地域の児童公園に「東武鉄道社有地」と書いてあったのですが… 不思議な空間から続く道 「あー廃線っぽい!!」
乗りものニュース / 2024年5月19日 12時12分
宇都宮市の観光地となった大谷地区の児童公園に、「東武鉄道社有地」と書かれた白い標柱が。そこから、1本の細い空間が延びています。実はこれ、廃止された東武線の跡でした。
宇都宮に残る一大路線網の鉄軌道の痕跡
栃木県宇都宮市西部の大谷地区は「大谷石」の産地で知られ、石材採掘によって生じた広大な“地下空間”などが話題を呼び、近年は国内外の観光客が訪れています。その大谷の観光エリアを抜けた路線バスの終点「立岩」バス停近くに、不思議な空間がありました。
そこは「立岩児童公園」。地域の子供が遊具で遊ぶ、ちょっと広めの公園といったところですが、園内の目立つ場所に「東武鉄道株式会社 社有地」との標柱が立っているのです。
この場所はかつての「立岩駅」の跡だそう。ここから南へ、クルマ1台分ほどの細い道が続いているのが、まさしく「東武大谷線」の痕跡です。
東武大谷線は、複数の鉄道・軌道の総称です。かつては大谷地区を中心に、石材を運搬するための一大路線網が築かれていました。それらは戦前に宇都宮へ進出した東武鉄道に統合され、やがて廃止されていきます。そのなかで最後まで残ったのが、立岩から東武宇都宮線の西川田駅にかけて続く計およそ11kmの鉄道線(実際には立岩―分岐点、荒針―分岐点―西川田の2区間)で、完全廃止は1964(昭和39)年のことでした。
それら鉄軌道跡のほとんどは道路になっていますが、立岩から続く線路跡は、やがて県道に並行するようになり、駅の跡(旧瓦作駅)も残っているなど、比較的かんたんにその痕跡を追うことができます。なかには、線路跡を転用した道路の傍らに、立岩児童公園と同じ「東武鉄道株式会社 社有地」の標柱が立っているところも。
ただ、その跡がわかるのも、主要道路である大谷街道までです。そこから先、線路跡は「明保通り」という2車線道路になっており、鉄道の痕跡はなくなっています。
至って普通の道路に現れた「あ、廃線っぽい!!」
明保通りは東北道をくぐり、県道の鹿沼街道までまっすぐ続きます。地図上では明保通りが終わる鹿沼街道との交差点にも、やはり不思議な光景が。交差点の向こうは柵があって明保通りから直進できないものの、その先も真っすぐ、家並みが開けた空間が続いているのです。
「あ、廃線っぽい!」と一目でわかる光景を探りに、交差点の向こうの住宅街へ回り込むと、その空間は小さな築堤になっていました。まさに、周囲との高低差を克服した鉄道の痕跡です。
その先も線路跡を転用したと思しき道路は続くものの、鉄道の痕跡はあまり感じられず、最終的には「宇都宮環状線」の手前で途切れます。線路跡は環状線の一部になっており、往時の雰囲気は全く感じられません。
かつての線路はこの近くで分岐し、JR鶴田駅(日光線)にも接続していましたが、鶴田駅方面、西川田方面とも線路らしい痕跡は見つけられず。
ただ、西川田駅の北側では、東武宇都宮線の本線からちょうど1線分が分岐していたであろう空間が鉄道用地内にあり、その先の線路に沿う公道に面していました。現役の鉄道用地のなかで膨らんだこの空間が、最も廃線らしい痕跡といえるかもしれません。
ちなみに、JR宇都宮駅西口から大谷方面へまっすぐ続く目抜き通りの大谷街道も、実は一部、かつての軌道線跡です。この通りに沿って、宇都宮ライトレールの延伸が計画されています。
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