「ズバリ言います」と書いてはいけない…ChatGptにすら負ける"つまらない書き出し"5つのパターン
プレジデントオンライン / 2023年7月22日 13時15分
※本稿は、杉山直隆『文章はつかみで9割決まる』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■最初の数行だけで続きが読みたくなる文章を書くには
プロの原稿からアマチュアのブログまで、文章は9割がつかみで決まります。最後まで読んでもらえる「つかめるつかみ」は次のように定義できます。
・最初の数行だけで、何らかの期待を持つことができ、続きが読みたくなる
・全部読んだときに、「期待に応える文章だった」と感じられる
どちらか1つではなく、2つの条件がそろうと「つかめるつかみ」というわけです。
一方、「つかめないつかみ」の定義として私が考えるのは次の2点です。
・最初の数行を読んでも、読みたい気持ちが起こらない
・全部読んだときに、読み手の期待に応えられていない
要は「つかめるつかみ」の逆ですね。もう少し具体的にしてみましょう。この原稿を書くにあたり、私は、文章を生業としていない人が書いたブログやnoteにも目を通し、どんな「つかみ」からはじめているかを調べました。また、過去に自分の書いた記事のスクラップ帳をひっくり返してみました。
すると、せっかく面白いことが書かれているのに、いまいちな「つかみ」をいくつも目にしました。また、「つかみ」を読むと面白そうなのに、全文を読んだら期待外れに終わったというものもありました。
■「つかめないつかみ」には5つのパターンがある
とくに多いパターンを整理すると、「つかめないつかみ症候群」といったかたちでまとめることができました。次の5つのパターンがあげられます。
①「わかりやすいけど、無難すぎる『つかみ』」症候群
おそらく、多くの人が最初にかかる「つかめないつかみ症候群」が、これなのではないかと思います。
文章はわかりやすいし、間違ったことも書かれていない。けれども、無難すぎて、刺さる要素がない。そんな「つかみ」から抜け出せない症候群です。
■文章の構成が正しくても無難な書き出しだと台無し
たとえば、次の「つかみ」をご覧ください。
もう1つ、別の「つかみ」もあげてみます。
どちらも文章の構成の基本である「5W1H」(5W1Hは文章を構成する基本的な要素。「いつ(when)」「どこで(where)」「誰が(who)」「何を(what)」「なぜ(why)」「どのように(How)」のことを指します)を意識し、話の前提をきちんと説明しようとしている、わかりやすい「つかみ」だと思います。
ただ、わかりやすいものの、無難すぎて、読み手を惹きつけるインパクトはありません。これだと、なかなか「先を読みたい!」とはなりにくいでしょう。
こうした「つかみ」を書いている人のなかには、「これではインパクトがないなあ……」と自覚している人もいるかもしれません。
しかし、いろいろ手を加えてもしっくりせず、結局、「わかりやすいほうがいい」と無難な「つかみ」になってしまう。じつは私自身、ライターとしてデビューしてから数年間はこの症候群にかかっていて、そんな堂々めぐりをしていました。
■どこかで読んだような紋切り型フレーズではインパクトなし
②手あかのついた『つかみ』に頼っている」症候群
無難すぎる「つかみ」から抜け出そうとしたときにかかりがちなのが、「手あかのついた『つかみ』に頼っている」症候群です。
手あかのついた「つかみ」とは、いろいろなところで使われすぎていて、もはやインパクトがない「つかみ」のことです。
たとえば、次の文章をご覧ください。
内閣府男女共同参画局『男女共同参画白書平成28年版』の文章です。これは白書なのでしかたがありませんが、冒頭の「少子高齢化の進展がうんぬん」という文章はあちこちでよく見かける文章であり、驚きがありません。
■「少子高齢化」などの時代背景は既に使われすぎている
と思ったら、以前の私も思いきり使っていました。
絵本の制作・販売をするA社も、そんな会社の1つです。
「少子化が年々進んでいる」だけでなく、それに続く「両親や祖父母が子どもに対して出費を惜しまない」という話も、よく見かける話です。間違ったことは書いていませんが、インパクトには欠けます。これだけを読んで、続きを読んでみたいとはあまり思いませんよね。
じつは、私が書いたのは「自分の子どもを主人公にできるオリジナル絵本」をつくっている会社を取り上げた記事でした。せっかく面白い題材なのに、手あかのついた「つかみ」を使っているわけです。過去の自分、じつにもったいないことをしています。
「少子高齢化」に限らず、時代背景に関する「つかみ」はよく使われるため、どこかで見たような「つかみ」になりがちです。
たとえば、「人生100年時代がやってきた」「グローバル化の進展によって」などの文言は手あかがついていて、新鮮味のない表現に見えます。
私も、時代背景に関する手あかのついた「つかみ」を多用していた時期がありました。無難だという考えもありましたし、「高尚なことを書いているように見せたい」という気持ちもありました。しかし、その結果、どこかで見たような「つかみ」を量産していたわけです。
■「これはガチです」などネットで頻発する書き出しもNG
また、季節に関する「つかみ」も、手あかのついた典型の1つです。「もうすぐ桜舞い散る季節」「師走の足音が近づいてきました」「いよいよ夏本番!」などは必ずしも常にNGではありませんが、「つかめるかどうか」という視点で言えば、インパクトに欠けます。
ほかには、最近よく目にするものとして、SNSで多用される、自分の投稿に目を向かせるための言い回しです。
具体的に言えば、「これはガチです」「炎上覚悟で言います」「何度でも言いますが」「本質を言います」「断言します」「ズバリ言います」などなど。
