伊吹有喜氏『娘が巣立つ朝』インタビュー「家電の進化が家族の形にまで影響したり、時代と人の在り方の関係に興味があります」
NEWSポストセブン / 2024年5月20日 11時15分
『娘が巣立つ朝』というと、私達はかの名曲『秋桜』に描かれたような、いかにも感動的で悲喜交々なイイ話を、つい思い浮かべがちだ。が、著者・伊吹有喜氏がこの自身初の新聞連載小説で主題の1つに据えたのは、誰もが口には出しにくいが気になること──すなわち「愛とお金」だったといい、現実はそう甘くはなかった。
「その2つが最もぶつかる場所、それが結婚だと思うんですね。特に私は愛知のお隣の三重県出身だからか、婚礼ってこんなに大変なものなのかと、子供の頃から思っていました」
視点人物は3人。大学の映画サークルの先輩後輩として出会い、28年前に結婚した、ともに50代の〈高梨智子〉と夫〈健一〉、そして就職を機に多摩市内の実家を出て一人暮らしを始めた、26歳の一人娘〈真奈〉だ。その真奈が大学の同級生で、今は旧財閥系企業に勤める〈渡辺優吾〉という青年と挨拶にやってきた正月から、物語は始まる。そう。結婚の許しを請う、アレである。
しかしその婚約は両家の違い過ぎる文化や、肝心の真奈達の間に横たわる溝までも浮き彫りにし、しかも一人娘が嫁ぐということは3-1=2。つまり初老の夫婦が2人だけで取り残されることを意味してもいた。
「私は毎回作品を書く時に、自分流のキャッチコピーとテーマ曲を決めるんですね。それこそ今回のコピーは、『家族崩壊のきっかけは、娘の婚約だった』で、元々壊れていたとは言いませんが、一つ一つは小さな疵や歪みが大事に繋がることって、ありますでしょう?
本書の登場人物はみんな一癖あっても根はイイ人で、お互いのことを思い合ってもいる。でも言葉がほんの少し足りなかったり、すれ違ったりして、今まで見て見ぬふりをしてきたものが娘の婚約で一気に噴出する場合もあると思うんです」
……と、既にイイ話ではなさそうだが、伊吹氏は父と母と娘の心の揺れをリアルに描き分け、一連の騒動の驚くべき顛末と各々の選択を具に追っていく。
「ちなみにテーマ曲はミスチルの『documentary film』と、財津和夫さんの『Wake Up』。前者は彼女との一瞬一瞬をフィルムに撮るような思いで過ごす主人公の心情が、健一と重なったんですよね。マンションの契約更新の関係で結婚前の娘が少しの期間、家に戻ってくる。お父さんとしてはそれが嬉しい半面、すぐに嫁いでしまうことも知っている。その限られた時間を惜しむイメージが、今作の原動力になりました。
この記事に関連するニュース
-
結婚生活は浮き沈みがある 『娘が巣立つ朝』 <聞きたい。>伊吹有喜さん(小説家)
産経ニュース / 2024年6月2日 8時40分
-
伊吹有喜さん、初の新聞小説『娘が巣立つ朝』についてインタビュー「50代って『老人の若葉マーク』。元気なんだか年寄りなんだかわからない」
NEWSポストセブン / 2024年5月31日 16時15分
-
50代同士の再婚「子どもたち」のリアルな反応 令和の日本は「多婚時代」に突入している
東洋経済オンライン / 2024年5月26日 11時40分
-
仲野太賀 出征前のデートシーンは「撮影後二、三日は、悲しすぎて台本が読めませんでした」 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】
エンタメOVO / 2024年5月24日 8時15分
-
「嫁は叩かないと育たない」「正妻なんだから」。資産家に嫁いで子どもを奪われた女性の30年
オールアバウト / 2024年5月5日 22時5分
ランキング
-
1ガスト、大人のお子様ランチプレートがおつまみとして素晴らしすぎた<チェーン店ひとり酒>
日刊SPA! / 2024年6月2日 15時52分
-
2テレビの電源を「本体の主電源」で消すと故障の原因になるってホントですか? 【専門家が回答】
オールアバウト / 2024年6月2日 20時35分
-
3「餃子の王将」この2年で4度目の値上げを発表。それでもお客が離れない“2つの理由”
女子SPA! / 2024年6月1日 8時46分
-
4関東撤退から半年 東京に復活した「東京チカラめし」、なぜ新店舗が庁舎内に?
ねとらぼ / 2024年6月2日 12時0分
-
5月19万円の年金で貯蓄3000万円でも「贅沢はできない」67歳男性が語る年金暮らしのリアル
オールアバウト / 2024年6月1日 22時20分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください