紅麹サプリの「プベルル酸」はどこから来た? 人為的混入、遺伝子変異の可能性は【東大准教授が徹底解説】
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月10日 8時30分
──そのたった数種類のアオカビが紅麹の近くにいたかもしれない?
そういうことでしょう。ただ現時点では、ある種のアオカビがプベルル酸を作ることしか分かっていません。私は微生物や発酵の専門家ではないため詳しい説明はできないのですが、発見されていないだけで、別のものがプベルル酸を作る可能性もゼロではありません。
一方で、ベニコウジカビ自体がプベルル酸を作れるかどうかで言えば、今のところ、ベニコウジカビの遺伝子がプベルル酸を作る能力を持つとする研究報告はありません。遺伝子というのは、もし突然変異があったとしても、突如としてそれほど大きく変わることはないので、ベニコウジカビがいきなりプベルル酸を作れるようになった、あたかも「変身」のようなことが起きる可能性は低いと思っています。
プベルル酸を作る能力があるか否かは遺伝子を調べれば分かります。遺伝子情報は膨大にあるのですが、その中にプベルル酸を作れるかを判断できる領域といわれるものがあります。それを持っているかどうかでだいたいは判断がつきますが、周囲の研究者に聞く限り現時点でそのような情報は入っていません。
一方、プベルル酸という異物がベニコウジカビの培養の時点でそもそもの原料となる米に入っていた(汚染米)という可能性も捨てきれません。プベルル酸の構造を見ただけの安易な予想でしかないのですが、仕込みの段階の加熱下でも安定に存在し続けるのではないかと思われます。
例えば、フグ毒のテトロドトキシンは加熱しても分解されないため、加熱処理をしても素人が調理をすることは自殺行為に等しいです。このように製造の最初の段階からプベルル酸が存在していた可能性も否定でできませんが、今回は本来いるべきでないはずの菌が混入し、それがプベルル酸を作った可能性のほうがやはり高いでしょう。ただ、どこの段階でプベルル酸を作る菌が入ったのかは分かりません。
可能性として、一番大事な段階である発酵のところで入ったのか、それとも、発酵させるのに使う米にアオカビが入っていたのか。そうだとすれば、ベニコウジカビを米の上で繁殖させる過程で、アオカビも増えてしまいそうです。
一般的に発酵というのは繊細な衛生管理が必要です。例えば、日本酒を造っている酒蔵は不要な菌が入らないように徹底的に管理していると思います。極端な例で言うと、酒蔵の杜氏はお酒の製造中は納豆を食べません。納豆菌は繁殖力が強いので、混入するとお酒の質が落ちてしまうからです。
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