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パートナーシップ宣誓制度、導入自治体相次ぐ 千葉、富津や鎌ケ谷も導入へ

産経ニュース / 2024年5月9日 18時4分

千葉市からのパートナーシップ宣言証を手にする伊藤悟さん=習志野市(松崎翼撮影)

家族の形態が多様化する現状を踏まえ、同性や事実婚のカップルを公的に家族とみなす「パートナーシップ宣誓制度」を導入する自治体が千葉県内で相次いでいる。4月末時点で12市に広がり、年内には富津市が、来年4月には鎌ケ谷市も加わる予定だ。近接する自治体同士で必要な行政手続きに関し、連携し合う動きも見られる。熊谷俊人知事の肝いりの「千葉県多様性が尊重され誰もが活躍できる社会の形成の推進に関する条例」が施行されたことが後押しになっているようだ。

県内では熊谷知事が千葉市長時代の平成31年に同市で初めて導入した。その後、松戸、浦安、船橋、市川、習志野の各市が続いた。昨年は柏、木更津の両市が制度を新設した。

今年は市原、流山、君津、袖ケ浦の4市も運用を始めた。パートナー関係にある人の子供らを家族として認める「ファミリーシップ制度」も同時に導入した。

今後は富津市や鎌ケ谷市のほか、導入時期は未定ながらも、八千代市、我孫子市、富里市、鋸南町などが宣誓制度を導入する方向で検討している。

昨年12月の県議会では、LGBTといった性的少数者ら、さまざまな人が暮らしやすい社会を目指す「多様性を尊重する条例」が成立し、元日に施行された。

ある自治体担当者はこの条例が「宣誓制度を導入する上で、後押しになる」と語った。

これまで制度を導入した12市の制度の大枠はほぼ同じだ。

千葉市はカップルのいずれかが市内在住か転入する予定があり、配偶者や別の相手とのパートナーシップ関係はないことなどが条件だ。市は必要な書類を確認し、パートナーシップの証明書を交付する。これまで191組に手渡された(1日現在)。

制度上も家族だとみなされ、市営住宅の入居申し込みといった、市や民間事業者の提供するサービスが受けられる。市営霊園で同じお墓に入ることもできる。

都市間連携も広がりをみせる。千葉、松戸、船橋、市川、習志野、柏の6市は昨年7月、転出や転入時の手続きを簡略化する協定を結んだ。内房地域でも富津、君津、木更津、袖ケ浦の少なくとも4市で同様の協定を結ぶ運びだ。

国内で初めて対象をLGBTといった性的少数者に限定しないパートナーシップ宣誓制度が5年前に創設された千葉市で、宣誓第1号となった伊藤悟さん(71)=千葉県習志野市=に、制度の意義や今の思いを聞いた。

「日常生活でいつも不安だった気持ちから解放されて、とても過ごしやすくなった」

伊藤さんは晴れやかな表情で語る。

平成31年にパートナーの簗瀬竜太さん(62)と宣誓した伊藤さん。40年近く前から交際が始まり、そのほとんどの時間を同居しながら過ごしてきた。こうした制度が設けられる前は、世間の冷たい視線にさらされ続けてきたという。

例えば家探し。「気に入った物件があっても、『歳をとった男性2人がどういう関係で住むのか』『部屋を汚されるのではないか』などと大家さんから断られる」。やっとの思いで住める物件が見つかっても、近隣住民の心ない視線を感じ、幾度となく引っ越しを繰り返してきたという。

2人が制度の創設を願う大きなきっかけとなったのが、10年ほど前に簗瀬さんが原因不明の激しい腹痛で救急搬送されたときだった。伊藤さんが付き添ったが、関係を尋ねられてパートナーだと告げたところ、「親族以外は付き添えない」と、診察室から退室を迫られた。

「約2時間何の情報も知らされず、互いに不安が募った。特に梁瀬さんは、もしものことがあったときに顔も合わせられないまま死んでしまうことになるのではないかと思い詰めていた」

これがもし、男女のカップルだったら-。不安とともに、行き場のない不満は募るばかりだったという。パートナーシップ制度の創設は、同性婚のカップルらが前向きに自分らしく生活を送るための大きな一歩になった。市から発行された証明書を見せることで、引っ越しの契約などもスムーズになったという。

伊藤さんは「私たちにとっては金銭的な援助というよりも公的に関係を認められるという安心感が非常に大きかった」と強調する。

近年、パートナーシップ制度を創設する自治体が増えている。性的少数者を取り上げるドラマを目にする機会も増えた。

「LGBTに肯定的だとまではいかなくても、否定はしないという人が増えている感じはする」

だが、まだまだ道半ばだ。自身が代表を務めるNPO「すこたん!」を通じて、LGBTについて理解を深めるための学校・行政機関への出前授業のほか、当事者へのカウンセリングなどを今後も続けていく。

「世代が若いほど考えは柔軟になってきたが、1人で悩みを抱えている同性愛者は今も少なくない。そんな人たちに、のんびりと話せる場所を提供してあげたい」 (聞き手 松崎翼)

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