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ガーシーに投票した28万人はどんなつもりだったのか…自己保身だけが目的の「暴露系YouTuber」の末路

プレジデントオンライン / 2023年3月7日 11時15分

NHK党のガーシー参院議員が秘書を通じて参院に提出した文書=2023年2月27日午前、国会内 - 写真=時事通信フォト

■「所持金10万110円」でドバイへ逃亡

「俳優S。彼に九州で当時17歳だった女子高生を紹介しております。その女子高生と彼はホテルの部屋内で飲酒をし、セックスをするという行為に至っております」「俳優AによるNMB元所属Kに対する飲酒、性行為の強要。当時彼女は未成年でした」

これは、昨夏話題になった、参議院選にNHK党から立候補したガーシーこと東谷義和氏(51)の政見放送の一部である。

47のイニシャルを延々述べ、当選した暁にはこの人たちの実名を公表すると「公約」したのである。

その上、当選しても登院はしないとも約束した。事情があってドバイに移り住み、そこから立候補したことも話題になった。

ここで、ガーシー氏の来歴を見てみよう。

ガーシーの著書『死なばもろとも』(幻冬舎)によると、韓国の超人気グループ・BTSに会わせてやると騙(だま)して、女の子たちから集めたカネ数千万円をギャンブルで溶かしてしまったため、慌てて犯人引き渡し条約を結んでいないドバイにとんずらしたという。その時の所持金は10万110円だった。

それまで彼は、芸能人や有名人たちに女性を“秘かに”紹介する「アテンド業」をやっていたそうだ。

■「絶対のポリシーは、人の秘密を守ることや」

「かれこれ30年近くにわたって、俺は芸能人やタレントのアテンダーとして生きてきた。華やかなスポットライトを浴びながら数百万人、数千万人の視聴者から注目される仕事は、精神的ストレスがハンパやない。仕事が終わればドッと疲れが襲い、憂さ晴らしをせにゃ翌日の営業に差し支える。

アテンダーの仕事は、そんな彼らに束の間の安らぎを与えてあげることやった。

歌舞伎町や銀座、六本木に西麻布、札幌のすすきの、大阪の北新地とミナミ(道頓堀)、那覇の辻や松山。北から南まで、かわいい女の子、きれいな女の子を血眼になって探し求めてきた。その子らを有名人に紹介するアテンド業が、俺の職業や。

ええことばかりやない。汚れ仕事なんざいくらでもある。いや、汚れ仕事ばっかりや。芸能人のケツを拭いても俺自身がスポットライトを浴びることなんて一度もない。アテンダーは黒子や。黒子が前にしゃしゃり出て目立とうなんざ、論外や。一生日の目を見ない。それでええんや。

アテンダーとして俺が守ってきた絶対のポリシーは、人の秘密を守ることや。何を笑っとんねん。ホンマや」(『死なばもろとも』)

これを読めば分かるように、アテンダーなどと気取った言葉を使っているが、やっていることは「女衒」である。

■食事の支払いから旅行の手配まで幅広い

一度でもアテンドしてもらったら、弱味を握られてしまう。だが、そんなそぶりは見せないから、相手はどんどん深みにはまってしまうのだ。

このアテンダーというのは、あちこちにいるという。

FRIDAYデジタル(2022年9月4日)で、複数の飲食店を経営する福岡在住の“アテンダー”X氏がこう語っている。

「ガーシーさんが使うまでアテンダーという言葉を聞いたことはありませんでしたが、芸能人のお世話をする僕みたいな人たちは昔からいました。食事や酒席に同行し、支払いをしてあげる、言ってみればタニマチみたいな存在です。

ただ、タニマチとちょっと違うのは、“お財布”の役目だけでなく、そこから発展して、芸能人との長い付き合いの中で自然とお店だけでなく、打ち上げや女の子、旅行の手配など細かいところまで世話をするようになった人たちのことで、見返りもしっかり求めます」(X氏)

