイン」96.7%が1位でした。また、「ホリエモンコイン」14.0%などの和製コインも認知率では健闘をしています。

現実のお金と同じく扱われる仮想通貨には様々な種類がありますが、馴染みやすいところで言うとスマホゲーム「ポケモンGO」で使用されている「ポケコイン」も仮想通貨であると金融庁に指定されています。

銀行も独自の仮想通貨に取り組む動き

昨年、三菱東京UFJ銀行が仮想通貨「MUFGコイン」の開発を進めているという報道がありました。メガバンクによる一般向けオリジナル仮想通貨の発行は、実現するなら世界初の試みとになります。

「MUFGコイン」のあらましは、以下の通りだという。
・利用者間で直接のやりとりが可能
・貨幣との交換比率は一定(1円=1MUFGコイン)
・三菱東京UFJ銀行に口座がなくてもサービスを受けられる
・ATMにスマホをかざすことで現金化できる
元締の「サービス提供者」を通さない限り利用者間では資金のやり取りができない従来の電子マネーとは異なり、MUFGコインは元締に当たる同行を通さずに利用者間でもやり取りができる。

仮想通貨の特徴

仮想通貨には、主に3つの特徴があります。特に3番目のコストと手間がかからない、という点は仮想通貨の最大のメリットと言えます。
1. 発行管理者がいない
2. 不正な発行(発掘)や悪用防止のため暗号化の技術を使う
3. 海外への送金にかかるコストと手間が少ない
それは、それぞれの特徴について見ていきましょう。

発行管理者がいない

従来の通貨では、政府や中央銀行といった管理者が通貨発行をコントロールするのに対し、仮想通貨は管理者が存在しません。その代わり、利用者たちがネットワーク上で唯一かつすべての取引履歴を、相互に保管しあいます。通貨の発行はこの取引履歴の健全性を維持するために、有志が供出する計算資源が行った計算に対して行われます。

暗号化の技術

仮想通貨の大きな特徴として、ブロックチェーンと呼ばれる取引履歴があります。ブロックチェーンでは、一定期間で発生した取引の履歴がブロックと呼ばれる単位で記録され、各ブロックはそのブロックが作られる前に行われた取引履歴である、別のブロックのIDを保有しています。これを遡ると、過去全ての取引履歴を確認することができるのです。

海外送金の手数料の安さ

海外へ送金するときには、国内での送金と異なり「送金手数料」「為替手数料」「受取手数料」という3つのコストや手間がかかります。送金手数料の相場は4,000円ほど、為替手数料は1ドルあたり1円ほど、受取手数料は相手側の金融機関で決められています。個人で海外へ送金する場合に、1回あたりの手数料がこれだけかかると大きな負担になりますが、仮想通貨であれば世界中どこへでも一律数円です。

電子マネーとの違い

紙幣や硬貨が存在せず、ネットなど電子上でしか扱えないという点においては、電子マネーを連想される方も多いと思います。どう違うか?最大の違いは、電子マネーが運営者によってその価値や使い道を限定されているのに対し、仮想通貨はそうではない、という点でしょうか。

実際の通貨を使わずに金銭のやりとりをするところは電子マネーに似ています。しかし、電子マネーは使える範囲がエリアや企業などで限定されているのに対し、仮想通貨は全世界共通で使える「通貨」であるという違いがあります。

ブロックチェーン

また仮想通貨の最大の特徴はブロックチェーンにあるといえます。これまで例えば、銀行などの大きなコンピュータで一括して管理していた取引履歴のDBなどを、ネットワーク上で分散して管理することで不正などのリスクと負担を回避する仕組みがブロックチェーンです。

野口:ブロックチェーンを一言でいうなら、取引履歴が記録された台帳(DB)の仕組みのことです。従来のクライアント・サーバー方式による中央集権型ではなく、ピアツーピア(P2P)による分散管理型の仕組みです。例えば、「通貨をどこからどこに送ったか」という取引履歴が記録された台帳を、ネットワークに参加しているコンピューターで分散管理します。その特徴は、「改ざんや二重取引などの不正が事実上不可能」という点です。
まずブロックチェーンの呼び名は、カネやモノの取引の履歴データを要約しながら一塊のブロックとして集約し、そのブロックをチェーンとしてつないでいくことに由来している。
ブロックチェーン・ネットワークの参加者は、カネやモノの取引をすると、それらの取引データをブロックにして、各参加者のパソコンなどで保管する。各参加者が保管するデータは同じでなければならないので、相互にブロックのデータが同じであることに合意しながら、参加者全員がすべての情報を共有していく。

ブロックチェーン技術は大型のコンピュータが不要となるためにコスト削減が期待出来るとあって、各金融機関も注目、開発に乗り出しているようです。

仮想通貨のデメリットは?

