特集2017年5月27日更新

読めばやる気が出てくる?「お仕事漫画」

「重版出来!」「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」「家売るオンナ」――これらは昨年話題を呼んだテレビドラマのタイトルで、いずれも「お仕事」が主要な題材になっています。「お仕事」をテーマに据えて人気を博している作品は漫画にも多く、先に挙げた「重版出来!」は漫画が原作です。今回はそういった「お仕事漫画」をいくつか紹介します!

知らない業界に詳しくなる&“あるある”で人気?

冒頭でドラマを例として引っ張り出して語りましたが、現在放送中の春クールで刑事ドラマが人気になっているように、昔から「太陽にほえろ!」や「古畑任三郎」などの刑事モノは人気です。特に「踊る大捜査線」では、よりリアルな警察組織の内情などをコミカルに描いて大ヒットとなりました。
このように「お仕事モノ」は、自分が知らない業界の話であれば好奇心が刺激されたり社会勉強になったり価値観が広がる効果があり、自分が知っている業界であれば共感や“あるある”を生み出すことに人気の秘密があるように思います。
なお、今回選んだ「お仕事漫画」の基準は、「職業人・業界の描写がメインのもの」、「業界・職業について具体的な仕事の工程や業界用語などの内部事情が(ある程度)リアルに描写されているもの」です。また、メインテーマがお仕事ではなくても(例えば恋愛モノでも)、上記のように内部描写が詳細なものなら選んでいます。

今回紹介する「お仕事漫画」

※単行本の巻数は2017年5月時点のものです。また「発売日」は第1巻のものとなります。

重版出来!

「出版業界」を舞台にした裏方たちの奮闘記

漫画を作っているのは、漫画家だけじゃない。編集者、営業、宣伝、製版、印刷、デザイナー、取次、書店員などなど、多くの人が関わり、一丸となって作っているのだ!
重版とは「一度出版した書籍を、さらに印刷・刊行すること」で「重版出来」は、その重版された書籍が販売されることをさす業界用語。本作は、大手出版社に入社した体育会家女子の奮闘記で、編集者だけでなく先に挙げたような、一般的に「裏方」と呼ばれる人たちについても綿密な取材のもと丁寧に描写しています。
2016年4月期にTBS系でドラマ化され、17年には「第62回小学館漫画賞・一般向け部門」を受賞しています。

作者松田奈緒子
出版小学館
単行本1~9巻
発売日2013年3月
 手作業での試し読み冊子の作成や、地道な書店回り。書店員も徹夜でPOPや人形を作成し売り場を作るなど、各現場の総力を結集した施策が徐々に売り上げを押し上げていく様子は、読む者がチームの一員になったような錯覚すら覚える熱さに溢れている。そして、普段漫画を読まない層も巻き込んだ“風が吹く”瞬間は、まさに第一巻の白眉といえよう。

「続編希望」の声も ドラマ版も好評

放送終了後にはTwitterのトレンド1位に「重版出来」が君臨。その他「五百旗頭さん」「三蔵山先生」「中田くん」「小日向さん」「ピーヴ遷移」「沼田さん」など関連するワードが並び、視聴者からは「重版出来!は久しぶりにハマったドラマだった。『おもしろかった』という言葉では片付けられないほどキャラも内容も濃いドラマだった」「1人1人のキャラがしっかり成り立っていて、感情移入できた。感動する最終回だった」「心が独り立ちして、奮闘する姿がもっと見たい!重版出来2でもスペシャルでも映画でも何でもいいから続編希望」「三蔵山先生のスピーチがかっこよすぎた。新しい漫画が気になるので続編お願いします!」など熱い反響が殺到した。

働きマン

「編集者」を題材にしたお仕事漫画の代表格

「重版出来!」と同じように出版業界を舞台にした作品で、ここ10年ほど「お仕事漫画の代表格」とされてきた作品。こちらは週刊誌の編集部が舞台で、編集部員の松方弘子が売れる雑誌を作るため日々奮闘する物語が描かれています。2006年にアニメ化、2007年には菅野美穂主演でドラマ化もされました。現在は作者の体調不良により連載休止中です。

