今日から使いたくなるサッカー用語と四方山話

2018年6月23日更新

サッカーの実況を聞いていると「オフサイド」とか「ポゼッション」とか「フィジカル」とか、やたらと横文字を耳にしますよね。さらに最近では、監督の会見やサッカー専門の媒体などで「ポリバレント」「インテンシティ」といった、思わず頭が「?」になってしまいそうな言葉も耳にしたり、目にしたり。そんな新旧のサッカー用語に関する役に立つ話から無駄話までお届けします。

“サッカー通”と見てもらえそうな小洒落たサッカー用語

いくつかのサッカー用語を紹介していく前にまずお断りを。
単なる用語の解説ならば、ほかのサイトや書籍などの「用語集」のほうが詳しく、そして正しいと思いますので、当ページはそのあたりは目指さず、多少の主観や偏見なども含めながら“ゆる~く”用語を紹介していくページとなります。
熱戦が続くW杯観戦の合間にゆる~く読んでいただいて、「あるある~」「へぇ~」とか「懐かしい~」なんて思ってもらえたら幸いです。

まずは、テレビのサッカー中継や解説、監督の会見などで最近よく聞くようになった外来語由来のサッカー用語を紹介していきます。これらの言葉を巧みに操れるようになれたらサッカー通に見られるかも!?

ポリバレント

5月のガーナ戦に向けて行われた日本代表メンバー発表時の会見で有名になった「ポリバレント」。多くは「ポリバレントな選手」といった使い方がされ、簡単に言うと「複数の役割をこなせる選手」という意味になります。西野朗監督が使うワードとしてのイメージが強くなりましたが、そもそもは元代表監督のイビチャ・オシム氏が広めた言葉です。
ただ、その二人だけでなく、ハビエル・アギーレ元監督も使っていました。

森重の存在が重要になる。ポリバレントな選手だからセンターバックとしてもプレーできるし、中盤の中央でもプレーできる。

また、西野監督は「技術委員長」時代にも使っています。やはり、好きな言葉なんでしょうかね?

「今回は植田、伊東、土居、小林悠はポジションを変えてみたり、いろいろなチャレンジをした。これからはポリバレントで複数ポジションをこなせる選手をラージグループで考えていく必要がある」

ちなみに、「ポリバレント」の意味を解説している記述の多くは“ユーティリティー(プレイヤー)”や“マルチロール”と「ほぼ同義」としていますが、「厳密には違う!」という人や「全く違う!」という人もいるようです。

中島翔哉は「ポリバレントではなかった」で一気に有名に

先述のとおり、「ポリバレント」はガーナ戦のメンバー発表の際に有名になったわけですが、それはポルトガルのリーグで活躍している中島翔哉を選ばなかった理由について、西野監督が次のように述べたことが発端となっています。

中島に関しても、1年間ポルトガルリーグで非常に結果を出した選手ではあります。ただ、彼は1年間ポリバレントではありませんでした。

「ポリバレント」が独り歩き…後日補足するハメに

この発言について、「中島は十分ポリバレントでしょう」「じゃあほかの選手はポリバレントなの?」「ポリバレントの意味をわかっていないんじゃ?」などとメディアやファンから疑問や反論の声が噴出。西野監督は会見の3日後、あらためて発言の真意を説明しています。

この日、あらためて「ポリバレント」の意味を問われた西野監督は「複数のポジションをこなせるのは大事なこと。本大会に向けてそういう選手も必要」と、23人という限られた編成の中で複数のポジションでプレーできる選手の希少性を説いたうえで、「全員がポリバレントでないといけないと言ったわけではない」と補足した。
「スペシャルな選手もいる。ポリバレントでないから外したと言ったわけではなく、競争の中で、選択肢の中で選べなかった」。

インテンシティ

前回ブラジル大会まで日本代表を率いたアルベルト・ザッケローニ元監督が好んで使って広まった言葉。プレーの「強度」「激しさ」といった意味があります。ザッケローニ氏のイメージが強い言葉ですが、アギーレ氏もよく使っていました。

ロイターは、ザッケローニ監督の試合後のコメントを紹介。いつもらしさがなく、「インテンシティ(激しさ)を欠いた」日本チームを嘆いたと報じた。
初戦を白星で飾った日本代表のハビエル・アギーレ監督は「大事なのは勝ち点3を取ったことだ」と、勝利という結果に納得しながらも内容には満足しなかった。
「選手を責めるつもりはない。チームとしてミスを犯した。ただ、選手のインテンシティーには満足している」

すでに定着した言葉か?