仮想通貨がメリットだけかというと、まだまだ流通が成熟には至っていないため、デメリットもあります。

価値の乱高下しやすさ

仮想通貨は投機の対象になっており、価値があがることもあるのが魅力のひとつではあるのですが、逆に大暴落の可能性もあります。そしてその際に国や企業による保証はありません。

一方で、ビットコインにはいくつかのデメリットもある。第一に、ビットコインは暴騰暴落を繰り返しており、投機的側面があることも否めない。また、国家や銀行に左右されないということは、国による価値の担保がないことでもある。つまり、ビットコインに何が起きようと、国は補償してくれないといえる。
「ビットコイン(BTC:Bitcoin)」などの仮想通貨について、消費者庁が注意喚起した。仕組みやリスクを十分に理解、納得したうえで利用するよう促している。
まずビットコインのような仮想通貨は、各国政府や中央銀行による信用の裏付けがないと指摘し、その仕組みやリスクを十分に理解、納得したうえで利用するよう呼びかけている。

流通を阻む仮想通貨へのイメージ低下

2014年に起きた、マウントゴックス破たんによるイメージの悪化もあり、日本はまだまだ仮想通貨に対し疑念の目を向ける人も少なくなく、それにより手を出しづらい状態になっている、というのが現状です。

ビットコインへのイメージを伺ったところ、最も多かったのは「セキュリティ面に不安を感じる(251pt)」、次いで「信頼できない、怪しそう(223pt)」となり、安全性や信頼性に疑問を感じている人が多いことがわかりました。
一方で、「興味があり、学んでみたいと感じる(125pt)」「利便性が高い(95pt)」「画期的であり今後伸びていく、期待できると感じる(85pt)」などプラスに感じる人も一定数いることが分かりました。

マウントゴックスの破たんは仮想通貨の問題ではないが…

とはいえ、以前「マウント・ゴックス」というビットコイン取引所が破綻してビットコインのイメージが悪くなったことがありましたね。しかしあの事例は例えたら「地方銀行がつぶれた」ような話であって「日本円が破綻した」わけではないのと同じことです。もちろんマウント・ゴックスにすべてを預けていた人は損害を被ったわけですが、損害を個々の利用者が回避することも不可能ではありませんでした。「卵はひとつのカゴに盛るな」という格言があります。もしそのカゴを落としてしまったら、卵がすべて割れてしまいます。従って、いくつかのカゴに分散して保管しておくことが大切なのです。

これからの流通の可能性

前項でネガティブな意見を紹介しましたが、仮想通貨が大きな可能性を秘めているのも事実。これからの可能性についてのポジティブな意見をいくつか紹介したいと思います。

ビットコインはもしかしたら世界通貨の未来を大きく変えるかもしれませんし、皆さんの生活を変えるかもしれないし、はたまた、大きなチャンスになることだってあり得ます。インターネットが情報伝達の大ブレイクスルーであったのと同じように、ビットコインは通貨の大発明として歴史に刻まれることになる可能性もあります。ビットコインのように、中央銀行を介さず、政府に邪魔されず、自由市場の原理に則って、世界中のどこにでも一瞬にしてほぼ手数料ゼロで送金できる通貨というのは、これまでに存在しなかったからです。
これまで「不便だ」とか「高すぎる」とかといった事柄には、必ず解決策が見出され、もしくは新しい方法が生み出されてきた。世界のグローバル化が進む中、外国への送金は煩雑で手数料が高く、時間がかかりすぎるという声に応えるため、銀行も仮想通貨の活用に向けての模索をはじめている。
不換紙幣が金と交換できない紙切れにすぎないように、仮想通貨は暗号化された文字列にすぎない。その文字列に価値がなくても、他の人がそれを通貨として受け入れる限り通貨として使えるが、逆にいうと、いかに完璧な技術であっても人々が信用しなければ通用しない。

リスクはあるとは言え、技術が向上し、流通も増えることで、その不安は少しずつ排除されていくことになると思われます。そうすると、もしかしたら紙幣や硬貨のない世界が実現するかもしれません。