作者安野モヨコ
出版講談社
単行本1~4巻
発売日2004年11月
週刊誌の編集部を舞台にしたビジネスマンガ。主人公がひとりの女性から、“働きマン”へとスイッチを入れ男も女も関係なく、仕事に妥協せず必死に奮闘する様を描いています。恋人と会えなかったり、人と対立したりしても、“質”にこだわり全力で仕事にぶつかる姿から勇気をもらえます。物語を通して“働く事”とは何かを考えさせられる作品です。

「キャリアウーマンだと思うキャラ」1位

電子書籍配信サイト「コミックシーモア」が実施したアンケートの「キャリアウーマンだと思うマンガキャラクター」という質問で、「働きマン」の松方弘子が1位になりました。このアンケートは今年3月に実施されたもの。10年ほど前の作品なのにいまだに1位になるということは、それほど強烈なキャラクターだったということでしょうか。

 コミックシーモア会員に、「キャリアウーマンだと思うマンガキャラクターで最も当てはまるキャラクターを教えてください。」と質問したところ、以下の結果となった。
 第1位に『松方弘子(働きマン)29.2%』、第2位に『巌谷澄麗(きみはペット)26.5%』、第3位に『高梨あすか(突然ですが、明日結婚します)21.3%』がランクインした。

バクマン。

打ち切りや専属契約制度…少年誌事情をリアルに描いた「漫画家漫画」

この「バクマン。」も出版業界が舞台ですが、こちらは編集者ではなく漫画家が主役。画が上手い真城最高(サイコー)と文才に長けた高木秋人(シュージン)の高校生二人の主人公が、原作と作画のコンビで週刊少年ジャンプ連載の「漫画家」を目指していく物語。実際の掲載誌でもあった「週刊少年ジャンプ」が実名で登場するほか、同誌の「アンケート至上主義」と「打ち切り」、専属契約制度といったリアルな裏事情も描写して人気を博しました。
その高い人気を受けて、テレビアニメ化、ゲーム化、ノベライズ化、実写映画化と多くのメディアに展開されています。

作者大場つぐみ(作)、小畑健(画)
出版集英社
単行本全20巻
発売日2009年1月
連載中に急病で倒れてしまったサイコーは、体調管理の懸念により編集長からの高校卒業まで連載の休載を命じられる。それでもサイコーは、諦めない心と、連載中の仲間達の応援もあり作品を完成させ、漫画家である叔父の川口たろうの言葉として“連載を勝ち取ってからの漫画家に必要なこと”を編集長に熱く話す。
登場人物それぞれが持つ夢や目標に向かうまっすぐな姿が、仕事に対してのモチベーションを上げてくれる事間違いなしで、「勇気」を与えてくれる。

グラゼニ

「プロ野球選手」のシビアな日常をリアルに描写

成果主義であるプロ野球のシビアな世界と、そこに生きるプロ野球選手のリアルな日常を描いている作品で、年俸にスポットを当てている点で、数多い野球漫画と一線を画す異色作といえます。2014年に一旦連載終了となったものの、同年「グラゼニ ~東京ドーム編~」として続編の連載がスタートし、先日の5月23日に最新の第11巻が刊行されてたばかり。
「このマンガがすごい!2012」ではオトコ編の第2位、13年に第37回講談社漫画賞を受賞しています。

作者森高夕次(作)、アダチケイジ(画)
出版講談社
単行本全17巻(続編が連載中)
発売日2011年5月
 主人公の凡田夏之介はスーパースターでない中堅の中継ぎ投手だ。「グラウンドにはゼニが埋まっている(略してグラゼニ)」がモットーで、『どうすれば年俸が上がるか』ということばかり考えてマウンドに立っている。
「シーズン中よりも、『契約更改』のほうが手に汗握る。プロ野球選手には打力や走力だけではなく、生きていくための『人間力』が必要だと感じさせる漫画です」

アニメ化決定 2018年放送予定

週刊「モーニング」で連載中の野球漫画『グラゼニ』が、BS スカパー! 初めてのオリジナルアニメとして製作されることが決定した。放送は2018年を予定している。

バンビ~ノ!