この「インテンシティ(Intensity)」という言葉は物理学の世界において頻繁に使われているそうで、ほかにはトレーニング科学の分野でも多用されています。
ただ、日本の一般人の間では使われることはなく、一気に広まったのは2013年5月のブルガリア戦・オーストラリア戦のメンバー発表会見でザッケローニ氏が「インテンシティ」という言葉を使い、それに呼応してテレビ中継の実況と解説が「インテンシティ」を連呼。SNSでバズワードとなり、サッカーファンに一気に浸透したように思います。
ザッケローニ氏やアギーレ氏が退任してからはあまりテレビの実況などでは聞くとこもなくなり、過去の言葉となっていると思っていたんですが、今回この文を書くためにあらためて調べていたら、サッカーメディアの記事では今でも普通に使われているようで驚きました。すでに定着しているようですね。

ポゼッション

ここまで小洒落たワードとして紹介しておきながらなんですが、「ポリバレント」と「インテンシティ」はサッカーメディアの記事などでは見かけても、リアルなサッカーファン同士の会話でよく使うかというと疑問が…。しかし、「ポゼッション」に関してはすでに市民権を得ているように感じます。
それもそのはず。「ポリバレント」や「インテンシティ」のように、人によって解釈や真意が異なるような言葉と違って、日本語での表現「ボール保持率」や「支配率」で代替が可能かつ解釈のズレが生じ得ない言葉だからでしょうね。

関連ワード「ポゼッションサッカー」

2010年のW杯、08、12年のEUROを制したスペイン代表や、同時期のFCバルセロナのスタイルとして一気に広まった「ポゼッションサッカー」。その時期、バルセロナやスペイン代表があまりに強すぎたので、自分としては「ポゼッションサッカー最強じゃね?」なんて思っていたんですが、その強すぎたバルセロナに対抗するために、鋭いカウンターを武器にするチームも現れて、やがて「ポゼッションが高い=試合に勝てる」わけではないことを思い知らされることに。今大会でも開幕戦でサウジアラビアとロシアのポゼッションは60対40だったにもかかわらず、サウジは0-5で大敗しています。
ポゼッションサッカーで強いチームもあればカウンターサッカーで強いチームもあって、見るほうとしては楽しい時代になったもんです。

アンカー

守備的ミッドフィールダーの呼び方はいっぱいあって困ります。
メジャーどころでは「ボランチ」。この単語が流行りだしたのは94年のアメリカ大会の頃でしょうか。この時のブラジル代表は、日本でもおなじみのドゥンガとマウロ・シルバの2枚のボランチ「ダブルボランチ」を採用。攻撃サッカーのイメージが強いブラジルとしては守備的な布陣として自国では評判が良くなかったようですが、結果的に優勝する快進撃で話題となり、「ボランチ」の言葉が普及するきっかけとなったような記憶が。
ほかにも時代とともにスペイン発の「ピボーテ」、イタリア発の「レジスタ」などの呼び方が普及して、10年南アフリカ大会では当時の岡田武史監督が急きょ阿部勇樹を「アンカー」に置く布陣を採用して、「アンカー」が一気に浸透しました。今では「ボランチ」より「アンカー」のほうがよく耳にする気がしますね。
「ピボーテ」なども含めてそれぞれ役割は違うのですが、それを述べていると日が暮れてしまうのでスルーすることにして、たまたま見つけた下の記事を引用してごまかしておきます。

ボランチ:守備的なMFの総称。最近では中盤の底を2枚(2名)で担当する際に使われることが多い。その場合「ダブルボランチ」などと呼称される。長谷部誠など。
アンカー:意味的にはボランチとほぼ同じ。現実的には、中盤の底が1枚ならアンカー、2枚ならボランチと呼ぶ、くらいの認識でいい。

