与那原恵のニュース

【書評】ナチス政権下の若者の間で響いたジャズの音色

NEWSポストセブン / 2017年05月15日07時00分

【書評】『スウィングしなけりゃ意味がない』/佐藤亜紀・著/角川書店/1800円 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) この小説の舞台はドイツ・ハンブルク。一九三九年から、戦争が進行する日々を十代の少年エディの目を通して描いていく。タイトルがデューク・エリントンの名曲からとられているように、物語を貫くのは、敵性音楽として排斥されたジャズの躍動的な音、 [全文を読む]

【書評】人間の欲望の歴史が宿った「イタドリ」の数奇な運命

NEWSポストセブン / 2017年03月10日07時00分

【書評】『Moving Plants』/渡邊耕一・著/青幻社/3800円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) 「イタドリ」という植物がある。ハート型の葉で、白い花を咲かせ、高さ一~二メートルに成長する。日本のいたるところでごく普通に見られる雑草は、食用、薬用としても利用されてきた。「スカンポ」などとも呼ばれ、この植物をあらわす方言は六〇〇種に [全文を読む]

【書評】トランプ勝利、建前に疲れ本音解放した米国の今後

NEWSポストセブン / 2017年01月21日07時00分

【書評】『メイキング・オブ・アメリカ 格差社会アメリカの成り立ち』/阿部珠理・著/彩流社/2200円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) アメリカ先住民研究者の著者による「格差社会アメリカ」の通史である。〈「自由の国」として出発したアメリカは、その最初より、理念と現実の甚だしい乖離を内包していた。その乖離こそが「アメリカの矛盾」を際立たせるも [全文を読む]

【書評】「指導」するのではなく大衆的感覚に依拠する志

NEWSポストセブン / 2016年12月22日16時00分

ノンフィクションライターの与那原恵氏は、「ポピュリズム」を読み解く書として『娯楽番組を創った男 丸山鐵雄と〈サラリーマン表現者〉の誕生』(尾原宏之・著/白水社/2200円+税)を推す。与那原氏が同書を解説する。 * * * ドナルド・トランプの米大統領選の勝利は、彼の当選を予期できなかった米国メディアの敗北ともいわれる。大都市を拠点にするメディアは知性主義 [全文を読む]

【書評】熊本で創刊された地方文芸誌の執筆者が見つめた虚無

NEWSポストセブン / 2016年11月04日07時00分

【書評】『アルテリ 二号』/責任編集・田尻久子/アルテリ編集室/1000円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) 熊本県の阿蘇中岳が噴火したというニュースには胸がつぶれる思いがした。私は九月下旬に熊本に行き、四月に起きた「熊本地震」により崩れた家屋を目のあたりにしたばかりだったからだ。 この熊本行きは、作家の石牟礼道子さんと渡辺京二さんを撮影す [全文を読む]

【書評】中村うさぎが覚悟をもって書いた「人間とは何か」

NEWSポストセブン / 2016年09月04日16時00分

【書評】『あとは死ぬだけ』/中村うさぎ著/太田出版/1400円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) 中村うさぎは、論理の人、ロゴスの人である。リアリストでもある彼女の視線は冷徹ともいえるものだが、そこには言葉を決して疎かにしない「覚悟」がある。 ライトノベル作家としてデビューして人気を博し、さらに家族や女であることを題材にした小説、エッセイを [全文を読む]

【書評】刑事弁護人が明かす隠語・俗語の語源と秀逸な使用例

NEWSポストセブン / 2016年06月28日07時00分

【書評】『刑事弁護人のための 隠語・俗語・実務用語辞典』下村忠利・著/現代人文社/1800円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) クサむ、ケツをかく、ゲソをつける、ハチ(鉢)割る……。一体、何のことでしょう? これらは特定の仲間の間で使われる「隠語」「俗語」なのです。意味は順に「贋物をつかまされる」「そそのかすこと」「暴力団組織に入ること」「 [全文を読む]

【書評】躍動感漲るタメ口で描かれたアナキスト・伊藤野枝像

NEWSポストセブン / 2016年05月14日16時00分

【書評】『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』/栗原康・著/岩波書店/1800円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) 大正時代のアナキスト、斬新なフェミニズム論を展開した伊藤野枝。関東大震災直後の「甘粕事件」により、パートナーの大杉栄、甥とともに虐殺され、二十八歳で生涯を閉じたことはよく知られる。 激しく生き、書いた野枝の人生を、疾駆する文 [全文を読む]

【書評】反体制を貫いたヴォネガットのユーモア溢れる言葉

NEWSポストセブン / 2016年03月23日16時00分

【書評】『これで駄目なら』カート・ヴォネガット・著/円城塔・訳/飛鳥新社/1600円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) 二十世紀アメリカ人作家の中で、最も広く影響を与えたといわれるカート・ヴォネガット(一九二二~二〇〇七)。代表作は第二次世界大戦を兵士として、ドイツの捕虜として体験したことが投影された『スローターハウス5』など多数にのぼる。 [全文を読む]

【書評】多様なデータと資料で震災からの復興政策を問い直す本

NEWSポストセブン / 2016年02月04日16時00分

【書評】『震災復興の政治経済学 津波被災と原発危機の分離と交錯』齊藤誠/日本評論社/2200円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) 東日本大震災からやがて五年を迎える。現在も避難生活を送るのは十八万二〇〇〇人以上に及び、福島県においては「被災関連」死者数が津波や震災直後の影響による「直接死」を上回っている。 これまで巨額の復興資金が投じられて [全文を読む]