「イタリアンシェフ」を目指す少年の成長にスポットを当てた料理漫画

大学を休学してイタリア料理のシェフを目指す主人公が、試練に耐えて料理人として成長していく物語。作者が「料理で活劇を、厨房版の『ER緊急救命室』(海外の医療ドラマ)を描きたい」と思ったというように、料理漫画でありながら、料理人たちの本気のぶつかり合い、戦場のような厨房が描かれています。
2009年に第1部が完結、同年から第2部として「バンビ~ノ!SECONDO」も連載されました。07年に小学館漫画賞を受賞。

作者せきやてつじ
出版小学館
単行本全15巻(続編は全13巻)
発売日2005年3月
福岡の飲食店でバイトとして働く大学生の伴省吾が、店主の勧めから六本木のイタリア料理店に出向き一人前の「料理人」を目指していく物語。
店の新作料理コンペで厨房復帰を目指す伴に対し、先輩の香取は相変わらず見下したような振る舞いをみせるなか、伴は真剣な表情で料理に自分の全てを込めたと話す。仕事の壁にぶつかったとき、自分にはできないと腐るか、自分がやってみせると燃えるか、どちらだろうか。
料理店を通して働く様々な登場人物達の姿を見ているときっと誰もが胸が騒いで、溢れるような「熱さ」を思い出させてくれる。

Walkin' Butterfly

短所を武器にして成功していく「ファッションモデル」の物語

180センチの高身長にコンプレックスを抱えている主人公ミチコがモデルと間違えられてファッションショーの舞台に立つものの、ギャラリーの視線にさらされて立ちすくみ、デザイナーに痛烈な言葉を浴びせられて逃げ出す…というところから物語が始まる“ハイパーテンション・リアルショウビズストーリー”。
2008年には、数々の人気作を生み出しているテレビ東京の深夜ドラマ枠「ドラマ24」にて、「ウォーキン☆バタフライ」のタイトルでテレビドラマ化されました。

作者たまきちひろ
出版宙出版
単行本全4巻
発売日2005年7月
自分の身長にコンプレックスを持つ主人公がそれを生かして、モデルとして成功と居場所を探していく物語。コンプレックスを克服し、武器にして成長する姿に、勇気を貰える1冊。自身が短所だと思っている部分を見せなければいけないモデルという仕事を選ぶ主人公の“強さ”は疲れたり、メゲたりした時に、あなたを勇気づけてくれるでしょう。

Real Clothes

オシャレが苦手な主人公が華やかな「アパレルのバイヤー」の世界に飛び込む

大手百貨店のふとん売り場から突然、婦人服売り場に配置換えになった主人公・天野絹恵。オシャレが苦手でダサかった絹恵が、百貨店の花形部署で売り場のプロたちに揉まれながら、着ることや働くことに目覚めて懸命に生きていく姿を描く物語です。百貨店の裏側も知ることができる作品でもあります。2008年と09年に香里奈主演でテレビドラマ化されました。

作者槇村さとる
出版集英社
単行本全13巻
発売日2007年5月
ファッションの世界でどんな局面でも逃げださず、自分をスキルアップさせてキャリアを積んでいくサクセス・ストーリーです。
最初は地味でダサかった女性が成りあがっていく物語は、映画『プラダを着た悪魔』のような爽快感でたまりません。

サプリ

“月9”でドラマ化された「CMプランナー」の物語

華やかなイメージのある広告業界が舞台。広告代理店で働く主人公の藤井ミナミが、そのイメージとは異なる地味な作業に没頭し、連日の残業や徹夜などの激務をこなしながら、恋愛、友情に悩んだり迷ったりしていくストーリーです。
2006年に伊東美咲と亀梨和也のダブル主演作品として“月9”でテレビドラマ化されました。