セカンドボール

前半戦の最後に紹介したい言葉が「セカンドボール」。マイボールでも相手ボールでもない、いわゆる「こぼれ球」のことです。
これを紹介したい理由は極めて個人的な理由なので短めにいきますが、その理由は「セカンドボール」という言葉がダサい和製英語みたいに感じられるからです。「カッコいい単語にしようと無理やり横文字にした」ような感覚で、テレビ中継でアナウンサーが「セカンドボールを大事にしたい!」なんて言っているのを聞くと、こっちが恥ずかしくなるような…。
でも、英語圏でも「second ball」は使われているようで、自分のしょーもない思い込みみたいですね。駄文失礼しました。周りでも共感してくれる人は皆無ですが、1000人に1人でもこの感覚に共感してくれる人がいたら…なんて思い、取り上げてしまいました…。

使う場面が減ってきたサッカー用語

後半戦は、上で紹介した新しめの用語と対照的に、古い表現、最近では聞かなくなってきた言葉を集めてみました。古いと知りつつ“あえて”使うことでオールドファンを装えるかも!?

ロスタイム

これは使われなくなったわけではありませんが、最近だと「アディショナルタイム」がスタンダートになってきていて、日本サッカー協会(JFA)でも「使用していない用語」として、同義語の「インジュリータイム」とともに「ロスタイム」を挙げています。これは「ロスタイム」が和製英語で、海外の表現と合わせるためでしょうね。
とはいえ、「ロスタイム」で慣れているファンが多いため、メディアはともかく、ファン同士の会話ではいまだに「ロスタイム」が圧倒的に多いのではないでしょうか?

ちなみに、現在では当たり前になっている終了間際の「ロスタイムの表示」ですが、昔は知らされることはなく、追加される時間は審判の頭の中にしかない状態。試合を見ているほうとしては「いつ終わるんだ…」とドキドキするのもサッカー観戦時の醍醐味でした。
なお、ロスタイムの表示は1998年から導入され、W杯でも同年のフランス大会から採用されています。

オススメ関連用語「ふざけたロスタイム」

ネット界隈では「ふざロス」とも言われて浸透しているワード「ふざけたロスタイム」。これは2011年に行われたAFCアジアカップの日本vsシリアのテレビ中継で、解説の松木安太郎氏が放った言葉が元になっています。
この試合は、GK川島にレッドカードが出されてPKになるという「なんなんすか、これ」な“疑惑”の判定などがあり、日本側としてはフラストレーションがたまる展開でした。そして、どうしても勝ちたい日本が1点リードして迎えた試合終了間際に示されたロスタイムは、あまりにも長い「6分」。これを受けて松木氏の口から飛び出した言葉が「ふざけたロスタイムですねぇ」です。

使える場面が多い言葉で、例えば先日の日本vsコロンビアの試合では、「日本としては2-1のままで勝ちたい!」という場面でロスタイムが「5分」と表示され、Twitterでは「ふざロス」というワードがものすごい勢いでツイートされていました。

「ふざロス」発言の裏にあった「愛犬の死」

余談ですが、不満がたまる試合展開のほかにも「ふざけたロスタイム」発言が飛び出した背景があったようです。
松木氏本人が2016年のウェブ番組内で語ったところによると、アジアカップが開催されたカタールへ出発する直前、長年可愛がっていた愛犬が亡くなったそうです。そして、落胆をしながらもお葬式を済ませ、「さあ、切り替えていこう」と現地に入ったものの、悲しみは止まず、「早く(仕事を終えて)犬のことを考えたいなぁ…」と思っている中でのロスタイム6分表示。そういった背景もあって「ふざけたロスタイム」と憤慨したということです。
ちなみに、このシリア戦やアジアカップ2011の中継では「なんなんすか、これ」「黙って…見ましょう」「もうふざけたPKはいらないですよ」といった数々の名言が生まれています。

センタリング

左右どちらかのサイドから中央(ゴール前)へボールを送るパス「センタリング」。今では「クロス」「クロスボール」と表現されることが多くなってきた気がします。「センタリング」は和製英語で、海外に合わせて「クロス」と言うようになったという話も。

どうでもいい話ですが、雑誌やポスター、WEB等のデザインに関わっている人は「中央寄せ」「中央揃え」の意味で「センタリング」を日常的に使うことが多く、そうでない人もWordやExcel、PowerPointなどで書類やプレゼン資料を作る際に「中央揃え」をする人は多いのでは? それゆえに「センタリング」と聞くと、サッカーのそれではなく、デザイン的な意味のそれと思う人が増えているんじゃないか…と、ふと思いました。「センタリング」より「クロス」が増えた要因とは関係ないんでしょうけど…。
ちなみに、相手陣地の深い位置(ゴールライン近く)までエグッてから中央に上げる場合は「センタリング」、浅い位置(ゴールラインから遠め)から中央に放り込む場合は「クロス」と使い分けている人もいそうですね。