これらを文章で使っていると、「またその言い回しか」と思われてしまいかねません。情報商材を売っている人がよく使う言い回しなので、「この人も何か売りつけようとしているのでは」という誤解を招くおそれもあります。
■投資の原稿で祖母のことを書いても、読者には興味がない
③「読み手の興味とズレたネタを選ぶ」症候群
「つかみ」の目的は読み手の興味を惹くことですが、「読み手の興味とズレたネタ」を「つかみ」に選んでしまう。そんな症候群に陥っている例もあります。
私もそんな1人でした。その例として、過去に私が株式投資で稼いでいる人にインタビューをした記事の「つかみ」をご覧ください。
そこで、株式投資のテクニックを教える本を読み漁って勉強をして、祖母にアドバイスをするようになりました。すると、「たかしも自分でやってみたら」と祖母に言ってもらえるようになり、贈与してもらった100万円を引き継いで、自分でも運用するようになったのです。
ネットで、ある2つの指標が低い銘柄を探して、ネット証券で購入。売買を繰り返しました。その結果、7年間で5000万円の利益を出すことができました。
ところが、この文章では、「投資をはじめたきっかけ」を「つかみ」に選んでいます。「祖母が投資をしていたから」という情報に強い関心を持つ人はほとんどいないでしょう。これでは興味を持ってもらえませんよね。
■余計な言葉や関係ない話が入っているのもNG
④「『つかみ』が冗長でダラダラしている」症候群
手の込んだ「つかみ」を書こうとした結果、冗長になり、ダラダラしてしまう……という症候群も見られます。冗長になるパターンは2つあります。
1つは、「余計な言葉が多い」パターン。
たとえば、次の文章をご覧ください。
「体重を落とすには食事を減らすことが不可欠」という内容の文章が3つも続いていて、長い割に薄い内容です。「体重」「食事」が何回も出てきますし、「とは何かというと」「やはり」「基本的に」など不要な言葉もたくさんあります。
このように同じ意味の言葉を繰り返したり余計な言葉がたくさん入っていたりすると、内容の割に文章が長くなり、読み手が興味を失ってしまいます。
もう1つは、「いらない話が入っている」パターンです。「この文章をまるごと削除しても意味が通る」という「つかみ」はしばしば見受けられます。
■「つかみ」で投げた問いが回収されないのは不誠実な文章
⑤「本題と『つかみ』がかみ合っていない」症候群
「インパクトのある『つかみ』を書こう」という意識が強くなると、そのためにかかってしまう症候群もあります。
それは、「本題と『つかみ』がかみ合っていない」症候群です。
たとえば次のように、「つかみ」で読み手が気になる問いを投げかけたとしましょう。
しかし、最後まで読んだのに、「月1万円で抑えられる方法がまったく書かれていなかった」「安くておいしいもやし料理のレシピが延々と書かれていて、お金の話はどこかにいってしまった」としたらどうでしょうか。
読み手は「最初に書いてあることと違うじやないか」とガッカリするでしょう。
こうしたことは「インパクトのある『つかみ』を書こう」とばかり考えると起こりがちです。そんなことがあるのだろうか、と思うかもしれませんが、意外と少なくありません。
■インパクトを狙いすぎても、整合性がなければダメ
かく言う私もそんなミスをしたことがあります。以前書いた雑誌の記事は、次のような「つかみ」からはじまっています。
そんな売り文句が興味を惹くテレビショッピング。あんなに安くして、損をしないのだろうか?
この「つかみ」から入ったら、テレビショッピングの会社が安売りしても損をしないという話がくると思うでしょう。
ところが、その記事は、途中から「テレビショッピングでの商品の映し方」や「雰囲気を盛り上げる観客の声」など、売り方の工夫の話に終始していて、結局、損しているのかどうかはよくわかりません。文章に答えが書いていないのですから、読み手は頭に「?」マークが並んだままだったと思います。
ほかにも、「つかみ」で抱いた期待を裏切るケースは、次のようなものが考えられます。
「成功に必要なたった一つのこと」と言いながら、どれを指しているのかわからない
「新しい方法を見つけた」と言いながら、新しい方法ではなかった
「波乱万丈な恋をした」と言いながら、どこが波乱万丈なのかわからなかった
いずれにしても、読後感は非常にモヤモヤしたものになるはずです。いくら読み手の興味を惹くことができたとしても、最後まで読んでその期待に応えられなければ、その「つかみ」は失敗と言えるでしょう。
最近はChatGPTなどのAIで、ちょっとしたレポートやビジネス文書が作れるようになりましたが、人の目を引くつかみまでは作れません。「キャッチーな書き出しを」とChatGPTに入力すると、一応、凝った書き出しが出てきますが、限界があります。つかみを考えるのはまだまだ人間に残された役割と言えるでしょう。
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ライター、編集者
オフィス解体新書・代表取締役。30代からの学び直し・リスキリングを支援するWebメディア『30sta!』編集長。専修大学法学部在学中から編集プロダクション・カデナクリエイトで雑誌や書籍、Web、PR誌、社内報などの編集・執筆を20年ほど手がける。2016年に独立。『月刊THE21』、『NewsPicks』、『Chanto Web』などで執筆中。『うまい棒は、なぜうまいのか?』(日本実業出版社)ほか、50冊以上の書籍の執筆・編集協力もしている。
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(ライター、編集者 杉山 直隆)
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