【書評】大韓帝国ロイヤルファミリーの併合後の処遇とその後

NEWSポストセブン / 2015年10月01日16時00分

【書評】『朝鮮王公族──帝国日本の準皇族』新城道彦著/中公新書/840円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) 大正初期に作成された現在の六本木周辺の地図の、宮家や薩摩閥の邸宅が並ぶ鳥居坂の一画に「李王家世子邸」が記載されている。大韓帝国最後の皇太子である李垠(イウン)は十歳で東京留学し、三年後の明治四十三年に韓国併合を迎え、李王家の王世子(跡 [全文を読む]

【書評】近年「再発見」された87歳コラージュ作家の初作品集

NEWSポストセブン / 2015年06月18日16時00分

【書評】『はるかな旅 岡上淑子作品集』岡上淑子著/河出書房新社/3700円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) ドレスをまとった若い女性の肉体、首から上は白い手袋をはめた複数の手。背景にヨーロッパ風の室内、そこにシャンデリアがきらめき、さらに窓の奥に見えるのは雲に隠れた月と、どこからか呼び寄せるような無骨な手。 岡上淑子の国内初の作品集として [全文を読む]

【書評】今日の資源開発競争を映し出す示唆に富む日本近代史

NEWSポストセブン / 2015年05月01日16時00分

【書評】『アホウドリを追った日本人 ── 一攫千金の夢と南洋進出』平岡昭利著/岩波新書/780円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) 沖縄本島の東方約四〇〇キロに、南北ふたつの大東島がある。断崖絶壁の地形のため、漁船を係留できずクレーンで上げ下ろし、人もウィンチで釣り上げられる。島の名物が「大東寿司」だ。サワラやカツオをヅケにして握ったもので [全文を読む]

【書評】米国人一家が日本の庶民的メニューを食べ尽くした本

NEWSポストセブン / 2014年07月23日16時00分

【書評】『米国人一家、おいしい 東京を食べ尽くす』M.A.バートン著・関根光宏訳/エクスナレッジ/1700円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) 米国シアトルに暮らすフードライターが、妻と八歳の娘・アイリスとともに東京にやって来た。日本食を食べ尽くすために。となると、ベストセラーになり、続編も刊行された『英国人一家、日本を食べる』(亜紀書房) [全文を読む]

【書評】沖縄戦で多くの理不尽な戦死者が出た洞窟撮影した本

NEWSポストセブン / 2014年04月08日16時00分

【書評】『GAMA CAVES』オサム・ジェームス・中川/赤々舎/5000円+税 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) 湿り気を帯びた鍾乳洞。石灰岩が長い時間によって浸食された洞窟を沖縄では「ガマ」と呼ぶ。まるで生物の皮膚のような岩肌からポタポタと水がしたたり落ちる。地面には茶碗や薬瓶など、人間の生の痕跡が散らばっている。 沖縄本島南部に散在するガ [全文を読む]

「現代のチェーホフ」ノーベル文学賞マンローの最新短編集評

NEWSポストセブン / 2014年02月08日16時00分

【書評】『ディア・ライフ』アリス・マンロー著 小竹由美子訳/新潮社/2415円 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) 昨年、ノーベル文学賞を受賞したアリス・マンローの最新短編集である。マンロー作品は日本でも新潮社のクレスト・ブックスを中心に刊行され、多くの読者を獲得してきた。私は彼女の世界に魅了されてしまい、翻訳を楽しみにしてきたひとりだ。けれど残 [全文を読む]

サーカスを招聘する呼び屋が世界各国を旅した日々を綴った本

NEWSポストセブン / 2013年06月20日07時00分

【書評】『サーカスは私の〈大学〉だった』大島幹雄/こぶし書房/1890円 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) 大島幹雄は「ツィルカッチ」(ロシア語で「サーカス野郎」)になって三十年を超えた「呼び屋」である。サーカス人生を振り返り、芸人たちとの出会い、世界各国を旅した日々をいきいきと綴った。 何十回にも及んだロシアをはじめ、欧米諸国、モンゴル、ウズ [全文を読む]

食肉豚を買い育て、出荷し、肉にして食べたルポルタージュ

NEWSポストセブン / 2012年04月07日07時00分

【書評】『飼い喰い 三匹の豚とわたし』(内澤旬子著/岩波書店/1995円) 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) * * * 私たちは何を食べているのだろうか。そんな問いからはじまったルポである。約一年をかけ、三頭の肉豚を飼い育て、屠畜場に出荷し、肉にして食べるまでを追った。しかも著者自身が、である。 内澤旬子の著書に十年間にわたって国内・世界各地 [全文を読む]

5千年の歴史持つバナナ バナナで大統領が追放されたことも

NEWSポストセブン / 2012年02月16日16時01分

【書評】『バナナの世界史』(ダン・コッペル著 黒川由美訳/太田出版/2415円) 【評者】与那原恵(ノンフィクションライター) * * * かつてバナナは高価で特別なデザートだった。そして今日、世界でもっとも消費されている果物はバナナである。嗜好品としてだけでなく、何億人もの飢えを救う。 世界には千種を超えるバナナがあるという。私は南インドで食べたバナナの [全文を読む]

フォーカス