ハーフ

この言葉も完全に消え去ったわけではありませんが、「ミッドフィルダー(MF)」というシャレオツな言葉に取って代わられて久しい言葉です。英語で言えば「半分、2分の1」という意味を持つ「half」で、もともとは「ハーフバック」と呼ばれていました。「フィールドの中央に位置するバックス」という意味で名付けられたといいます。
MFと呼ぶのが普通になってからは「ハーフ」と呼ぶとオッサンくさいというかダサい感じもありましたが、「45分ハーフ」とか「ハーフタイム」の「ハーフ」と混同しなくなるので良かったかもしれませんね。
ただ、最近では「インサイドハーフ」という表現が増えてきていて、まだまだ「ハーフ」を使う場面はありそうです。ちなみに、「インサイドハーフ」とは下図の赤丸に位置するポジションのことで、スペイン代表のアンドレス・イニエスタとか日本の香川真司が務めることの多いポジションと言えばわかりやすいでしょうか?

ウイング(ウインガー)

一時期廃れ気味で復活した「ハーフ」に関連して(?)もうひとつネタを。上のハーフを示した図の中で「WG」と表記しているのは「ウイング(ウインガー)」のことです。このポジションも近年復活してきていますね。
かつては攻めることが華というか、守備の意識が薄かったので、フォワードが5人や4人も並んでいた時期がありました。それだけ並べば両サイドの選手は相当外側に位置しているわけで、「タッチライン沿いをガンガン駆け上がったりドリブルしてセンタリングを上げまくる」という役割を担っていました。これがウイングです。
その後、1トップや2トップが全盛となり「ウイング」は姿を消すことに。しかし近年になって3トップを採用するチームが増えたことで、ウイングが復活してきています。

ラインズマン

日本語では「線審」。女性審判の登場に伴い「ラインズ“マン”はよろしくない」という理由や、「副審(アシスタントレフリー)」という言葉が急速に普及したことで「ラインズマン」はすっかり廃れてしまいました。
…と思っていたら、つい先日の19日に配信されてきている記事で日本代表の吉田麻也が今大会で導入されているビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)について下記のように語っていて、まだまだ現役の言葉なんだなと実感。昨日(22日)配信の記事でもサンフレッチェ広島の水本裕貴が「ラインズマン」を連呼しているので、現場の選手の中ではいまだに普通に使う言葉なのかもしれませんね。

「テクノロジーが発展していけば、おそらく次に導入されるのはラインズマン(副審)。今大会もオフサイドの微妙なところは(副審がフラッグを)上げずに、少しプレーを流してからビデオで判定することを取り入れている。今後はラインズマンいらないのでは、となる。選手よりも危機感を持たないといけないのは審判。職を失うのは彼らかな、と思う」

自殺点

本来、後半戦では「使う場面が減ってきた」どころか「今では廃れた」言葉を紹介する予定だったんですが、これまで紹介してきたとおり、意外としぶとく残っているのが現状です。ただ、「これはさすがに廃れたと言っていい」と思ったのが「自殺点」です。
この言葉が現在の「オウンゴール」に取って代わった理由は説明不要でしょう。さすがに語感がよろしくないですよね。JFAも「『自殺点』とは表記しない」としていて、大手メディアでも「自殺点」としているのは、ほぼ皆無ではないでしょうか?
ちなみに、「オウンゴール」に転換するきっかけとなったのは94年アメリカ大会の「エスコバルの悲劇」らしいですが、記憶は定かではございません。

同じ「死」をイメージする「サドンデス」

「自殺点」と同じく「死」をイメージする用語としては「サドンデス」が有名です。これは延長戦で得点が入った時点で試合終了となる、文字通り「突然死」なルールのこと。Jリーグが世界で初めてリーグ戦に採用し、途中で「延長Vゴール」に名称を変更。さらに「ゴールデンゴール」の名称で国際ルールとしても採用され、W杯では98年と02年の大会で実施されました。
しかし、2000年代前半には海外でも国内でもこのルールは廃止され、今では「そういえばそんなルールあったね」状態となっています。
ちなみに、ヨーロッパでは「シルバーゴール」というゴールデンゴールをカスタマイズした方式が採用されていた時期もありました。