芸能人が地方に行けばその土地その土地のアテンダーが彼らの世話をするようになっている。当然、芸能事務所は黙認していた。なぜなら、それが一番、芸能人にとって安全に遊べる方法だったからだ。

しかし、そうした平穏な日々は、カネに余裕がある時まで。ましてやガーシー氏のようにギャンブルが三度の飯より好きな人間は、カネがなくなれば仁義も蜂の頭もなくなる。

■今の時代を象徴する“異形”のスターである

「俺が暴露系YouTuberに転身した理由は単純。博打や。ギャンブルのせいや。(中略)ギャンブルをやっていないときも、頭の中であのヒリつきと興奮が片時も忘れられん。ギャンブルなしには生きれん体になってもうたんや」(同)

BTSに会わせてやると女の子たちから集めたおカネも、「手をつけたらアカンことは、理性ではわかっちゃいる。わかっちゃいるねん。悲しいかな、ジャンキーの脳みそは理性や知性ではコントロール不可能なんや」(同)

結局、日本にいられなくなって、なけなしのカネをもってドバイに逃げる。あれだけ俺は仕事で知った秘密は墓場まで持っていくと豪語していたのに、カネに困ったら、YouTubeで「知り得た秘密」を有料で暴露し始めたのだ。

有名芸能人たちのスキャンダルによだれを垂らす連中がこぞって有料会員になり、億万長者になった。その上28万票を獲得して議員にまで成り上がったのだから、今の時代を象徴する“異形”のスターであることは間違いない。

話は戻るが、公約した実名公表はまだのようだが、登院拒否は貫いていた。そのため、国会軽視だ、有権者をバカにしているという批判が巻き起こった。参議院懲罰委員会は国会欠席を続けるガーシー議員に、「議場での陳謝」を求める懲罰案を決めた。

東京新聞の社説(2023年2月22日 07時06分)を見てみよう。

■「懲罰がどうした」と鼻で笑うかと思いきや…

国会法は議員の国会出席義務を定めており、本会議や委員会に出席して審議や採決に加わることは議員の責務だ。

しかし、ガーシー氏は昨年七月の参院選で当選後も国外に滞在。半年以上にわたって一度も登院せず、政府に質問主意書を一通提出したにとどまる。国民から負託された議員の責務を放棄する以上、懲罰を科すのは妥当な判断だ。

尾辻秀久参院議長は国会出席を促す招状をN党側に渡したが、ガーシー氏は動画投稿サイトで著名人らを中傷した疑いなどで警視庁の捜査を受けており『腐った権力者がいる日本に帰ってくると、不当な罪を着せられる恐れがある』として出席を拒否している。

身勝手な主張が許されるはずがない。捜査を逃れるために海外にとどまりながら、毎月百三十万円近い歳費や同百万円の調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)など、半年で合わせて千七百万円以上の公金を受け取っている。国民の理解は到底得られまい。(中略)

ガーシー氏はそもそも参院選で国会に出席しないことを「公約」していた。順法精神が疑われるような公約を掲げる候補者や政党を安易に選ばないよう、有権者の良識も厳しく問われている。

自分が紹介した女子高生が俳優とセックスしたと暴露している人間に順法精神を説くのは、カエルの面に小便であろう。だが、意外というか、「懲罰がどうした」と鼻で笑うと思っていたガーシー参院議員が、2月27日にこれを受諾したと報じられたのである。3月8日に国会に出向き、参院本会議で陳謝文を読み上げる予定だという。

国会議事堂
写真=iStock.com/istock-tonko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/istock-tonko

■有権者はガッカリしているのではないか

この文面は、懲罰委員会が起草するという。

「院内の秩序を乱し、参院の信用を失墜させたことは誠に申し訳なく、深く自責の念に堪えません。謹んで陳謝いたします」

という“屈辱的”なものになるそうだ。

ガーシー議員は、これは有権者に向けたおわびだといい募るのではないかといわれているが、彼に一票を入れた有権者は、期待を裏切られてガッカリしているのではないか。彼の有権者たちの多くは、彼に国政での活躍など求めていない。懲罰でも除名でもしろと開き直る姿を彼に求めていると思うからである。