作者おかざき真里
出版祥伝社
単行本全10巻(番外編1巻)
発売日2004年6月
7年付き合っていた彼氏と別れたミナミは仕事に没頭するものの、気になる男性から前髪のことをふと聞かれたときに、自分自身が「都合」を優先し「男向き」ではない姿であることを客観的に気付き恥ずかしくなってしまう。
20代後半でバリバリと働く女子のミナミが感じる、歓喜、葛藤、恋愛、人生など、きっと「働く女子」にとって頷いてしまうシーンが多くある。そういう部分は多くの頑張る女子にとっては心地よい「共感」を与えてくれる。

NEW GAME!

「ゲーム制作会社」を舞台に少女が“がんばるぞい!”する4コマ漫画

若い女性ばかりがいるゲーム制作会社を舞台に、高校卒業したての主人公・涼風青葉が初めての仕事に戸惑いながら成長していく姿を描く作品。作中に登場する「今日も一日がんばるぞい!」というセリフがネット上でひとり歩きして有名になったという逸話があります。
「女の子だらけの4コマ漫画」というイメージどおり、基本的にはほのぼのムードが漂う作品ながら、作者自身がゲーム会社に勤めていたというだけあって、巻き起こるトラブル、エピソードはリアリティ満点。「ほのぼの」と「リアル」が共存する作品となっています。

作者得能正太郎
出版芳文社
単行本1~5巻
発売日2014年2月
ヒロインの涼風青葉はゲーム会社に勤務する新入社員(18)。キャラクターデザインを担当しており、何に対しても意欲的。ちょっと天然でドジなところもかわいい。こんな新入社員が心の底から欲しい。

7月からアニメ第2期がスタート

第2期では、青葉の入社から1年が過ぎ、イーグルジャンプにも新入社員がやってくる季節に。右も左もわからなかった自分が、ついに先輩になることを考えると、どうしようもなく胸が高鳴る青葉。「先輩の涼風青葉だよ!よろしくね!」と、会社の入り口であいさつの練習を繰り返すのだが…。ゲーム会社で働く女の子たちの日常を描いたお仕事ガールズコメディが、再び幕を開ける。

午前3時の無法地帯

“ブラック”なのに…なぜかゆるゆるな世界観の「デザイン事務所」の物語

多忙を極めるデザイン会社に就職をしてしまったイラストレーター志望の主人公・ももこが、夢と現実の狭間に揺れる物語。個性的な同僚や徹夜続きの過酷な労働環境に嫌気がさしながら、辛いことばかりではなく楽しいこともあったと会社を辞められれず葛藤したり、プライベートや恋愛の両立でドタバタする姿が、“ゆるい”感じで描かれます。2013年には本田翼主演で実写ドラマ化されました。
続編の「午前3時の危険地帯」やスピンオフ「午前3時の不協和音」もあります。

作者ねむようこ
出版祥伝社
単行本全3巻
発売日2008年12月
イラストレーターになりたい主人公・ももこが就職したのはパチンコ専門のデザイン事務所。夢とかけはなれた職場で徹夜続きの毎日が続きます。
「女子力とは…?」と考えてしまう、ももこのゆるーい日常マンガは、見逃してしまうことの多い、ささいな幸せや悲しみと向きあう気持ちを育ててくれます。

今回紹介したような「お仕事漫画」が人気になる理由には、冒頭に挙げた「知識が広がる」「あるあるネタ」のほかに、一生懸命に奮闘する主人公たちの姿に刺激を受けて元気をもらったり、気分がリフレッシュされるといった効果もあるようです。
もうすぐ5月も終わりますが、「5月病」にさいなまれて仕事や勉学のモチベーションが上がらないという人がいたら、ここで紹介したお仕事漫画を読んで、やる気を取り戻してみてはいかがでしょうか?