アングル:「二重苦」の中国製造業、日韓からの供給停止が追い打ち
ロイター / 2020年3月3日 12時7分
3月2日、中国の製造業者は新型コロナウイルス流行で二重の苦しみに見舞われている。国内の感染拡大で2月の景況感が記録的な落ち込みを示した上に、主要取引相手の韓国と日本で新型ウイルスの感染者が急増し、両国の一部製造業者が操業の一部停止や中国の製造拠点向けの交換部品の供給削減を進めているためだ。2月28日、上海で撮影(2020年 ロイター/Aly Song)
[北京 2日 ロイター] - 中国の製造業者は新型コロナウイルス流行で二重の苦しみに見舞われている。国内の感染拡大で2月の景況感が記録的な落ち込みを示した上に、主要取引相手の韓国と日本で新型ウイルスの感染者が急増し、両国の一部製造業者が操業の一部停止や中国の製造拠点向けの交換部品の供給削減を進めているためだ。
中国は新型ウイルス流行の「震源地」だが、新たな感染者の数は急激に減少。当局は旅行制限を部分的に緩和し、事業再開が可能になったところもある。
しかし韓国と日本からの輸入は中国の製造業で重要な役割を担い、電子製品の製造・組み立ての分野では特にそうだ。
調査会社ガベカル・ドラゴノミクスのハイテクアナリスト、ダン・ワン氏は「部品が数個手に入らないだけで製造工程全体が止まってしまう。つまり、もし日本と韓国の企業が製品を供給できなければ、フォックスコンのような組み立て企業はますます困ったことになる」と述べた。
米アップルの製造委託先の鴻海(ホンハイ)精密工業<2317.TW>は2月末、中国の主力工場の生産再開を発表し、新型ウイルス流行で今年の売上高が打撃を受けると警告した。
中国の製造業は新型ウイルス流行で事業活動が急激に鈍り、2日発表の2月製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月から大幅に悪化して、2004年の統計開始以来の低水準となった。
<日本と韓国の状況がカギに>
中国の製造業者は徐々に事業が再開しても、新型ウイルス流行が日本と韓国で悪化すれば、再び打撃を被るとアナリストはみている。
中国は韓国の全輸出の25%程度を受け入れ、昨年の韓国製半導体の輸入は640億ドル、液晶ディスプレー(LCD)と携帯電話用交換部品が数十億ドル相当に上った。
中信証券のアナリストチームはリポートで「日本と韓国は中国にとって重要な貿易相手国であり、両国で新型ウイルスの感染がさらに広がれば、工場の閉鎖や物流の寸断、輸出の落ち込みなどによって、中国企業は上流、中流、下流それぞれの段階で供給が直接影響を受けるだろう」と指摘した。
現代自動車<005380.KS>やサムスン電子<005930.KS>など韓国の大手輸出企業は、従業員の新型ウイルス感染が確認されたことを受けて生産ラインを部分的に停止。LGディスプレー<034220.KS>は消毒作業のためディスプレーモジュール工場を3日まで閉鎖した。
<従業員戻らず>
中国では一部の企業が操業を再開しているが、中小企業の多くは今も十分な数の作業員の確保が難航し、製造業は北東アジア全体で事態が悪化している。
ガベカル・ドラゴノミクスのワン氏は「中国は製造業で大きな比率を占めており、国内の状況は引き続き深刻だ」と述べた。
韓国の食品包装機械メーカー、ウルスン・オート・パックのOh Pil-jae最高経営責任者(CEO)によると、同社は春節(旧正月)の休暇を2月半ばまで延長したが、休暇が終わっても中国東部の蘇州にある工場が再開できないでいる。ウルスンは蘇州工場から部品を輸入し、韓国で組み立てて、完成品を10カ国程度に輸出している。
蘇州工場で職場に復帰した作業員は50人のうち3分の1ほど。CEOによると、医薬関連製品が病院に供給されているためマスクが手に入らず、従業員1人に対して毎日2枚を提供するという当局から課せられた条件を守ることができない。
CEOによると「工場に韓国人がいるから復帰しない作業員もいる」。同社は蘇州の工場を韓国に移すことを検討しているが、移転はコストがかかり、作業を終えるには8カ月以上を要するという。
(Gabriel Crossley、Stella Qiu記者)
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