当選後一度も登院しないで除名されれば、「日本政治の愚劣さを具現化した男」として末代まで名が残るではないか。

そうした期待を裏切った代償は大きいに違いない。

まつもとあつし氏が文春オンライン(2022年11月8日)でこんなことを書いていた。

東京と新潟の現役大学生143人にアンケートを行って、圧倒的な知名度のあるひろゆき氏のほかにガーシー氏についても聞いてみたという。

■事実の正確さよりも「面白いことを言う」のが大事

ガーシー氏の認知度も85.3%と高い。YouTuber時代から知っていたという声に加えて、参議院選挙への出馬・当選、その後の帰国拒否など一般メディアを通して知ったという人も複数いた。

一方で、発言内容の信頼度はきわめて低い。

「まったく信頼していない」(33.6%)、「かなり信頼していない」(29.5%)を合わせて63.1%が信頼していないと回答している。自由記入コメントでも「(ガーシー氏が発信する)芸能人のゴシップは週刊誌よりも証拠がないと思うから」という情報そのものへの評価に加え、「参院選に当選しておいて議会に出ないくせに偉そうなこと言うなって思います」と現在の行状について厳しく批判するものも散見された。

なぜ、ひろゆき氏やガーシー氏の発言は注目を集めるのだろうか。

アンケートの「彼らに求めること」という設問への回答は、衝撃的だ。「わかりやすく解説してくれる」「面白い事を言ってくれる」が5割を超えた。一方で、「正確な情報を提供してくれる」「公正・中立な視点を提供してくれる」は3割~2割程度に留まった。
若者がネットインフルエンサーに求めていることは、一般メディアが情報発信する際に重視しているポイントと大きくずれていることがわかる。

面白いことが大事で、それが事実かどうかは二の次なのだ。

もし、ひろゆき氏が直接選挙である東京都知事選に立候補したら、100万票以上集めて当選する可能性があるということだ。

これを「衆愚政治」「扇動政治」だと批判する人はいるだろうが、事はそう簡単ではない。

■今後も下半身暴露で食っていけると思っているのか

ひろゆき氏は過激な発言でネトウヨたちの支持が多いようだが、ガーシー議員は、芸能人や有名人の下半身問題をYouTubeで暴露して知名度を上げ、一見、正義のヒーローのごとく錯覚されて120万もの登録者を獲得してきたのだ。

今のところ国外(ドバイといわれる)にいて、ツイッターやYouTubeを駆使して、無責任なことを呟いていればいい。

例えば、昨年11月28日のインスタグラムに、激烈な岸田首相批判をしていた。

「こいつはほんま消えた方がええわ 総理としても、議員としても、人としても、価値がなさすぎる 誰が推してこんなやつ当選させて、総理大臣にまでしたんや?」「ほんまに若い奴らは、人任せやなく、ちゃんと選挙いって、自分の未来を守ってくれる奴に投票して、最高の日本を作ろうや!!!」(スポニチアネックス11月28日 16:47)

国会議員としての最低の義務も果たさず、いえた義理かと思うが、ガーシーファンにとっては、よくぞいってくれたということなのだろう。

だが、のこのこ国会へ出かけて行って陳謝してしまえば、これからも“ワル”を気取ろうとしても以前のようにはいくまい。

それに議員を辞めても有名人の下半身暴露で食っていけると思っていると、痛い目にあうはずだ。

■逮捕される可能性はまだ残っている

1月11日には、刑事告訴を受けた警視庁が暴力行為等処罰法の常習的脅迫や刑法の名誉毀損(きそん)容疑でガーシー氏の関係先を捜索したと報じられている。

もし、公約した47件の実名暴露でもすれば、名誉毀損でさらに訴えられること間違いない。

デイリー新潮(2月28日)によれば、今回、ガーシー議員が日本に戻ってくるのは、現職の国会議員は国会会期中の「不逮捕特権」があるから、逮捕はされないと見込んでいるのではないか。

永田町に精通する政治ジャーナリストはこう解説している。

「このまま帰国しなかった場合は、間違いなく『除名』処分を科されて、国会から追放されていました。そうすると、議員の身分は剥奪され『一人の私人』となる訳ですから、警察当局は躊躇なく逮捕状を請求していたと言われています」

それでガーシー議員は帰国の意向を表明したのだろうか。

「ガーシー議員が帰国して陳謝に応じた場合は、懲戒処分はそれで完了し、除名処分は免れることになります。とはいえ、6月21日に予定されている国会閉会日を過ぎると不逮捕特権は保障されなくなるので、河井夫妻(公職選挙法違反の容疑で東京地方検察庁特別捜査部によって逮捕された=筆者注)のように閉会直後に逮捕状が請求され、通常執行される可能性はゼロではありません。

警察当局は、暴力行為等処罰法の常習的脅迫等でガーシー議員を逮捕することに意欲的のようです。芸能界の暴露にとどまらず、政財界のVIP批判を繰り広げるガーシー議員は目の上のたんこぶになっています。また検察と違って、警察がバッジ(国会議員)を摘発できる局面はあまりないので、手ぐすねを引いて機会を待っている状態だと言えます」

■ドバイは富裕層を守る「聖域」ではない

裏社会を熟知していると豪語しているガーシー議員だから、国会閉会を待たずにドバイへUターンするつもりだろうが、そこも彼にとって安全地帯ではないという。

「ドバイといえば、各国から逃亡・避難した富裕層の拠点として治外法権が認められるような『聖域』になっているというイメージがあるかもしれません。しかし、それは誤りです。

むしろ、ガーシー議員からしたら『よりによって』と言うかもしれませんが、林芳正外務大臣は1年前にUAEのアブダッラー外相と会談を行い、両国の戦略的連携関係の強化を打ち出したばかり。また昨年11月に法務大臣に就任した齋藤健氏は日本UAE議連の幹部で、UAEと太いパイプを持っています」(同)

ドバイのジュメイラ・ビーチ
写真=iStock.com/NiseriN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NiseriN

名誉毀損事件としては大掛かりすぎるような気もするが、これも120万もの登録者を抱えて影響力を拡大し、参議院議員にまで成り上がったためなのだろう。

ガーシー議員が登院しない場合には、NHK党の比例名簿第4位の斉藤健一郎氏が繰り上げ当選になる。

■彼が消えても、第2、第3のガーシーは出てくる

ガーシー氏が消えても、第2、第3のガーシーは必ず出てくる。面白ければ、いっていることが嘘だろうが関係ない。軽薄というのとは少し違う気がするが、そうした空気がある限りは。

話は変わるが、『若者たちの神々』という企画を覚えている人はいるだろうか。

朝日ジャーナルが1984年から85年にかけて連載したインタビューである。その前には『現代の偶像』というシリーズもあった。

当時の若者たちに人気のある“カリスマ”たちと対談して、時代の空気や彼らの考えを探ろうというもので、インタビュアーは編集長の筑紫哲也氏。

登場したのは若き日の、浅田彰、糸井重里、坂本龍一、野田秀樹、橋本治、三宅一生、楠田枝里子、タモリ、嵐山光三郎、山口小夜子、中上健次、田中康夫等々。

今、私が雑誌の編集長だったら『バカ者たちの神々』という企画をやってみたい。登場していただく候補には、ひろゆき、ガーシー、ホリエモンは欠かせない。どこかの雑誌でやらないか。

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元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。

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(ジャーナリスト 元木 昌彦)

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